とある個体の方向転換 作:一方通行に健康な食事を食べさせ隊
最初はクローン体の元である第三位の異能が、学園都市内の
俺も説明を受けて眉唾だと思ったが、研究者達としてはレベル6という理論上の概念の存在への好奇心が大きいらしい。俺も一応最強という称号を持ってはいるが、最強は無敵ではない。
なら目指さない理由もねぇし、八つ当たりでもしたいくらいには
「…あァくそ、…ンで今更クローン殺す夢…」
クソ、第三位のクローン体を殺した総数が5000を越そうとしてきた辺りから、第三位のクローン体を殺す夢ばかり見るようになっちまった…。躊躇もしてねぇ。ただ、所詮はボタン一つで造られるもんだからすぐにぶっ壊れるがな。
だけど何度も殺す度に抵抗のての字もないクローン体との戦闘は、多分どっかで壊すことに罪悪感があったクローン体が
ほとんど人型のサンドバックのように思えて、たまに変に抵抗するやつがいたら足を捥いだりしていたぶった。別にそういう趣味でもないし、当然研究者だってそんな趣味があるからこんなことをしている訳ではない。
しかし人型、されど人型であるせいか、夢に出ては違いすら分からないクローン体達を殺す。
俺自身が精神的ダメージを自覚していないだけかもしれないが、少なくとも俺の身体は人型の少女を殺していたぶることをよしとしていなかった。ボタン一つ押して、二週間くらいで出来る造りものに対してだ。今まで散々色んなものを殺してきたってのに、今更すぎて笑っちまいそうだ。
横になっていたベッドから起き上がって、半ば寝ぼけ眼で住んでいるマンションの部屋を歩き、鍵と財布を持って玄関を出て鍵を掛けた。目的地は近くの自動販売機に売られている暖かい缶コーヒー。元々コーヒーは好きだったが、特に最近はカフェイン目的で買い込んでいる。
まあコーヒーを飲むようになったキッカケは、寝ている状態の俺を殺しにくるやつがいたからなんだがな。どうせ反射すんのは分かってるが、どこの誰がそんなご丁寧なことしやがったのかぐらい聞かねぇと俺の気が済まなかった。
「……はァ、売り切れじゃねェか」
目的地に着いたは良いものの、肝心の自動販売機に置かれていた缶コーヒーは売り切れていて寝起きということもあり、若干機嫌が悪くなる。真夜中の真っ暗な路地にある自動販売機の光によって、自動販売機の内部に並べられた飲み物と外気を遮るプラスチックに薄ら俺が映っていた。
少し人通りが多いことを我慢すれば、この先にはコンビニがあるが…寝起きでいつもの自動販売機に缶コーヒーがなくて不機嫌な俺がコンビニに行って、変なのに絡まれたらぶっ飛ばさない自信がない。そう判断して仕方なく来た道を戻って寝る為に振り返った時だった。
「……兎…?」
昼間であっても人通りが少ない路地である筈の道には、かなり規模の小さい公園と繋がる道があるのだが、その公園へ入っていく…兎をモチーフとした黒いフードを被った途轍もなく怪しいコスプレをしてやがる奴を見た。
一応俺はこの辺りに住んでそう長くないことから、恐らく初対面なんだろうが如何せん目立つ見た目してやがる奴だ。そんなことを思いながらその日はそのまま家に帰った。
翌日の深夜なりかけの同じ路地でまたコスプレした奴を見た。しかも体格や立ち姿から同一人物。
そんな目立つ格好をしている割には一人寂しくブランコに座っているもんだから、本来子供などが使う公園との雰囲気が別次元すぎて気持ち悪りぃ。
その翌日もソイツは暗くなった公園に現れては、特に何かすることもなく一人ポツンと寂しそうにしているだけだった。その翌日も、そのまた翌日も現れては公園にいる。
…何も思わねぇ訳じゃねぇが、関わったところで何になる。
どうせまた逃げられるなり怯えられるなりするに決まってる。
けれどいつもソイツが公園にいるせいか、公園にソイツがいるかどうかを確認すればするほど俺の目的はコーヒーから離れていった。気付けばコーヒーを買うついでではなく、公園にソイツがいるかどうかの確認のついでにコーヒーを買って帰る始末だ。
変な異能にでも掛けられてて、どっかから俺の遺伝子情報でも盗もうとでもしているのかと思ったし、何だったら一度ソイツの近くで堂々と姿を見せたこともあった。
…腹が立つことに、ソイツは確かに一瞬は俺を視界に入れたが、ほんの少し目線がズレたと思えば俺の背後…といってもこの薄暗い路地に入るまでの広い道路の方を歩いている親子を見ていた。
さしてソイツのことを知らねぇ俺でさえも分かるくらい、ソイツは遠い目線の先で手を繋ぐ親子に憧れるかのように目を揺らしていた。
それ以来、実験の呼び出しが増えたこともあってソイツがいた公園に行けなく…いや、行きたくなくなった。馬鹿みてぇに幸せだった時の俺を思い出して、そんでその幸せを守れなかった俺に心底腹が立つから。…そして俺とソイツを重ねてしまうから。
俺にもああやって普通の生活や穏やかな時間に憧れた時があった、だがそれも年齢を重ねる内に諦めた。だからほとんどの奴らが普通に生きれない学園都市で、あんなにも普通に憧れる奴を俺は初めて見た。だからこそ諦めた俺が馬鹿みたいで、情けなくてイラついた。
これ以上は
”方向転換”の読み
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エンコード
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オートコンプリート