無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.声を掛けないなんてタツミらしくないんじゃ?
A1.以前斬られかけたのが焼き付いていたため。

Q2.斬りかかった事謝らないの?
A2.そもそもやらかした事に気付いてない。

意識があったのはリンクエイドしてもらった辺りから。
医務室に運んでもらった事は憶えてます。


無口と語れずの神機さん2

人型になり。

今日まで知り得た情報を纏めてみる。

 

一人は第一部隊のリーダー。

リンドウ以外で僕に最初に触れた人間であり、彼女ならばと僕が行動を起こすに至った人物。

 

実力、人望共に申し分なし。

最近まで少し体調を崩していたようですが。

 

人間って不思議な生き物だな。

あんな美味しいものを食べてるのに不調になるなんて。

 

まぁそれでも能力に減衰は見られなかったので僕の計画に支障は無いようですが。

別に先着順という訳ではありませんけど、概ね当初の予定通り彼女を主軸に事を進めて問題は無いかと。

 

もう一人は遊撃部隊の隊長を務める古参兵。

隊長と言っても彼以外に隊員はおらず、実質他部隊の助っ人要員のような立ち位置になっていますが。

 

経験の差もあってか、単純な実力で言えば彼女以上。

無言無表情故にコミュニケーション面ははっきり言って絶望的ですが。

 

ただ蓋を開けてみれば意外にもそれ以外の面では特に問題はない様子。

彼自身もオールマイティに任務をこなせるというのもあってか、受注端末はひっきりなしに他部隊からの作戦参加要請が届いているようで。

 

「応援要請ですか?僕の事は気にしなくて大丈夫ですよ。」

 

今日も今日とて鳴動する受注端末。

作業する手を止めてこちらを確認する彼に対し、僕はいつものように言葉で答える。

 

「一応僕も特務部隊ですからね。やるべき仕事は山のようにありますから。」

 

彼の気がかりにならないよう、僕は僕で抱えている仕事がある事を告げる。

もっとも、実際は仕事なんて一つもありはしないけど。

 

「………………………」

 

答えこそは返らないものの。

無表情に填め込まれた青い瞳が、何も言わずに真っすぐこちらを見据えてくる。

 

うーん、この視線はいつまで経っても慣れないな。

リーダーさんに見られている時はこれほど気にするようなものでは無かったのに。

 

喜怒哀楽が読めないってこんなに居心地が悪いものだったんだな。

まぁ実害は出ていないので、気にしないようするしかないんですけどね。

 

 

…さて、リーダーさんの人望は疑うべくもありませんが。

貴方の方はどうなんでしょうね?

 

本当に無口な人柄までも受け入れられているのか。

それとも単に、捨てるに惜しい実力だからこそ呼ばれているだけなのか。

 

僕の計画を遂行するにあたっては非常に大事な情報。

人から爪弾きにされているような人物に、リンドウの後始末は頼めませんからね。

 

折よく今日の要請相手は先日一悶着あった人物。

そしてあの人の人柄については周りも僕も認める所。

 

 

一体あの人は彼に、どんな接し方をするんでしょうね?

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは外部居住区外れの外周部。

ミッション開始からしばらく経ち、休憩しないかと同伴していたタツミに誘われてホイホイついてきた場所である。

 

今日のミッションは哨戒ミッション。

何でも防壁外部にアラガミの反応が見受けられたとの事で、索敵強襲のための戦闘要員を含めて見回りが行われる事に相成った。

 

が、肝心のミッション当日。

例のクソトカゲの目撃情報が寄せられたとの事で参加予定だった第一部隊の面々がそちらに向かってしまい。

急遽内勤で書類仕事をしていた俺が駆り出されるに至ったという事だ。

 

あーぁ、せっかく今日は適当に茶でも飲みながら仕事出来ると思ってたのに。

 

だが要請してきたのがタツミとあっては仕方がない。

この前のアーク計画の一件の時、大分面倒を掛けてしまったからな。

 

確かに数で押されたとはいえ。

たかだか中型種相手にとんだ醜態を晒してしまった。

 

恥ずかしいので忘れろパンチで記憶を飛ばしてやりたいところだが。

流石に助けてもらった相手にそんな真似は出来ないからな。

 

それに今となってはソーマに次ぐ長い付き合いの同僚からの頼みだ。

出来る限り、困り事には手を貸してやってもバチは当たらないだろう。

 

ただ最近は何だかんだで一緒に出撃する機会が無かったんだがな。

今日は珍しく御指名が入ったので二つ返事で引き受けたところである。

 

あくまで欠員補充の要請だったのでレンは置いてきてしまったが。

 

まぁ新人ならともかく、あれでそれなりの古参みたいなようだし。

置いてきたところで心配はないだろう。

 

さて。

ここらで本題に入ろう。

 

万全を期す、と言えば聞こえはいいが。

所詮相手はヴァジュラ級の準大型一匹。はっきり言ってタツミ一人で十分倒しきれる相手である。

 

それが一人二人の欠員が出たくらいで応援要請?

今現在襲撃されているというのならともかく、たかだか反応が現れたくらいで日付も改めずにミッション強行?

 

うーん怪しい。目撃情報があるならまだわかるが。

これでもそこそこの古参兵、胡散臭い雰囲気には敏感なのだ。

 

 

とはいえ、胡散臭くはあるがきな臭い感じはしない。

組織単位で何かしているという可能性も無きにしも非ずだが、それを知る術なんて俺には無いしな。

 

なので現実的なレベルで考えてみると。

多分目的は討伐以外の何か。

 

そしてわざわざ、こんな()()()()()()()()()()()()()()神機使いが一人登場。

出来ればお相手は女性が良かったんだが。

 

ここでヒバリの名前を出さないのが極東支部のお約束。

昔から"人の恋路を邪魔する奴は~"と言うからな。

 

 

さて、タツミ君は何をお話してくれるのかな?

借りも返したいと思っていた所だし、お願い事なら大抵の事は聞いてやるよ。

 

ただ万に一つも無いとは思うが。

告白だけは勘弁な。

 

 

ハッハッハ、イッツ・ア・極東ジョーク。

このくらいなら馬には蹴られないだろう。多分。

 

………

 

ふむふむ、この前直ぐに手助けしてやれなくて悪かった?

何の事…と思ったが、リッカとルーキーを救護室に運んだあの時の事か。

 

そういえば神機を向けられる程に滅茶苦茶警戒されてたな。

結局あれは何であそこまでピリピリしていたんだ?

 

俺がルーキー達を襲ったと思った?

おいおい、人聞きの悪い話は止めてくれ。

 

いくら何でも意識の無い女性を襲う訳ないだろう。

というか俺、まさか普段からそんな目で見られて…

 

え、俺前科あるの?

ちょっと待ってどういう事?

 

その話、是非とも詳しく聞きたいんだが。

 

まぁ大人しく続きを聞いてみるとするか。

催促するまでもなく話してくれそうだし。

 

………

 

…おおぅ、あの時まさかそんな事があったとは。

救護室に運ばれただけじゃなかったのか。

 

聞きたくなかった…いや、むしろ逆にこの場で確認出来たのは幸運というべきか?

 

うん、これはやってしまったな。

よりにもよって仲間に神機で斬りかかったか。

 

恥の上塗りとはまさにこの事。

そりゃあ神機も向けられるし、警戒もされるに決まってる。

 

両親喰ってくれた畜生以下だな。

人とアラガミの区別も付いていなかったとか、恥ずかしすぎてまともに両親の顔を見れやしない。

 

まぁ視界に入れる両親の顔はもう無いんだけどな。

いの一番にアラガミの腹の中に入った場所だし。

 

はぁ、自己嫌悪。

思わず顔も覆ってしまうな。

 

穴の代わりと言っては何だが。

哨戒目的のアラガミが出たら、両親よろしく腹の中にでも入ろうか。

 

………

 

時間にして数分くらいか。

不意に首筋に冷たい何かを押し当てられたところで現実に戻ってくる。

 

「あー、悪かった。別にあの時の事を責めようと言うつもりじゃなかったんだが…」

 

押し当てられたのは缶飲料。

流石に常温程度にはなっていたものの、肌で知覚する分にはまだまだひんやりとした温度を保っている。

 

「…正直言うとな、怖かったんだ。あの時、俺はお前がリッカやリーダーに手をかけたのだと思い、同時に次は俺の番だと思ってしまった。」

 

何時ぞや自身を殺しかけた神機使い。

叫ぶ程に投げかけた声も届かなかった、あの時と赤く染まった青い瞳を向けられて。

 

「お前が突き出した右手を見て、二人に付いた血がお前の物だという事は理解出来た。だけど結局俺は最後までお前に恐怖したまま、手を差し伸べてやる事が出来なかった。」

 

缶のプルタブを開け、中身を呷りながらタツミは続ける。

 

「差し伸べた瞬間、あの時のように襲われるんじゃないかって。救護室に運ばれた二人の安否を聞くまで、俺はついぞお前を信じることが出来なかったんだ。」

 

情けないよなと自嘲気味にタツミは呟く。

情けない要素などどこにも見当たらないと思うけどな。

 

斬られかけたのだろう?殺されかけたのだろう?

だからこそ神機を向けてまで警戒したし、何なら刃を向けるのも辞さないとしたのだろう?

 

自分だけでなく、リッカやルーキーを守るために。

ならばそれは恥でも、ましてや情けない事でも断じてない。

 

俺を見ろよ。

不覚を取った挙句に仲間に斬りかかった無能だぞ?

役立たずにも程があるというものだ。

 

口にしたら自分の言葉で泣いてしまうかもしれないので言わないが。

 

ただそれはそれとして。

タツミの方としては一言言わねば気が済まないと言わんばかりに思い詰めていたようで。

 

「ずっと気がかりだったんだ。結局今の今まで先延ばしになってしまったが…」

 

-悪かった。あの時、お前を信じてやる事が出来なくて。-

 

「次こそお前を信じて見せる。だからお前も、次は俺を信じて見ていてくれ。…これでも一応、極東でもそこそこのベテランだからな。」

「………………………」

「まぁ、お前より少しだけ経歴は短いけどな。」

 

爽やかな笑顔を向けられながら、そう宣言された。

 

やだ、マジ惚れる。

男前にも程があるだろ。

 

確かに話を聞くに俺の状態も普通じゃなかったとはいえ。

自分を殺しかけた相手にここまでスパッと言い切って見せるか?

 

何というメンタルの強さ。

そうか、これがイケメンと言う奴か。

 

普段からこれで迫れば普通にヒバリも落ちるんじゃ…

いや、むしろ逆でこれでも落とせないくらい手強いというべきか。

 

…まぁその話は置いといて。

ここは俺も一度しっかり言葉にしておくべきだな。

 

そこまでの事をしておいて。

ここまでの事を言わせておいて。

 

俺だけ詫びを入れないというのは筋が通らんからな。

色々メンタルが弱っていたのは事実だが、仲間に刃を向けた事を流していい理由には全くならない。

 

正直言えば、いい年した大人が面と向かって謝るのは少々気恥ずかしいが。

そこはタツミが先に謝ってくれたのだから、年下としてそれに甘んじて乗っかる事にしよう。

 

先程のタツミの言葉に強く頷き。

続けて言葉を述べようと口を開--

 

-ビーッビーッビーッ!-

 

突如鳴り響くアラーム音。

 

すぐさまタツミが通信に応答する。

笑顔こそは崩さないものの、先程の爽やかな雰囲気とは打って変わって真面目な空気である。

 

うん、カッコいい。

俺が女だったら惚れてるかもしれんな。

 

-もしもしヒバリちゃん?あぁ、こっちでもアラームは確認した。出現位置は…りょーかい、早速向かう。で、話は変わるけど終わったら食事にでも…あっ。-

 

前言撤回、速攻でしょぼくれたなこのイケメン。

というかどうせ口説くならこんな通信越しじゃなく、面と向かってさっきの雰囲気で口説けばいいのに。

 

まぁ人様の恋路に首を突っ込むほど俺は野暮じゃないので言わないが。

 

「…しゃあない、切り替えてとっとと片付けるか!」

 

ハッハッハ、本当に鋼のメンタルだなタツミ君は。

あまり見習いたいやり取りでは無かったが、めげない男というのは嫌いじゃないぞ。

 

 

 

 

 

…怖かった、か。

それでもなお、信じてくれると。

 

考えてみれば。

 

"期待している"とは腐る程言われたが。

"信じる"とは初めて言われたかもな。

 

 

 

 

 

うん。

 

 

 

 

 

良いものだな。

仲間とは。

 

 

 

 

 

「…そう言えばお前、さっき何か言おうとしてなかったか?」

 

…知らん。

 

「…まぁ気のせいだよな!お前が喋れないってのは俺も知ってるし!」

 

そうそう、気のせいだよ気のせい。

こんな照れくさい事、いい大人が何度も口に出来るか恥ずかしい。

 

言葉にしておくべきとは確かに言ったが。

伝わるまで言葉にするとは言っていない。

 

俺は若いからな。

大人と違って子供のズルさも兼ね備えているのだ。

 

 

それに。

いつかまた、ちゃんと伝える機会もあるだろうさ。

 

……………………………………………………………………………………

 

「…いい顔ですね。何か吹っ切れましたか?出撃前とは見違えるようですよ。」

 

ここは極東支部のエントランスホール。

哨戒改め討伐ミッションも無事終わり、神機を返却してきた所で声を掛けられる。

 

「と言っても見た目じゃなくて雰囲気的なものの事ですけどね。表情は何時も通りの鉄仮面ですし。」

 

失礼だな君、言うに事欠いて鉄仮面とは。

俺はリッカも太鼓判を押すほど表情に出やすい人間なんだぞ。

 

というか何の用だ?

仕事があるとか言ってたから放置してたけど。

 

まさか終わってないから手伝えとか言うんじゃ…

 

若干の不安が頭によぎったのも束の間。

レンが手にする袋に気付いて視線を向ける。

 

「思えば僕達、配属されてから仕事以外の付き合いってありませんでしたよね。」

 

にっこりと笑顔を浮かべながら袋を掲げた後。

コトコトと手際良く缶を並べて席に着席する。

 

「なのでこの辺りで親睦の一つも深めておこうかと。こういうの、嫌いじゃないんですよね?」

 

並べられたお酒に、肴代わりになる味付けの食料品。

 

どこからどう見ても健全な飲み会のお誘いである。

うん、これは断るというのは無作法というものだ。

 

ただ気になるとすれば。

二人で飲み食いするには少し…いや、大分量が多いような気がする。

 

特に酒が多い。正直俺は一缶あれば十分なんだが。

もしかしなくても他に誰か来るのだろうか。

 

辺りを見回してみるもののそれらしき人影は無し。

仕方が無いので促されるままに席に着き、手頃な缶の封を切る。

 

「それじゃ僭越ながら…今日も一日お疲れさまでした。」

 

カンパーイ、と二人で缶を軽く合わせ、グビリと一息に口にして--

 

 

 

 

 

「………………………………………………」

 

 

 

 

 

レンの方に視線を向ける。

クピクピと美味しそうに缶を傾け、美味しい美味しいと食事に手を付けている。

 

ペースの方も超早い。

見てる傍からあっという間に一缶空け、それに合わせて新しい食べ物の封も切る。

 

なるほど、二人しかいないのに大量に用意された理由が理解出来た。

君、自分が飲み食いする基準で選んだな?

 

たしかタツミも神機使いは食べるのが仕事とか言っていた気がするが。

この子の食べっぷりはアラガミと表現する方が適切な気がする。

 

本当なら俺もどんどん飲み食いしたいところなんだが。

 

うっかり()()()()()()()()()()()()()からな。

だって普通、缶渡されたらビールか何かだと思うじゃん。

 

というかよく見たら火が付きかねん度数が書いてあるんだが。

ただでさえ酒類は貴重なのに、こんなの一体何処から持って来た。

 

まぁ元とは言え支部長直轄の特務兵。

一般の神機使いよりも良い物を貯め込んでいるんだろうなきっと。

 

是非ともお近づきになっておきたいと思った矢先。

ぐらりと急激に視界が揺らぎ、身体が傾く。

 

一気飲みは身体に悪いものな。

わかりきっていた事態なので特に慌てたりはしない。

 

「あ、あれ?どうしました?」

 

 

いや、君は「どうしました?」なんて言えないだろ。

親睦を深めるとか言っておいて、開幕沈めてくる奴があるか。

 

-まいったなぁ。人間も飲める程度のアルコールを厳選したつもりだったんだけど…-

 

多分俺の知ってる人間とは違う種族だなそれ。

 

 

とりあえず。

今後この子の差し出す酒には気を付けよう。

 




INFORMATION:無口さんが戦闘不能になりました。

ミッションフォールトなので友好度はプラマイゼロ。
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