無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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無口さんは同じタイプの人に出会った事がありません。
もしそんな人に…

Q1."私、喋れるんです"と言われたら?
A1.何言ってんだコイツと呆れます。

Q2."私、()()喋れるんです"と言われたら?
A2.そうだったのかと驚きます。

たった二文字でこの違い。
文章って難しい。


無口な無口な新装備3

「…なるほどね。道理で得体の知れないと評してなお、ヨハンが最後まで手放さずにいた訳だ。」

 

時は少し前に遡り。

 

皆が寝静まった深夜のラボラトリ。

画面に表示されたいくつかの報告書を確認し、腑に落ちたように一人呟く。

 

先日彼女に告げた通り行っていた彼の身辺調査。

 

ツバキ君からの報告も含め、表向きの調査結果はシロ。

これと言って不審な点は見つからず、あくまで彼自身の独断によるものと途中まで決めかけていたのだが。

 

進展のきっかけは、きっかけとは言えない程とても些細な事。

 

調査も一区切りつき、端末内の不要なファイルを整理していた所。

ふと削除フォルダが空になっていなかった事が何とはなしに気になった程度の事。

 

「ヨハンにしては珍しいと思ったんだ。私と違って几帳面な彼が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

権限を駆使して参照した機密情報に、可能な限りサルベージして復元した削除済みの指令書。

そのいずれにおいても黒と断言するにたる証拠はなかった訳だが。

 

「まさに灯台下暗しと言うやつだ。それともこれは星の観測者の名の通り、上ばかり見て足元が見えていないというヨハンからの当てつけかな?」

 

既にこの世にはいない旧友からの皮肉。

はたしてそれが彼の真意かどうかを知る由は無いが。

 

一人納得してしまったがために思わず自嘲気味な呟きを漏らしながら。

 

捨てられていた筈のファイルに掛けられたロックを解除し。

アクセスに必要な正規の支部長権限のコードを打ち込んで。

 

開かれたファイルの内容に一通り目を通し。

ここに至って黒幕は()()のだと確信を得た。

 

「結局のところ、私もヨハンも彼という人間を正しく評価出来ていなかったという訳か。」

 

人呼んで、"感情を持たない神機兵"。

 

何も語らず、何も感じず。

機械のように無表情のまま、アラガミを狩り続ける彼に付けられた最初の異名がそれだった。

 

だがそれは見方を変えれば、権力者にとっては何とも手駒に引き入れたい程の便利な存在。

 

こちらの指示に逆らう事も躊躇う事もなく。

命じられるままに力を振るうその様に、いつしか一部の人間は彼を"猟犬"と呼称するようになっていった。

 

私やヨハンもその一部に属する人間であり。

そして最後にヨハンは彼を"得体の知れない"と評してこの世を去った。

 

しかしその時の声に不快感はなく。

飼い馴らしたつもりの獣に信用されていないと忠告交じりの皮肉を告げて。

 

「そして今もなお、たった一人で動き続けているという訳か。」

 

表向きは、今は亡きかつての主の命に忠実に従い。

同時に裏側では、アラガミと化してるであろう友を呪縛から解き放つために暗躍し。

 

「さて、となるとどうしたものか。私の頼み…いや、極東支部支部長としての命令を素直に聞いてくれれば事は簡単に済むんだが…」

 

まず最初に思い浮かんだ案ではあるが。

恐らくこれが通じる可能性は限りなく低いだろう。

 

相手は本来であれば従い続ける必要のない故人からの命令を遂行し続けるほどの生粋の忠犬。

ヨハンに取って代わっただけの代行者の命令に従う方こそ道理が通らない。

 

下手を踏めばヨハンの時と同じように。

逆にこちらに何かしらの要求を突き付けてくるような事態になりかねない。

 

「となればやはり、今しばらくリッカ君に頼んで足止めしておいてもらう他無いか。やれやれ、また胡散臭い事を企んでいると皮肉を言われてしまうな…」

 

もっとも、言われた所で気にはしないが。

 

科学者たるもの、時には清濁併せ呑むくらいの気概が無くては務まらない。

それに比べれば信用の一つや二つ落ちるくらい、今更気にする程の事ではない。

 

端末を操作してメーラーを開き。

軽く文面について思案を巡らせた後、キーボードに指を走らせる。

 

 

…さて。

 

「事前に打てる手は打った。後は彼女が持ってきてくれた痕跡の解析結果を待つのみ、か。」

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部の神機保管庫。

神機とコードで繋がれた端末にひたすら何かを打ち込んでいくリッカの傍ら。

まるで中世の騎士のように神機を顔の前に掲げ構えて彼女の作業が終わるのを待つ。

 

「…よし、調整完了。これでオーバーホールは全部完了だよ。制御ユニットの調整もバッチリさ。」

 

コードを引き抜き、嬉しそうにそう話すリッカ。

その言葉を聞くのもそこそこに、改めて修理が終わった愛用の神機に目を向ける。

 

うん、やはりしっくりくる。

最近は新型神機ばかり使っていたが、俺的にはやっぱりいつもの旧型神機の方が馴染むような気がするな。

 

しかも今回はただ修理しただけにあらず。

 

先日無事運用に漕ぎ付けた制御ユニットと強化パーツに加え。

何でも榊博士から是非俺に試してもらいたいと渡された試作品が装備されているとの事。

 

…リッカからじゃなくて榊博士からか。

オッサンからプレゼント貰っても別に、な…

 

男にとってレディからのプレゼントほどモチベーションの上がる物はない。

嘘でもいいからリッカが作った試作品とか言ってくれればやる気が全然違うのに。

 

やっぱりあの人、その辺りの機微には疎いみたいだな。

まぁ見た目からして胡散臭いオッサンだから仕方ないか。

 

「ゴメンね、本当はもっと早く修理できるはずだったんだけど。榊博士がどうしてもっていうから再調整に時間が掛かっちゃって…」

 

あぁ、それは別に構わんよ。

上からのお達しに振り回されるのは整備班も神機使いも変わらんし。

 

「でも待たせちゃった分、腕によりはかけたつもりだよ。…どう、気に入ってくれた?」

 

上目使い気味に若干不安気味にそう聞いてくるリッカ。

 

愚問だな、可愛いに決まってる。

間違った、気に入るに決まってる。

 

いくら古参とはいえ、これが型落ちの旧型神機である事に変わりは無く。

性能面で秀でる新型神機の方に手を多く割くというのは当然の事。

 

寧ろ未だに旧型神機を使っている俺の方が異端なのだ。

 

にも拘らず、リッカは旧型神機に対しても新型神機と変わりないほどに手を尽くしてくれている。

それこそ上からの無茶ぶりで急遽組み込む羽目になった装備ですら、不備が起こらないよう寝る間すら惜しんでくれる程。

 

古参が酔狂で使ってる神機をここまで丁寧に整備してくれる技術者など、恐らく世界中を見渡してもそうそう居はしないだろう。

まったく、本当良く出来た整備士様とお近付きになれて幸運だ。

 

ありがとなリッカ。

もっとも、口にするのは恥ずかしいから直接言わずに誤魔化させてもらうが。

 

「わわっ、ちょ、ちょっとキミ…!まだこの癖直ってないのっ…!?」

 

わしゃわしゃとやや乱暴気味に頭を撫でる。

照れ隠しが過ぎて少し力を入れ過ぎたのか、リッカが戸惑いつつも不満の言葉を口にする。

 

「もう、相変わらず人を子供扱いするんだから…」

 

実際子供だからな。

たった数年の違いとはいえ、成人しているかどうかは天地ほどの差があるのだ。

 

アリサくらいに発育が良ければ大人だとゴリ押せない事もないだろうが…

 

この話は止めようか。

 

ハルオミみたいに査問会に呼び出されてしまう。

大人たるもの、軽々な発言には常日頃から気を付けなければならんのだ。

 

……………………………………………………………………………………………

 

出撃前に行われる講習タイム。

資料をモニターに映しながら、リッカが神機に組み込まれた装備について説明していく。

 

「今回榊博士から渡された装備なんだけど…端的に言えばこの前試してもらったやつの性能を尖らせてみたって感じだね。」

 

リッカ先生の説明曰く。

 

先に俺やアリサが試していたのは誰が使っても同じように強化が得られる汎用的な物であったが。

今回俺が身に付けているのは大幅な強化と引き換えに何かしらのデメリットを抱えるようになったという代物。

 

「君が今付けているやつはアラガミから奪ったオラクルをそのままエネルギーとして消費しちゃうタイプだね。この前試してもらったやつよりもオラクル細胞の活性効率は上がるけど、代わりに銃型神機使いに供給するためのオラクルカートリッジの溜りがかなり悪化しちゃうんだ。」

 

ちなみに話を聞くにその逆タイプもあるらしい。

なんでも吸収効率が上がる半面、逆に自身に投与された偏食因子の活動を鈍らせてしまうとか。

 

まぁ今回の任務は俺一人。

いつもの旧型神機を使うので、吸収効率が落ちたとしてもそもそもデメリットにはなりえない。

 

今も昔もずっと一人部隊だったからな。

ぼっちな戦いには慣れている。

悲しくなるから考えるのはこの辺にしよう。

 

「一応補足しておくと、これ付けてる間はお腹が空きやすくなるっていうのも欠点といえるかな。アラガミを攻撃する機会が少ないと消費するエネルギーの方が大きくなっちゃうんだけど、当然不足分は持ち主の身体から持ってかれちゃうんだ。一応リミッターも付いてるから神機に喰い潰されちゃうようなことは無いけどね。」

 

妖刀じゃん。持ち主の身体からエネルギー持っていくとか魔剣かよ。

何なら神機も刀身によってはアーカイブのアニメに出てきても違和感ないしな。

 

まぁリミッター付きならダイエットとかにも使えそうだな。

聞いてるかそこのプニシスターズ。万が一聞かれたら殺されそうだから言わないけど。

 

閑話休題。

話を戻そう。

 

「デメリットとしてはそんなところかな。でもその分強化されるのは筋力や肺活量だけじゃなく、いわゆる五感の方も鋭くなる。そうだね、例えるなら…何というかこう、勘が鋭くなる的な効果も期待できるよ。」

 

何という抽象的な表現。技術者の発言とは思えんぞ。

もしかしてキミ、また徹夜してたりしないか?

 

「そ、そんな目で見ないでよ。仕方ないじゃない、良い表現が思い浮かばなかったんだから…」

 

恥ずかしがるくらいなら無理して例えなきゃいいのに。

まぁ追い打ちをかけるのも可哀そうだから黙っておくか。

 

要するに攻撃を受ける直前にキュピーンとか閃くやつだろう?

OKOK、アニメや漫画で見た事あるから何となくイメージは付いたよ。

 

 

ふむ、せっかくだから。

アーカイブからSE(サウンドエフェクト)でも引っ張ってくるかな。




機械音声で"スタンバイ"と言ってみましょう。
無口さんのモチーフです。

長くなったので区切ります。
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