2年ぶりに再会した親友が男を辞めてた上になんかおかしい。 作:あっぷる
「よしっ、できた」
俺は自分の家で喫茶店の限定メニューであるモンブランを完成させていた。あのメニューは中高生から成人女性まで人気が高く喫茶店は連日賑わっていた。ひとまずかえでさんのアドバイスで形になったあれは無事に売れている。31日までの限定メニュー。今頃夕哉たちも忙しそうにしてるのだろう。
メニュー発案者としては休みたくはなかったが絶対に喫茶店には来るなと釘を刺されてるため予定通り俺はまひろの家に行くことにした。そういえばまひろはこういうイベントは嫌いとか言ってたな。浮かれるイベント、ハロウィンとかクリスマスとかバレンタインとか「リア充滅べ爆発しろ」とかぼやいてたのを思い出す。
果たしてまひろは今日のパーティーをどう思ってるのか気になるが・・・・
「着いてしまった」
再会した時のお泊まり騒動。そしてまひろの記憶喪失騒動。とりあえず今のところまひろの家に行くとロクなことが起こってない。今回のハロウィンパーティーが慎ましく終わればいいのだが・・・まあみはりちゃんこ友達も来るし何も起こらないだろう。
「よしっ・・・」
俺は意を決してインターホンを鳴らす。するとドアの向こうからまひろの声が聞こえてきた。入っていいという許可をもらったので上がらせてもらうことにする。ハロウィンパーティーで手が離させないのかと思いつつ俺は扉を開いた。
「と・・・ととと、トリックオアトリート!!!」
「・・・・」
扉を開けるとそこには猫のコスプレ?着ぐるみを着た親友がそこにいた。ハロウィンらしく仮装しているがお前こういう浮かれたの大嫌いとか言ってなかったか?めっちゃノリノリなんだが・・・
「って!!!なんで葵がいるんだよぉおおおおおおおお!!!」
「葵さん、いらっしゃい」
「こんにちはみはりちゃん。それで聞きたいことが・・・・」
「葵に見られた葵に見られた葵に見られた葵に見られた・・・・」
まひろは廊下の端っこに縮こまって戦意喪失していた。
「どうしてあんなことに・・・俺が来るの伝えておくってみはりちゃんそう言ってたような・・・」
「伝えない方がおもしr・・・じゃなくてサプライズになるかなーって」
「お前の仕業かみはり!葵呼ぶなら呼ぶって言えよな!何が悲しくて親友にこんな醜態晒さないといけないんだよ!とりあえずトリックオアトリートって言ったんだ。お菓子よこせ。さもないとイタズラするぞ。さーて何してやろうかなー」
そう言って悪人ヅラを浮かべるまひろに俺は・・・
「あーえっと・・・はいっ」
カバン中に入っているビニールに包んでいたモンブランを渡した。
「葵・・・これは?」
「俺が今バイトしている喫茶店で作った限定メニューのモンブラン。かぼちゃと栗を使って秋の味覚を楽しめるようにしてるんだ」
「ぐぬぬ・・・ちくしょーこれじゃあ葵にイタズラできないじゃねーか」
お菓子あげたのに怒られた、理不尽極まりない。しかしどうする?今のままだと夕哉に言われたミッションを実行なんてとても・・・
「ところでお兄ちゃん。今日なんだけど・・・」
「そうかっ、かえでちゃんやもみじも来るんだっけ?けどそれならなんで葵も一緒に・・・」
「実は・・・」
そこも話してなかったのねと思いつつ俺は現状何が起こってるのかについて教えた。
「実はお前と仲直りするために大学の友達に相談してな。流石に薬で女の子になったなんて言っても信じてもらえるわけないから中学生の従兄弟がいるって言ったんだけど・・・」
「なるほどな・・・待てよ親戚・・・」
何かを考え込んだかと思えば急にまひろは顔を青ざめる。顔面蒼白と言ったらいいのかとにかく顔色がどうした?
「どうかした?まひろ」
「いやっ・・・そのっ・・・なんというか・・・」
まひろが口を開こうとしたところでインターホンが鳴る。まひろは慌てて扉を開けようとするみはりちゃんを止めようとしたら時すでに遅かった。
「おっじゃましまーす。来たよ、みはり」
「こんばんはまひろちゃん!」
すると二人の女の子が入ってきた。なるほどこれがみはりちゃんの言ってた友達・・・って。
「「あああああああああ!!!!」」
「えっ!かえでに葵さんっ!どうかしたの!?」
入ってきたのはこの前夕哉が紹介してくれた女の子、穂月 かえでさんだった。それと横にいるのは・・・妹さんかな?男の子にも見えるけどなんか女の子っぽいし。
「もしかしてみはりの
「葵さ・・・じゃなくて
なんというか世間ってものは意外と狭かった。よく考えたらみはりちゃんって年齢で言えば高校生だから友達が高校生でも全然おかしくなかった。
「まあ喫茶店でね。ちょっと前までやってた配達のバイトやめて友達の紹介で新しく喫茶店でバイトしてたんだけど。その時にね」
「そういえばかえで、夏休みとか長期休暇の時はあそこでバイトしてたね。私は行ったことないけど」
「いいところだよ。みはりもまひろちゃん連れてきなって」
「そうだねー」
とりあえず女子同士の盛り上がってるトークに割り込むのも悪いしまひろのところに行くか。
「おーいまひ・・・ろ」
「むむむっ・・・・・」
まひろの隣にいる女の子はまひろの手を握って警戒するように・・・いやっもっと適切に例えたらあれだ。社会のゴミを見るような目つきでこちらを見てくる。初対面のはずなんだけど俺なんか悪いことしたか?全く身に覚えはないけど。手を握られてるまひろも困ってるし・・・
「あなたがまひろちゃんの親戚のお兄さんですね」
「えっ?あっ・・・そうだけど・・・」
あれっ?みはりちゃんサプライズでまひろに伝えてないって言ってたけどどうして俺がまひろの親戚のお兄さんってこと知ってるのだろうか?そう思ってたら目の前にいた女の子は俺に向かってこう言った。
「単刀直入に言います。私は絶対にあなたを認めません!」
「・・・・・はいっ?」
いきなり会って間もない子に全否定された。えっ、なに?ナニコレ。どう反応すればいいの?泣いたらいいこれ?なんかまひろもめちゃくちゃ困惑してるし。何があったこれ。
「もっ・・・もみじ!どうかその辺で!」
「まひろちゃんは黙ってて!私がガツンと言ってあげるから!」
そう言って目の前にいる子・・・もみじちゃんでいいのか?その子はガツンと言った。
「まひろちゃんの部屋にえっちな本を置くのはやめてください!本人に悪影響です!いくら親戚同士だからってやっていいことと悪いことがあります!」
「・・・・・」
これどう反応すればいいんだ。俺はエロ本なんて・・・じじぃの部屋には死ぬほどエロ本という名の資料や官能小説はあるが俺自身はそういうの持ってないし・・・おそらくまひろ本人のものだろうけど・・・・まさかお前っ!
「っっっ!!!(すまん、本当にすまん!)」
「とにかく部屋にあるエッチな本は段ボールに入れてるので処分してください。まひろちゃんがお兄さんの大切なものだからって言うから捨てずに取っておいてくれたんですよ!」
「わ、分かった。分かったから落ち着いて・・・」
「・・・こんな人放っておいてまひろちゃんの部屋に行こっ」
「あっ、待ってくれ。せめて葵・・・お兄ちゃんに話をさせて」
「いいからっ!ほらっ」
「ああああ、助けてくれ葵」
そう言ってまひろはすごい勢いで引っ張られていった。どうやらあの子は俺のことを親戚の妹の部屋にエロ本を置くクズだと認識されてるらしい。どうしてこうなったんだ。
いやっ、心当たりはある。おそらくまひろが誤魔化すために嘘をついたのだろう。この際それはどうでもいいんだが実際ありもしない事実を突きつけられるのは正直ダメージが大きい。緒山 真尋としてでなく緒山 まひろの友達としてなら仲良くしておきたかったんだけど・・・
「へーっ、なになに?葵くん、まひろちゃんの部屋にそう言う本置きっぱにしてたんだ」
「違っ・・・全て誤解っ!!あれは・・・」
「意外とむっつりさんだね葵くん。夕哉とは全く違うからそう言うの部屋に置かないのかと思ってたけど・・・」
「そ、それは・・・・いやっもうそう言うことにしておいてくれ」
「まっ年頃だしね。気持ちは分かるけどせめておじいさんの家だっけ?引っ越すときにエロ本だけでも回収しとくんだったね。意外と迂闊だよね。ねーっ、みはり」
「そ、そうだねーあはは・・・・」
「本当にお兄ちゃんがごめんなさいごめんなさいごめんなさい」とみはりちゃんの目がそう訴えかけていた。かえでさんにはそういうのは年頃だし仕方ないよねで理解してくれたけど妹さんには嫌われたっぽいなぁ。まあでもまひろの友達ならせめて現状マイナスになってる部分はどうにかして改善しないと。
「それじゃあ私たちは料理の準備でもする?」
「そうだね」
「葵くんはどうする?料理手伝ってくれる?あっ、そういえば喫茶店で親戚の妹と喧嘩したって言ってたけどもしかしなくてもまひろちゃんのことだよね」
「ま、まあ・・・そんなとこかな」
「それで仲直りは済んだ?」
「なんというか会っていきなりトリックオアトリートされたからお店の限定メニュー出したけど・・・余計怒られた」
「怒られた?なんで?」
「・・・乙女心は俺にはよくわからないからなぁ」
最も対象は乙女でもなんでもないけど。
「まひろちゃんにはサプライズでお兄ちゃんが来ること黙ってたから仮装見られて恥ずかしかったのよ」
「あー、なるほどね。それで葵くん。まひろちゃんとは仲直りできそう?」
「・・・善処します」
「がんばりなよー。仲直り出来なかったら夕哉の努力もパーになっちゃうからね」
喧嘩すらしてなかったのにどうして状況が来る前より悪くなってしまったのか。しかし今迂闊にまひろの部屋に行っても気まずくなるだけだしまずはどうにかして誤解をとかないといけないけど本当のことを話した時点でゲームオーバーだから無理ゲーだしそれを隠すためにおそらくまひろは俺をエロ本好きの親戚のお兄さんにしたのだろう。お陰で今大変なことになってるけど。
「できれば妹とも仲良くして欲しかったんだけどちょっと難しいかな・・・」
「本当にごめんね、葵さ・・・お兄ちゃん」
「気にしてない・・・と言ったら嘘になるけど今まひろの部屋に行くのは逆効果だろうし俺はこっちで二人の手伝いするよ。なんでも言ってくれ」
「そういえばみはりはこんなに美味い料理を作れるお兄さんいるならなんでお兄さんから教わろうしなかったの?」
「えっとそれは・・・・お兄ちゃんに喜んで欲しくて」
「ふーんそっか。みはりからよく話を聞いてたからどんな人か気になってたけどエッチな本が好きでもいいお兄さんであることに代わりはないねやっぱり」
そう言ってかえでさんは俺をフォローしてくれる。みはりちゃんの言葉もおそらく嘘ではないのだろう。対象が俺じゃなくて本当の兄に対してだけど。かえでさんの話を聞くとみはりちゃんもいきなりなんでもできてたわけではない。きっと料理もまひろに喜んで欲しくて始めたのだろう。なんかとても複雑な気持ちになる。治験に関しては家族と大学で活動してるメンバー以外で知るものは俺だけだ。
これについては今は黙っておくと言うことにしてるけど時が来たらいつか話さないといけない。まひろが男に戻ったときにでも・・・
「そうだ葵くん。この前話したこと覚えてる?」
「話って?」
「あたしの料理食べませんかって話。あの時の葵くんの料理、必要ないって言ってくれたけどせっかく本人が目の前にいて調理台もあったら女子としてやらないわけにはいかないよね。ねっ・・・みはり」
「そ、そうだねっ。それじゃあお兄ちゃんは適当に座っててください?」
「なんかみはり葵くんにぎこちなくない?」
「ギクっ・・・・」
まずい、元々俺とみはりちゃんは特別に仲がいいというわけではない。あくまでまひろの妹、向こうもまひろの友達程度にしか思ってない。もしかしてバレたか?これは・・・
「あーっ、わかった。別居してあまり会ってないから緊張してるんでしょ」
「そ、そう言うわけじゃ!」
「うんうん。仕方ないよね。だってみはりはお兄さんのこと・・・」
「もーっ、かえで!これ以上言うといくらかえででも怒るよ」
「ごめんごめん。悪かったって、じゃあ葵くんはお皿用意して待ってて」
「ああっ・・・それでいいなら」
みはりちゃん。まひろについてかえでちゃんに中学時代どんな話をしたのだろう。本人に聞かれたくないレベルで恥ずかしいことなのだけど俺が聞けばワンチャン教えてくれそう。さてと・・・
「・・・はぁ」
俺はリビングに座って頭を抱える。ここに来るまで問題は何一つなかったはずなのに気がつけば問題が増えていた。もう俺自身何を言ってるのかわからない。
今現状わかってるのは・・・
元々喧嘩はしていない。
→なのでまひろの家に行く必要もなかったが誤魔化すためにまひろの家に行くことを決める。ついでに夕哉に頼まれたミッションもこなさないといけなかったし。
→みはりちゃんがサプライズをしかけたけどまひろは結果的に怒ってしまいトリックオアトリートと言われたからモンブラン出すと更にキレられる。
→友達連れてきたと思ったら一人知ってる人だった上にもう一人は俺のことを親戚の妹の部屋に沢山のエロ本を置いているゴミクズだと思われてる。
・・・これ俺自身直接何もしてないよな。少なくとも俺からのアクションでマイナスになることしてないよな。なんでこんなことに・・・
楽しくなるはずのハロウィンパーティーは俺の中ではお通夜の状態になっていた。もう疲れたよ助けてくれ夕哉・・・
しかし頼れる友達の夕哉も俺のためを思ってバイトを頑張ってくれてる。どうしたらいいんだ俺は・・・
『可愛い親戚の妹とのツーショット頼むぜ。仲直りしたって証拠が欲しいからな』
この状況でまひろのとのツーショットに持っていけますか?いや無理だろ。どうしろというんだよ。俺は一人他人の部屋のリビングで孤立した状態で料理が完成するまでの時間を過ごすことになる。まあ完成したところで待ってる先も地獄なんだけど。
「葵くん、もうすぐで料理完成するからまひろちゃんともみじ呼んできてくれる?」
「・・・はいっ」
かえでさんにそう言われて俺はまひろたちを呼びに行くことにした。
楽しい楽しい楽しい楽しいハロウィンパーティーが始まりました。ここにいるほぼ全員が色んな意味で誤解していて状況がとんでもないことになっている。ちなみに今回も主人公はロクな目に遭ってないので本当にただ可哀想な人になってる。果たして葵の運命は!
次回!もみじ vs 葵 まひろ争奪戦!ぜってぇ見てくれよな。
※次回のタイトルはハロウィンナイト(後編)なので予告とは違う内容になることもあります。ご了承ください。まあ後編は前半以上にカオスなことになるんだけどな(白目)