2年ぶりに再会した親友が男を辞めてた上になんかおかしい。 作:あっぷる
俺には1人の親友がいる。親友という定義はよく分からない。そいつと趣味が合うのかと言われたら全然合わないし好きな食べ物も違えば性格が似てるというわけでもない。高校時代、謎の組み合わせと周りから言われるくらいには俺とそいつは違っていた。
けどそいつは別に評判が悪いとかそういうわけではなくただあまり存在感もなければ友達もほとんどいないみたいな感じだったからすごく意外と思われてるわけで・・・実際そいつのことを知ればみんなも考え方が変わると思うけど元々目立つのとかが好きでもなかったし適切な距離を今まで保ってきたつもりだった。少なくともあの日までは・・・
ある日を境に親友は学校に来なくなった。最初は風邪とかかと思って早く治せよとかメールを送ったが返信は返ってこず、1週間くらい休んで返信のない親友に対してさすがに心配になった俺はそいつの家を訪ねてインターホンを鳴らした。何気に家に来るのは初めてだなと思いながら尋ねると出てきたのは1人の女の子だった。
「あのっ・・・ここって緒山くんの家ですよね?」
「その制服・・・もしかしてお兄ちゃんのご学友ですか?」
「お兄ちゃん?」
「あっ、初めまして。お兄ちゃんの妹の緒山 みはりです!」
元気そうな子が出てきて家に招かれる。初めて知った。そいつに・・・緒山 真尋に妹がいたことを、高校生活で真尋は妹がいることなど一度たりとも話したことがなかったから。ただ家族の話題になると黙るやつではあったけど・・・
「どうも、クラスメイトの
「相原さんですね。それじゃあウチにどうぞ」
「それでえーっと・・・みはりちゃんでいいかな?真尋は?もう1週間休んでて連絡全くないけど元気にしてる?」
「あー・・・えっと・・・」
そう聞くと妹のみはりちゃんはバツの悪そうな顔をする。もしかして真尋に何かあったのか、重い病にかかってるのではないのかと心配になる。
「お兄ちゃん、何も言ってないんですね」
「何も言ってない?」
「お兄ちゃんに会っていきますか?多分会ってくれないかも知れないけど・・・」
「会ってくれない?それはどういう・・・」
とりあえず2階にある真尋の部屋に案内される。そこには大きく入るなという張り紙が貼っていた。
「お兄ちゃん、友達が来たよ」
「・・・・・・」
「お兄ちゃん!」
「・・・・・・」
「・・・やっぱダメか」
「やっぱダメって・・・」
「1週間前からお兄ちゃん、部屋に引きこもってしまって・・・」
「引きこもった!そんななんで・・・」
「ちょっ、相原さん」
「おい真尋!いるんだろ!開けてくれ真尋!」
その時、俺は珍しく冷静になれていなかった。そして知らないうちに真尋と距離ができていたことも。真尋の悩みに気がつけていなかったことも。真尋を知らないうちに追い詰めていたことも・・・知ってるようで何も知らなかった。そして久しぶりに会った真尋から
「・・・なんだ来たのか。葵」
「真尋・・・・」
返ってきたのは冷たい言葉だった。吐き捨てるようにそう言われた。歓迎されてない、明らかに嫌がられていて拒絶するような冷たい声・・・
「悪いが帰ってくれ、俺は忙しいんだ」
「忙しいってお前・・・どういう」
「もういいだろ!帰ってくれ!
これ以上・・・これ以上俺に惨めな思いをさせないでくれ。頼むから・・・」
「真尋・・・・」
初めて言われた真尋からの拒絶の言葉。何を言われたのか理解できなくて頭が真っ白になった。1週間ぶりに会えると思って会いに行ったらただ拒絶されて・・・
「お兄ちゃん・・・」
「もううんざりなんだ!優秀な妹と比べられるのも!学年主席のお前に比べられるのも!俺は・・・俺は・・・・頼む帰ってくれ」
そのあと、みはりちゃんから聞いた。みはりちゃんは陸上で成績を残すほどの運動神経抜群で頭も学年で1番良かった。真尋はそんな妹と比べられて育ってきたらしい。真尋の名誉のためにいうが真尋は決して頭は悪くない。真尋は良くも悪くも平均的な人間だった。成績も運動も普通。本人は運動が苦手とは言ってたけど側から見てもこいつ運動も勉強もできないなとまではいかなくとにかく普通だ。
「相原さんって・・・学年主席だったんですね」
「ああっ、特待生でな。成績維持しないと奨学金貰えないしな。学園生活続けるにも勉強はどうしても必要だったからな」
別に俺は勉強は好きではない。ただ勉強しないといけない環境で育ってきたからであって・・・でもその結果、真尋を追い詰めてしまった。
「みはりちゃん・・・真尋に伝えてくれ。悪かったと・・・」
「そんなっ!相原さんは何も悪くないですよ!事情が事情だから・・・」
「でも俺の存在があいつを追い詰めてしまったのは事実だ。だから俺はあいつを無理に学校に行かせるようなことはしない」
「けどそれじゃあお兄ちゃんは・・・」
「なんとかしてやりたいのも分かるが、今のあいつには休むことも大事なんだと思う。しばらくはそっとしといてやろう」
そして俺は真尋の部屋に行って一言だけ言った。
「真尋、元気になったらまた学校来いよな。俺はお前が来るのを待っているから」
それから高校卒業まで真尋が学校に来ることは一度もなかった。初めのうちは困惑してたクラスメイトだったがすぐに鎮静化した。原因がクラスメイトのいじめでもなければ俺以外に真尋と親しくしてる人もいなかったからクラスメイトも真尋をいなかったものとして扱っていた。
それを見た俺はすごく悔しかったけど俺自身が真尋を追い詰めてしまった手前何もできなかった。俺がもっと早く真尋が悩んでいることに気がついていたらもしかしたら・・・と何度も思うこともあった。それからも俺はこの生活を続けるためにとりあえず成績維持は続けた。そして・・・・
今は高校を卒業してバイトしながら大学生活を送っている。
とりあえず今は宅配のバイトをやってるが俺、あまり方向感覚がよろしくないことをバイトして知った。マップを見てもたどり着けるまでに時間がかかることなんてザラじゃない。大学のゼミの先輩に楽だし体力あるなら稼げるよと言われたけど当てにはならないものだ。だからこのバイトはそろそろやめることにしよう。さてととりあえず次で最後だな。ピザの宅配を・・・ゲッ!
「あの・・・このピザをこの方の家まで持っていってほしいんですけど」
「了解いたしました」
よりによってここかよと俺は思いながら家の住所を見てため息をつく。その住所は高校時代の親友の家の住所だった。あの日以来、真尋とは一度も連絡を取っていない。もう2年も経つのか、随分と疎遠になってしまった。会える距離のはずなのにもうずっと会ってない親友。両親は確か海外赴任してるんだっけ?もうそれは2年前の話だけど。
「今はどうしてるんだろうな」
今も変わらず引きこもってるのかどうかは俺も知らない。ずっと連絡してないし連絡する勇気もない。したところで何も返事は来ないかも知れないしまだあの時のことを引きずってるのかも知れない・・・
それに今更どんな顔してあいつに会えばいいんだよ。今ここで会っても気まずくなるだけだ。そう思いながら俺はインターホンを鳴らす。ピザの宅配ですと伝えると女の子がはーいという声を出す。この声はみはりちゃんかな?とりあえず真尋が今どうなってるかだけでも聞いておこう。
「どうも、ピザの配達です」
そこまで言いかけて俺は固まる。出てきたのは真尋でもなければ妹のみはりちゃんでもなかった。みはりちゃんより更に小さい女の子が出てきた。中学生・・・いやっ小学生くらいかな?と思いながらピザを取り出す。
「注文していたピザを届けに来たんですけど・・・」
にしてもこの子、見れば見るほど真尋にそっくりだ。真尋の背を縮めて髪を伸ばして女の子にしたみたいな。まあそりゃいくらなんでも真尋に失礼か。
「お姉ちゃんかお兄ちゃんはいる?料金もらいたいんだけど・・・」
「・・・あっ、ハイッ」
そう言って女の子はお金を出してくれた。ピザを頼むとか何かあったのだろうか。何かの記念日か?真尋の誕生日・・・じゃないもんな。じゃあ妹さんの誕生日とか?真尋の近況を知りたかったんだけど俺はこの目の前にいる女の子と面識はないし・・・
「それじゃあおつりね。じゃあこれで・・・」
「・・・おいっ」
「えっと・・・どうかした?」
帰ろうと思ったらその子に呼び止められてしまった。しかも「おいっ」って言われた。見た目じゃ分からないことってあるよね。
「そのっ・・・葵だよな?」
「・・・は?」
えっ、なんで俺の名前を知ってるの?いやっ、俺の名前は葵であってるけども。真尋か?真尋が教えたのか?いやでもあいつがわざわざ妹に・・・でも前来た時はみはりちゃんがいたし・・・じゃあこの子は誰なんだよ。
「えっと・・・なんで?」
「・・・オレの勘違いじゃないよな。いやっ、勘違いであって欲しかったけど。まさかこんな形でお前にまた会うなんてな」
その喋り方、しぐさには見覚えがあった。いやっ、見覚えしかない。俺の親友は困ったときには頭をかく癖があった。そしてその困り顔・・・
「まさかお前・・・」
「そうだよっ、オレだよオレ。
緒山 真尋だ」
2年ぶりにあった親友が男を辞めてて美少女になっていた。色んな意味で変わり果てた目の前の親友に対して俺は・・・
「どうしてこうなった」
としかいえなかった。
基本他力本願なので二次創作増えてきたらやめますね。