無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~ 作:猫丸飯店
A1.Yes。
Q2.わざと?
A2.Nein(いいえ)。
Q3.なんで壊すの?
A3.用途外の使い方するから。
それでも直してくれるリッカちゃん。
天使と見紛うのも無理は無し。
※今回登場する制御ユニットはバースト基準となります。
ここは極東支部の神機保管庫。
今日も今日とて同僚達が愛用の神機を受け取り、任務の場に赴いていく。
「それはこっち。置いたら倉庫から新しい機材を持ってきてくれる?」
運んできた荷物を指示通りの場所に置き。
休む間もなく倉庫に戻って重たい機材を担ぎ、運び込む。
「いやぁ助かるよ。今に始まった事じゃないけれど、整備班も大概人手不足だから…あ、それ終わったら今度はあっちの資材ね。」
感謝を述べながらもこき使う手は緩めないリッカ。
お礼と指示がシームレスに飛び出してくるため、体よく使われているだけなのかどうか何とも判断に迷うところ。
まぁ女性からの感謝は素直に受け取るのが紳士と言うもの。
お役に立ててるようで何より。
すれ違う同僚たちの視線が生暖かいようだが気にしない。
見られただけで言いがかりを付けるほど俺は子供じゃないからな。
でも良いんだぞ?言いたい事があるなら口にしても。
"ゴッドイーターが神機じゃなくて段ボール持たされてる"とか。
耳に届いた瞬間チャージクラッシュ(拳)を叩き込んでやる。
これでも立派な古参兵、神機の有無が戦力の決定的差では無い事を教えてやる。
まぁそれはさておき。
そんなベテラン神機使いが荷物運びなんぞしているのには訳がある。
先日、整備班の方で新しい装備を開発したのだが。
肝心のそれをテストする人員が確保できず困っていたらしい。
なんでも神機使いがいないとデータが取れない上、その間は出撃も出来なくなるとの事。
しかしただでさえ人手不足なところに加え、ここ最近はアラガミの出現報告も増えてきているという現状。
とてもじゃないが今そちらに割ける要員などいるはずも無く。
当面は実装もお預けかと整備班一同意気消沈していたところ。
「どっかの誰かさんがやらかしてくれたんだよねぇ。それもメンテナンスが必要になるくらい派手に…ね?」
知らんな。一体どこの誰だろう。
リッカの"ね?"って言い方が可愛いからどうでもいいか。
で、何故か俺を反省させる意味も兼ねてこき使おうという流れになり。
拒否する事も許されなかった結果今に至るという訳だ。
つまり荷物を運び終わっても俺の仕事は終わらない。
この後は楽しい楽しいモルモットタイムが待っている。
一応新型神機の方は普通に使える状態で残っているが。
榊博士の許可は取ってあるらしいのでミッションに行くためと言う理由では逃げられない。
「…言っておくけど。こっそりミッション受けて逃げ出したらもう神機のメンテナンスしてあげないからね。」
チラ見しただけで釘を刺されてしまったので諦める。
というか後ろを向いてるのに何故わかった。
仕方ない、壊してしまった事には間違いないので大人しくしておこう。
それに何だかんだ直してくれるリッカには頭が上がらないしな。
リッカちゃんマジ天使。
極東一の女神様。
…うん、茶化して怒りが再燃したら怖いので黙っておこう。
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所変わり。
ここは極東支部の訓練場。
主に神機使いが己が技量を磨き上げるのに利用する場所だが。
今回のように新装備の事前検証などにもよく用いられる場所である。
『テステス、聞こえる?聞こえてたら左手を挙げてくれるかな?』
スピーカーからの声に手を上げて答え。
ガラスの向こうに映るリッカに合図する。
『オーケー、それじゃあ今日試してもらう装備の説明をするね。』
手にしているのは新型神機。
しかし今日お試しするのはこれではない。
本日紹介するのは制御ユニット、及びその強化パーツと呼ばれる装備。
装備と言っても別に手に持ったり身に付けたりするような物ではない。
いや、ある意味身に付けてると言っても間違いでは無いか。
何しろ神機の一部に組み込んでる代物だからな。
事前に渡された資料によると。
まず本体となる制御ユニットを神機の制御機構に組み込む。
これは握っているグリップ部との接触を介して体内のオラクル細胞に働きかけ、活性時の反応に指向性を持たせるという装置。
『指向性、つまり強化の方向性だね。わかりやすい所だと筋力や持久力の増強、治癒力の向上とかになるかな。』
ふむ、ようするに"誰でもソーマになれるユニット"って話か。
活性化と言うのが少々面倒だが、まぁ手段は色々あるので問題無い。
あの体質、正直言って便利そうだったからな。
ソーマは気にしてるみたいだから言わないけど。
話を戻そう。
次に組み込んだ制御ユニットとは別に強化パーツと呼ばれる部品を外付けする。
こちらは概要的には制御ユニットと同じだが、あちらと違い平時の状態においてもある程度細胞を活性化させるという装置。
『人為的にオラクル細胞を活性化させる事で常時身体能力に補正を掛けられる仕組みさ。ただあくまで制御可能な範囲での話だから、制御ユニット程高い効果は得られないんだけどね。』
なるほど、こちらは単純に能力の底上げ。
文字通りの強化パーツという訳か。
効果は制御ユニット程ではないとの事だが。
制約やデメリット無しと考えれば妥当な所。
美味しいとこどりなんて話はそうそうないのだ。
まぁ純粋強化と言うだけでも普通に凄いと思うけどな。
………
リッカからの説明も終わり。
いよいよ試験開始の時間である。
『今日の所はまだデータ取りの段階だからね。まずは一通り訓練用プログラムをこなしてみてくれる?』
リッカの言葉に合わせたように。
先程服用した薬の効果で体内のオラクル細胞が活性化する。
同時に出現する訓練用のオウガテイル。
んー懐かしい、昔を思い出すな。
あの時はVRを用いた仮想空間での訓練だったが。
今回は現実世界に投射された
何でも光に群がる性質のオラクル細胞をホログラム映像に纏わす事で疑似的に質量を持たせているとの事。
端的に言えば体当たりされれば吹っ飛ぶし、斬りつければちゃんと手応えも返ってくる。
そして仮想空間と違って文字通り"生身の現実"なのでリアルなデータが得られるというのが最大の違い。
故に訓練以外でも実地テストの前段階として利用される。
何だったら極東支部で一番訓練場を使っているのは神機使いではなく整備班かもしれない。
そうこうしている内にオウガテイルが勢いよく飛び掛かってくる。
ひらりと躱して横一文字。手応えこそ本物とは違うものの、いつものようにオウガテイルの身体が上下に離れ飛ぶ。
『うん…動き出す前の数値がこれでその後が…あぁゴメンゴメン、データの方は取ってるから、君は構わずメニューを進めて。』
次に進むための指示を待っていたところ。
独り言と共にリッカがそう返事を返す。
そういう事なら。
あちらは気にせず、最初に言われた通り訓練メニューをこなすかな。
あっちはあっちで忙しそうだし。
専門家じゃない俺に口出し出来る事も無し。
端末を操作して次のプログラムを起動する。
今度のお相手はオウガテイル三体同時。
あーあったあった、あの時の訓練だと後ろからガブガブされたっけか。
思い出したらちょっと腹が立って来たな。
サクッと仕留めて次のプログラムへ進むとしよう。
…瞬殺してもちゃんとデータが取れるよな?
やり直しとか言われたら泣くからな。
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ここは極東支部の神機保管庫。
シャワーで汗を流してスッキリした後、ビール片手にリッカの後ろからご機嫌取りの冷やし
「あ、戻ってきたんだ…ってもう、またお酒飲んでるし…」
違いますぅ、これは麦ジュースですぅ。
人をアル中みたいに言わないでくださいよぅ。
大人用だからちょっとアルコール入ってるけど。
ウィスキーボンボンみたいなものだな。
屁理屈言ってると思われたら嫌だから言わないけど。
クピクピと缶を傾けながら本日取得したデータの分析結果を覗き込む。
へぇ、悪くないな。良い結果が取れてるじゃないか。知らんけど。
孤児院上がりの一神機使いに専門的な意見を求めてはいけない。
とりあえず棒グラフやレーダーチャートが軒並み高く見えるので優秀なんだろう。
「全体的な数値としては期待以上の結果が出てるね。これなら実地試験に進んでも問題無いかな。」
カタカタと端末を叩き、レポートを纏めながら缶を開けるリッカ。
口を付けた途端何故かいきなりむせだし、ジロリとこちらを睨んできた。
「…キミ、やっぱり反省してないでしょ。ホント良い度胸してるよね…」
何でだよ。飲み物買ってきてあげたじゃん。
言いがかりにも程があるぞ。
それともシチューはお気に召さなかったか。
カレーと似たようなものだから気に入ると思ったんだけどな。
なら今度はハヤシドリンクの方にしよう。
あっちなら色合いもカレーに似てるしな。
それにしても制御ユニットに強化パーツか。
使ってみた感じとしては普通に悪くなかったな。
今回はデータ取りなのでシンプルな機能を選んだと言っていたが。
実際にロールアウトする装備にはもっと特化した物も用意するとの事らしい。
戦術の幅が広がりそうだな。
酒の肴代わりにあれこれ考えるのも悪くない。
「まったくもう…罰として明日の実地試験の時も荷物運び手伝ってもらうよ。とびきり重たい荷物持ってもらうからね。」
…明日の実地試験?
何それ聞いてない。
誰がやるの?俺?何で?
「…もしかして聞いてないとか思ってない?聞くも何も、まだ君の神機にしか組み込んでないんだから当然じゃない。」
ごもっとも。
正に正論と言うやつである。
「ちなみにだけど。元々君が使っていた神機は今オーバーホール中だよ。制御ユニットの組み込みも合わせてやる予定だから、戻ってくるのは早くても試験明けだね。あぁ、もちろん許可無く新型神機持っていくのも駄目だから。」
-まだテスト中なんだから途中で壊れたら困るでしょ?特にキミ、神機壊す常習犯だし。-
「最初にも言ったけど、そんな事したらもう神機のメンテナンスしてあげないから。もちろん、オーバーホール中の神機も組み立ててあげないからね。」
…あれ?
もしかしてこれ、ガチでしばらくモルモットにされるってオチなのでは?
ミッション受けようにも神機二本とも抑えられてるから身動きできないし。
「………………………」
よし、酒飲んで全てを忘れよう。
Q4.聞こえてるのに返事しないの?
A4.左手上げろって言われたから。
Q5.返事してって言われたら?
A5.普通に返事する。
Q6.何で手を上げろって言ったの?
A6.喋れないと思ってるから。
怒っていても気を使ってくれるリッカちゃん
言葉を喋れないと勘違いしたままになるのも無理は無し。
リザレクション基準の制御ユニットはまたの機会に。