#リプきたキャラにリプきたものを食べさせるSS書く 作:長串望
原作:魔法少女まどか☆マギカ
タグ:ガールズラブ クロスオーバー 美樹さやか 暁美ほむら フロイド・リーチ 乾パンマン シュールストレミング ニンジャ クロスオーバー?
Twitterでタイトル通りのハッシュタグで募集した結果、以下の通りとなりました。
・乾パンマン
・美樹さやか
・暁美ほむら
・バイキング形式
・フロイドリーチ
・パピモッチ
・たまごみそ
・サルミアッキ
・シュールストレミング
・よく熟れたトマト
どういうこと????????
私はただ顔のいい推しにしもつかれを食べさせる会の会員としてしもつかれが来るかなって魔が差しただけなのに……ありがとうございます。
この試練を乗り越えて、2023年の第一歩とさせていただきます。
#リプきたキャラにリプきたものを食べさせるSS書く
Twitterでタイトル通りのハッシュタグで募集した結果、以下の通りとなりました。
・乾パンマン
・美樹さやか
・暁美ほむら
・バイキング形式
・フロイドリーチ
・パピモッチ
・たまごみそ
・サルミアッキ
・シュールストレミング
・よく熟れたトマト
どういうこと????????
私はただ顔のいい推しにしもつかれを食べさせる会の会員としてしもつかれが来るかなって魔が差しただけなのに……ありがとうございます。
この試練を乗り越えて、2023年の第一歩とさせていただきます。
◆◇◆◇◆
見滝原市が誇るシティホテル、メトロポリス見滝原では、宿泊客のみならず一般客でも利用できるビュッフェ形式のレストランが好評を博していた。
しかし、メトロポリス見滝原自体が高級路線。本格的な料理が並ぶビュッフェもそれ相応のお値段がする。
一般女子中学生が気軽に来れるような、そんなチープな食べ放題などではないのである。
「はあ……なんかこういうところって、ちょっと気後れするわぁ……」
その高級レストランのロビーで間抜け面をさらしているのが、財布の中身が帰りのバス代くらいしか残っていない魔法少女こと美樹さやかであった。
さやかは月々のお小遣いをやりくりして買い食いやCDを購入するので精いっぱいの庶民的魔法少女である。貯蓄という概念の発見に至っていないこの少女は、食べれば消える食事においそれと紙幣を出せるような身分ではなかった。
しかしそれでもさやかはここに立っていた。
それも、れっきとした客としてここに来ていた。
その手元には、大事そうに抱え込んだ一枚のチケット。
さやかの先輩魔法少女にあたる巴マミが、商店街の福引で見事当選した二等のペアチケットである。
しかしその当選した本人は、「ペットは同伴できないから、残念だけど」と後輩のさやかとまどかに譲ってくれたのであった。この発言に対して、ペット候補1のキュゥべえと候補2の佐倉杏子は「甚だ遺憾である」と述べている。「いやあたしはペットじゃないだろ」「そうね、佐倉さんは半野良っていうか、地域ネコよね」「マミ???」
マミたちには悪いけれど、最大限に感謝してたくさん楽しもう、とウキウキ気分で週末を迎えたさやかであったが、しかし。
「間抜け面をさらさないでもらえるかしら」
「……相手があんたでなけりゃなあ」
「ずいぶんなご挨拶ね、美樹さやか」
「あんたに言われたくはないわよ」
「……本日はお招きいただきありがとう存じます」
「慇懃無礼の見本誌かなんか?」
その隣で、憮然とした顔をしているのは親友のまどかではなく、転校生の暁美ほむらだった。
土曜日になってから、まどかは急に欠席の連絡をよこしてきた。弟のタっくんが熱を出したので看病しないといけないとのことであった。
残念ではあったけれど、タっくんはまだ幼い子供だし、そもそも熱を出すのだって本人のせいではない。仕方のないこととして、じゃあ中止にしようかというところで、まどかは代役を提案したのだった。
チケットはもう期限が切れちゃうし、うちの事情でさやかちゃんに残念な思いさせたくないから、というまどかの言葉に胸を打たれ、さやかはその提案を了承した。
「仁美だと思ったのに……」
「志築さんはお稽古で来れないそうよ。とても残念がって、写真を送るように頼まれたわ」
「あたしの親友とあたしより仲よくしてない???」
「お互いいろいろと苦労しているもの」
はあ、とため息をついて、ほむらはさやかをじろりと見つめた。上から下まで、じろじろと無遠慮に見定めていった。
「な、なによ」
「いいえ、別に」
「別にって感じじゃ全然ないんですけどー」
「浮かれ過ぎた格好をしてなくてよかったと思っただけよ」
「どんな格好で来ると思ってたのよアンタは」
さやかはちょっと落ち着かなくなって自分を見下ろした。
普段の制服じゃない、パンツ・スタイルにジャケットのラフな格好だ。
とはいっても、一応ホテルでの食事だから、あんまりラフ過ぎないようにはしたつもりだ。髪も整えたし、母に少しだけ化粧もしてもらった。
これでまどかをしっかりエスコートするつもりだったのだ。
一方のほむらも、普段は見ない服装でおめかししていた。
まるで喪服みたいに黒を多用しているけれど、ポイントでアクセントを差しているから、重たすぎない。髪も普段の下ろしたままじゃなく、すこし凝った編み込みをしていて、気合が入ってる。中にスマホくらいしか入らないんじゃないのと思ってしまうバッグも、地味にブランドものだ。
耳元に目立ち過ぎない程度のイヤリングが揺れていて、なんだか少し大人っぽいなとさやかは思った。
少し不機嫌そうにそっぽを向くけど、自然体で着こなして見せるほむらは、同じ中学生とは思えないほどに大人っぽくて、こういうセンスがあるならなるほどさやかの私服を心配してもおかしくはなかった。雑誌などを見て色々考えてはみたけど、ほむらと並ぶとちょっと服に着られているかもしれない。
「まあ、そりゃアンタみたいに綺麗じゃないかもだけど」
「……そう。そう見えるかしら?」
「それ嫌味? はいはい美人さんよ」
「そう……志筑さんには感謝しないといけないわね」
ともあれ、二人はロビーを過ぎ、「お金かかってそう」とさやかが身もふたもない感想を漏らすビュッフェ会場へとたどり着いた。
席に案内され、軽く説明を聞いたのち、二人は早速中学生の健康な胃袋を満たしに出発した。
「ふうん……あまり格式張っているだけでもないようね」
「そうなの? あたしには十分お高そうだけど」
「アニメのコラボ料理なんかも並んでいるみたいだわ。私は、あまり詳しくはないけれど」
「まあ、あんたがサブカル楽しんでそうな感じはないけど」
サブカルクソ女っぽいとは言わないでおいた。
二人並んでみて回ってみると、和食、洋食、中華といった定番メニューや、プチ・ケーキなどのデザートのほかに、流行りものとコラボした企画コーナーもあるようだった。
いまであれば、大人気を博して一つのジャンルとしても名高いポケモンとのコラボメニューが並んでいるようだった。
「わあ……ほらほむら、これかわいい!」
「えっ……そうね。かわいいわ」
「どこ見てんのよ。こっちよこっち」
「…………これは、犬を模したパンかしら」
「パピモッチよパピモッチ。あんたポケモンも知らないの?」
「し、知ってるわ、ポケモンくらい。ほら、あの……しわくちゃの顔した……」
「……ライアン・レイノルズ? ライアン・レイノルズの話してる??」
「あのポケモンはライアン・レイノルズというの?」
「なにもかもが!?」
さやかは戦慄した。
この世にポケモン文化に触れてこなかった女子中学生がいるという事実が信じられなかった。
CMで一瞬流れるだけの三徹明けのシステム・エンジニアみたいな顔をしたピカチュウだけでポケモンの話題を乗り切ろうとする女がいるという世界にめまいがした。
おまけにこの女はポケモンどころかライアン・レイノルズすら知らないのだ。
いったいこの女はなにならわかるというのか。
さやかは業を煮やして、スマホで画像を検索した。
「ほら! これがパピモッチよ!」
「……これはパンじゃないのかしら?」
「パンっぽい見た目のポケモンよ!」
ほむらはいまいちピンときていない顔で、さやかのスマホと、並べられたパピモッチ・パン(を見比べた。
元がパンっぽい見た目のパピモッチを再現したのだから、完成度が高いというか、そのものというか。
そのようにしてきゃいきゃいと騒ぎながら、適当に皿を料理で満たして、二人は席に戻った。
「いやー、さすがにホテルのバイキングだけあって、どれもおいしそう!」
美樹さやかはビュッフェをバイキングと呼ぶ少女だった。彼女にとって寿司と焼き肉が同時に並ぶ不可解な食べ放題店というイメージしかないのである。最初に寿司と焼き肉を一緒に出そうと思ったのは一体だれなのか、真相は闇の中である。
さやかの皿はごちゃついていた。
肉と、肉と、肉と、揚げ物と、いくらかの
マナーというものをどこかにおいてきた肉の塔は下品でさえあったが、底抜けに毒のない朗らかな笑顔は、なんとなくそれを許容させるような空気を醸し出していた。
呆れながら肩をすくめるほむらは、あっさり目の和食系を、バランスよく少しずつ。
けれどあっさり過ぎるということもなく、揚げ物や、濃い目の味付けのものも。
なにごともバランスだ。バランスが肝要だ。肉ばかり取ると、さやかと完全にかぶってしまうので、シェアもできない。
「……ねえ、ほむら。その……なにそのうん」
「たまごみそよ美樹さやか。不適切な発言はやめてもらえるかしら」
「たまごみそ?」
「私も詳しくはないけれど、青森の郷土料理、と書いてあったわ」
たまごみそは、同じく青森の郷土料理である
味噌と砂糖すこしを酒やだし汁で溶いて鍋にかけ、溶き卵を加えて優しく練り込み、卵が固まってくれば完成と、凝らなければ大分お手軽に作れる一品ではあるが、程よい塩気と甘み、うまみがあり、栄養もある。
太宰治の「津軽」などでも、病人が貝焼き味噌を粥にかけて食べるシーンがあるほどだ。
さやかも少しもらって、白飯に乗せて食べてみた。
見た目も硬さも、味噌である。嗅いでみても、味噌の香りがする。いや、味噌だけではない。少し甘く、ほんのりと優しいおだしの香り。
あんぐりと大口を開けてこれをほおばってみれば、最初に感じるのもやはり味噌味だ。もろもろとした味噌が、咀嚼するたびに白飯とともに口中に広がっていく。
ただ味噌だけと思っていたより、塩気ばかりではない。優しい甘みがある。それは砂糖の甘さであり、そして何より卵のふわふわと優しい味わいだ。
全体としては和食らしい塩気の利いたものだが、これがまた、飯が進む。
さやかにはまだわからないが、これはお酒にも合いそうだった。
肉は大体洋食などに偏っていたので全然興味を持っていなかったが、この思いがけない味わいに、和食の魅力が突然立ち上がってきた。
こうなってくると、さやかとしても和食を堪能したくなってきた。
しかし、いまさらに乗っているお肉もおいしいのである。
ここで席を立って取りに行くのも、なんだかみっともない。
となれば向かいに座るほむらの皿に目が行くのも致し方ない話であった。
人の皿を狙うほうがみっともないという話はさておき。
「揚げ物もあるんだ。天ぷらなんてあったっけ?」
「あったわよ。まあ、揚げたてではないけれど、油切れもよくてさくさくと」
「ちょっとちょうだいよ」
「…………あなたのそういう思い切りの良さはちょっと感心するわ」
顔を合わせて早々にあんたでなければなどとほざいた少女の図々しい要望に、しかしほむらは小さなため息だけで済ませた。
「まあいいわ。どれがいいかしら。舞茸に、筍、レンコンに」
「なんか年寄りくさい」
「………………」
「あ、その魚みたいのでいいや。多分魚でしょ。あ、とり天?」
「これはウツボよ」
「へえ、ウツボ………ウツボ?」
「あなたの親戚よ」
「誰が魚類よ」
さやかは心を落ち着かせて、スマホで画像を検索した。
「ウツボってウツボじゃん」
「だからそう言っているでしょう」
「え、ウツボって食べられるの!? こんな凶悪な顔してるのに!?」
「顔は関係ないでしょう……食べてみれば悪くなかったわ」
ウツボとはウナギ目ウツボ科に分類される魚類に総称である。
海のギャングと呼ばれるように見た目は凶悪な肉食魚であり、漁網を破ったり漁場を荒らすことから嫌われることもあるが、各地で食用にする地域が点々と見られる。
ゼラチン質を多く含み、うまみも強いが、小骨が多く分厚い皮もあり、さばくのは難しい。
天ぷらの他、刺身やたたき、煮物などにするほか、干物などに加工されることもあるという。
スマートフォン向けアプリ「ツイステッドワンダーランド」の登場人物の一人フロイド・リーチのモチーフはこのウツボであるとされ、いわゆる「ギザ歯」の容姿はここからきていると思われる。
なぜ急に関係ないキャラクターの話を始めたのかは、別に特別な理由はないが、天ぷらの材料になるんだなあ、と思って天ぷらにしただけである。ウツボ丼でも可。
さてこのウツボの天ぷらは、実際食べてみればなるほど悪くなかった。むしろおいしいと言っていい。
体型や、小骨の多さからハモのようなものかとも思ってみたが、ハモよりもさやかは好きかもしれなかった。淡白な味わいではあるが旨味自体は決して弱くなく、むしろジューシーで鶏肉のようでさえある。
「まったく、美味しそうに食べて……あなたばかりもっていくわね」
「ごめんて。あ、ほら、あたしのもなんか持ってっていいよ」
「ローストビーフにステーキにハンバーグに……」
「なによ。なんか文句あんの?」
「はあ」
「せめてなんか言って!?」
ため息一つで済ませたほむらは、欠食児童じみた肉の取り方に哀れになって、せめてそれ以外からにしてやろうと哀れんだ。
「じゃあ、そのぱぴっち?」
「パピモッチね」
「それでいいわ」
「えー……あたしも食べたいし」
「じゃあ半分にしましょう」
「あー、うん、えっ、あっ、ちょ、暁美ほむらァ!?」
「きゃっ、な、なによ」
「半分って言って顔面真っ二つにする普通!?」
「だ、だって……パンよ?」
「躊躇がなさすぎる!」
ノータイムでパピモッチを半分に引き裂いたほむらに、さやかは心底ビビった。
いや、さやか自身、食べるとなればそれはまあこの可愛いパピモッチを壊さなければならないし、壊しただろう。それはそれとして「ちょっとかわいそう」っていうのが挟まるべきだろう。せめてこう、耳を外すとか、そういう小細工を入れて少しずつ食べていくべきだろう。
それをこの女、掴んで引き裂くまでノータイムである。
「ま、まあいいわ。あんたにそういう情緒は期待しない」
「人をなんだと思ってるのよ」
まあ、結局のところそうはいっても、食べるには食べるのだが。
パン、と言いつつも、その食感はだいぶ強い。モチモチとした力強い歯ごたえがする。
これはベーグルというものなのだろうかとさやかは思った。なんかこう、ベーグルサンドとか、おしゃれなやつに使うパンだ。どうやって作るのかはよく知らないが、ふわふわというのではなく、もちもちしたもので、他のパンにはない面白い味わいがある。
「ベーグルは、まず茹でるのよ」
「えっ、パンを茹でるの?」
「成形したパン生地を発酵させて、茹でるのよ。あの輪っかのような形は、茹でるときに便利なようにという話ね」
「へえ……茹でて、焼いて、結構手間がかかるパンなんだ」
確かにうまい。
うまいのだが、このもっちりもちもち食感がなかなか顎にくる。
もきゅもきゅと噛んでいると、結構な時間を取られそうなものである。
「それにしても、あなた本当に肉ばかりね」
「う、あとで運動するからいいの!」
「太る、というだけでなく、ビタミン不足で肌にも悪いわ」
「うぐ」
「ほら、そんな量では免罪符にもならないわ。野菜を食べなさい」
もきゅもきぃとベーグルに忙しいさやかのすきをついて、ほむらはサラダの小鉢をよこした。
こういうときなんだし、別に、とは思うものの、進められて嫌だと突っぱねるのも、さやかにはなんだか悪いように思えた。一応は善意からの言葉なのだろうから、押しつけがましいとは思っても、むげにもできない。
「わかったわよ、食べる、食べるわ……あ、トマト」
「好き嫌いはよくないわ。……と一概に押し付けるつもりはないけれど。苦手なら無理しなくてもいいわ」
「いや、嫌いってわけじゃないんだけどさ」
トマト。
よく熟れたトマト。
真っ赤に熟した、みずみずしいトマト。
それがぶちゅんと潰れる絵面を、寸時さやかは妄想した。
「嫌いってわけじゃ、ないんだけどね」
その鮮やかな赤色に、食欲ではなく恐怖と、どうしようもない無力感を覚えてしまう時があった。
それはくだらない連想に過ぎない。
それは、夢だった。悪夢だった。
荒れ狂う大嵐。壊れたおもちゃのようにひっくり返る町。がれきに押しつぶされた何もかも。失われたもの。失われた命。失われた……左腕。そんな夢を見るときが、ある。
不思議そうに小首をかしげる目の前の少女が、切り分けられたトマトのように、あるいは切り分け損ねたトマトのように、半ば潰れかけた姿を、夢に見るときがある。
それは、いつかはその先を見なければならない悪夢なのかもしれない。
でも、それはいまではない。
いまこの時ではない。
「大丈夫よ。トマトなんて食べちゃうんだから」
「? ……そう」
それは、遠いどこかの夢なのだから。
「いやあ、昨夜見たアニメでトマトみたいに潰されちゃう人が出てきてさあ」
「……食事中に話すことかしら?」
「ごめんて」
最初はうんざりだと思っていたこいつとの相席も、なんだかんだ楽しめてるじゃない、さやかがそんな風に和やかな食事に浸り始めたころ、突然激しい破壊音と悲鳴が響いた。
咄嗟に振り向けば、そこには蹴り飛ばされ、あるいは引き倒されて無残に床に散らばる料理。
そして覆面で顔を隠し、カタナとシュリケンで武装した男たち……ニンジャだ!
「アイエエエ!」
「騒ぐな! 神経に障る……」
「大人しくしていろ! 我々は理由があればむしろ喜んで暴力を振るうほうだ!」
ニンジャのテロリストたちは、たまたまそこに立っていたという理由だけで、客の一人を人質にとって周囲を威圧する様に睨みつけた。
「我々は諸君の命を害そうというわけではない。ことが終われば無事に返すことをお約束しよう」
「い、いったい何が目的なんですか!?」
「勇気のあるご婦人だ……我々の目的は一つ! ただ幸せそうに食事を楽しむ貴様らが許せんのさ!」
「そうだ! 水星12話でショックを受けた我々は食事ものどを通らんというのに……!」
「スレミオ過激派の長老はいまもねっとりした笑顔でループ視聴を続けているのだぞ!」
「ミオスレ穏健派としてはそれただの闇のオタクではないかと思うのだが……」
「黙れ! 闇があるから光が輝くのだ!」
「それはそう」
「みんなで楽しい学園もの世界線で生きていこうよ……」
「12話のウェディング回はよかったなあ! まるで天使みたいに笑って……」
※あくまでコメディとしての描写でありオタク差別を助長する意図はありません。
闇のニンジャたちは口々に好き勝手な文句を叫び散らすと、厳重にロックがされたアタッシュケースから、パンパンに膨らんだ缶詰のようなものを取り出した。
「これが見えるか! 死にたくなければ見える距離まで来い!」
「こいつはシュールストレミングの缶詰だ。パンパンに膨らんでいるだろう……発酵ガスさ」
「いまからこいつを開封する! 貴様らのような能天気な連中には地獄を味わってもらうぞ!」
「バカな、そんな危険物……非人道的すぎる!」
「安心しろ。我々もガスマスクなどはせん。一緒に苦しみを分かち合おうじゃないか!」
「く、狂ってる……!」
※スウェーデンの伝統的食文化を差別する意図はありません。
「ほむら!」
「ええ……時間を止めて片付ける。しっかり手を握っていなさい」
「わかった!」
「ちょ、ちょっと強いわ。指は絡めなくていいの」
「え、あ、ごめん」
瞬時に魔法少女へと変身し、時間を止めてニンジャのテロリストたちに駆けだした二人の前に、独りのニンジャが立ちはだかった。
時の止まった世界では、ほむらと、ほむらに触れていたものしか動くことはできない。
だというのに、なぜ!
「時間停止能力者がいるとはな……だが無意味だ!」
「バカな……なぜ!?」
動揺するほむらに、ニンジャは覆面をはぎ取った。
そこには……犬! 犬面の……ニンジャ!
「俺は犬だ! だから時間停止は効かん!」
「えっ、なんで犬だと効かないの?」
「そんな、まさか犬が……時間停止では、犬には勝てない!」
「ねえなんで? なんで犬は止まらないのよ?」
「くくく……ドーモ、はじめまして。ライオン・サークルです。俺はひょんなことからニンジャ犬と融合してしまったニンジャだ!」
「ドーモ、ライオン・サークル=サン。暁美ほむらです。時間停止能力がこんな形で破られるとは……けれど、それだけでは魔法少女には勝てない」
「なんで犬?」
異常なニンジャ現実についていけないさやかを置き去りに、いま時空を超えた魔法少女とニンジャの戦いが始まろうとしていた。
◆◇◆◇◆
一方その頃、柔らかな木の温かみが感じられるログハウス調の密室で、ひとりの青年が自由を奪われていた。
すらりと長い手足はガムテープで無造作に縛りあげられ、木の香りも新しい床に転がされていた。すぐ横が絨毯なのに。。
見ようによっては優しそうにも見える特徴的なオッドアイは、拘束されたことに対してか、それともこの現状に対してか、ちろちろと熾火のような感情を揺らしていた。
彼の名はフロイド・リーチ。
ここではない遠い世界「ツイステッドワンダーランド」は名門魔法士養成学校、「ナイトレイブンカレッジ」に所属する、海の魔女の慈悲を掲げるオクタヴィネル寮の寮生である。
「ハッ……ずいぶん面白いことしてくれるじゃん、小エビちゃん……」
都合2回目となる問答無用の拘束に、フロイドは口角を上げて見せた。
縛り上げられるような現状は決して面白くなどない。だが、この程度のことで弱音を吐くなどと思われては面白くないを通り越してつまらない。
だからこそ、余裕は保つ。保ちたい。保てればばいいなあ。
さしものフロイドも自信がなくなってきたのは、自分を見下ろす姿のためである。
「ねーえー、小エビちゃん、っていうか小エビちゃんだよね?」
小エビちゃん、彼がそうあだ名する、妙な少年。
彼は不思議な存在だった。
魔法士養成学校にありながら、魔法を使えない異質な少年。
平凡を装った、非凡でいて妙な彼の行動の数々は、フロイドの関心を誘った。
お人好しで、不思議な魅力で人を引き付けて動かしてしまう。
かと思えば妙に肝が据わっていて、時にはフロイドさえも驚かせるようなことまでもしでかして見せる。
前回のことを思えば、きっと今回のことも彼の仕業なのだろう。
しかし、だんだん自身はなくなってきた。
というのも見上げた先にいるのは、普段の姿の小エビちゃんではなく、奇妙に頭の大きな着ぐるみだったからである。
「
クソデカボイスの甲高い裏声で、それは名乗った。
というか、フロイドが目を覚ましてからのあらゆる質問にたいして、この謎の着ぐるみはそれしか言わないのである。
真っ赤なスーツに黄色いブーツと手袋。背中には茶色いマント。そして乾パンを模したと思われる四角い頭部には、これまた乾パンに空いている穴のように黒々とした虚無のような目が2つ。
彼こそは完全オリジナルキャラクター、乾パンマンである。カラーリングも乾パンのパッケージ由来だからなんの類似性もない。完全オリジナルなのである。
「
「やっぱり裏声きついんじゃないの?」
むせて咳き込み、うずくまってしんどそうに呼吸を整える乾パンマン。
フロイドのツッコミに対しても返す余裕がないのか、しばらくそうして悶絶したのち、乾パンマンはおもむろにすっくと立ちあがった。
そして立ち上がったまま、しばらくその姿勢でじっと壁を見つめている。
こわっ。
とは口には出さなかったが、異常な存在の異様なそぶりに、「やばいんじゃね?」とは3回くらい思った。
しかしそれはそれとして、このままただ変な着ぐるみに見降ろされているだけでは退屈もしてくる。異常も慣れてしまえば平凡だ。
「小エビちゃんさあ。とーぜん、このあとはすげえ面白いことしてくれんだよね? これでつまんなかったら容」
「サルミアッキ~!!!!!!」
「は?」
フロイドの言葉を遮るように突如クソデカボイスの甲高い裏声で叫び出す乾パンマン。
その手には、謎の黒い粒のようなもの。
「え、なにこ」
「サルミアッキ~!!!!!!」
「聞いたよそれは」
サルミアッキとは、北欧で大人気(要調査)のリコリス菓子の名称である。リコリスつまり甘草は独特の香りがあるため好みはわかれるものの、自然の甘味料として古くから利用されてきたもので、リコリス菓子もそのひとつである。
ただしサルミアッキは、そのリコリス菓子に塩化アンモニウムを添加したもので、食品添加物として?工業や科学的利用のほうがよく知られるこのブツのために妙な塩味とアンモニア臭がするという不可思議極まる物体である。
※北欧の伝統的菓子に対する差別の意図はありません。
もちろんこれは乾パンとは何の関係もなく、なぜ乾パンマンがこれを持ち出してきたのかは謎である。
「えっ、くさっ、なにこれ変なにおいが」
「ぼくの! サルミアッキをお食べよ!」
「いやこれ変な」
「お食べよサルミアッキをぼくの!!!!」
やけにぼくのを強調しながら、乾パンマンはフロイドの口元にサルミアッキを押し付けてくる。
「お食べよ! ボクのサルミアッキを! お食べよ! 大丈夫だから! お食べよボクの! サルミアッキをぼくの! 大丈夫だから! お腹が空いているんだね!? お食べよボクの大丈夫だから!サルミアッキをぼくのお食べよ!お食べよ!お食べよ大丈夫だから!ぼくの僕のボクのサルミアッキをお食べよ!!美味しいよ。大丈夫だから!ぼくのだから!お食べよサルミアッキをぼくの!」
「大丈夫だからの押しがヤバい!!」
嫌がるフロイドだったが、しかし拘束されていては抗いようもない。
分厚い手袋は、鋭い歯で噛みついても傷一つつきそうにない。
だらだらと口まわりをよだれで汚しながら、必死で抵抗するも、奇妙に黒い飴が口中に無理矢理に押し込まれてしまった。
ああ、その味を、なんと例えたらいいだろうか。
「し、塩と砂糖で煮たゴム……ぐふっ」
しかく
新鮮な食材を職人の技術でもって昇華させた料理がぶちまけられた床に、最後に立っていたのはふたりだった。
二人の、魔法少女だった。
「や、やったの……?」
「ええ……時空忍法『飛鳥遊犬の舞』、破れたりね」
「よくわかんないけどなんで犬……?」
「喜びなさい、美樹さやか、あなたのおかげで勝ったようなものよ」
「うーん、この釈然としなさ」
テロリストのニンジャたちは次々に投稿される幸せな世界線や逆に闇の深い世界に癒され、浄化され、爆発四散していった。
途中開封されそうになったシュールストレミングは塩水の満たされたバケツの中に封じられることでガスの勢いとにおいを抑えられ、さらにウオトカで洗ったうえでたっぷりの玉ねぎスライスやトマト、サワークリームとともにパンに乗せて美味しくいただかれることになった。
これには好みもわかれるところながら、状態の良い缶詰だったためか、意外にいける、悪くないというニンジャも多かった。全然あり、むしろ好きという客もいて、スウェーデンに対する好意が少しだけ上がったのかもしれない。
そして台無しになった料理はスタッフがおいしくいただきました。
あとなにかな。それくらいか。
フロイド? まあなんかなんとかなるでしょ。知らんけど。
長く苦しい戦いは、二人の勝利で終わったのだった。
しかし、激しい戦いでビュッフェ会場は台無しになってしまった。
世を忍ぶ魔法少女としては、長居もできない。
「あーあ。少しは食べたけど、全然物足りないわね」
「そうね。少しもったいないことになってしまったわ」
「ほむらでもそういうこと思うんだ。カ□リーメイトとかで生きてると思ってた」
「あれは楽だからそうしているだけよ、っと」
「おっと、ほら、大丈夫ほむら」
「え、ええ……ありがとう」
慣れない靴でがれきに足を取られたほむら。さやかはとっさにその腰に手を伸ばして支えた。
細い腰だ。うらやましいというより、少し不安になる細さと軽さだ。
「うーん……ね、ほむら。動いたら余計お腹減ったし、なんか食べてこうよ」
「……そうね。このまま帰ったら、変な時間にお腹が空きそうだわ」
「よっし、じゃあどこがいいかなあ」
「ラーメン屋にしましょう」
「えっ」
「嫌だったかしら」
「いや、ほむらってラーメンとか食べるんだなって」
「たまに佐倉杏子と食べに行っているわ」
「えっ、なんで誘ってくんないの?」
「なんでって…………」
ほむらは唇に指をあてて少し思わせぶりに小首をかしげると、一言、つぶやくようにこう言った。
「……ないしょ」
「ちょっとー! 言いなさいよ! 友達甲斐がないんだから!」
「あなたって本当に美樹さやかね」
「まるで悪口みたいに!?」
そんなことが、あったかもしれない。