無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.何で部下付かないの?
A1.意思伝達能力が壊滅したままだから。

Q2.やっぱり無口なのがいけない?
A2.本当に悪いのは無口じゃなくて無自覚な事。

ついでに感覚もちょっと他人とずれている。


無口と新しい新型使い2

俺の部隊は人がいない。

 

すぐに辞めてしまうという訳ではなく。

そもそも配備されてこない。

 

昔はそうではなかった。

俺がまだ一般隊員だった頃は普通に同じ部隊に同僚居たし。

 

隊長になってから減ったというなら話はわかる。

自覚の有る無しに関わらず、配属されないという結果から何かしらの問題があるのだろうと推測できるからな。

 

最初から俺しか配属されていないってどういう事だよ。

今にして思えば就任時に俺しかいなかった時点で声を上げるべきだったが。

 

でもあのタイミングで声を上げなくても別におかしくないだろ。

普通に考えたら単に要員集めに手間取ってるだけだと思うじゃないか。

 

かれこれ数年。

他の部隊にはそれなりに人数増減があるものの、俺の部隊は増員の"ぞ"の字すら聞こえてこない。

 

ひょっとして俺が知らないだけで。

隊員は自分たちで勧誘しなければならないのか?

 

でも俺の時は特に勧誘されたりとかしてないしな。

それにもし本当にそうだとしたら流石に誰か教えてくれるだろうし。

 

………

 

…と、言った具合に。

ぼんやりとだが悩んでいた時期が俺にもあったが。

 

「…どうしました?僕の顔に何かついてます?」

 

別に何も付いていない。

何で俺の部屋にいるのかなと思っただけである。

 

まぁ異性に押しかけられている訳では無いので深くは気にしないでおこう。

実際の所は未だに性別不明だが。

 

もっとも、個人的にはレディに押しかけて貰いた…

 

いや、やっぱりいいや。

そう言うのはサクヤ達の一件でもう十分だ。

 

あの時にアリサに貸したシャツ、結局伸びて駄目になったし。

おまけにシャツを処分した時にしたって、全員伸びた原因を察してるから気まずいったらありゃしない。

 

俺が同性だったならまだしも。

男があの空気に晒されるってアラガミとやり合ってる時より堪えたぞ。

 

眼福だったろと言われれば否定はしないが。

実際の所はそれよりも目のやり場に困ったという方が印象深いので、正直もうこりごりである。

 

まぁこの話を深掘りするのは止めておこう。

レディのプライバシーは墓の中まで持っていくのが紳士としての嗜みだからな。

 

とにもかくにも。

何時まで経ってもお独り様のままというのがちょっとした悩みの種だったのだが。

 

そんな悩みも今となってはもはや過去形。

待望、念願の隊員配備。おまけに新型神機使いで特務部隊所属のベテランと来ている。

 

ちょっとセンスにツッコミどころがあるが気にしない。

元々神機使いなんて変人の集まりみたいなとこあるしな。

 

そんな訳でレンが配備されてしばらく経ち。

この前一緒のミッションだった新人二人もそろそろ配備先が決まるとの事。

 

ふむ、ひょっとして。

ひょっとしてだが。

 

俺の部隊は新型神機の使い手だけで再編成されるのではないのだろうか?

 

新人二人はどちらも新型神機使い。

ルーキーやアリサに引き続き、ただでさえ貴重な新型を極東支部だけで五人も独占である。

 

新型神機にしたって昨日今日で急に話が出て開発された訳ではない。

本格運用が始まる前に配備先の部隊だけ整えていたとしても、それは別段おかしな話でもない。

 

であれば、今までずっと一人部隊だった事も。

何かしらの理由で編成が遅れていただけと考えれば説明できる。

 

おまけに今の俺は使おうと思えば新型神機使えるし。

いやぁ困りますよ榊博士、それならそうと最初から言ってくださいよ。

ずっとモルモットにされたと勘違いしてたじゃないですか。

 

ふっふっふ。

ふっはっはっはっはっは。

 

古参古参と言ってた俺が。

いつの間にか最新神機の使い手を率いる部隊長様か。

 

しがない一般家庭の一人息子にしては上出来も良い所。

これなら両親もさぞ自慢の息子と鼻が高い事だろう。

 

高くする鼻はとっくの昔に無いけど。

 

まぁ、とは言っても。

捕らぬ狸の皮算用という言葉もある。

 

辞令も出てない内に勝利を確信するのも少々焦り過ぎな話か。

 

一人そんな事を思っていた所。

不意に受注用端末が鳴動してミッションが発注されたことを告げて来る。

 

連絡主はフェデリコ・カルーゾ。

今ちょうど噂していた新人神機使いの一人である。

 

ふむふむ、グボログボロの討伐を手伝ってほしい?

いいぞ、未来の部隊長さんが何でも手伝ってやろう。

 

俺はレディに優しくを信条としているが。

だからと言って別に男を差別したりはしない。

 

サクッと活け造りにしてやるよ。

はっはっは、新人からの眩しい羨望の眼差しが目に浮かぶようだな。

 

…あ、いや。

 

ルーキーの時はそれやったら殴られたんだったか。

アリサの時は逆に放置し過ぎて後輩いびりだとしばらく付き纏われたんだったか。

 

うーむ、最近の若者は難しいな。

俺も普通に若いけど。

 

 

とりあえず少しでも親しみを持ってもらえるよう。

同じ見た目の神機に換装しておくか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは通称"鉄塔の森"。

気候と化学反応による濃霧が不定期に発生するため、新人がこのエリアのミッションに赴く際は中堅以上の神機使いが付いていくことになっている。

 

今日のターゲットは通常種のグボログボロ。

 

ルーキー達の時とは違って堕天種付きといったおまけ要素は無く。

一匹だけならコンゴウ同様、新人の訓練にはちょうど良い。

 

極東以外でこんなこと言うと頭おかしいのかという目で見られるらしいけど。

俺達が主に活動する場所は極東なので気にしない。

 

ターゲットがやってくるまでの束の間。

新人君が俺の神機を見ながら話を振ってきた。

 

何でも俺が新型神機を使える事を知らなかった様子。

別に隠している訳ではないのだが。

 

俺は正直旧型神機の方が使いやすいからな。

わざわざ使いづらい方を選ぶ道理が無い。

 

極東では確か意図的にそういう選択をする事を"縛りプレイ"と言うのだったか。

そういう言葉が存在している辺り、この地域は昔からそういう変態…もとい、実力者がうようよいる地域だったんだろうな。

 

話を戻そう。

 

そんな使いづらい神機をわざわざ選んできた理由だが。

端的に言えば親しみを持ってもらえるかなと下心を持ったためである。

 

同僚とはいえただでさえ古参と新人。

加えて神機まで新旧の差異があるとあっては、気兼ねして寄り合える親愛度にも上限が設けられてしまうというもの。

 

そんな訳で。

せめて少しでも仲間意識を持ってもらおうと同じ形式の神機に揃えたのが今回の経緯である。

 

リンドウと同じチェーンソータイプでちょっともやっとするが気にしない。

リンドウみたいに将来は優秀な神機使いになるのかもしれないしな。

 

今はまだ言わないけど。

そうだな、ウロヴォロスを単独撃破してきたら伝えてやるよ。

 

とりあえずなんて返そうかなと考えていた矢先。

簡易アラートが鳴り響いてターゲットが到来した事を告げていく。

 

おっと、お客さんが来てしまったか。

仕方ない、続きは営業が終わってからしてやるよ。

 

一昔前によく見たフラグのようだが気にしない。

だって今回は()()()()()()()()んだからな。

 

………

 

ターゲット撃破。

目に見えた大きな被弾は無し。

 

うん、良いんじゃないか?

まだそこまで場数を踏んでいない事を考えれば十分過ぎる戦果である。

 

多少神機の切り替えにもたついていたようだが、俺と同じくらいだから問題無し。

むしろルーキー達の切り替えが早すぎるだけなんじゃないだろうか。

 

あの二人、「何で出来ないんですか。」とか「こうやるんですよ、こう。」とか普通に言うしな。

 

あの時ほど感覚じゃなくて理論で説明しろと言いたかった時は無い。

まぁどっちもゴッドイーターなり立てのひよこちゃんだから仕方ないか。

 

俺相手だからそういう言い方してたとかではないと信じたい。

 

まぁその話は置いておこう。

 

とりあえず近接戦闘においては十分及第点である。

経験を積めばリンドウやルーキー達にも勝るとも劣らなくなると思う。

 

うむ、配属隊員が優秀な事を再確認出来て何より。

まだ正式に決まった訳ではないが、まぁ概ね勝ち確信で進めても問題はないだろう。

 

-ビーッビーッビーッ!-

 

明るい未来を予想しながらコア回収を済ませていると。

不意に簡易アラートが警報音を鳴り響かせる。

 

同時にヒバリからのアナウンスがイヤホンに響き渡る。

どうやら想定していなかった二匹目が近辺のエリアより乱入してくるとの事。

 

新人君の方を見る。

流石に経験不足な事もあり、目に見えて動揺しながら伺うようにこちらに意見を求めて来る。

 

焦るな焦るな新人君。

まだ人類が敗北した訳ではない。

 

想定外とはいえ所詮はグボロ。

刺身が二人前に増えるだけで。

 

あ、でも新人にとってはキツイのか。

大きな被弾は無いと言っても、慣れない生死を賭けた戦いで気力の面では消耗してるだろうし。

 

まぁそれならそれで仕方ない。

こういう不測の事態に備えて経験豊富な神機使いが付いてきてるんだからな。

 

おまけにコイツは元より討伐対象外。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

出撃前にも言ったように。

俺は常日頃からレディに優しい紳士であるが。

 

だからと言って男だからどうでもいいなんて差別的な思想は持っていない。

「男なら気合を見せろ」なんて前時代的な事は間違っても言わないのだ。

 

 

そういう訳でフェデリコ君。

コイツは優しい次期部隊長様が、サクッと活け造りにしてご馳走してあげよう。

 

なに、代金は不要だ。

後輩に美味しい思いをさせてあげるのも、先輩としての立派な務めだからな。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部のエントランスホール。

ミッションを終えた俺達と入れ替わるように、同僚の神機使い達がせわしなく出撃ゲートへ向かっていく。

 

うん、やはりバスターブレードの方が速く刺身を作れるな。

 

属性的にはロングブレードの方が有効な部位の筈だが。

手慣れている分あちらの方がサクッと切り分けられるような気がする。

 

ついでにいうならやっぱり新型神機は少し重い。

今回も結局銃形態使わなかったし、刀身や銃身のように切替パーツも選択式にした方がいいんじゃないかこれ?

 

まぁ俺は技術屋じゃないので口出ししないが。

 

「先輩出来ましたよ。今日は本当にありがとうございました。」

 

そう言って湯気立つカップを差し出すフェデリコ君。

ほぅ、これが噂のエスプレッソか。

 

本当にちょびっとしか入れないんだな。

本来は専用の小さいカップに入れるらしいが、今回は普通サイズのカップに入れているので余計に量の少なさが目立っている。

 

帰投してすぐ後。

今日同行してもらったお礼がしたいとのいう事で、目下一緒のカフェタイムと洒落込んでいる。

 

香りを楽しみ、次いで味わう。

うん美味い。まさに苦み走った大人の味である。

 

だが俺は知っている。

これにはさらに次の段階があるという事を。

 

おもむろに取り出したるはシュガーポッドとスプーン。

以前カノンから分けて貰った、ジャイアントコーンから生成された砂糖である。

 

流石に純白の白糖とまではいかないが。

今の時代まごう事無き砂糖というだけでもその価値は計り知れない。

わざわざ分けてくれたカノンには本当に頭の上がらない話である。

 

そんな稀少な品を惜しみなくエスプレッソにぶち込みぶち込み。

溶け切らない程の糖分でドロドロになったそれを一息に飲み込み、口内と喉全体で堪能する。

 

おぉ、これは凄い。

目の覚めるような突き抜ける苦みと舌に絡みつくタールのような甘味。

 

疲労も眠気もこれ一つで嘘のように消え去っていくようだ。

うむ、これを独り占めするというのは無作法というもの。

 

長い付き合いになるかは知らんが。

是非とも味わえる時に新人君にも味わってもらいたい。

 

まだ中身に余裕のあるシュガーポッドを使っていないスプーンと共に差し出す。

初めは戸惑いを見せていたものの、こちらの意図を察した所で礼と共に何度も砂糖をエスプレッソに投入していく。

 

「うん、美味しいです。やっぱりエスプレッソはこれが一番ですよね。」

 

良い笑顔だ。

俺が女性だったらクラっと来ていたかもしれんな。

 

………

 

そこからしばらく。

無言のまま、男二人で静かなカフェタイムを満喫する。

 

…していたのだが。

甘い匂いを嗅ぎつけたのかルーキーがやってきて。

俺達が飲んでいるエスプレッソを見た瞬間、顔を引きつらせてこう告げた。

 

「だ、大丈夫ですか?そんなどす黒いネバネバした物、この人に合わせて無理に飲まなくても良いんですよ?」

 

「何しろこの人…」

 

-味覚、壊れてますから。-

 

「付き合って変な物食べてるとその内お腹壊しちゃいますよ?」

 

 

…ハッハッハッハッハ。

ナイスジョーク、ウケたぜルーキー。

 

本人を目の前にしてこの言いっぷり。

第一部隊のリーダー様は度胸も冗談のセンスも一流のようだ。

 

まるで俺が味覚音痴みたいに言いやがって。

いくら俺が年上で先輩でも、謂れのない誹謗中傷は傷付くんだからな。

 

とりあえす、お前はもう少しコミュニケーションの仕方を磨いてこい。

出来るまで当分お菓子奢ってやらないからな。

 

 

まぁ言ったら脅されて奢らされそうだから言わないけど。




自覚が無いので何時まで経っても変わらないし、「別に喋れない訳じゃないんだが」とか言っちゃう人。
そして「まぁ一々言う事じゃないか」と、何も言わない所までが一セット。
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