なぜお前はいつもそうなのだ!!バーヴァンシー!!(パチモン) 作:ジンジャエール
「何故陛下はあの女を野放しにしているんだ?
2日前に不敬を理由に処断された男よりよっぽど目障りだろうに」
掃除が行き届き塵一つ残っていない通路にて一人の男が言った。それは純粋な疑問から来るものだったのだろう。何故なら陛下は例え自分の部下であろうと容赦しない。冷血であり絶対的な強者、それこそが影の国の皇帝であり夢の千年王国の頂点に立つ者。
「陛下はトリスタンがお気に入りだからなぁ
娘なんて言っちゃいるがほぼ毎晩部屋に入れさせる姿なんかみりゃ皆んな分かるだろうに…」
そう言って腕を組み替えながらはぁと口から息が漏れ出す。
この間処断された者の近くに居た男だ。
自分の部屋に戻って早々に全部ぶちまけてあの後大変だったと顔を青くしていた。
「古参の奴らが言ってた話じゃ尸魂界侵攻前に囲ってた女との子供なんだろ?性格以外は瓜二つだって言ってたぜ」
生理的嫌悪感を隠す事なく口を手で押さえる。
「俺はたとえ美人でも死んだ愛人との子供となんてごめんだね!」
「まぁ陛下は人外じみてるからなぁ俺らとなんて価値観が違うんだよ」
「シッお前らいい加減にしろ!…陛下の忠臣共に少しでも聞かれてみろ不敬で殺されてもしらねぇぞ」
そろそろまずいと口を閉じさせようとすれば何か背後で気配がする。
瞬間心臓を掴まれた様に動けなくなる。恐怖で足が固まると言っていたがそんなことがあるとすれば恐らく命の危機に瀕した時か陛下に対して謁見を許された時ぐらいだ。
それは恐らく死の恐怖。
「五月蝿いわよアンタ達」
聖兵の後ろに立っていたのは白いミニスカートから覗く太もも、艶のある黒髪に豊満な胸。
見た目だけならば喉から手が出そうになるであろう最上級の美少女。
「ば、バン」
その瞬間一瞬で聖兵が消し炭になる。バンビエッタは別に陛下の不敬について怒っている訳ではない。唯、そこに丁度いいサンドバッグが居たからに他ならないのだ。いつもは手頃な男を別室に連れ込み事に及んでからなんて面倒な事をしているのはそこら辺の聖兵をその場で殺そうものなら例の口うるさい男から長時間に及ぶお叱りを受けるからだ。
他の者がそんな事をしようものならすぐ様戦闘でも仕掛けてやれるのに不愉快なことにこの男にはどう足掻いても自分は勝てないと知っているから逆らえない。だからこうして大義名分さえ出来てしまえば嬉々として他者を殺害する。
「あぁぁ!!!イラつく!!なんなのよ!!」
ドタドタと足を歩かせながら不満を隠そうともしない様子を影から見ていた四人はまた始まったか…とため息を漏らす。
「バンビちゃんどうしたんですかぁ?」
「あぁ…アレだろ例の」
リルトットはあの白髪の女を思い出しながら手に持っている菓子を口に運んでいく。
「あー!あれね!」
ジジが食いつき恐らくこの間の陛下の前で行った不敬を思い出したのだろう。
自分達は別にそこまで忠誠を誓っているわけではないのでへぇ勇気あるなぁ程度だったが古参は気が気ではなかったのだろう。
その後の空気が異様にピリピリとしていた。
「はぁ?そんなの怒ってもどうにもなんないでしょうが」
「え、もしかしてバンビちゃん自分が指名されるとか思ってたんじゃ…」
「流石に頭がイッててもそりゃねぇだろ…ランスロット相手に勝てりゃぁ話は別だが」
「でもわかりませんよぉ?」
恐らくトリスタンの例を見て案に陛下に取り入れば後継者という立ち位置になれると言っているのだろうが、ジジはすぐ様冗談でも命知らずな事を言ったミーニャに対して否定に入る。
「いや、無理でしょ普通に不敬で殺されて終わりだって」
「それにバンビエッタじゃトリスタンの野郎と趣味違うし色仕掛けも気かねぇだろ」
「まぁでも結局次期皇帝はランスロットでしょ?陛下も流石にアレはないってわかってるだろうしさぁ、どうせ即位するにしても形だけの共同統治みたいになるに決まってるしぃ」
「ん、他の奴等もどうせそう思ってんだろ。誰も別に本格的に継がせるとは思ってねぇよ。要は俺達がここで何話しても無駄ってこった」
菓子を頬張りながらそう言ったリルトットに不審そうにキャンディスが問う。
「…リルトットアンタその菓子の山もしかしてまたグレミィのとこに行った?」
「さぁな」
「バッッカじゃないの?!!!あんな陛下が態々閉じ込めてるような怪物の所にアンタねぇッ!??」
目を背けていった言葉にキャンディスが少し言葉を溜めながら言葉を荒げる。
リルトットは冷静に咀嚼した菓子を飲み込みながら血飛沫が軍服に飛んでまたイラついた様子のバンビエッタと先程まで白い髪を靡かせていた女と比較する。彼女達は自分達は美しいかどうか聞かれればまず間違いなく当然だと答える気質の持ち主だ。それほどまでに自分の容姿に自信があり、また周りもそれが事実なので否定はできない。
バンビエッタが出るところが出ている正統派ヒロインの美少女だとすれば向こうは幻想的な雰囲気の妖精と戯れてそうな美少女。まぁどちらも見た目だけならだが。
顔の次に男が見るであろう胸は大きさでいえばバンビエッタの圧勝だ。思わず男ならばこちらに目が入ってしまう程にデカい。
しかしアチラは貧乳と言うには大きく豊満と言うのには小さ過ぎる言うなれば美乳。この中には陛下の趣味と違う女しか居らず、精々似ているところと言えばバンビエッタの残虐さぐらいだろう。つまりジャンルがそもそも違うのだ。それはつまり精々好みの差なのだから比べるだけ無駄と言うことを示している。
「そこ五月蝿いわよ!!」
「やばっ、ばれちゃった」
後ろでこそこそとしていたのがバレたのか大声を上げて此方を振り向く自称リーダー。これはまずいと全員で別々の方向に散っていく。
「ちょっと待ちなさいよ!!」
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トリスタンが〝また〟聖兵を3名ほど使い物にならなくしたと聞きため息を漏らした。
「ウハハハハッ!なんだ随分と顰めっ面ではないか!」
表から現れてたのは〝ガヴェイン〟同じ妖精騎士にして陛下より名付けて頂いたアルフェ・メンシェのメンバーの一人だ。
大柄な体のせいか何故か彼が来るたびに部屋が狭く感じてしまう。
眉間の皺を手でほぐしながら息を漏らす。
「彼女の悪辣ぶりを見れば顰めたくもなるよ」
「その割には随分と気にかけていると見える!神の戦士にはお見通しだ!」
リジェ・バロ…ベディビエールは別にトリスタンの事を嫌っているわけではない。
ある程度後継者と言う立ち位置に着いたものの責務は一応果たそうとはする。
陛下の為ならば努力を惜しま無いところにもまた好感が持てる。
だが下っ端といえど貴重な兵をこう何人も殺されてはたまらない。
そんな現状も相まってか大半のものはぽっと出の女が優遇されている現状に不満を持っているむしろない方がおかしいだろう。
勿論自分もないと言えば嘘になるだろうし仮にその立ち位置になる者は彼だと考えていた。
しかしそれはそれとしてとやはり多少なりとも陛下のご息女を名乗るならばある程度淑女の様に振る舞うべきではないかと考える。
が、その件についてはいくら本人に注意しても一向に直す気配はない。
〝ガヘリス〟その名を賜った男はいつも飲んでいるカフェオレを口に運びながら言った。
「嫌いな相手にほど依存している。よくある事だがまぁオシャレじゃねぇなぁ」
少し不快感を催すが別にこの程度なら会話の範疇、相手の男も別に自分に対して何か貶める目的で言っていないことはわかっているのでそこまで何も思わない。
ふと頭に思った事を問いかける。
「君はどうなの?今回の指名何か思う所はないのかい?」
「おいおい…俺が何か言うタイプじゃ無いの知ってるだろ?陛下の命令は絶対…アンタがいつも言ってる事じゃねぇか」
やはりこの男ならばそう答えるかと予想通りの言葉を言われる。
談笑をしていれば何やら扉に気配を感じて見ると少し目を見開く。
「タダイマ」
「あぁガレスか」
日頃陛下の命令以外で外から出る事は少ないのですこし驚く。
「おぉ!我が兄弟!姿が見えずよもやまた野良猫にでも遊ばれているのではないかと心配したぞ!」
〝妖精騎士ガレス〟
霊王の腕の一つでは無いかと城の中で噂されている者だが、そのことについて本人が言及する事は特に無いので周りも本人の前でその事について言うのは御法度となっている。
「アンタが外出なんて珍しいな、日頃不摂生だから寧ろいい事なんだが…割と気にしてたんだぜ?」
「ベツニイクトコロガナイカラドコニモイカナイダケ」
それを聞いてまぁそうだろうなと納得する。
「まぁ、アンタは飲み食いしたりするタイプじゃないしなぁ」
ベディビエールは何かいつもと違った匂いが立ち込めてくる事に気づきどこに行っていたのかガレスに問いかける。
「何か菓子の匂いがする…ガレスどこに行ってたんだい?」
するとガレスは何かゴソゴソと体をくねらせると何かが下に落ちる。
これは包装されたクッキーだろうか。
「トリスタンノヘヤニイッテオチャシタコレオミヤゲ」
「「?!!!!ッ」」
少し唖然とする面々は徐ろに下に落ちた菓子に目を合わせる。
トリスタンが?〝あの〟トリスタンが少女らしくお菓子作りをしてお茶?しかもガレスと?
「なんとついに我が兄弟にも春が…」
「いや、そうじゃないと思うぜ多分」
「そもそも物食べれたのか…」
毎晩呼ばれている理由
「それでね!お父様!えっとね!あのね!ユーゴとね!」
「そうか…それでどうなったんだ?…ふむお前達は仲がいいな」