無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

94 / 154
Q1.ボコられても抵抗しないの?
A1.悪いと思っている時はしない。

Q2.ルーキーちゃんに奢らされ過ぎじゃ?
A2.たまにあっちからも食べ物貰ってる。

Q3.兄妹では?
A3.アリサがそれを言いました。

結果ルーキーちゃんにもみくちゃにされた模様。


無口な無口な収集任務-幕間_ルミナSide-

思えば羽を見つけた時からそうでした。

 

いきなり人の首筋をくすぐったかと思いきや。

手にしているのは私が探し求めていた黒い羽。

 

悪戯に怒る事も忘れ、食い入ってしまった私を。

まるでかかったなと言わんばかりにあの人は再度悪戯を繰り返して。

 

もしかすると。

あの時から何かを誤魔化そうとしていたのかもしれない。

 

何しろ二度もからかわれた事に激昂してしまった結果。

危うくあの人の思惑通りに聞きそびれてしまうところだった。

 

そう考えるとミッション前に食事に誘っていたのは正解でしたね。

食べ物が絡むとあの人心配になるくらいチョロいですし。

 

ついでに奢ってもらったのは不可抗力です。

純情な女の子をからかった罰ですので我慢してください。

 

そして食事の時に質問した時。

私はそれを見逃しませんでした。

 

表情は何時も通りの鉄仮面。

無口無表情、青い瞳だけがただこちらを見返していましたが。

 

質問をされた直後。

食事するあの人の手が止まりました。

 

それは一瞬なんてあいまいなものではなく。

ピタリと、スイッチでも押されたかのように停止して。

 

そして何事も無かったかのように再開される食事。

なるほど、確かにこれはわかりやすい。

いつだかリッカさんが言っていた通りだ。

 

喋らないだけ。表情に出ないだけ。

それ以外は私達と変わらない普通の人間。

 

…悪戯好きだったり、食べ物に釣られる所はちょっと動物っぽいですけど。

 

まぁその事はひとまず置いといて。

この人がこの羽について何か情報を持っている事は分かりました。

 

もしかすると実際にいくつか持っているのかもしれません。

 

隠そうとする理由は正直わかりませんが。

それならこちらもそれなりの手段に訴えさせてもらうだけ。

 

具体的には奇襲、強襲。

アリサ達と遊びに来たとでも銘打って、どさくさに紛れて家探ししましょう。

 

 

…そんな風に考えていたのに。

 

翌日、早速アリサに声を掛けようと自室の扉を開けたところ。

目の前の床には私の名前が書かれた封筒が落ちていて。

 

…いや、まさか。

いくら何でも、昨日の今日でそこまでわかりやすい事…

 

するかもしれない。

というか無表情で封筒を置いていくあの人の姿が頭をよぎる。

 

目の前の封筒を持ち上げる。

予想通り、中は結構詰まっているのに羽毛のような柔らかみを持っていて。

 

封を開けて中を覗く。

探し求めていた黒い羽がぎっしり詰まっていた。

 

「………………………」

 

…もうっ!

 

まったくあの人は!

あの人は、あの人はもうっ!

 

心の中で形容しがたい不満を叫ぶ。

 

早朝という程ではないが時刻はまだ朝方。

流石に大声を出せば周りの迷惑になってしまう。

 

言いようのない感情を外に漏らさないよう。

何とか堪えながらも思わず地団駄を踏みかける。

 

…えぇ、落ち着きましょう。

深呼吸深呼吸、私は至って冷静です。

 

落ち着いて、まずは状況を分析しましょう。

 

まずこの羽の量ですが。

少なくとも昨日今日で集めてきた量には見えません。

 

何時からなのかは不明ですが。

恐らくそれなりの期間をかけて集めていたのでしょう。

 

そうなると。

あの人は一体何の目的でこれを集めていたのでしょうか?

 

私の場合はレンと起こした感応現象でリンドウさんが生きていると知ったからですが。

他の人達はまだこの羽の正体を知らない筈。それに通常のミッションでもこれを集めるなんて話は聞いた事が無い。

 

…その前提で考えれば。

恐らくこれは、私のと同じ特務案件。

 

上層部の人間と任命者しか知らないそれであれば。

特務を受けられるあの人が動いているのにも辻褄が合う。

 

私が思いつく極東支部の上層部と言えば。

亡くなったヨハネス支部長の代理となった榊博士に、その補佐役に抜擢されたツバキさん。

 

でもこの二人には既に事情を話している。

痕跡集めを指示していたのであれば当然羽の事にだって気付くでしょう。

 

そうなればあの人だって私に隠す理由が無いはず。

今の私がそうであるように、あの人も特務部隊としてはそのまま榊博士の直轄になっているでしょうし。

 

となると、考えられる理由は二つ。

 

あの人が独断で何かを隠しているか。

あの二人以外の、()()()()()()()で動いているか。

 

けれど別の誰かと言われても…

うーん、ここから先は私だけでは判断が付きませんね。

 

幸いな事に、今回の件に関しては榊博士もツバキさんもこちら側。

説明すればこの疑念についても調査してもらえるはず。

 

そうと決まれば話は早い。

早速この羽を持って支部長室へ向かいましょう。

 

………

 

「なるほどね。急に大量に痕跡を持って来たから何事かとは思ったけど。」

 

机の上で手を組み、真剣な表情で考え込む榊博士。

同様に考え込むように口元に手を当てていたツバキさんですが、ひとしきり思考を巡らせた後に続くように口を開きます。

 

「…私達からアイツに何かしらの指示を出した事は無い。となれば、やはりお前が推測する理由のどちらかだろうな。」

 

独断専行。

もしくは別の誰かからの指示。

 

「しかしそれであっても解せんな。確かに行動に不審な点は見られるが…」

「うむ。いくら何でも少しわかり易すぎるね。これじゃどうぞ疑ってくださいと言っているのも同然だ。」

 

そこは私も気になっていたのだが。

普段あの人にからかわれている身としては一応納得のいく理由が出ている。

 

「あの人、多分そこまで考えてないですよ。」

 

どうしました?

二人とも急に顔を背けて…

 

ちょ、何で笑いを堪えているんですか。

私何もおかしい事言ってないじゃないですか。

真面目に聞いてくださいよ。

 

「いやぁすまない。君の彼への理解の深さについ、ね。」

「遠慮のいらない距離というのも結構だが…もう少し先輩の顔を立ててやれ。」

 

何ですかツバキさん。

それじゃ私があの人の悪口を言っているみたいじゃないですか。

 

言いがかりです。もみくちゃにしますよ。

十中八九返り討ちにされそうなのでやらないですけど。

 

というか今はそんな話はいいんです。

話を本題に戻しましょう。

 

「とりあえず彼の独断かどうかは置いといて…まずは誰かから指示を受けているのかを調べるべきだね。」

 

知っての通り、彼は君と同じ特務兵。

そして特務案件は別に私やツバキ君で無ければ発注できないという訳ではない。

 

「もちろん、通常であれば最終的に支部長代理である私の目を通すことになるが…」

「極東支部…もとい、その母体であるフェンリルはまごう事無く巨大組織だ。多数の人間が関わっている以上、そこに何らかの思惑が混じる可能性は否定できない。」

「かつてヨハンがアーク計画を考え、個人の意思で実行していたようにね。」

 

博士の言葉に頷いて答えるツバキさん。

私は黙って続きの言葉に耳を傾けます。

 

「そして彼の部隊は言ってしまえば独立遊軍。特定の役割が無い故に、どんな任務であろうとも従事していることに誰も違和感は抱かない。」

「加えて隊員はアイツ一人だ。おまけに部隊長権限に特務権限。極秘事項を命じるにはうってつけの存在だ。」

「私も彼には随分と研究の手助けをしてもら…おっと、今のは聞かなかった事にしてほしい。」

 

私とツバキさんの視線に気付いた榊博士が慌てて口を紡ぐ。

…本当に榊博士、この件に絡んでいないんですか?

 

もし疑わしいと判明したら後でもみくちゃにしますからね。

 

「…コホン。とにかく、何かを企てる人間にしてみれば何とか引き込みたい逸材には違いないね。」

「それにアイツはあの通り言葉を喋れない。うっかり秘密が漏洩するという心配もないからな。」

 

聞けば聞くほど納得しか出てこない。

 

自由に動ける立場と権限。

それを振りまわしても問題の無い実力。

 

おまけに言葉を話せない故に。

万に一つも秘密が口から漏れる事も無い。

 

「とにかく、この件については一度精査が必要だね。君は引き続きリンドウ君の痕跡を集めてきてくれ。私は支部長権限を駆使して電子的な面から調査してみよう。」

「では私は上層部の人間を直接洗ってみます。…一人、心当たりがありますので。」

「あぁ、もしかして彼の元上官かい?」

「元上官…どんな人なんです?」

 

元上官という言葉に思わず言葉が口に出る。

 

考えてみれば当たり前の話なのだが。

あの人は最初からあの立場にいた訳ではない。

 

私達と同じ新人だった時があり。

私達にリンドウさんがいたように、当然上官と呼ばれる立場の人がいた筈。

 

語らず、感じず、何も思う事無く戦い続ける神機兵。

巷ではそんな評判のあの人の上官とは一体どんな人なのだろうか。

 

「クズだ。」

「えっ。」

 

あまりに直球なその言葉に素っ頓狂な声が出た。

真顔で断言したツバキさんの横で榊博士が吹き出している。

 

「相変わらず彼が嫌いなようだね。あぁ気にしないでくれ、彼は単純にツバキ君と相性が最悪なんだ。」

 

いや、正直凄く気になるんですけど。

 

確かにツバキさんは規律に厳しい。

コウタがだらしなかった時の怒り方は半端ではなかった。

 

「…ちょうど良い機会だ。何故あんな男にアイツが黙って付き従っていたのか。長年の疑問に終止符を打ってこよう。」

 

そのツバキさんがここまで取り付く島も無くクズと断言する人物。

そんな人物が何故あの人を裏で糸引く第一候補に挙がるのか。

 

というか。

そんな人がどうやってあの人の手綱を取っていたのか。

 

気になる…いや、今はそれどころじゃありません。

私は私で、リンドウさんの痕跡を集めてこなくては。

 

 

…そうだ、どうせあの人が真っ黒だという事は間違いないので。

 

「榊博士。」

「ん?何だい?」

 

 

あの人にも私と同じようにミッション発注してください。

多分ですけど、正式なミッションであればあの人断らないと思うので。




近頃名前がよく出るルーキーちゃん回。

元上官の話は書かない予定。
モブだから仕方ありませんね。

無口さん相手にパーフェクトコミュニケーション叩き出す程度のモブ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。