無口な無口な神機使い~別に喋れない訳ではないんだが~   作:猫丸飯店

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※注意※
ちょっと歪む無口さん。苦手な場合は中段読み飛ばして良し。

Q1.アラガミとは?
A1.オラクル細胞で構成されている存在。

Q2.オラクル細胞?
A2.アラガミの身体を構成している細胞。つまりアラガミ。

Q3.偏食因子?
A3.オラクル細胞の中に含まれてる物質。つまりアラガミ。

Q4.ゴッドイーター?
A4.偏食因子が投与されている。でも人間。

いきなり言いがかりをつけたりはしません。
どこぞの物騒なシステムとは違うのです。


無口な無口な新装備4

ここは通称"鉄塔の森"。

地域特有の気候と建物から流れる廃液の化学反応で、時折濃霧が発生して視界不良となるエリア。

そして俺が最も得意とするフィールドでもある。

 

今日の任務はコクーンメイデンの掃討。

近々大型アラガミをここに誘き寄せて討伐するらしいのだが、いつの間にかコクーンメイデンが大量に湧いていたのでそれを掃討するというのが今回の任務内容。

 

本来なら複数人で手分けしてのミッションとなるが。

ことこのフィールドであるならば俺一人で十分。

 

死角からの不意打ち強襲は俺の十八番。

加えて今回榊博士から渡された装備の性能試験にはもってこいの状況である。

 

リッカの説明通りであるなら。

この装備を最大限に生かすためには、とにかくアラガミを狩り続ける事が肝要である。

 

強靭な強化を得られる代わりに高いエネルギー効率を誇るオラクル細胞を惜しみなく喰い尽くすというこの装備。

多少間が開いても自身の身体で賄えるとの事だが、生憎俺はダイエットが必要な程無駄な肉は付いていない。

 

別にブレンダンのように日夜筋トレに励んでいるという訳ではないが。

このご時世と職業柄、余分な脂肪を付ける余裕など存在していないのだ。

 

嘘だと思うならルーキーを見てみろ。

毎度のようにお菓子貪っているくせに、二の腕は絶妙なプニ加減をキープしている。

 

アリサは…うん、言わないでおこう。

ルーキーが可哀そうになるからな。

 

現実ってやつは本当に容赦がない。

ただでさえ生き辛い世の中なのに、()()()()の格差社会とやらまで存在するんだから。

 

ニュアンスが変?

スマンな、日本語は不得手なんだ。

 

戯言を言うのはこの辺にしておこう。

極東支部で格差社会に悩んでいるのはルーキーだけじゃない。

 

逆恨みされて後ろからヘッドショットされましたなんて、笑い話にすらなりはしない。

土産話と言おうにも、両親もアホらし過ぎて苦笑する光景しか浮かばん。

 

まぁその両親、笑う顔どころか頭ごと噛み砕かれてるんだけどな。

 

アッハッハ。

まぁいい。

 

 

今日は俺が噛み砕く番だからな。

 

 

……………………………………………………………………………………………

 

作戦エリアには相変わらず濃霧が立ち込め。

ただでさえうっそうとした視界をさらに見通しを悪くする。

 

そしてそれはアラガミに置いても例外ではなく。

 

-グシャリ、ガブリ。-

 

背後から斬り潰し。

息絶える直前に捕喰して体内のオラクル細胞を活性化させる。

 

ますます深まる霧の中。

不吉な音と共に迫る影。

 

周囲のアラガミが警戒態勢に入るものの。

立ち込める霧と偽装フェロモンによる隠蔽効果のせいで、未だ脅威の姿を捉える事が出来ずにいるアラガミの群れ。

 

-グシャリ、ガブリ。-

-グシャリ、ガブリ。-

 

一匹、また一匹。

何に襲われているのかもわからないまま、何をする事も出来ないまま塵芥へと化していく中。

やがて数を減らしたコクーンメイデンが地中へと姿を隠していく。

 

その行動は、生物としては間違ってはいない。

 

地上にいるのは得体の知れない正体不明の食神鬼。

こちらから姿を見る事が敵わない以上、無防備に地上にいてはその身を供物と捧げているのも同然で。

 

だからこそ、彼等は逃走を選択した。

抵抗も出来ずにただ殺されるくらいなら、縄張りを放棄してでも生き延びるという選択を選んだのだ。

 

その行為こそが癇に障る。

 

生き延びるために喰い殺しにくるのならばまだしも。

生き延びるためにコイツ等は逃走の道を選んだのだ。

 

人喰いのバケモノ風情が。

一丁前に人間みたいに命を惜しみ始めるとは。

 

まぁ畜生の群れなんぞ、最初から逃がすつもりはないけどな。

 

シオですら生きたいと言ってくれなかったのに。

お前ら如き、生かしておく筈がないだろう。

 

 

地中に神機を突き立て、地面ごとアラガミを捕喰する。

無防備な移動中の状態を襲われたそれは、成す術も無く土の中で神機の牙に噛み砕かれる。

 

うん、美味美味。

身体中に力が満ち溢れてくるようだ。

 

何と表現したらいいものか。

地中に潜って見えない筈のアラガミが、まるでソナーでも使っているかのようにはっきりその位置が見える。

 

なるほど、これが制御ユニットや強化パーツによる感覚増幅の効果と言うやつか。

勘が鋭くなるとかいうリッカの言葉は半信半疑だったが、これは確かにそう表現するより他はない。

 

位置さえわかるのなら事は単純。

戦闘の意志を無くして逃亡するアラガミの背中を片っ端から喰らい尽くすだけ。

 

時たま地上で抗おうとするやつもいるにはいるが。

そういう奴はご褒美に生きたままコアを引き抜き捕喰する。

 

そして喰らえば喰らうほど細胞が活性化していくのを実感し。

より強くなった感覚に従い、さらにアラガミを喰い殺す。

 

美味い、美味い。

無論直接喰らっている訳ではないが、神機を通してアラガミの味が舌先に染み渡っていくようだ。

 

 

 

 

 

おや?

 

 

いつの間にかアラガミの気配が無くなったな。

 

これはしたり。

俺としたことが些か興が乗り過ぎたか。

 

 

餌さえ残しておいたなら、いくらでも増やしてれたのに。

 

………

 

一通り小型種を喰い尽くし。

命の気配がしなくなった作戦エリアでしばしの休憩と洒落込んでいた所。

 

風と共に感じるのは()()()()()()()アラガミの気配。

オカルトじみた表現だと分かってはいるが、今の俺にはそうとして言いようがないその気配。

 

辿るように。

導かれるように。

 

辿り着いた先にあったのは壊れた神機。

その傍らには風雨とオラクル細胞の侵食でボロボロになった、腕輪と思しき金属の塊。

 

つまりは元御同輩の成れの果てと言うやつだ。

もっとも、神機の劣化具合を見るに俺が神機使いになる前の人間のようだが。

 

まぁいい、重要なのはそこではない。

 

それらは通称"遺された神機"と呼ばれており。

極力可能な限り回収するよう、各神機使い達に通達が出されているが。

 

これは駄目だ。

もう手遅れだ。

 

経年劣化によって中枢を制御する部品が破損しており。

そこから垂れる汚濁のように黒ずんだオラクル細胞が、少しずつ朽ち果てた腕輪の方へと這い寄っている。

 

神機使いと一体化していたその腕輪。

そこには当然、神機と相性が良かった神機使い本人の細胞が存在しており。

 

それが触れ合った瞬間、オラクル細胞が元神機使いを飲み込んで一気に増殖、変質し。

晴れて新しいアラガミが爆誕という訳だ。

 

リンドウの時のように。

リンドウの時のように。

 

脳裏に浮かぶのはあの光景。

 

生きたいと絞り出すように言葉を吐いたリンドウと。

黒い瘴気と共に変貌していくリンドウの身体。

 

きっと早晩、コイツもあれと同じ末路を辿るのだろう。

 

あの時のリンドウの時のように。

何処かの無能がヘマを晒してくれたあの時のように。

 

あの時のリンドウのように、リンドウのリンドウのリンドウのリンドウの--

 

 

-グシャリ-

 

 

 

()()()

 

今日のミッションで実感したが。

やっぱり喰うならアラガミになってからだな。

 

いくら神機使いが人工アラガミと言っても所詮はアラガミの成りそこない。

本物の味には遠く及ばないな。

 

その点クソトカゲならその心配はない。

何しろとっくの昔にリンドウがアラガミになった後である。

 

フフフ。

 

フフハハハ。

 

アハハハハハハハハハハハハ。

 

本当に。

本当にリッカには感謝の言葉しか浮かばない。

 

リンドウを救えなかった俺みたいなクズに。

今一度あのクソトカゲをブチ殺す力を授けてくれるなんて。

 

これは是非とも何か礼をしなくてはならないな。

 

紳士たるもの、世話になった相手には惜しみなく謝辞を尽くすもの。

とはいえ、これと言って今すぐ思い当たる物はないんだが…

 

そうだ、それこそクソトカゲのコアとか喜びそうだ。

レア物である事はほぼ確定だし、仕留めた暁には是非ともいの一番に生きの良いのを持って行ってやろう。

 

そうして忌々しいクソトカゲをブチ殺したその後は。

ゆっくりとリンドウをアラガミから戻す術を探して…

 

 

 

 

 

…ブチ殺したその後は?

 

 

リンドウをアラガミから戻す術を探して…

でもリンドウはクソトカゲで、そいつはもう殺した後で…

 

クソトカゲはアラガミだからリンドウじゃないけれど。

アイツはリンドウを喰ったから実質リンドウであって。

 

そいつを殺してしまったらもう二度とリンドウを助ける事が出来なくなる訳で…

 

 

…俺はリンドウを殺そうとしている?

否、俺はリンドウを助けようとしてて。でも助けられなかったじゃないか。

 

…俺はクソトカゲを生かそうとしている?

否、俺は仲間を喰った畜生は生かしておかない。だから迷わず殺せばいいだろ。

 

リンドウを生かして、アラガミは殺す?

そうだ、リンドウをアラガミから戻す事が出来れば良いだけの話で。その前に誰かがリンドウを殺すだろうな。誰かがヘマをしたせいで。

 

だが今なら何とか出来る。

誰にも見つからなければいいだけの話なんだからな。

 

そうだ、リンドウが誰にも見つからなければいいんだ。

そのためにも、誰よりも先に俺が見つければ良いだけの話で。

 

そしてリンドウを喰ってくれた畜生を殺しておけば。

誰にもリンドウが見つけられることは無いし、リンドウも誰も殺さなくて済む。

 

そうしてからゆっくりと、リンドウをアラガミから戻す術を探せば…

 

 

 

 

 

「………………………………………………」

 

 

 

 

 

まぁいい、今日の所は考えるのは止めようか。

 

我ながらどうやら少し疲れているようだな。

こういう状態で何かを考えたってまともな思考になる訳がない。

 

それにこの装備は空腹になりやすいとも言ってたし。

 

きっと脳に糖分が不足してきたのだろう。

何だかルーキーみたいな言い草だな。

 

 

とりあえず、リッカへの礼から先に済ませてしまおうか。

 

……………………………………………………………………………………………

 

ここは極東支部の神機保管庫。

 

「ぷふぇっ!な、何これっ…苦くて辛くて粘っこい…!」

 

目の前でリッカが四つん這いになって嗚咽する様を何とも言えない様子で見下ろす。

 

とりあえずここ最近のリッカがお疲れだというのは知っていたので。

榊博士から横流…融通してもらっていた栄養ドリンクをお礼代わりに差し入れしたのだが。

 

結果はご覧の有様。

中身の入った缶を放り投げ、ぺっぺっと見栄も外聞も無く口の中の物を吐き散らかしている。

 

よほど凄まじい味わいだったのだろう。

顔を顰め、ゴシゴシと後味をこすり落とすように口を拭い続けるリッカ。

 

まぁこれ、効き目は凄いんだが普通に不味かったからな。

俺も今日のミッションの疲れが残っていなければ飲むつもりはなかったし。

 

「うえぇ、不快感しかないのに疲れは確かに吹き飛んだ気がする…そして何で君は普通に飲めてるの…?」

 

普通に飲めている訳ではないけどな。

これ二本目だけど、ぶっちゃけ不味いし。

 

それでも飲んでいるのは効果はまごう事無く本物だからなのと。

後は不味い飲み物を飲む時のお約束という奴である

 

何でも極東では"不味い、もう一杯"と言って二杯飲む伝統があるらしい。

伝統は大事、極東の古い文献にもそう書いてある。知らんけど。

 

それにリッカならワンチャン、冷やしカレードリンク的な扱いでいけるかなと思ったんだが。

まぁ結果は見ての通りである。

 

これなら栄養ドリンクとしてじゃなくて、サプリ的な扱いで差し入れた方がよかったかな。

良薬口に苦し、効能の方は折り紙付きなので最初からそういう風に飲んだのであればまた違ったかもしれないし。

 

「うぅ、口の中が気持ち悪い…ちょっとキミ、何か口直し出来る物持ってない?」

 

口直しか、まぁ持ってるぞ。

俺もこのドリンク不味いって知ってたからな。

 

普段の俺ならあまり食べ物渡し過ぎるのも贔屓になるかと気にするところだが。

今日は新装備のお礼も兼ねているので大判振る舞いも辞さない所存。

 

という訳で、ほい。

好きなのを選びたまえお嬢ちゃん。

 

懐から取り出したるはレーション、キャンディー、ガムの束。

それをさながら扇子でも開くように、片手でリッカの前に広げて見せる。

 

「…君の懐ってさ、相変わらず四次元ポケットみたいに物が出てくるよね。まぁいいや、とりあえずこの甘そうなキャンディーを貰おうかな。」

 

そう言ってリッカが手にしたのは緑色の包装に包まれたスティックタイプのキャンディー。

 

ほう、それを選ぶとはお目が高い。

 

わざわざ洒落で取り出した物の中からピンポイントに()()()を引き当てるとは。

流石は極東でも指折りの優秀な整備士様。一流の鑑識眼の持ち主だと言わざるを得ない。

 

「あっ、何か思ったよりスゥっとする香りだね。ミントキャンディーか何かなのかな。」

 

なるほど、ミントキャンディーか。

うんうんそうだな。ある意味極東原産のストロングミントとでも言えるかな。

 

いかん、このままでは吹き出してしまいそうだ。

顔を伏せ、この後起きるであろう光景に必死で笑いを堪える。

 

-パクッ-

 

食べた。食べたな。

さぁ来るぞすぐ来るぞ。

 

「…ぷふぇっ!?」

 

うむ、可愛い。

その声がもう一度聞きたかった。

 

「こ、これってもしかしなくても…!あっ、キミどこ行く気っ!」

 

リッカが甘そうなキャンディー、もとい()()()飴を口にし。

本日二度目の"ぷふぇっ"を頂くのと同時に神機保管庫を飛び出す。

 

ハッハッハ、いやぁ良い物を見させてもらった。

中々可愛らしい驚き方だったぞリッカ君。

 

「待てぇ!キミ、今日という今日は本気で許さないからね!」

 

後ろからリッカがアラガミもかくやの形相で追いかけてくる。

 

手にしているのは真っ赤なレンチ。

別に猟奇的な意味合いの色ではないのだが、捕まったら多分そういう意味合いが付与される事だろう。

 

とはいえ、残念ながら今日に限ってはその心配は杞憂というもの。

何しろ今の俺は制御ユニットの効果で身体能力が強化されているからな。

 

スマンなリッカ、別に甘いのだけ渡しても良かったんだが。

 

ここ最近のリッカは働き詰めだったからな。

たまにはこういうしょうもない事するのも良い息抜きになると俺は思う。

 

俺も見ていて楽しいし。

誰も困らないWin-Winと言うやつだな。

 

捕まったら瞬間バイオレンスムービーに化けるけど。

まぁ捕まらなければどうということは無い。

 

俺は若いとはいえいい大人。

子供と違って勝算無しに悪戯に及んだりはしないのだ。

 

という訳で。

さらばだレディ、また会お…

 

-ガシッ!-

 

「捕まえたっ!もう逃がさないからね!」

 

…あれ?何で追いつける?

アラガミ相手に大立ち回り出来るくらい身体スペック上がってるのに。

 

もしかしてそのレンチにも制御ユニット組み込まれて…あ。

 

 

そういや制御ユニットって()()()()()()()()()()んだったな。

今神機なんて持ってないんだから効果なんてある訳ないか。

 

アッハッハ、マジウケる。

我ながらこれはやってしまった。

 

俺とリッカじゃリッカの方が足速いもんな。

小細工無しのかけっこならそりゃ俺が逃げ切れる訳がない。

 

反省反省。

ほら、ちゃんと反省したから--

 

 

…誰か、助けてくれないか?




いつも通りの無口さん。
アラガミが絡まなければ無表情だけど愉快な人。

バグった時のメンタルリセット。
再起動は全てを解決してくれる。

ただし心の負債は溜まる模様。
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