ああ…今思えば、本当にあいつなんか連れてこなければよかった。
「やめろ!確かに…闇結晶の魔力を吸収すれば魔王を倒せるだけの力が手に入るかもしれない…でも!魔王を倒すためにお前の命が散るなんて間違ってる!」
「うるせえ。こん中で一番社会的地位が低いのが元ニートでろくに魔法も使えず武器も持てない俺なんだ。俺が死んだところで世界は回り続ける。」
「それに」
「魔王を倒したバケモンみたいなやつがすでに死んでるってなったらそんなバケモンを恐れる必要もなくなる。お前も金貰って俺みたいにニート生活送れるんだ。悪くねえだろ?」
「ふざけるな!みんなで生きて帰ろうって言ったじゃねえか!」
「今まで散々親に嘘つきまくって生きてきた俺が約束なんざ守るとでも?そろそろ魔道士様々が命懸けで貼った拘束魔法も解かれる。そろそろ話は終わりだ。」
本当に…あいつは自分勝手なやつだ。
まだ勇者になったばっかの頃、年齢1桁の頃の友達であるあいつを旅に誘った。
あいつのお母さんは「こんな穀潰しを旅に連れて行っても…」って言ってたけど、俺はあいつの唯一の友人として自信満々に言った。
「俺がニートのあいつを魔王討伐の英雄にさせてやりますよ!」
あいつは本当に馬鹿だった。
街から出て、魔物とあったとき、あいつが初歩的な魔法も使えないことを知った。
戻って武器を調達して、戦ってみたけど重いって言って投げ捨てやがった。それが村周辺のボスモンスターに当たったときは二人で全速力で逃げた。
武器は使えない。魔法も使えない。逃げ足だけは早いけど、それでも俺に敵わない。
はっきり言って、足手まとい以外の何者でもなかった。
それでも俺はあいつを信じてずっと連れてった。
新しく仲間ができたとき、あいつを置いてこうって言われた。それでも俺は連れて行った。
あいつは、俺らが寝たあと、必死で武器を持つ訓練をしていた。魔法の練習もしていた。俺の持ってる剣を持ち上げてた。多分、今なら一番最初に買った剣くらいなら持てるようになってると思う。
いつの間にか、最初の炎魔法が使えるようになってた。
野宿の火をたくのが早くなったと思ったら、そういうことだったのか。
あいつはみんなよりも力がないのに、みんなに追いつこうと必死で努力してきた。
それでも、結局、自分で言うのもなんでけど、俺らの才能に敵わなかった。
最初は帰るって言って聞かなかったあいつが、魔王討伐まで付き合うって言ったとき、嬉しかった。
あいつは道中でいろんなものを拾ってくれた。魔大陸で食料が買えないとき、あいつが拾った果物のおかげで生き延びた。
思い出は…たくさんあるけど…でも…
あいつが生きていた…あの時が…一番なんだ…
「死に晒せ!魔王ぅぅぅぅぅゔあ゛あ゛あ゛あああああああああ!!!」
魔力の侵食であいつの面影が消えていく。
それと同時に…魔王の体に無数の穴が空いていく…
あいつの体がスライムみたいに溶けたあと…もう…口もまともに形が保てなくなったとき、声が聞こえた。
あ り が と う
ほんと馬鹿だよ…俺も…お前も…
なんであいつのこと止めなかったんだろう。なんであいつは死んでまで魔王を倒したんだろう。
そう…魔王を倒したときのことを振り返りながら、墓石に水を注ぐ。
国が立てた立派な墓石にあいつの名前が刻まれている。
ほんと、あいつが死ぬことになるって分かってたら、あいつなんか連れて行かなかったのにな…