無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

97 / 154
Q1.コウタが言いたい事言っちゃったらどうなる?
A1.ガム持ってたらセーフ。

Q2.カノンが言いたい事言っちゃったら(ry?
A2.手作りお菓子くれるのでセーフ。

Q3.ルーキーちゃんが言いたい事(ry?
A3.ジュース(飲みかけ)は分けられないのでアウト。

なのでちょっとおつむをシェイキング。
右手はそっと添えるだけ。

コウタがガム持ってなかったら?
右手をギュッと握るだけ。


無口な無口な新装備2

「何でゴッドイーターが神機じゃなくて段ボール持たされてるんですか…」

 

ここは極東支部の神機保管庫。

リッカに頼まれた荷物を運んできた直後、開口一番呆れ気味にアリサにそう呟かれる。

 

ちくしょう言ったな、言うてはならんことを。

飯の恩さえ無ければ直ぐにでも古参様の恐ろしさを思い知らせてやるというのに。

 

「あぁ気にしなくていいよ。悪い事した罰受けてるだけだから。」

「また何かやったんですか貴方…」

 

冤罪だぞ。俺は別に何もしていない。

寧ろご機嫌取りにジュースまで差し入れたのにこのザマだ。

 

「どうせまた神機を雑に扱って壊したか、変な味のドリンクでも飲ませたりしたんじゃないですか?」

「流石、良い勘してるねアリサ。ついでに言うと毎度の事だけど反省もしていないって感じかな。」

「言っちゃなんですけど。この人こんな見た目と印象の割にほんと懲りるという事を知らないんですね。」

 

酷い、確かにちょっと無茶して神機壊しちゃったのは事実だが。

後半二つに関しては言いがかりもいい所である。

 

俺は良く冷えた美味いジュース冷やしシチュードリンクを渡しただけなのに。

反省云々については身に覚えが無い以上どうしろって言うんだよ。

 

くそっ、滅茶苦茶反論したい。

でも今日に限ってリッカの奴スパナ持ってやがる。

 

弁解した所で「言い訳するな」って武力鎮圧されるのが目に見えている。

言論弾圧もいいところだな。

 

まぁいい、戯言はこの辺にしておこう。

何だかんだでちゃんと神機の修理は進めてくれているし。

こき使われている以外に実害は無いしな。

 

運んできた荷物を部屋の片隅に置き。

端末を操作していたリッカとそれを見ているアリサの所に足を運ぶ。

 

「それじゃこの人も戻ってきた事だし、今日お願いするミッションの説明を始めるね。」

 

そう言って俺とアリサにクリップで止められた書類を手渡してくるリッカ。

 

「今日二人にお願いする内容は二つ。一つはリンクバーストによって起こされた活性状態に対する制御ユニットの動作検証、もう一つは制御ユニットの機能であるリンクバースト弾に対する誘導機能の確認だね。」

「誘導機能…ですか?」

 

リッカ曰く。

 

新型神機で実装された新技術である通称"リンクバースト"。

捕喰したオラクル細胞に人為的な干渉を加える事により、それを投与された神機使いのオラクル細胞を意図的に活性化させるという技術。

 

オラクル細胞の活性化が起こる以上。

当然それも制御ユニットによる指向性強化の影響も受ける訳で。

 

「リンクバーストによる細胞活性。それにどの程度制御ユニットが干渉する事が出来るのかを調べるのが一つ。もう一つがアリサが気にしてる誘導機能についてなんだけど…」

 

知っての通り、オラクル細胞が持つ特徴の一つに"偏食"というものがある。

これは特定の性質を持った物を積極的に取り込み、エネルギーに変換しようとする性質の事であり。

一般的にオラクル細胞が偏食因子と呼称されるようになった要因の一つでもある。

 

「これはその性質を応用した技術でね。簡単に言えばホーミング弾のアラガミバレット版って感じかな?」

 

最近新しく開発、周知されたバレット技術であるホーミング弾。

それはバレットの元となるオラクル細胞の偏食傾向に干渉し、アラガミが持つ因子に反応して追尾、誘導する性質を持たせた代物。

 

「神機そのものに誘導機構を組み込んじゃうと燃費が悪いから、本来は弾丸そのものに組み込んでおく物なんだけど…リンクバーストで撃ち出すアラガミバレットは通常のとは比較にならない程高エネルギーだからね。発射前にそのエネルギーの一部を利用する事で常時誘導制御を可能にしたって言うのがこの機能なんだ。」

 

ふむ、細かい技術的な事はさておき。

要約するとアラガミバレットにホーミング機能を付けてみたという訳か。

これはなんともありがたい機能だ。

 

いくらそれなりに経験を積んだ古参と言っても。

やはり得手不得手というものは存在する。

 

俺、近接戦闘は得意なんだが射撃の狙いに関してはあまり自身が無いからな。

残念ながら制圧射撃以外は苦手の部類に入るのだ。

 

余談だがカノンも制圧射撃が得意である。

もっとも、辺り一面を消し飛ばすという意味での制圧だが。

 

あんな可愛い見た目なのに人は見かけによらないもの。

出来れば敵だけにやってくれると助かるんだけどな。

 

閑話休題、話を戻そう。

とりあえずアラガミバレットのホーミング化というのは興味深いな。

 

以前ルーキーが撃ってる所を見た事あるが。

あの威力を誘導付きで撃てるというなら中々に強力な武器と言える。

 

遠距離はホーミング付きのアラガミバレット。

近距離はフルドープからの強襲戦術。

加えて制御ユニットの効果で身体スペックも上昇中。

 

うむ、我ながら中々に隙の無い神機使いと言えるのではなかろうか。

"自分の才能が恐ろしい"とはこういう時に言う言葉なんだろうな。

 

どうだアリサ、旧型でも強かろう?

憧れてくれても構わんぞハッハッハ。

 

「ちなみになんですけど、リンクバーストじゃなくて攻撃用のアラガミバレットにも誘導性能が付くんですか?」

「あ、ゴメン、流石に攻撃用に撃ち出す方は制御が難しすぎてまだ検証段階なんだ。」

 

 

うん、儚い夢だったな。

ドヤ顔しなくて本当に良かった。

 

大人しく旧型…あ、今は新型神機だったか。

まぁいい、俺自身古参である事には変わりない。

 

ロートルはロートルなりの仕事をしておこう。

おれは普通に若いけど。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは通称"贖罪の街"。

朽ちかけた建物が並び立ち、廃墟デートには最適の場所。

 

「…どうぞ!」

 

意図的に狙いを外して放たれたそれは急速に弧を描いてこちらへ直撃し。

途端身体中に形容しがたい力が溢れ出るように満ちていく。

 

凄いな、あの角度からでも追尾するのか。

ざっと見でも90度以上折れ曲がったぞ。

 

確かこういうのを"カミソリシュート"と言うんだったか。

アニメの中の話だけじゃなく、まさか現実に拝むことが出来ようとは。

本当に極東は魔境だな。

 

おっと、考え事をしている場合ではない。

今は立派にオウガテイルと戦闘中である。

 

リンクバーストの効果があるとはいえアラガミはアラガミ。

油断した挙句にモグモグされましたなんて言った日には両親に合わせる顔が無い。

 

まぁその両親、合わせる顔が無いんだけどな。

 

ハッハッハ、イッツ・ア・古参ジョーク。

ウケも取れた所でお面頂戴、首とか言わないのがお約束。

 

顔を失ったオウガテイルがよろよろと後退する。

流石の生命力と言いたいところだが、残念ながら俺の技量のおかげだと言わざるを得ない。

 

仕留めちゃったら捕喰してもアラガミバレット手に入らないからな。

それなりの数が溜まるまでは生きていてもらわなくては困る。

俺の両親の時とは違うのだ。

 

下がるために押し出された前足を叩き折り、前かがみになった所で尾を斬り飛ばし。

逃げる事も抵抗する事も出来なくなった所で悠々と神機をプレデターフォームへと変形させていく。

 

そして捕喰。また捕喰。さらに捕喰。

重ねて捕喰。加えて捕喰。三、四が無くて五に捕喰。

 

うん、中々に凄まじい絵面。

いくら仕事だからとはいえ、流石にこの光景は両親には見られたくないな。

 

まぁその両親、合わせる顔が無いんだけどな。

 

ハッハッハ、イッツ・ア・古参ジョークその2。

所謂"天丼"と言うやつである。

 

ウケも取れた所で御首頂戴、"討ち取ったりー"と心の中でお約束を叫ぶ。

 

お約束は大事だからな。極東の古い文献にもそう書いてある。

いい大人がやると恥ずかしいから声には出さないけど。

 

「相変わらずエグい事しますね…そんなだから陰で感情の無い神機兵とか言われたりするんですよ。」

 

おっと、時間を掛け過ぎたか。

いつの間にかやってきたアリサの声で現実に戻る。

 

 

…ちょっとタンマ。

"感情の無い神機兵"って何だよ。

 

感情なんて普通にあるに決まってるだろ。

人は機械じゃないんだぞ。

 

そんな人間、居るなら是非ともお目にかかってみたいというもの。

俺が言葉を話せない云々といい、どいつもこいつも何と言ったらいいものか…

 

「………………………」

「…ど、どうしました?何か言いたそうですけど…」

 

いや、やっぱりいいや。

いい年した大人が"私喋れるんです"とか、当たり前の事過ぎて一々言う方が恥ずかしい。

 

まぁその内誰か気付くだろ。

普通に考えれば至極常識的な話なんだし。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部の神機保管庫。

シャワーで汗を流してスッキリした後、チューハイ片手に買ってきた飲み物を二人に差し入れする。

 

「戻ってきたね…ってもう、キミ本当にお酒大好きだよね。」

「しかもこの見た目でそこまで強くないって話ですからね。何杯飲んでも顔色一つ変わらなさそうな印象ですけど…」

 

違いますぅ、これはれっきとした緑茶ですぅ。

人をアル中みたいに言わないでくださいよぅ。

 

お酒とウメボシだかを混ぜてある"お茶割り"っていうやつだけど。

まぁウォッカとジャムを混ぜたロシアンティーみたいなものだな。

 

屁理屈言ってると思われたら嫌だから言わないけど。

本場のロシア人もいるので適当言うなと殴られそうだし。

 

ちなみにリッカに渡したのは毎度お馴染み冷やしカレードリンク。

シチューはお気に召さなかったようなので、ここは一つ無難に鉄板所を採用して御機嫌を窺う。

 

「あ、今度はちゃんとした奴を買ってきてくれたんだ。んーっ、やっぱりこのスパイスの刺激が癖になる…!」

 

一瞬怪訝そうにラベルを確認したものの。

自身の好物と分かるや否や、早速嬉しそうな顔で封を切って中身を堪能する。

 

「この人の味覚も大概ですけど。リッカさんも負けず劣らずアレな味覚ですよね…ゲホッ!?」

 

年相応に可愛らしく味わうリッカに眼福と思っていたのも束の間。

クピリと手渡した缶に口付けた途端、ゲホゲホとアリサがむせ返る。

 

「な、何ですかこれっ…!甘じょっぱい味が炭酸に乗って口中に…!」

「あー、それってもしかしなくても例のハヤシドリンク…キミ、次から誰かに差し入れする時は相手の希望を聞いてからの方が良いと思うよ。」

 

やだよ面倒くさい。

というかジュース一つ差し入れするのに男がそこまで気を遣ってたら逆に気持ち悪くないか?

 

ヒバリに差し入れする時のタツミじゃあるまいし。

俺だったら下心でもあるのかと普通に警戒してしまうよ。

 

まぁ本人的には色々気を引くために考えてるんだろうから言わないけど。

人の恋路に嘴を挟むほど俺は野暮な性格はしていない。

 

うん、話が脱線してしまったな。

 

夜遅いとまでは言わないが、時刻は既に酒が飲めるくらいにはいい時間。

特に問題が無いようならば、さくっと結果だけ聞いて部屋に帰りたいところである。

 

チラチラと視線を端末に向け、それとなく説明を促す。

その視線に気付いて諦めたように溜息をつくと、アリサの咳き込みが落ち着いたのを見計らってリッカが話を戻していく。

 

「まぁ皆揃ったし、今日の検証結果の話をするね。と言ってもこれと言った問題点は特に無し、早ければ明日明後日には皆の神機に組み込み出来そうって感じかな。」

 

うむ、相変わらず仕事が早い。

これが出来る女性というものか。

 

俺の神機の方は後回しにされてるみたいだけど。

まぁ今言っても話の腰を折るだけなので黙っておこう。

 

「ただ、さ。問題は無いんだけど…一応聞いてみてもいい?」

 

ん?何か気になる所でもあったか?

試験した本人的には別にこれと言った問題点は無さそうだったが…

 

「キミ達さ、リンクバーストの誘導弾で遊んでたりしてないよね?」

「わ、私は遊んでなんかいませんよ!寧ろ遊んでた疑惑があるのはこの人の方で…!」

 

半ば呆れ気味に向けられるリッカの疑問。

瞬間、何かを察したのか慌てた様子で否定しながら俺を指差してくるアリサ。

 

俺はというと向けられる指を見つめながら特に焦る事無く酒を飲む。

傍から見ると開き直っているようだが、身に覚えが無い以上特に狼狽えるような話でもない。

 

やった事と言えば思ったより大量にアラガミバレットが入手出来たので乱れ撃ちしてみただけの事だし。

 

前後左右に上下を加えて、文字通り雨霰の如くの連続発射。

面白…もとい、不思議な事にそのどれもが勢いよくアリサに向かっていくのだからたまらない。

 

ちなみにリンクバーストには元々リミッターが付いており。

過剰に撃ち込まれた分は霧散するだけなのでその点については問題無し。

まぁだからこそ俺の方も躊躇いなく連射出来たんだが。

 

結果、テスト後半のアリサはほぼフルバースト状態。

濃縮アラガミバレットを撃って開放しても、四方八方からリンクバーストが飛んでくるので即フルバーストという有様。

 

最後の方は何故か回避を試みる方向にシフトしていたが。

躱したと思ったら背後でUターンしてぶち当たる様は中々に見物だったな。

 

一応言っておくがこれは遊びではない。

新装備に関するデータ収集という歴としたお仕事。

 

だから俺も真面目にレポートにこう書いた。

"アリサの回避率:0%"と。

 

俺?躱そうとしてないからわかんない。

 

「まぁ怪我も無かったし、これはこれで貴重なデータになるから今回は目を瞑るけどね。」

「違います!誤解ですって!~っもう!貴方が真面目にやらないから私まで…!」

 

何を言う、真面目にやったからこそこのレポートだぞ。

ちょっと表現を変えているが、書いてる事は必中って意味だからな。

 

涙目で怒っている様を見るとちょっと申し訳ないような気もするが。

まぁ俺もミッション前に段ボール持ってる所をからかわれたし、おあいこという事にしてもらおう。

 

………

 

ちなみにこの後。

アリサが通りがかったルーキーにチクったせいでシバかれた。

 

-弁解?聞く訳ないじゃないですか。女の子をいじめた罪は重いんです。-

 

ちくしょう、一方の言い分だけ聞くのはズルいぞ。

聞かないにしてもせめて弁解くらい言わせろ。




乱れ撃ちして荒ぶる無口さん。
撃ってる時は当然無表情の鉄仮面。

リンクバーストされる方は結構プレッシャーが凄そうですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。