無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q.この人はバーサーカー?
A.どちらかと言うとアサシンです。


無口な無口な特務兵1

-時は少し前に遡る。

 

まだ一般隊員として任務をこなしていた頃。

いつものように出撃準備を行っていると招集を告げるアナウンスが入った。

 

向かう途中でリンドウとすれ違う。珍しく今日は真面目そうな表情だ。

気にはなったが呼び出されてる途中なので特に会話せずにスルーする。

 

「単刀直入に言おう。君には今後、フェンリル極東支部長の名において発行する特別任務も受けてもらう事にする。」

 

特別任務とは初めて聞いた。

具体的には何をするのだろうか。

 

「基本的には通常のミッションとそこまで内容に差異は無い。異なるのは対象となる情報の秘匿度にある。」

 

接触禁忌種。終末捕食。特異点。

なるほど、確かに内容を聞けば秘匿と言うのもうなづける。

 

というかどの単語も初めて聞くようなものばかり。

わかるのは一般にも流布されているエイジス計画くらいか。

 

どんなアラガミも防ぐというから何か特別な素材を使っているとは思っていたが。

なるほど、アラガミも捕食するような凶暴なアラガミの素材で作っていたとは。

 

そりゃ確かに建設など進むわけがない。

素材が無いというより取ってくる人間がそもそも少なすぎるのだから。

 

最初は特別任務なんて聞いて身構えていたが。

うん、これは少々真面目に取り組まないといけないようだ。

 

「便宜上、特務を受注できるのは特務部隊に所属する人間に限られる。従って君についても本日付けで特務部隊への所属も兼用してもらう。」

 

あ、兼用なんですね。専属じゃないんだ。

確かに特務部隊と言うのも初めて聞いた。

 

「先ほども言ったように機密性の高いミッションを請け負う部隊だ。情報漏洩の可能性を下げるため、必然部隊そのものも機密情報として扱われる。故に…」

外では特務部隊所属である事を公言しないようにと告げられる。

 

もっともな話ではあるが兼用という部分を考えると若干懸念事項がある。

特務優先なのは言うまでもなさそうだが、今の部隊任務とバッティングした場合にどうやってごまかし続ければいいだろうか。

 

うちの隊長話たがりだからな。いつかボロを出してしまいそうで怖い。

考えている事を察してくれたのか支部長が続きを話してくれる。

 

「心配する事はない。特務を優先しても疑念を抱かれないよう、それに配慮された配属へ合わせて変更となる。」

 

一例としてリンドウとソーマがあげられた。

なるほど、リンドウは部隊長だしソーマは同じ部隊の隊員だ。お互いで上手い事ごまかしているという事か。

 

となると自分の配属も特務部隊所属の部隊長の所になるのだろうか。

うちの部隊長が実は…と言う線もまぁ無くはないだろうが。

 

「フェンリル極東支部支部長、ヨハネス・フォン・シックザールの名において辞令を下す。」

 

-本日付けで、君を現在所属する部隊の部隊長に任命する。-

 

「君の一層の努力健闘に期待する。」

 

…何だって?

 

ちなみにうちの現部隊長は教官任務へと転向になった。

これで前線勤務からもおさらばだと喜んでいた。

 

…神機が使える教官は実施訓練の名目で普通に前線に駆り出されるらしいですけどね。

まぁ嬉しそうなところに水を差すのもあれなので黙っておいた。

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

ここは通称"嘆きの平原"。

中央に渦巻く巨大な竜巻が印象的なフィールドだ。

あの竜巻は高濃度のオラクル細胞が混じっているらしく、何とあの竜巻の中からアラガミが生まれて来るとの事だ。

 

爆弾か何かであれを吹き飛ばせば少しはアラガミの発生頻度も下がるのでは?と思ったが。

直ぐに現実的じゃないなと頭を振る。あの規模だと最低でも爆撃機か何か無いと話にならんだろうし。

 

荒れ狂う暴風とアラガミが全てを薙ぎ払った後の荒野。

そんな寂しくも騒がしい場所に今俺はいる。

 

何故いるのかって?もちろん任務さ。

平原に生まれたてのアラガミがいるから脅威になる前に倒してこいとのお達しだ。

 

オペレーターから任務を受注して現地に向かう。

ヘリから降りて準備をしていると、中央の竜巻から平原の覇者の異名を持つアラガミ"ウロヴォロス"が出てきた。

 

…中央の竜巻から()()()()()()が出てきた。

大事な事なので二度見返して確認した。

 

周りを見回す。荒廃した荒野に人気は無い。

まぁ受注時点で単独ミッションだと言われていたしな。

 

後ろを見る。急ぐようにヘリが飛び去った。

まぁ武装ヘリ一機でどうこう出来るならゴッドイーターなんていらないしな。

 

「………………………」

 

前に向き直る。ウロヴォロスの全複眼がこちらを見ている。

こっち見るなよ照れるじゃないか。

 

手元の端末でミッション内容を確認する。

…うん、ウロヴォロス一体の討伐と書いてある。

ついでに言うと先日説明を受けた特務である事を表す専用マーカーも付与されている。

 

「………………………」

 

神機を構えて向き直る。

向こうも殺る気満々と言った感じだ。

 

うん、色々言いたい事は山ほどあるが。

 

まずは生き延びてから考えよう。

 

……………………………………………………………………………………………

 

刈った。狩った。勝った。

いや、正確にはまだ決まっていないが。

 

こんなデカブツとまともに戦り合えるかとまずは触手を刈り飛ばした。

SF映画のように再生するかと思ったが、どうやらアラガミは違うようだ。

 

次にレーザーを放ってくる厄介な複眼を狩り潰した。

中央は流石に無理だったがまぁ問題無い。

 

最後に角を折り壊したところで勝利を確信する。

慢心するのはいけないが、逆に言えば油断さえしなければ後は作業のようなものだ。

 

背後に回ってチャージクラッシュ。

オラクル細胞が弾け飛び、苦痛に怒る雄叫びが上がる。

 

振り向こうと暴れるが巨体故か流石に遅い。

と言うか()()()複眼が潰れていては、俺の位置を掴むことも難しかろう?

 

背後に回ってチャージクラッシュ。

オラクルコアがむき出しになり、雄叫びが悲鳴へと変わり始める。

 

なりふり構わず、巨体を回転させて抵抗するか。悪くはないが、ちょっと判断するのが遅かったな。

残念ながら、俺はお前の周りにはもういない。

 

早く振り落とさないと大変なことになるぞ?

 

背中の上からチャージクラッシュ。

脅威の位置が判明し、払い除けるように触手が伸びる。

 

正に悪手。いや、ここまで来ると奇手の域だな。

もう()()()()()()()()()()()()

 

ほら、手先はそこに転がっているだろう?

 

背中の上からチャージクラッシュ。

悪足掻きとばかりに残りの複眼からレーザーが飛ぶ。

 

ナイスジョーク、正面に撃ってどうするつもりだ?

反射でもさせるならいざ知らず、この荒野に鏡らしき物は見当たらないが?

 

背中の上からチャージクラッシュ。

悲鳴がいよいよ叫びへ変わる。抗う術はもはや無い。

 

背中の上からチャージクラッシュ。

アラガミはまだ倒れない。

 

背中の上からチャージクラッシュ。

巨体が徐々に崩れ落ちる。

 

背中の上からチャージクラッシュ。

地面に伏して呻きが上がる。

 

背中の上からチャージクラッシュ。

ピクリと震えはするものの、ついに呻きすらも消え果てる。

 

すまんな。俺は特別でも何でもない、一山いくらの神機使いなんだ。

バケモノ相手に慢心出来るほど、自信家でも偉大な人材でも無いんだ。

 

悪いがお前はここで確実に死んでもらう。

もう死んでるって?いやいや、お前はまだ()()()()()だろう?

 

背中の上からチャージクラッシュ。

アラガミは僅かに震えて見せる。

振り下ろす神機は止まらない。

 

背中の上からチャージクラッシュ。

もうアラガミは動かない。

終わったか?じゃあ駄目押しと言うやつだ。

 

振り下ろす神機は止まらない。

 

背中の上からチャージクラッシュ。

背中の上からチャージクラッシュ。

背中の上からチャージクラッシュ。

 

 

……………………………………………………………………………………………

 

「………………………」

 

ここは極東支部のエントランスホール。

ウロヴォロス討伐のアナウンスが流れ、にわかに同輩達が騒ぎ始める。

 

うん、流石に一言文句言っていいか?

 

()()()()ってどういう事だよ。

こちとら冗談抜きで死にかけたんだぞ。

 

ウロヴォロスの反応が完全に無くなったことを確認してコアを回収したものの、待てど暮らせど迎えのヘリがやってこない。

不思議に思ってオペレーターへ確認メールを送ったところ、なんとミッションの受注履歴そのものが存在していないとの事。

 

そう言えばこれは特務任務だったか。

秘匿性を考えるとオペレーターのアクセス権限では確認することができないのかもしれない。

 

支部長宛へミッション完了報告と迎えのヘリを寄こしてほしい旨のメールを送る。

一分と経たずに支部長からの返信が飛んでくる。

 

『ウロヴォロスの単独討伐に成功したのか?』

 

しましたよ。死ぬかと思いましたが。

それなのに迎えのヘリが来てないんですが。

 

『討伐対象は間違いない。だがそれは特務部隊複数人で請け負うよう発行したミッションだが。』

 

手元の端末でミッション内容を確認する。ウロヴォロス一体の討伐と書いてある。

ついでに言うと先日説明を受けた特務である事を表す専用マーカーも付与されている。

 

言われてみれば単独任務とは一言も書いていない。

まぁ複数人で請けろとも書いてはいないが。

 

スクショを取ってメール返信した。

再び一分と経たずに支部長からの返信が飛んでくる。

 

『すまない、直ぐに迎えのヘリを手配する。本件はこちらの発注ミスだ。君が帰還次第、改めて謝罪の場を設けさせてもらう。」

 

…で、先程まで支部長直々の謝罪を受けていたという所だ。

忠誠心が3は下がったな。元がいくらかは知らないが。

 

そして手渡されたのは特務専用の任務受注端末。

何でも支部長の個人アドレスへのホットダイヤルが繋がっているらしい。

 

要するに今後特務に関する疑問があれば直接聞いてほしいとの支部長の考えだ。

まぁ考えてみれば今回の件は自分にも過失が無いとは言えなくもない。

 

いくら特務でもウロヴォロスの単独討伐は無いわな。常識的に考えて。

厄介な相手ではあるが、よくよく思い返せばデカいだけで接触禁忌種でも何でもないからな。

 

…まぁいいさ。ウロヴォロスの素材はレアなんだ。

防壁素材としては十分役立つだろう。

 

終わり良ければ全て良し。

エイジス計画の達成に一歩近づけたと考えるとしよう。

 




ヨハネス「ウロヴォロスが単独で倒されるとは…リンドウ君にぶつける予定だったが、これは予備の矢も用意しておくか…」
そしてBurstのあのシーンへ続く。
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