無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.この人はされてないので見様見真似。
Q2.蟹は?
A2.食べそこないました。
箸休めのすっとこタイム。
今回は幕間的なお話なので無口さんの出番無し。
一応ご飯食べにはやってきます。
「…で、うっかり弱音を吐いたら頭ぐりぐりされちゃったんだ?」
ニヤニヤとからかうような笑みを浮かべながら話すリッカさん。
「あの人が女性相手に手を上げたっていうから何事かと思えば…子供扱いされて慰められただけじゃない。」
確かに無理やりミッションに付いていったのは私だし。
あの時弱音を吐いてしまったのも事実だけれど。
「むしろ後の話を聞くに手をあげてるのはキミの方じゃない。駄目だよぉ?仮にも一部隊のリーダー様が暴力で解決しようとするなんて。」
リッカさんこそどの口でそれを言うんですか。
またほっぺをむにむにして欲しいんですか。
いや、しましょう。
頼まれ事をこなしてきてるというのにこの言い草、罰を与える理由には十分かと。
というわけで、リッカさん御覚悟です。
………
「保管庫で暴れるな馬鹿共!」
たまたまやってきたツバキさんに見つかって二人共々拳骨されました。
頭が結合崩壊しそうです…
あの人のアレ、これに比べたら相当マシな部類だったんですね。
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と、いう訳で。
「あの人はまだ何かを隠してると思うんですけど、何か心当たりありませんか?」
ここは極東支部のエントランスホール。
中央にそびえる大型エレベーターの正面、階下を見渡せる特等席で意見を募る。
集まってもらったのは第一部隊の面々と。
今回の話の発端であるリッカさん。
「心当たり、と言われましても…」
「そもそもあの人、普段からあの仏頂面だからなぁ。それ以外と言われると何か飲み食いしてる姿しか…」
とりあえず各人でそれらしき記憶を辿ってもらうものの。
その回答はあまり芳しくはありません。
というかコウタ、仏頂面って。
確かに鉄仮面って表現よりはマシかもしれませんけど。
「サクヤさん、何か思い当たる節とかない?」
「そう言われても…強いていうなら最近よく単独でミッションに出向いているとか?」
リッカさんとサクヤさんのやり取りも確証的な物は見当たらないが。
言われてみればそれは確かに。
そういえば私がこの前付いていったのも元々は単独ミッションだ。
しかもその実態は特務案件。
極東支部内でも極限られた隊員しか参照する事の出来ないミッション。
私が知る限り、参照できるのは私とあの人と…
「…言っておくが、俺は何も知らないぞ。」
私が何かを聞く前に先手を打って答えるソーマ。
うーん怪しい、私はまだ何も言っていませんよ?
本当に?本当に知らない?
嘘だったら前みたく一日中纏わりつきますよ?
「…何企んでやがる。そんな目をされても、知らん物は知らん。」
ふむ、そこまで言うならとりあえずは保留にしましょう。
次に情報を持っていそうなのは…
「アリサは?何かあの人から聞いてない?」
「私は何も…というか、喋れない人相手に聞くも何もないじゃないですか。」
ほぅ、何もですかそうですか。
「本当に?本当に知らない?」
「な、何ですかリーダー。その聞き方、何か疑われてるみたいで嫌なんですけど。」
その通り。
実は大変疑っております。
意外かもしれませんがアリサとあの人の接点は昔から多いのです。
極東配属当初に始まり、最近ではアーク計画の件に至るまで。
別にこの前除け者にされていた事を気にしている訳ではありませんよ?
これだけ接点があるのに加えて、私はちゃんと証拠の方も掴んでいるのですから。
「ねぇアリサ。最近よく調理場を借りて何か作っているよね?」
「ど、どうしてそれをっ!?」
おっと、軽くつついただけでこの動揺ぶり。
これは疑惑度が跳ね上がりましたよ。
「どうして知ってるのかはあとで教えてあげるとして…料理にでもハマってるの?それなら私も是非ご相伴に預かりたいのに。」
「そ、それはその、深い理由があると言いますか…」
深い理由。
そうだね、深い理由だね。
「あぁゴメンゴメン、
「リーダーッ!?」
「なぬっ!?」
「あら!」
「えぇ…?」
「………」
周りの反応は種々様々。
一部反応が芳しくないのが気になりますが。
まだるっこしいのは嫌いなので、構わず一気に畳みかけましょう。
「ただそのお相手っていうのが話題のあの人の事だからね。内緒にしたい気持ちはわかるけど、リーダーとしてここは真実を確かめておかないと。」
「ち、違います!あの人と会ってるのはそんな理由じゃ!…あ。」
疑惑の中心に向かって狙撃弾発射。
無事秘密の壁が結合崩壊を起こしましたね。ぶい。
コウタはマジかと素で驚き。
サクヤさんはあらあらと楽し気に笑い。
ソーマとリッカさんは呆れ半分にこっちを見て。
アリサは誤解ですと真っ赤な顔で否定を続ける。
さぁ、ここまでくれば後は私の独壇場。
もちろん私も本気で逢引きしてるだなんて思ってはいませんが。
二人で会っているという事までは本当に掴んでいるのです。
となれば、秘密の一つや二つ共有していると見るのが普通でしょう。
どうしますアリサ?
白状しなければ逢引き判定が第一部隊の共通認識になりますよ?
「さて、もう一度聞くねアリサ。」
-あの人と会って、一体何をお話していたのかな?-
「…わかりました言いますよ!料理の味見をお願いしていたんですよ!」
たっぷり数分の沈黙を破り。
観念したアリサがそう叫びます。
むぅ、料理の味見ときましたか。
この後に及んで往生際が悪いですね。
仕方ありません。
ほぼクロみたいなものですし、こうなったら実力行使で…
「料理…あぁ、もしかしてあの時の。」
動き出そうとした直前。
思い出したように話すサクヤさんの言葉に動きが止まる。
「そ、そうです!サクヤさん助けてくださいよぉ…」
まるで救いの女神を見たと言わんばかりに泣きつくアリサと。
事情を理解したのか困ったように笑いながらアリサをあやすサクヤさん。
あれ、サクヤさん何かご存じなんです?
何だか話の流れがおかしくありませんか?
これじゃ私がアリサを根も葉もない噂でいじめたみたいじゃないですか。
コウタを見る。
顔ごと視線を横に反らされました。
アリサとサクヤさんを見る。
アリサが真っ赤な顔でキッとこっちを睨んでいます。
ソーマとリッカさんを見る。
「自業自得だ馬鹿。」「いや、これは流石にキミが悪いよ…。」
改めてアリサに向き直る。
いつの間にか近づいてきていたアリサに、ガシっと頭を掴まれました。
「…リーダー。人の秘密をつつくのは楽しかったですか?」
…私、もしかして何か間違えました?
「覚悟は、いいですね?」
…その後しばらく。物凄くアリサにもみくちゃにされました。
他の皆は当然の事、通りがかったツバキさんすら助けてくれませんでしたし。
シクシク、もうお嫁にいけないです…
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「で、この前の食事会の準備をしていた時にサクヤさんに言われたのをきっかけに料理の練習をしていたっていう訳ですか。」
ここは極東支部の調理場。
食堂のように大人数の食事を用意するための物ではなく、個々人の趣味を兼ねた息抜きのために開放されている場所の一つ。
まだ計画段階ではあるものの、何でもバーのように軽食を楽しめるようなフロアに改装する予定もあるらしい。
コンロが備え付けられた一角の調理場で、エプロンを付けて何かを調理する女性が一人。
少し離れたテーブル席にコウタと座り、足をプラプラさせながら手持無沙汰に会話を続けます。
「何だよ紛らわしいなー。というか料理の練習くらい別に隠す事じゃないじゃんか。」
「うるさいですコウタ。そんなだから貴方は女性にモテないんです。」
直球の罵倒にグハッとショックを受けて黙り込むコウタ。
実の所、コウタはこれで意外とモテてるみたいなんですけどね。
男らしいというよりは子供っぽくてカワイイ的な意味で
まぁ言うとトドメの一撃になりそうなので黙っておきましょう。
ちなみに今はアリサが例の"逢引き"に備えていつものように準備を整えている最中。
今回は状況確認も兼ねて私とコウタがご相伴に預かろうとしている形だ。
「しかし料理の味見ですか。確かにあの人、食べ物の誘惑には物凄く弱い人でしたね。」
「私から声をかけた訳じゃありませんよ。気付いたらいつの間にか調理室に入ってきていて、私の作った料理を食べていたんですよ。」
聞くところによると。
ある日、調理完了後に所用で席を外していた所に戻ってくると席に座ってあの人が料理を食べていたらしい。
無断で料理を食べてしまった気恥ずかしさからか、初日はすたこらさっさと逃げ出してしまったらしいけど。
「その一件でどうも味を占めたみたいなんですよね。私がいる時に来ると食べ物にありつけるって。」
以来、料理が終わる頃合に決まって訪れるようになったそうな。
本人的にタダ飯は気まずく思うのか、何かしらの差し入れも持ってきてくれるのでアリサも不満はないらしい。
「ちなみに差し入れの中身は何ですか?」
「大抵は甘味系が多いですね。それとお茶かお酒がセットで付いてきます。」
甘味、即ちお菓子。
これは聞き捨てなりません。
私に…否、私達に黙って。
文字通りにそんな美味しい思いをしていたとは。
「い、いいじゃないですか別に。料理の対価と思えばそうそう変な話なんかじゃ…」
「お菓子だけに
椅子から立ち上がってアリサの方へと向き直る。
このポーズ?荒ぶるアラガミのポーズって言うんですよ。
「え、ちょっリーダーッ!?」
もちろんアラガミなので当然この後はアリサに襲い掛かります。
この、この。悪いのはこの女の子の象徴ですか。
しれっとコウタがこっちを見ていますが気にしません。
喜びなさい、サービスタイムと言うやつです。
サービスしてるのはアリサですが。
私は男心に理解のあるリーダーさんですから。
男性一人に見られたくらいでは気にしませんよ。
「あー、リーダー?楽しんでるところ悪いけど…その、アレ…」
クイクイッと親指で何かを指し示すコウタ。
何ですか、今良い所なんですけ、ど…
「………………………」
指差す先は部屋の入口。
そこに居たのは無言のまま、いつも通りの無表情でこちらを見据える青い瞳。
「………………………」
「………………………」
「………………………」
「………………………」
-ピシャリ-
「あ、ちょっ。」
「待ってください!あの人、今完全にあらぬ誤解をしましたよね!?」
「いや、あらぬ誤解も何も、そういう風にしか見えなかったけどね…」
うるさいですよコウタ。
あの人が来てるなら来てるってもっと早く言ってください。
アリサと一緒に叫びながら廊下に飛び出してみたものの。
あの人の姿は影も形もありません。
「ちょ、どうするんですかリーダー!?あの人、絶対変な誤解をしてますって!」
どうしようか?
…どうしよう。
正直予想外で打つ手なんてそうそう思い付きはしないんですけど。
そうですね。
こういう時はとりあえず。
というわけでコウタ、御覚悟です。
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いやぁ、まさか女の子二人のじゃれ合いを見ながらのディナーとは。
純朴な少年かと思いきや、思いの外リア充なんだなコウタ君は。
だが今日のこれは想定外だ。
今日も今日とて、しれっとアリサのロシア料理にありつく気満々だったんだがな。
何しろ横流ししてもらった配給品を右から左にするだけで美味い手料理に化けるというのだから堪らない。
寧ろやらない方がどうかしているというものだ。
しかし何だな、まさかルーキーまで出張って来ているとは。
何時か嗅ぎつけられると思ってはいたが、存外辿り着くのが早かったな。
まぁ突き止められてしまった物は仕方がない。
皆で食べる食事も悪くないもの。
これからは第一部隊の面々と食事の時間を楽しむとしよう。
「………………………」
…いや待てよ?
もしかして俺だけ部隊違うから場違いになってるって追い出されるオチかこれ?
うわぁショック。
恨むぞルーキー、食べ物の恨みは恐ろしいんだからな。
一番風評被害喰らってるのはコウタというお話。
ルーキーちゃんは探偵の素質ゼロ。
ちなみにアリサの料理は毒ではないのでヴェノム無効は効きません。