とある個体の方向転換   作:一方通行に健康な食事を食べさせ隊

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おい待て、どうしてそうなったんだ一方通行(アクセラレータ)


一方通行な心情とX

八月十四日の深夜、実験が大抵夜だったせいで…不覚にも一瞬だけ、ほんの一瞬だけ目の前の妹達(造りもの)の一つがこの間のコスプレ女に見えたんだ。特に後ろ姿が似ていた気がする。黒い髪を背中まで下ろして、ああでもあの女自身はもう少し身長が低かったような。

 

そんな余計な考えが頭によぎったことで、妹達(造りもの)の腹を蹴った時の威力を間違える。妹達(造りもの)が沢山あるコンテナの一つにぶつかって、コンクリートの地面に落っこちたと思ったら吐きやがった。

酸特有の鼻にくる臭いに顔を顰め、舌打ちをした後にもう一度蹴って殺した(壊した)

 

 

 

 

 

 

 

 

少し気に障った実験の帰り道、きっと誰もいないであろう公園の横を通り過ぎて、いつものようにマンションの一室に帰る筈だった。

 

 

「あの」

 

 

誰かの声が背後から聞こえた。俺に声をかけるヤツなんて、余程の馬鹿か死にたがりだけだ。きっと違う誰かに声をかけているんだと思い、マンションに向かって歩く足を止めなかった。

 

 

「え、あ、待ってください…と」

 

 

声をかけられているヤツに早く反応してやれと、内心で思いながら公園を完全に通り過ぎる。どんな物語(シナリオ)悪党(ヒール)でも、正義の味方(ヒーロー)の準備シーンくらいは待ってやるもんなんだから、声に振り向いて数分立ち止まるくらいやれ、とか色々と思うことが頭を埋め尽くす。

 

 

「と、止まって、止まってください」

 

 

薄情なヤツがいたもんだと思いながら足を止めなかった。

当然そう時間がかからない内にいつものマンションに到着し、いつものようにマンションの一室の鍵を開け、いつものようにその扉を閉める筈だった。ガタン、と扉が閉まらなくなるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

扉が閉まらないことに気付き、目の前の相手を見た。

マンションの扉と壁の間に、滑り込むかのように挟まっている足の相手。

 

 

「足、邪魔なンだよ。さっさと退かせ」

 

 

それは俺が公園を通るようになった原因の女で、病院のベランダに置いていく際につい触ってしまった時と同じ、長い黒髪を靡かせていた。紅色の両目がハッキリと俺を捉え、視界に入れたことは二度目…いや、もしかしたら一度目かもしれねぇが。

 

 

「嫌、です…!」

 

 

その両目に痛みによる生理的な涙の膜を浮かばせながら、女は俺を見ていた。身長が俺より低いことで必然的に上目遣いになった女の目線は、睨み付けるとまではいかなくとも俺への反抗心のようなものが感じ取れた。その態度を捩じ伏せさせたいと思う思考を急いで掻き消す。

 

 

「はァ?こっちはな、オマエの足ごと折って扉閉めたって別にイイってこと、分かンねェのか?」

 

 

少し過激だと、理性が訴える思考によって生み出された言葉が口から出て行く。内心で逃げないで欲しいとか思っている俺を叩き潰す。俺が能力(異能)を使ったらきっと、そのほっそい足も腕も折れて使えなくなる。だからか、能力(異能)を使う気になれない。

 

 

「なら、折ればっ…ぅ、いいじゃないですか」

 

 

恐らく強がって言ったであろう女の言葉に、頭ん中が真っ白になりかける。足を折ってしまえばいいという言葉に対して、否定なのか肯定なのかは俺自身にも分かりにくい。ただ強いショックのようなものが瞬間的に走って、何処かに消える。

 

 

「…そもそもオマエ、俺になンの用があってここまで来てンだよ」

 

 

マンションの扉を閉めようと力んでいた腕から力が抜け、ついに扉の取っ手から手を離してしまった。当然女も足が扉にずっと挟まれているのは辛いのか、片足で器用に扉を半開き状態にする。

あぁ、まずい。そう思いつつ、顔が見えないように俯きながら壁にもたれかかる。

 

 

「お、お礼がしたくて……ですね」

 

 

そう言って女が引っ張り出してきたのは、何故これにしたんだと思う程に大きめなスイカ。それも一人じゃ食べきれないくらいのサイズのだ。別にスイカは嫌いじゃねぇが、甘いものが好きって訳じゃねぇ俺にとっては流石に多すぎる。このスイカは一人じゃ食い切れねぇっての。

 

 

「ンで、本来の目的は?流石にお礼だけでスイカ渡しに来たンじゃねェだろ」

 

 

俺の言葉に女の肩が大きく揺れる。…まあ、そりゃあお礼にしてはかなり強引だったし、別に直接俺にスイカを渡す必要がないからだ。いくら公園で俺がずっと無視し続けたとはいえ、インターフォン越しにスイカ置いてくことくらい伝えられるからな。

 

 

「あ、ぁのですね……友達になって欲しくて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい待て、どォしてそォなったンだ」

 

 

おい待て、どうしてそうなったんだ。俺の中ではどうせ研究所からグチャグチャ文句かなんか言われて、二度ともう会えないとかそういうのかと思ってたんだが…。なんだそれ、意味分かんねぇ。しかもなんで友達とか微妙な立ち位置になりたがる。

 

俺が困惑のあまりに思ったことが口に出ていたようで、目の前の女が首を傾げる。冷静な頭は目の前のコイツがいると良くないと判断しているのに、心の中では離れないで欲しい拒絶しないで欲しいと手を伸ばす俺がいる。あぁくそ、コイツがいると俺の調子が狂わされる。

 

 

「でも、最初はお友達からだと…知り合いの方に言われたんですよ」

 

 

実際さっきから何度も演算(拒絶)しようと繰り返してんのに、どうしても(答え)が出ない。目の前の弱そうな存在が邪魔だと演算(否定)を繰り返して、また(答え)X(変数)に掻き消されていく。X(変数)に俺自身も何が当てはまるのか、単に未知数なだけなのかは分からない。

 

 

「…あァそォかよ、勝手にしろ」

 

「!、ありがとうございます」

 

 

悩んだ挙句、女の行動を許容した俺は、結局絆されているんだ、きっと。

いつもの俺であれば、こんな行動を他人に許すことなどない。

 

 

「では、スイカを切る為に家に上がらさせてもらいますね」

 

 

…それをもうちょっと先に言えと、思った俺は悪くないだろう。




末端冷え症で指先が尋常じゃないくらいに冷たい中での更新なので、もしかしたら誤字があるかもしれません。

アンケートに関してですが…魔術サイドと関わらせない場合は、この作品本編の流れと原作の流れが、不自然にならない程度に主人公が行動します。
ただ、あくまでも魔術サイドに関わっても関わらなくても主人公の詳細情報を明かす予定なので、
【魔術サイド関わった→主人公の詳細情報開示早い】か
【魔術サイド関わらなかった→主人公の詳細情報開示予定通り】くらいの差です。

まあ原作を読んだことがある人からすれば、
この作品の主人公は原作から見てもあり得ない存在だと思います。

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