そんなジュンの前に、不思議な男が現れ……。
一応(兼役可)と表記してありますが、人数によってはその辺は自由に演じてもらって構いません。
ジュン・・・男性
中学の頃のトラウマでギターに触れるのが怖くなった少年。
ハヤト・・・男性
ジュンの友人の一人。同級生なのに何故か敬語で話す。
マサ・・・男性
ジュンの友人の一人。中学からの付き合いで良き理解者。
トモ・・・男性
ジュンの友人の一人。何故か古風な話し方をする。
半田・・・男性
ジュンの友人の一人。神出鬼没の男。
ナツナ・・・女性
ジュン達と仲良くしている女子。文化祭でバンドをすることを提案してくる。
風来坊・・・男性
ジュンがであった不思議な男。
不良A・・・男性(兼役可)
かつてジュンを殴ってトラウマを植え付けた男。回想のみ。
不良B・・・男性(兼役可)
不良Aの連れの男。
子供・・・どちらも可(兼役可)
かつてジュンが助けた少年。
N・・・どちらも可(兼役可)
ナレーション。
以下本編。
不良A:
おらぁっ!!
ジュン:
っ……!?
N:
雨が降り続いている。
どこかの河川敷にて数人の男達が一人の男を殴り続けていた。
不良A:
なんだぁ?、そんなもんか!!
ジュン:
ぐぁっ!!
不良B:
兄貴、コイツいいもん持ってますぜ……
N:
一人の不良が、殴られ倒れている男のものであるギターを手にする。
ジュン:
そいつに……、触れるな……!
不良A:
あ?、うるさいんだよ……、中坊がよ!!
ジュン:
がっ……!?、あっ……
N:
目の前の男の頭部をそれで殴った……。
-
ジュン:
ギタリズム……
-
N:
季節は秋。
星川高校では、ある行事の前ということで、生徒たちがばたばたしていた。
それもそのはず、今は文化祭の準備期間中だった。
そんな中、屋上に5人の仲良し組が集まっていた。
ナツナ:
いきなりだけどバンドやらない?
ハヤト、マサ、トモ:
……
ジュン:
っ……
ナツナ:
考えてみなさいよ!、来年はきっと受験やらなんやらで、絶対文化祭どころじゃなくなる可能性があるじゃない?。
だったらせめて今年のうちに派手なことやろう!!ってことでバンドやるわよ!
ハヤト:
あのー……
ナツナ:
何?ハヤト君
ハヤト:
クラスの文化祭の出し物映画でしたよね?。
それと一緒だと忙しくなると思うんだけど……、やるんですか?
ナツナ:
うん、楽しそうだから!
ハヤトM:
あぁ……、この人馬鹿だぁ……
ジュン:
……
ナツナ:
ねぇ?
ジュン:
なんだ……
ナツナ:
ジュンはどう思う?、楽しいと思わない?
ジュン:
悪い……、俺はやれねぇわ……
ナツナ:
え?、ちょっと……
N:
ジュンはその場から黙って去っていった。
マサ:
やっぱりあいつ、まだトラウマ抱えてんだな……
ナツナ:
トラウマ?、ねぇマサ、あんたなんか知ってるの?
マサ:
まぁな……、あいつは元々ミュージシャンを夢見ていたんだ……。
俺もあいつのギターは何回も聞いたことあるが、かなりの腕前だったんだぜ?
ハヤト:
でも、ならなんでさっき断ったんです?
半田:
さっきもマサが言っていたが、トラウマってやつだ……
N:
4人の前に、一人の生徒が現れる。
マサ:
半田……、てめぇ雷王(らいおう)の奴らとやりあって生きてたのか?
半田:
あぁやりあったさ、5時間くらいもがき苦しんだ後……、奴らが死んだ……
ハヤト、マサ、トモ、ナツナ:
……
半田:
それはさておき、ジュンの話だ。
ある日、あいつは不良に虐められてたガキを救おうとしたんだが、返り討ちにあってな……。
その時に不良達は、あいつが大事にしていたギターで奴の頭を(パチンッ!)ってわけだ……
ナツナ:
っ……!
半田:
幸い命に別状は無かったが、あいつはその時のショックでギターを弾くことを恐れてしまい、結果、あいつは自ら大事なギターを手放した……
ナツナ:
最低だ、私……。アイツの気持ちも知らないでさ……
トモ:
仕方があるまい、そもそも拙者達が話さない限りは知ることが出来なかっただろうからな……
マサ:
だな……
半田:
あぁ……
ハヤト:
……でも、僕達だけでもやってみるのはいいかもですね、バンド
ナツナ:
え?
ハヤト:
だってみんなで何かをやるってきっと楽しいことじゃないですか。
それに俺も、高校入ってからロックが好きになりましたし、やりたいとは思ってたんですよね!
トモ:
ハヤト氏……
マサ:
なるほどな……、まっ、大将の件はともかく、とりあえずここにいるメンバーでやってみるのはいいかもしれねぇな。
ナツナの言う通り、来年クラスの出し物以外で何か出来る可能性もねぇし、大将には悪いが俺達だけでもやっちまうか!
ナツナ:
マサ……、じゃあ……
マサ:
やってやるよ、ナツナ。一応ドラムくらいなら叩けるぜ?
トモ:
ならば拙者も協力しよう……
ナツナ:
じゃあ、ジュン以外のメンバーは……
半田:
悪ぃが俺は無理だ……、楽器の演奏はおろか歌もまともに歌えねぇ
ハヤト:
そうですか……、それは残念です……
-
N:
放課後の下駄箱にて、
ハヤト:
ジュンさん……
ジュン:
ハヤト……、悪いな、バンドの件は……
ハヤト:
いえ、色々と聞きました
ジュン:
みたいだな、結局やるんだろ?。
マサも一応詳しいだろうから、分かんねぇことあればあいつに聞けば大事だ……
ハヤト:
……
N:
ジュンは何も言わずに下駄箱を後にする。
ハヤトはその後ろ姿を黙って見送ることしかできなかった……。
-
N:
夕日に照らされた帰り道を、いつもとは違い一人で歩くジュン。
ジュン:
悪いな……、みんな……
N:
と、一人呟いていると何処かから穏やかなメロディーが流れてきた。
ジュン:
……?
N:
ジュンはそれが気になり、そのメロディーを追いかけた……。
しばらく歩くと、河川敷にてぽつんと座りながら黒いギターを弾く青年が一人。
ジュン:
そのギターは……
風来坊:
ん?
N:
青年がジュンに気づき、ギターの演奏が止まった。
ジュン:
あんた、一体……
風来坊:
ご覧の通りの風来坊だ……
ジュン:
はい……?
風来坊:
そんなことより、やはり未練を捨てきれないみたいだな……
ジュン:
っ……!?、何を言って……!
風来坊:
熱心に俺のギターを弾く姿を見ていてそれはないぜ?。
それにしても、夢というものは恐ろしいな……、
一度持ってしまえばその縛りからはなかなか解放されなくなる……。まるで呪いのように
ジュン:
あんたの持ってるそのギターを見ると思い出すんだ。
あの時の出来事を……、そのギターに殴られたあの瞬間を……。
だから忘れたいと思って俺は手放したんだ……
N:
青年が弾いていたギターは、かつてジュンが持っていたギターに非常によく似ていた。
風来坊:
なのに、心の底ではまだ未練が残っている……
ジュン:
……
風来坊:
もう遅いな……、俺はしばらくここにいることにした。
また俺のギターが聞きたくなったらここに来てもいいぜ……
N:
ボルサリーノを粋にキメて、再び音を奏でる風来坊。
ジュン:
また聞きたくなったら、ねぇ……
N:
ジュンは夕日に照らされた河川敷を後にした……。
-
N:
別の日、ジュン以外のメンバーが貸スタジオに集まっていた。
ナツナ:
じゃあ改めて、ハヤト君がヴォーカルとギター、で私がキーボード、トモがベースでマサがドラムでよかったかしら?
マサ:
あぁ、で半田は……
半田:
応援団長だ!!
N:
半田が数名の仲間達を連れて来る。
そして何故かハチマキに法被を着ている……。
マサ:
あのな……、俺たちはアイドルじゃなくてロックやるつもりなんだがな……、というかこいつらどっから連れてきやがった……
半田:
気にすんな……
マサ:
いや気にするわ!!
ハヤト:
で、曲はこれらでいいんですよね?
トモ:
うむ、確か三曲だったな……
マサ:
限られた時間でやるからな……。
三曲くらいならなんとかなるだろうし、覚える量も少なくて済むからな……
ナツナ:
そうねマサ!、それじゃあ……、私達の音楽を見せてやるわよ!!」
-
N:
その頃ジュンは、またしてもあの河川敷へと足を運んでいた……。
風来坊:
来たか、坊主……
ジュン:
あぁ……、横いいか?
風来坊:
まぁいいさ、ゆっくり聞いてってくれ……
N:
風来坊の横に寝そべるジュン。その横で、メロディーを流す風来坊……。
眠気を誘うようなそのメロディーに一瞬瞼が落ちそうになるジュンだったが、そうなる前に彼は風来坊に話しかけた……。
ジュン:
……あんたの弾くギター。いいな……
風来坊:
そうか……、だがこいつは俺よりも他の誰かに弾いてもらいたいらしい……
ジュン:
えっ……?
N:
風来坊は演奏をやめて、ギターをジュンのほうへと向ける。
ジュン:
どうだ?
N:
ジュンの頭に昔の思い出がフラッシュバックする。
恐怖からかジュンの心臓はバクバク動いていた……。
ジュン:
そんな……、無理だよ俺には……
風来坊:
……少し触れるだけでいい
N:
風来坊は優しい口調でそう言った。
ジュンはギターを睨みながら、恐る恐る風来坊の持つギターに腕を近づける。
次第に、人差し指がギターのネックに触れ、続けて中指から順にネックを掴んだ。
ジュン:
っ……!!
N:
ジュンはいきなり手を離し、風来坊にギターを押し付けた。
風来坊:
相当だなこりゃ……
ジュン:
悪い、今日はもう帰る……
風来坊:
そっか……、また会おうぜ!」
ジュン:
あぁ……、ただ今回みたいにお触りはなしだ……
N:
そう言うと、ジュンはそそくさとその場から去っていった……。
-
ジュンM:
その出会いは衝撃的だった。
お袋の実家から出てきた一枚のCDが、俺の世界をガラリと変えた。
この胸に響く感じはなんだ?。
世界平和だとか思いやりだとかの綺麗事じゃない……。
もっと内面的な、自己中心的ななにかが、音楽という形で俺の心に直接届いてくる……。
周りを見れば暴力こそが正義だとかで力を振るう不良達がほとんどだった。
だから俺もいずれあんな奴らに成り代わるんだと自然に思っていた。
そんなことするよりも、もっと効率的なものがあったじゃないか。
意思という名の歌詞を書き、それを伝えやすくするために俺はギターを弾いて歌にすればいい……。
そうと気づけば早かった……。ギターの弾き方を必死に覚え、ものにした。
俺の先の見えなかった明日もようやく見え始めた。そう思っていたのに……
N:
休日の朝、ジュンは浮かない顔で目を覚ました。
ジュン:
嫌な夢だ……、いつまでまとわりつくんだ……
-
N:
服を着替え、なんとなく外を歩いていたジュン。すると、
ジュン:
ん?
N:
ジュンにとっては微妙な音が耳に入った。
周りを見渡すと、一人の少年が小さなギターを弾いているのが見えた。
子供:
あれぇ?、なんかきれいにならないなぁ……
ジュン:
お前……、あの時の……
子供:
あ!、あん時俺を助けてくれた兄ちゃんだ!
ジュン:
ギター……、やってんのか?
子供:
まだ全然弾けないけどね。でもいつか弾けるようにはなりたいんだ
ジュン:
どうして?
子供:
兄ちゃんみたいになりたかったから……。
あの時ギター弾いてた兄ちゃんかっこよかったからさ……
ジュン:
かっこよかった?、俺が?
子供:
だって守ってくれただろ?。
俺、喧嘩は嫌いだけどこれなら好きになれるからさ……。
そしたらお兄ちゃんに近づけると思って……
ジュン:
……そうか。なぁ、もし良かったら、今度ギター教えてやるよ……。
今日は少し行きたいところがあるからさ……
子供:
ほんと!?、約束だからね!
ジュン:
あぁ……、じゃあまたな!
N:
ジュンはそう言って、その場から走りだした。
ジュンM:
かっこ悪いよ……、俺なんて……。
ジュンM:手持ちのギターで殴られて、まともにギターも触れなくなって……。
それでも……、せめてあの子の前だけでも、かっこいい奴ではいたいと思ってやがるんだからよ!!
-
N:
河川敷。
そこにジュンが息を切らしてやってくる。
ジュン:
……よう
風来坊:
来たか……
ジュン:
前、お触りはなしって言ったよな?
風来坊:
そうだったかな……
ジュン:
あれ、忘れてくれ……。
あんた前に、このギターは他の誰かに弾かれたいと思ってるって言ってたな?
俺がその他の誰かになってやってもいいぜ?
N:
風来坊は黙ってジュンにギターを差し出す。
ジュン:
っ……!?
ジュン:
まただ、また俺は……、こんなことで怖がっているのか……!?
風来坊:
なんだよ……、結局怖がってんじゃねぇか……、
かっこ悪いよ?、お前……
ジュン:
っ……!!
風来坊:
ん……?
ジュンM:
黙れよ……。
もう……、かっこ悪いなんて言われたくねぇんだ……、いや、言わせてたまるか!!
N:
ジュンがギターを取り上げ、そして思いっきりギターの弦を鳴らす。
それから適当に、でも規則性のある激しい音をかき鳴らしていく。
しばらくの間、ジュンは無我夢中に、周りを見ずに、ただひたすらにギターをかき鳴らしていた……。
ジュン:
はぁ……、はぁ……、はぁ……、ははっ、はははははは!!、はははははは!!!!
風来坊:
……吹っ切れたか?
ジュン:
あぁ、だいぶな……
風来坊:
そうか……
ジュン:
おい、どこ行くんだよ?
風来坊:
どこかさ、風来坊に道を聞くもんじゃない……
ジュン:
でもこのギター……!
風来坊:
そいつはお前さんのもんだ……
ジュン:
えっ……?
風来坊:
いつだったか不良少年が、ごみ捨て場に放置してきたのをたまたま拾って持っていただけだ……
N:
そう言って、風来坊はその場を去っていった……。
ジュン:
……そうか、随分待たせちまってたんだな……
-
N:
文化祭当日、当然ながら学校は賑わっていた。
そしてステージでは、
ハヤト:
けっ、結構緊張しますね……
ナツナ:
そ、そうね……
トモ:
う、うむ……
マサ:
大丈夫だ!、ガッチガチのライブってわけでもねぇし、できる限りいっぱい練習してきたろ?
ナツ:
そうね……、それじゃあ……
ジュン:
待ってくれ!!
マサ:
た、大将……!?、どうしたんだよ急に……
ジュン:
勝手なのは重々承知のうえで言うぞ……
ハヤト:
お、おう……
ジュン:
バンドメンバー、一人増えても大丈夫か?
マサ:
……
ジュン:
だから……、俺も!、今からメンバーとしてギター弾いていいかって聞いてんだ!!
マサ:
いいぜ?、実は言うとな……
ジュン:
……?
マサ:
万が一のためにサポートメンバー枠にお前の名前入れておいた!
ジュン:
……、はぁああっ!!?、おい聞いてねぇぞマサ!!
マサ:
万が一だよ万が一、来なかったら来なかったで所詮はサポメン扱いだしな……
ジュン:
まったく……
マサ:
けどな大将、たとえサポメン扱いだとしても、弾くと決めたからにはマジでやれよ?
ジュン:
あぁ、ライブの時はいつもマジだ。たとえ小さなライブでもな……
マサ:
へへっ、そう来なくっちゃな……
ハヤト:
ジュンさん……、ありがとうございます!
ジュン:
おう……、それより何をやるんだ?
-
N:
続きまして、バンド、ベリーブルーによる演奏になります!
N:
ジュンはギターを見つめる。
ジュン:
もう一度行こうぜ、一緒にな……
[完]