無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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Q1.可愛いは大事?
A1.大事。

Q2.お義兄さん?
A2.言ってるだけ。

とどのつまりはただの軽口。
一言たりとも口にはしてませんが。


無口な無口な収集任務2

何時だか拾った黒い羽。

 

それと似たような黒い羽を。

ルーキーが考え込むように眺めながら手にしている。

 

そう言えば何かに役立つかと一枚持ったままだった。

ごそごそと懐をまさぐり、それを取り出す。

 

うむ、流石はアラガミ由来と噂される素材。

ずっと内ポケットに入れてた割には艶々している。

 

ルーキーの方は相変わらず蹲ったままだが。

何か考え事でもしているのだろうか。

 

先に言い訳しておこう。

俺は悪くない。

 

悪いのは無防備に首筋を晒しているルーキーの方である。

そして俺の手にはふさふさとした黒い羽。

 

くすぐるだろ普通?

別に性癖の話はしていない。

 

男相手にやりたいと言ったら気色悪いが。

女の子相手にやってみたいというのは特段おかしな事ではない。

 

確かに俺は大人とはいえ、少年の心を忘れていないピュアな精神の持ち主。

しかも普通に若いと来てる。つまりはやむなし、仕方なし。

 

一応紳士的な方向からも言い訳しておくと。

 

女性が自分から肌を晒すのはファッションの一部であり。

男性がそれに口を出すのは野暮というものである。

 

見られたいから見せる。

見られたくないから見せない。

 

そして、くすぐられたいから見せている。

 

ハルオミ直伝の完璧な理論武装である。

何しろ完璧すぎて査問会の面々が御高説を聞きに来てたからな。

 

閑話休題、話を戻そう。

つまり何が言いたいのかというと。

 

紳士としても少年としても。

この衝動には抗いがたいものがある。

 

だから我慢できなくてもしょうがない。

Q.E.D、証明完了。

 

 

さて、思い立ったが絶好機。

一思いにくすぐろう。

 

………

 

結果から言うと。

とても可愛い声が挙がりました。

 

顔を真っ赤にして睨む様が何とも愛らしい。

ルーキーちゃんは可愛いですね。

 

 

唐突だが。

極東では可愛い女の子を"子猫ちゃん"と表現する事がある。

 

言葉の由来は英語らしいが。

実物は見た事無いが本物の猫同様、愛くるしい的な意味合いでそう表現しているのだろう。

 

でも猫って立派な猛獣なんだよな。

そして俺は今その猛獣に追いかけ回されている。

 

チラリと振り返って様子を伺う。

 

愛らしい顔したルーキー猛獣ちゃんが。

神機という名の爪を振り上げてる。

 

せめて猫パンチで許してほしい。

言ってる余裕が無いから言わないけど。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部の食堂。

配給の食料を受け取るほか、お金はかかるが別途嗜好品なども提供してもらえる場所である。

 

とはいえ、酒のような人気商品は購入制限がある上によく品切れる。

エントランスの万事屋がぼったくり価格でもやっていける理由の一つだ。

 

さて、普段は配給のレーションなどで済ませるとこだが。

今日は少しばかり事情が違う。

 

-モキュモキュモキュ…-

 

目の前にいるのは先程俺を追い回していた猛獣の子猫ちゃん。

 

走り回ってお腹が空いたのだろう。

会話も忘れ、目の前の食事を忙しそうに頬ばっている。

 

なるほど、確かに動物みたいだ。

さっきの記憶が鮮明なので間違っても頭に"小"とかつかないが。

 

「…どうしました?私の顔に何か付いていますか?」

 

いや別に。

俺の金で買った飯は美味いかと思っていただけ。

 

そもそもの話、ミッション前に終わったら食事しませんかと誘ってきたのはルーキーの方なのに。

お前の食事代俺が持つのかよ。

 

不満はあるが同時にプライドもある。

女性、しかも後輩相手に"飯代払え"なんて口が裂けても言える訳がない。

ソーマとかになら普通に言うんだがな。

 

というかジュース吹き出してたせいでうやむやになっていたが。

あの時の金まだ貰ってないぞソーマ君。

 

リンドウといい、第一部隊は人様の貸しを踏み倒し過ぎではないだろうか。

サクヤ?あれはリンドウのツケになってるから問題無し。

 

「あまり見られると食べ辛いんですけど…というか冷めますよそれ。」

 

おっと、俺としたことが。

せっかくの暖かい食事なのにもったいない。

 

ルーキーの言葉に自分の食事に視線を戻す。

今日購入したのは有名なロシア料理であるボルシチ。

 

よくアリサが作っていたおこぼれに与っていたせいか。

今ではお気に入りの料理の一つになっている。

 

一口啜り、味と温もりに舌鼓を打つ。

うん美味い。やっぱり金出して食べる飯は一味違うな。

 

それにしても。ここのボルシチは赤いんだな。

アリサが作ったやつは青紫だったが。

 

それにさらりとしたスープでとろみもない。

地域で違いのある料理だったとは知らなかった。

 

まぁどっちも美味いから問題無い。

こっちはスープだからアリサのと違って腹に溜まらないのが難点だが。

 

 

「ところで、食事が終わったら聞きたい事があるんですけど。」

 

食事の最中。

ふと思い出したようにルーキーが言葉を紡ぐ。

 

「あの羽、一体何時手に入れてたんですか?」

 

-…もしかして、まだいくつか持っていたりしますか?-

 

……………………………………………………………………………………………

 

ミッションでルーキーの首筋をくすぐった黒い羽。

何を隠そう、あれこそルーキーが榊博士から収集を依頼されていた代物だったとの事。

 

ところがこれはアラガミを討伐して得られる素材というのではなく。

広大な作戦エリアを探して回り、運良く落ちていたものを集めて来るという話。

 

何処に落ちているのかもわからないまま。

手当たり次第にエリアを探索しなければいけない。

 

うん、話を聞くだけでも面倒臭いな。

俺に言われた特務じゃなくて良かった。

 

そんな中、ふと足を伸ばした場所でようやく念願のブツを見つけた所。

後ろから探し求めていたもので首筋をくすぐられたという訳だ。

 

実はいうと。

ルーキーはくすぐられた事にいきなり怒りだした訳ではない。

 

確かに可愛い声を挙げて飛び上がり、真っ赤な顔で睨んでいたが。

俺が手にしていた羽の正体に気付くと怒りよりも驚きの感情が勝ったようで。

 

-そ、それっ!ど、どこで見つけましたか!?-

 

がっしりと俺の手を両手で掴み。

迫真の表情で問いかける。

 

視線は俺が手にする羽に釘付けで。

()()()()()()()()()()()()()()

 

うん、くすぐった。

クシュンってまたもや可愛い声が出た。

 

我慢できずにやってしまった。

後悔も反省もしていない。

 

………

 

そんな訳で。

羽は悪戯の罰だと取り上げられてしまったが。

 

直後にルーキーが見せた、やっと見つかったと言わんばかりの安堵の表情。

あんな嬉しそうな表情をされては返せだなんてとても言えない。

 

ボコられた後なので追剥ぎされたようにしか見えないが。

あくまでプレゼントしたという事にしておくのが出来る紳士というものだろう。

 

ところが食事を終えたルーキーから話を聞くに。

どうやら一枚二枚ではまだまだ数が足りないようで。

持っているなら何とか分けて貰えないかとの事。

 

まぁやるのは別に構わない。

元々小金稼ぎ程度で集めてただけだし。

 

構わないんだが。

もし渡した分でも足りなかった時の事を思うと、軽率に渡してしまうのは考え物だ。

 

先程のやり取りからもわかるように。

これは相当に手間暇のかかるミッション。

 

そして俺がこの羽を見つけたのはたまたまであり。

別に見つけるコツを知っているという訳ではない。

 

手持ちで足りれば問題無いが。

足りなかった場合、間違いなく俺も収集に駆り出される。

 

おまけにこれは一般には出回っていない特務案件。

命じられてしまえば宮仕えの下っ端に拒否権は無い。

 

だが今の俺はクソトカゲの探索に忙しい。

あまり長期間拘束されるミッションは振られたくないというのが本音である。

 

なので知らんぷりするのが一番確実に累を防げるのだが。

それはそれでルーキーが不毛なミッションに駆り出され続けてしまうので良心が痛む。

 

女の子に優しくするのは世界の常識。

極東の古い歴史書にもそう書いてある。

 

その女の子に先程神機持って追いかけ回されてたけど。

まぁ過ぎた事なので気にしない。

 

さて、話は決まった。

羽は渡す。ただし俺とバレないようこっそりと。

まぁ別に難しい事でも何でもないな。

 

というわけで。

何だっけルーキー、"まだいくつか持っていたりしますか?"だったか。

 

 

ノーコメント。

ただまぁ、明日()()()()()()()()()()()()()()()()()()




青紫色でも料理は料理。
地域差ですね間違いない。

この人的には美味しく食べられるので問題無し。
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