なぜお前はいつもそうなのだ!!バーヴァンシー!!(パチモン)   作:ジンジャエール

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何故お前はいつも…26

──雀部長次郎には若い頃に深く愛した恋人がいた。

 

それはかつて千年前の戦いを知っている者には周知の事実であり、そして四十六室にとっては護廷の汚点として歴史の闇に葬り去りたい過去であった。

 

〝かつて雀部副隊長は当時敵対関係にあった滅却師と許されざる関係だった〟

 

千年前を知らない死神たちはその噂を鼻で笑い飛ばすが、山本元柳斎のみが目を閉じ口を噤んだ。

 

当時敵対関係にあった種族との恋の話はひどく観衆の興味を誘ったようで、誰が書いたのか知らないが五百年ほど前から流魂街や貴族たちの間で親しまれる書物となった。

 

一度その書物を書いた作者を処罰しなくていいのかと雀部副隊長に聞いた者もいた。

かつての恋人との蜜月を物語として消費されて、観衆を楽しませるものとして売られるなど不愉快でしかないだろうと。

 

しかし、帰ってきた言葉は意外なもので。

 

『誰であっても、あの情景を書き起こす事は不可能だろう』

 

生涯を副隊長として山本元柳斎に尽くすことを決めたあの雀部副隊長にそこまで言わしめた女に、皆は想像から言葉にすらできない美しい少女、国すら傾ける妖艶な女を連想し、彼らの美しい悲愛のサクセスストーリーを勝手に夢想した。

 

実際の所、この2人は恋人ですらなかった訳だが。

 

元柳斎はその様子に頭を抱えながらも当人である雀部が何もしなくていいと言うのでその言葉をしっかりと守っていた。

 

 

「雀部、まだ痛むのか?」

 

「申し訳ありません…」

 

椿を自らの手で殺したあの日が近づくたびに雀部の体はじくじくと痛み出し、あの時の情景が瞼の裏にこびりつくのだ。

可憐な女の柔肌を、神秘的な容貌を、憂を帯びた空色の瞳を。

 

そして、何より鮮烈に記憶に刻まれた自身の手で貫いた女の体の感触。肉の焦げる匂い。憎悪に塗れた表情で、こちらを射殺さんばかりに睨みつける滅却師の頭目の顔。

 

その記憶に蓋をして、2度と思い出さなければ楽なのかもしれない。

けれども雀部は確かにあの瞬間が幸福だったのだ。

 

山本元柳斎重國の役に立つために卍解を習得する日々も、その行間を埋めてくれる愛おしい少女の存在も、雀部の心は確かに満たされていた。

 

例え、敵対関係にあった滅却師の少女を、愛していたという事実があったとしても。

 

 

「元柳斎殿のお手を煩わせる訳には参りません、未熟な我が身を恥じるばかりです」

 

1番隊の庭には、美しい白い椿が咲いている。椿は1番隊の隊花ではないため、部下からは六番隊の庭には移し替えてはどうかと何度か進言を受けているが元柳斎はそれに首を横に振った。

 

雀部にとって椿は隊花ではなく、美しい思い出として残しておくべきものなのだ。

 

「鎮静剤が必要ならば四番隊に用意させてあるが」

「…申し訳ございません、そうさせていただきます」

 

このままでは行けないと思いながらもあの椿を手折ることを躊躇する自分もいた。

 

熱が引く感覚も、白い髪が乱れるあの情景も、目を瞑ればその情景がまるで現世でいう所の映画のように流される。

 

「何者だ…」

 

長年前線で総隊長の元に侍っていた雀部は気配で敵が自分を狙っている事を予測し、素早く斬魄刀を構えた。

 

 

「1番隊副隊長、雀部長次朗殿とお見受けする。」

 

そこには覆面で姿を覆う七人の賊に、雀部は「…こうも堂々とこの護廷に侵入する者がいるとは思わなかったが」と構えていた斬魄刀を抜く。

 

 

「我らが用があるのは山本元柳斎重国のみ…しかし貴殿は我が主人から見せしめとして抹殺を命じられてい……ッ、ランスロット様!?」

 

先頭に立っていた男の言葉を遮り西洋の剣が素早く雀部の眉間を狙う。侵入者の中でもこの男随一の手練れであることは剣筋から見てとれた。

 

距離を取るべく、すぐさまフードで全身を隠している男へ腹に蹴りを食らわせた。

 

「『厳霊丸』!!」

 

ことが急を要するため改号を省略し、レイピア状になった斬魄刀は主人の手足となるべく男へと雷の束を喰らわせる。

 

その雷は、たしかにフードの男へと直撃した。

 

(避けるそぶりを見せなかったのは妙だが…しかしまだ数が多い、この男を先に仕留めたのは良好……!?)

 

避けずその身に始解を食らった男には──傷が一つもついていなかった。

布越しに青い光が不気味に淡く光っている。

 

「なに!?」

 

服さえ傷ついておらず、驚愕と驚嘆が雀部を支配した。

それは、千年前に目にしたある種族の防御方法。

 

背後から筋肉質な大柄な体格の男が雀部の後頭部に拳を喰らわせようと動き出す。避けきれず、雀部の頭部を掠めた。

 

「滅却師、か」

 

現世に生き残った滅却師は石田家のみのはず、なぜこの場に滅却師が?見覚えのある技、一体どこに隠れ潜んでいた?

 

様々な疑問が交差するが、雀部はまず今はそれよりも目の前の敵に集中することにした。

隊長たちの隊舎はここから遠く増援はおそらく期待できず、一般隊士がいくら束になろうがこの者たちには敵わない。

それはわずかな間に剣を交えた雀部がよく知っていた。

 

「血が出たおかげかいささか思考がスッキリしたな」

 

その構えを取るのは実に千年ぶり。場違いに懐かしさを覚えながらも雀部は目の前の敵を屠るために全力を尽くそうと斬魄刀を構える。

 

「卍解───」

 




元彼と今彼の対決(なお本命は別にいる模様)

陛下「どうやら不愉快極まるこの書物を騎士団内で頒布した者がいるようだ…」

ポテト「ご安心を陛下。その者はすでに粛清済みです」

偽バー「いま頒布って言った??」


次回。偽バー、バンエッタからちょっかいかけられる。
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