無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.ただの悪戯。
Q2.色んな人にやってる?
A2.人を選んでやってる。
アリサやコウタにはやる。
ソーマやルーキーちゃんには殴られそうなのでやりません。
よくよく話を聞いてみれば。
何でも俺の戦闘スタイルを観察して学びたいとの事らしい。
「私、あまり足の速さに自信が無いんです。だからどうしても攻撃できるチャンスが限られてしまって…」
確かに足遅いなとは思ったが。
それはそのハンマーが原因なのでは?
ちらりと彼女の神機に視線を向ける。
途端俺の言いたい事を察してか、慌てた様子で俺が言葉を紡ぐのをアネットが遮る。
「ま、待ってください!確かにハンマーが重いというのもあるのかもしれませんが…これを手放すなんて出来ません!」
そう言ってぬいぐるみでも抱きしめるようにハンマーを抱え込んでしまった。
ここまで強く拒絶されては流石に指摘するのに二の足を踏んでしまう。
しかし、ふむ。
神機を変えたくないというのは分かったが。
それがどうして俺のスタイルを学びたいというのに繋がるんだ?
いくら中型種相手とは言え。
シユウを正面から吹っ飛ばせる奴なんてソーマくらいしか俺は知らない。
だからアネットの場合、難しい事考えずに突っ込んで殴り飛ばした方が早い気がする。
先程の戦いぶりを見る限りパワーは十分あるみたいだし。
正面から叩き潰すスタイルの方が合ってると思うな。
猪突猛進というと聞こえは悪いが、出来るならそれが一番単純かつ効率的な戦法なのだ。
…と、俺はそう思うんだが。
どうやらアネットの中ではそうではないらしい。
「先輩、アラガミと戦う時はいつも上手に背後に周り込んでいるじゃないですか。私もあんな立ち回りが出来るようになれば、少しは足の遅さもカバーできるのかなって。」
うーん困った。
何て言ったらいいものか。
まず誤解しているようだが。
あれは立ち回りというより不意打ちの一環でそう動いているだけなんだよ。
自分でこう言うのも悔しいが。
俺はソーマに比べると一撃の威力では劣ってしまう。
本気の時は強化薬でも何でも使ってスペックを引き上げるが。
常日頃からそんなもの使っていると身体にガタが来てしまう。
が、これでも一応は古参兵。
手強い相手の討伐は間隔を開けて…なんて都合の良い事を言う訳にもいかない。
太刀打ち出来ないとまでは言わないが。
正面からやり合うには些か分の悪い相手。
であればどうするか?
答えは簡単で正面からやり合わなければ良いだけである。
死角に潜り込んで叩き切るというのもその一環。
それらは最終的に
正面からやり合えるというのなら、そんな回りくどい事をする必要は無い。
事実ソーマは俺みたいな戦い方してないし。
君、正面からシユウ吹っ飛ばしただろ?
あれが出来るのなら大型種相手だって普通に通じる。
寧ろ俺の立ち回りを覚えてしまうとそれがデメリットになってしまうような気がする。
あれこれ考えてしまうようになった結果、余計に動きが鈍ってしまっては元も子もない。
真面目な新人ほど陥りやすい事だからな。
一時期ルーキーだってそうなってたし。
で、だ。
何と言ってそれを伝えようか。
いや、ズバッとストレートに伝えてもいいんだが。
俺を見るアネットの目が真剣そのものなのでちょっと答えにくい。
やんわりと、事実を伝えながらも傷付かないように。
こういう細やかな気遣いも出来るのが優秀な神機使いというもの。
とはいえ、長い事一人きりの部隊だったからな。
いまいち上手い言葉が浮かばない。
第一部隊の面々ならどうアドバイスするだろうか。
参考までにイメージしてみよう。
~~~
ソーマ『お前がそれをやる必要は無い。何も考えず、正面からとっとと叩き潰せ。』
サクヤ『貴女は貴女らしく、正面から堂々と…ね?』
コウタ『その立ち回り、はっきり言ってフェデリコの方が向いてると思うな。』
アリサ『新人は新人なりに、難しい事考えずに戦えばいいと思います。』
ルミナ『正面から叩き潰した方が早くないですか?』
~~~
…素直に真似るのは早計かもしれんな。
全員何だかんだで言葉が足りていないような気がする。
強いて言うならサクヤが一番マシな気がするが。
男の俺が言うとなると違和感が凄い。
仕方ない、こうなったら。
ソーマに説明をぶん投げよう。
イメージした中だと俺の言いたい事に一番近いし。
という訳で。
携帯を取り出してメールをポチポチ。
お元気ですかソーマ君。
アネット君とデートしてくれま・す・か?と。
先頭の文以外は真面目な内容でメールを飛ばす。
お、早速返信が来て…
嫌だって?またまた御冗談を。
俺の方が階級上だというのを忘れてるのか。
拒否権なんぞある訳なかろう。
上官命令だ、さっさと出撃準備してきなさい。
あ、ついでにフェデリコ君も呼んできてくれ。
流石に女の子一人に古参二人が入れ込んでいるというのは外聞が悪いからな。
メッセージを送った後。
受信したソーマの様子を思い浮かべる。
うん、滅茶苦茶ブチ切れていそうだな。
防弾チョッキはしっかり着込んでおくか。
ついでにアネットにもメールを送る。
"ソーマ君がデートしてくれるって"っと。
「あ、このミッション要請ってもしかして…先輩!ありがとうございま…うえっ!?」
アッハッハ、良いリアクションだ。
その表情が見たかった。
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ここは極東支部のエントランスホール。
ミッションを終えたソーマと新人の二人が、テーブルに資料を広げて本日の反省会を行っている。
反省会と言ってもそう重苦しい内容の物ではない。
討伐自体は無事に片付いており、ミッション中に気付いた事や聞きたい事のあれこれを話している所である。
ちなみに俺はその場に加わっていない。
ジュース買ってこいとソーマにパシらされていたためである。
-お前は居たところで会話にならんだろ。俺が面倒見ておくから飲み物の一つでも買ってこい。-
同期とはいえ上官を普通にパシリにするなよ。
というか会話にならないんじゃない。
お前に殴られたせいで口が切れて喋りづらいんだよ。
あんなの軽いジョークだろうが。
出撃ゲートでの顔合わせ際にいきなりどついてきやがって。
確かにアネットが誤解したせいでヒバリとかに変に伝わってたけど。
ルーキーやシュンが悪ノリしてきたのまでは俺のせいじゃないだろ。
まぁいい。
ミッション自体は助かったから、コラテラルダメージという事にしておこう。
ちなみにソーマはやっぱり俺がイメージした通りの言葉を言った。
ただしド直球ではあったが想像の中のソーマと違い。
何故やる必要が無いのかもちゃんと説明してくれた。
うむ、下手に言葉をパクらなくてよかった。
続きを説明されるまでアネット悔し泣きしそうだったからな。
俺が言ってたら普通に泣かせてしまっていたかもしれん。
そういう意味では今回はソーマに感謝だな。
「…おい、何を突っ立ってる。とっとと買ってきたジュース寄こせ。」
前言撤回。
というかお前はジュース代払え。
アネットとフェデリコに奢るのは構わんが。
何で同期のお前にまで奢らなくちゃならないんだ。
お前には後で請求するからな。
そう思いつつ。
とりあえず三人にジュースを放り渡し、自身も開いてる席に着く。
ちなみに今回買ってきたのは最近新発売された"初恋ジュース"。
昔同じ名前の飲料が売っていたのだが、何でもそれとは別物らしい。
酒の席でもないし乾杯は別にいいだろう。
一足先に缶を開けて口付ける。
うーん普通。
この香りは柑橘系か?不味くは無いけど期待ほどでは無かったな。
反省会もちょうど区切りの良いタイミングだったらしく。
受け取った三人も流れるように缶を開けて中身に口付け…
「「「ゴフッ!!!???」」」
揃って盛大に液体を炸裂させる光景に思わず怯む。
え、一体何事?
急にどうしたお前たち。
フェデリコは椅子から崩れて倒れ込み。
アネットは口を押さえて悶絶し。
ソーマはゴホゴホとえづくように咳込んでいる。
「ク、クソっ油断した…!テメェはこれがあるのを忘れた…!」
おい馬鹿止めろ、人聞きの悪い事を言うんじゃない。
その言い草は俺が何か仕込んだみたいな言い方だろ。
俺は何もしていないぞ!
お約束の言い訳はさておき。
真面目な話何が起こった?
俺が見ていた限りだと。
三人ともジュース飲んだらいきなり噴き出したようにしか見えなかったが…
まぁいいや。
とりあえず考えるのは後にして。
テーブル拭く布巾でも持ってこよう。
悪戯のターゲットリストにアネットがNew!されました。
第一部隊の面々のアドバイスについてはこの人の主観が中々に入ってます。
特にアリサとルーキーちゃん。
なおルーキーちゃんについてはそれほどずれていない模様。