無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.怪我しながらも二人を助けだしたという事実。無口さんの人柄が知れ渡りましたね。
A.もう一度状況を見て見ましょう。

赤目、血染めの服、血まみれの手と口。
どう見てもホラーです本当にありがとうございました。

一度襲い掛かられてるのでタツミさんが終始警戒したのもやむ無し。
誤解はちゃんと解いておきましょう。



無口と語れずの神機さん1

…いやぁ、僕としたことが迂闊だったな。

 

感情が無いなら妙な詮索をされる事は無いだろうと。

高を括った矢先にこの事態である。

 

目の前に居るのは手札に加えた筈の神機使い。

検索端末に僕の名前を入力し、0件応答の結果を戸惑う事無くただ見つめている。

 

なるほど、リンドウですら御せなかっただけはある逸材だ。

存在が知られていない自分にすら、裏ではこのように徹底した警戒ぶりを発揮していたとは。

 

一般の神機使いではまずこの人の懐に飛び込むことすら難しいだろう。

何しろ違和感を覚える以前の段階で、こうして全ての素性を探られてしまっているのだから。

 

「…やっぱり、気付かれちゃいましたか。」

 

とはいえ。

幸いにして僕は一般の神機使いとは一線を画した存在。

 

後ろから不意打ちで声をかける。

予想通りと言っていいのか特段驚いた様子もなく、目の前の神機使いは静かにこちらに青い瞳を向けてくる。

 

「改めて、自己紹介をしておきますね。」

 

だが、臆する事は無い。

 

どうせ彼は言葉を喋れない。

他の誰かに、僕の正体を()()()()()()()()()()()()

 

で、あるならば。

現状を取り繕うための嘘は付き放題という訳だ。

 

そうだな。とりあえず…

 

「僕の名前はレン。新しく配備される新型使いとは仮の姿。お察しの通り、ヨハネス・シックザール元支部長…彼直属の神機使いだった人間です。」

 

 

貴方と同じ、特務部隊の人間という事にしておきましょうか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部のエントランスホール。

同輩である神機使い達が忙しそうにしている中、缶コーヒーを飲みながらこちらを見つめて来る神機使いに事情を説明していきます。

 

「…要約しますと。ここ最近の極東支部の様子を探るべく、本部から派遣された人間が僕という訳です。」

 

ニッコリと笑顔を浮かべたまま。

何一つ恥じる事は無いと言った表情で彼に言葉を紡ぎます。

 

まぁ八割方は嘘なんですけどね。

嘘をついたところで僕の心は痛まないのでどうってことはありませんが。

 

どうせ誰にも話せないというのなら。

その場しのぎに適当な事を言っても実害なんて無いでしょうし。

 

それに僕は神機から生み出された精神体。

この人とリーダーさん以外には声どころか姿すら見えませんので。

 

しかし…いざ正面に座ってみると。

この人威圧感が尋常じゃないですね。

 

喋らないという点では僕達神機もあまり変わりはありませんが。

元々表情を持っていない僕達にとっては、"無表情"というのも立派な感情表現の一つですからね。

 

無表情に詰め込んだ無感情、そんなこの上ない強烈な代物が籠られた目で品定めされる。

生身の人間にはいささか堪えがたいというのも確かに納得だ。

 

そんな事を考えてる内に彼が缶コーヒーを飲み終える。

はてさて、僕が語った話に対して、一体彼はどんな反応を返すのだろうか。

 

そんな僕の疑問を他所に。

立ち上がって空き缶をゴミ箱に叩き込み、彼は何食わぬ様子でヒバリさんの元へと向かいます。

 

あ、あれ?何も無いんですか?

いや、そもそも質問するための言葉を喋る事が出来ないというのは分かってますけど。

 

もうちょっと、もうちょっとこう。

躊躇いとか戸惑いとか、何かしらの反応をしてくれてもいいような気はするんですけど。

 

…本当に、何もないんですかそうですか。

この人、本当に人間なのか怪しく思えてきましたね。

 

僕が言うのも何ですが。貴方、今の所飲み食いしてる以外に人間らしさゼロですよ。

何ならそこらにいるアラガミの方がまだ生き物らしい反応してますからね。

 

…まぁいいでしょう。

本当に非人間みたいな存在なら、あれほど色濃くリンドウの記憶に残ってなんかいないでしょうし。

 

 

もう少し。もう少しだけ。

僕の目的を達成するためにも、この人に付き合ってみましょうか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部のエントランスホール。

本日のミッションも無事終わり、新しく加わった部下の子と軽食を取って親睦を深めていく。

 

まぁ実際は新人でも何でもなく。

フェンリル本部直属の神機使いって話らしいが。

 

それが本当ならこの見た目で俺より古参という可能性も出てくるのだが。

性別がわかっていない以上、これ以上踏み込むのは止めておこう。

 

仮に女性だとしたならば、年齢を問うなど紳士の風上にも置けない所業。

俺は常日頃から英国人に負けず劣らずの紳士たれと志しているからな。

 

まぁ生まれも育ちも英国とは欠片も関係ないが。

目の色的にギリギリそちらの系譜と言えなくもないが、興味も無いし別にいいだろう。

 

さて、色々レン君が語ってくれたが。

俺から言う事は特に無いな。

 

本部から派遣された人間だと言われても。

一神機使いにとっては「そうですか」としか言いようがない。

 

確かに少し前までの極東支部はアーク計画やら何やらで色々ゴタゴタが起きていたが。

わざわざそれを報告する義理も動機も俺には無い。

 

という訳でこの話はこれで終わり。

そろそろお仕事に戻ろうか。

 

………

 

「………………………」

 

改めて受注書類を確認して気付いたんだが。

 

おかしい、俺の名前しか受注書類に乗ってない。

二人ペアでミッションを受注したのに。

 

チラリとレンの方へ視線を向ける。

 

既に俺の思考を察しているのか。

視線の先に居るレンは気まずそうに苦笑したままこちらに顔を向けている。

 

あーわかった。

この子、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「すみません、迷惑をかけてしまって…何とかなりますか?」

 

首をかしげながらおずおずと質問してくるレン君。

うむ可愛い。女の子かどうかはわからんが。

 

まぁ可愛いは正義というしな。

俺は自分を信じる事の出来る古参兵、今この時だけは深く考えるのは止めておこう。

 

となれば返せる答えはただ一つ。

 

わかったわかった。

何とかする、何とかするよ。

 

部下の体裁を整えるのも隊長さんの役目だからな。

手を軽く振って問題無い旨の意志を無言で伝える。

 

 

何度もこれで誤魔化せはしないので、その内対策は考えるが。

とりあえず今回は俺一人でミッションに出張った事にしておこうか。

 




問題.無口な部隊長がNORNでレンの事を調べています。何故でしょう?
解答.初めての部下なので話のネタに出来そうな情報を調べていた。

コミュ力は部隊長に求められる基本スキル。
そのための情報収集に余念が無いのが無口さんの良い所。

一方、どうせ他人には喋られないからと適当な事を吹き込み始めたレン君ちゃん。
実際無口さんは語ろうとしないのでどうという問題はありません。
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