兎の女神のヒーローアカデミア   作:眼球舐めは通常性癖

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ワラワ追い詰められる

 とりあえず結果としては1位が私たち心操チーム。2位が轟くんチーム。3位が爆豪くんチーム。そして4位が響香チームという結果に落ち着いた。次の最終種目は16名が選出されるという話らしい。基本的に騎馬が2〜4名で組むようにという条件だったけど、雄英側はそもそも4人チームを作ることを想定していたみたいで、1位の私たちは3名。つまり15名で1人足りない。そういうわけで残り1名は5位の1ーBチームから1人追加で進出することになったみたいだ。

 

 進出したのが心操くんと1ーBの一人を除いて全員1ーAのメンバーというのはかなり良い結果なのではないだろうか。元々優秀なメンバーだがやはり実際にヴィラン相手に戦闘経験を積んだのが大きかったのだろう。

 

(いや〜良かった良かった)

 

「で?」

「で……と言われても、の」

 

 1時間の昼休憩を挟んで午後のレクリエーションや最終種目に向けて英気を養おうとしてたところを捕まってしまった。スタジアムの通路。昼とはいえ薄暗い通路の一つで響香に背後の壁に押し付けられる形で向かい合っている。

 

「アンタさぁもっと真剣にやりなよ」

「むっ。ワラワだって真剣にやっておるが?」

「初っ端から心操の洗脳喰らってんじゃん?」

「いや……あれは防げんて」

 

 正直対人においては卑怯な個性だ。初見殺し性能が高過ぎる。

 

「予選通過後も騎馬で組んでるじゃん? 普通個性も知ってる1ーAのメンバーで組むよね。良く知りもしない相手と、しかも予選で洗脳されて利用された相手と組むなんてどうかしてるよ。1000万P持ってて明らかに狙われる相手と組んで本当に勝つ気あるの?」

「いやワラワはワラワなりに勝とうと思った……だけで」

「……さっきは偶々ハチマキ盗られちゃったけど、午後からはあんな偶然起きないから。本気でやりなよ」

「む、無論じゃ」

「1ーAのメンバー相手だからって本気出さなかったら……ウチは許さないよ」

 

 そう言い残すとさっと響香は通路の奥に消えていった。なんかすごい怒ってる。私なりに真面目に勝利を目指した結果なんだけどなぁ。予選は事故だったにしても、騎馬戦で私の飛行を活用するならあの組み合わせがベストでは無くともベターだった筈だ。一応ハチマキ落とした後に私の黄泉比良坂で回収する予定だったし、それがダメだった時も心操くんの個性でカバーする予定で作戦を考えていた。予想外だったのがハチマキを拾ったのが私の黄泉比良坂を知っている響香で、更に心操くんの個性もバレてたってことだ。

 

 個性の強さを我が身で体験したからこそ心操くんと組んだし、別に普通科でも関係なくないだろうか? 峰田と即席で仲良くなれたしチームワークとしてもよくやってくれたと思う。最後の付き合っている発言には驚かされたけど、他人を騙すにはまず味方からというし結果的に成功したのでオーケーだ。……考えれば考えるほど何故響香が怒ってるのか分からない。

 

 響香の機嫌が悪そうだったので昼飯を梅雨ちゃんと共に食べる。残念ながら梅雨ちゃんは途中で敗退してしまったので今回は観戦だけど本人はそこまで気にしてなさそうだ。人の戦闘を観戦するのも勉強になるわと前向きに捉えているみたい。梅雨ちゃんは無言が苦痛にならない安心感がある。私も口上手な方では全然無いけど、聞き上手な梅雨ちゃんについつい先程の響香の愚痴を溢してしまう。

 

「まぁそれは大変ね。でも耳朗ちゃんの気持ちも分からなくもないわ」

「何故じゃ!?ワラワは真剣にやっておるぞ」

「そうね。きっとカグヤちゃんは真剣にやってると思うわ」

「うむ」

「ケロケロ。でもカグヤちゃんはどこか無意識で遠慮してるわ。カグヤちゃんの個性ならもっとエグい突破方法もあったと思うもの」

「……そうかの?」

「ええ。緑谷ちゃんが個性の強さを扱い切れて自らを傷つけちゃうのとは違って、カグヤちゃんは個性の力を内心どこかで恐れているのだと思うわ」

 

 ハッと気付かされる。直ぐに否定出来る材料が私の中に無かった。

 

「……そう……やもしれん……な」

「それか……カグヤちゃんはきっと優しいのね」

 

 それは無いなと自嘲気味に口の端が歪んだ。 

 

 

 

 

 昼休憩の終わり間際。どこか焦った表情の八百万ちゃんがやって来た。

 

「こんな所にいらっしゃったのですかお二人共」

「あら? どうかしたのかしら八百万ちゃん」

「実は相澤先生からの言伝がありまして……こちらです」

 

 彼女が後ろ手に持っていた物をこちらに差し出す。折り畳まれたそれはどうも明るいオレンジ色のコスチュームのように見えた。これがどう相澤先生の言伝と絡んでくるか理解できずに頭の上にハテナを浮かべていると、流石に説明不足だった事に気付いた八百万ちゃんが続けて説明する。

 

「どうやらレクリエーションは1ーAの女子全員での応援合戦もあるようでして、こちらがチア衣装です」

「えぇ……」

「そんなイベントもあるのね。相澤先生からはそんなことを聞いていなかったけど……」

「おそらく連絡忘れじゃないかとのことです。先生ももっと早くに言って下されば我が家専属のデザイナーと細部を詰めれましたのに」

 

 渡されたチア衣装はオレンジ色にUA(雄英を表していると思われる)と緑色の文字が中央に描かれた可愛らしいデザインのもの。チアらしくミニスカで脚もお腹も露出度の高い服装だ。八百万ちゃんの口ぶりだと彼女の個性で作ったみたいだった。創造の万能性と即興でここまでの物を作り上げるセンスは素晴らしい。

 

 正直、私も一人の女の子としてこのような可愛らしいチア衣装は嫌いではない。むしろ好きな部類だ。しかし好き=その服が似合うかどうかは別問題なのである。モデルが来ていて可愛いと思った服が、いざ自分が着てみると浮いているか服に着せられている感が拭えないといった経験が誰にしもあるだろう。カッコイイ系の服にしても同じ話がいえる。

 

 私の大筒木カグヤの見た目は決して悪くないとは思うけど、可愛い系の服が似合うかと聞かれたらおそらく似合わない。そして1ーAの女子メンバーは皆アイドルとしてスカウトされても全然不思議じゃないほど可愛い子揃いなのだ。特に葉隠ちゃんはまともに顔を見たことはないけど私の美少女センサーをガンガン刺激してくるので相当な美少女だと確信している。そんな可愛い子揃いの中でこのユニフォームを着たら私だけ絶対浮いてしまうだろう。ワラワはカメラ担当に回ったほうが良いのでは? そっちの方が私も美少女達のチア姿を楽しめるし、お目汚しにならないですむしWin-Winだと思う。

 

「ワラワは……遠慮しておく」

「まぁ何をおっしゃいますの大筒木さん! 全員参加らしいですよ」

「……ワラワ急に腹痛が」

「あら。なら午後からの本戦を辞退しなきゃね。私、相澤先生に代わりに伝えてこようかしら?」

「梅雨ゥ……」

 

 という流れでほとんど無理やり連行されてしまった。1ーAの待合室の隣の更衣室には既に私たち以外の女子はチア服に着替えていた。芦戸ちゃんはエキゾチックな肌色の露出が増えてより活発的で魅惑の腰つきが強調されている。麗日ちゃんは可愛らしくあどけない顔の割りに出っ張り部分が麗かとは言い難く、胸の素材が息苦しくなる程の麗日ボディ。葉隠ちゃんは普段から制服姿でもかなり胸の膨らみが出ることから想像できていたけど、チア衣装の薄着になるとその印象がより顕著になった。元気に跳ね回って翻るスカート、衣装越しに震えるたわわ。私でさえ思わず目で追いかけてしまうのだから、もし男子が見たらその衝撃は暫く消えることはないだろう。

 

 響香相手はいまだに少し気まずく思っていたけど、チア衣装の彼女の姿を見たらそれまでの軋轢を忘れてしまった。……美しい。普段勝ち気な彼女が少し照れながらスカートの丈の短さを気にしている素振り。自らの胸部装甲の慎ましさを周囲の女子と比べて悔やみつつ、『このチア衣装……結構悪く無いじゃん』と全身鏡を見て満更でも無い様子。普段結構ロックな服装で露出が多くないからこそ、いざ可愛い服で露出が増えた時に映える。そのギャップ萌えは長年幼馴染をしている私にこそ一番響いた。

 

 可愛いかよッ!

 

「何ジロジロ見てんの? カグヤも早く着替えなよ」

「いや……似合っておったから」

「ウ、ウチのことはいいからッ! ほらっ、さっさと着替える!」

「え〜」

「なんで嫌がるの大筒木ちゃん? 一緒に応援したらきっと楽しいよ!」

「だって……ワラワ似合わないし」

「そんなことないって。きっと可愛いよ」

 

 女の子の可愛いはどこかの姉御曰く200種類あるらしい。いやそれは白だったか。可愛いは下手したら200どころか1000種類はあると思う。自分より下に見てる相手への可愛い。可愛く無いが、形式的な形での可愛い。可愛い(煽り)。麗日さんやクラスの皆がそんな風に思っていないだろうことは重々分かっているけど、それでもーー

 

「嫌じゃ!嫌じゃ!……ワラワはチア衣装など着とうない!」

「あ〜黙って着ろッ!」

 

 

 

 本場アメリカのチアリーダー達の後を追ってスタジアムへ向かう。この時点で正直嫌な予感はしていた。私たちの他のクラスの姿は無いし、アメリカのチアガールズは笑顔でkawaii!!とこっちに手を振ってくれたけど頭の上の疑問符は透けて見えてた。その懸念は皆も抱いていたようで不安な表情を浮かべている。それでもここまで来てしまったら退こうにも退けない。きっと他の入り口があってそっちで他のクラスメイトが準備しているのだろうと八百万ちゃんの自身を納得させる言い訳に頷いた。

 

『本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ……ん? アリャ? どーしたA組!!?』

 

 いよいよ会場に出た所で素っ頓狂なリアクションのプレゼント・マイク先生の声が聞こえる。もう気付いてしまった時は遅いよね。明らかに私たち1ーAの女子たちだけしか会場にチア衣装の子はいない。つまり、そういうことだ。

 

「峰田さん上鳴さん!! 騙しましたわね!?」

 

 いったい何の為にこんな恥ずかしい思いをしたのだろうか。髪が長いから邪魔にならないように芦戸ちゃんに耳の後ろあたりにお団子を二つ作って貰ったんだけど何の意味も無かったということだ。……でもこの結び方は可愛いから後でやり方を教わっておこう。覚えとけよ峰田、上鳴。本戦でもしぶつかった時はけちょんけちょんにしてやる。

 

 その後レクリエーションの前に最終種目、一対一のトーナメント制ガチバトルの組み合わせをくじ引きで決めることになった。なんでも最終種目参加者はレクリエーション参加は本人の自由とのことらしい。本戦まで時間が空きすぎても集中が切れちゃいそうなので私は何種目か参加する予定だ。本戦に出ない梅雨ちゃんや葉隠ちゃんとの思い出も作りたいしね。

 

 クジの結果は私の初戦の相手が塩崎さん。知らない名前だし1ーBの子だろう。無事勝ち抜けば飯田くんか上鳴が対戦相手となる。個人的には飯田くんの方が人格者で優秀なので勝ち上がってほしいけど、今回ばかりは上鳴を直接殴ってやりたいので少し複雑だけど上鳴を応援したい。騎馬戦で同じチームだった心操くんは一回戦で緑谷くんと対戦するみたいだ。騎馬戦の時から響香チームで心操くんの個性の情報共有をしていたみたいだから流石にキツそう。峰田は初戦が轟くん、大人しく成仏してくれ。肝心の響香の対戦相手は瀬呂くん。攻撃特化の個性では無いけど応用力のある良い個性だ。どう自分の有利な展開に持っていくかがポイントになりそうだ。

 

 そこからは玉転がしに借り物競争とレクリエーションに参加した。勿論速攻チア衣装は着替えて体操服姿でだ。何故わざわざ恥ずかしい思いをしなければいけないのか理解に苦しむ。しかし1ーAの女子のチア姿は眼福だったので写真をいっぱい撮って満足だ。せっかく作ったんだからと1ーAの女子で男子を応援しようと言われた時は抜け出そうとしたけど目敏く捕まってしまった。無理やりチア衣装を再度着させられて応援するハメに……。私は一番後ろでポンポンだけ持って目立たないようにしといた。

 

 そこから先は本戦開始までは軽く走ったり柔軟体操をしたりして過ごした。正直緊張感がヤバい。毎年雄英の体育祭で最高に盛り上がる1対1のバトル。視聴率も鰻上りの注目コンテンツ。今までTVで見てきた光景をこれから私が競技者側として参加するのだ。緊張しないはずがない。あまり意識しないように体を動かしてみるものの、なかなか頭から離れてくれない。だいたいこういう時は何をやっても上手くいかないものだ。天之御中で始球空間の中に移動して気分転換してみても胸の焦燥感は晴れる気がしなかった。

 

 なんともモヤモヤしたまま時間は無常に過ぎてゆく。控え室に移動してくださいとの案内があったので言われるままに移動した。私は感情が表に出づらいので大丈夫?と声をかけられることは無かったけど内心心臓のバクバクが止まらない。すれ違った瀬呂くんや峰田くんも緊張しているように見えた。仲間を見つけて少しホッとする自分に気付く。

 

(いやいやいかん。他人の事よりまず自分の事だ。別に二人が緊張してるからって自分の緊張が無くなるわけでもあるまいし……)

 

 遠くで歓声と拍手の音が聞こえる。一試合目が始まったのだろう。確か緑谷くんと心操くんだったな。どちらの個性も決まれば速攻終わるタイプなので直ぐに次の試合に進むだろう。私の試合は三試合目だからそろそろ準備しなきゃいけない。プレゼントマイク先生の解説が響いて試合内容も大体把握出来るけど、なるべく意識の外に留める。今はとにかく外部から雑念を入れたくない。

 

「大筒木さんそろそろ移動お願いします」

「……うむ」

 

 スタジアムの通路までの道のりがやけに暗く感じる。お腹がギュルギュル鳴いている。お昼ちょっと食べすぎたかもしれない。スタジアムの通路から手がボロボロの緑谷くんが通り過ぎて行った。痛そうだけど表情は暗くない。勝ったのは緑谷くんか。少し歩くと通路の待機用の椅子で座って待っていたのは峰田だ。緊張で顔が青白くなっている。本戦前は揶揄ってやろうかと考えていたけど今は流石にそんな気はさらさら無い。同時に緊張を緩めてやろうとも思えなかった。正直私は自分の事で精一杯だ。とてもそんな余裕はなかった。おとなしく椅子に座って目を瞑って集中する。

 

 峰田がスタジアムに出て行って試合開始とほとんど同時に終了の声があがった。通路からでも見えるほど大きな氷の塊がスタジアムに出現していた。轟くんの個性で開幕と同時にやられてしまったのだろう。試合自体は直ぐに終わったけど轟くんが炎の個性で氷を溶かすまで時間がかかってしまい、集中力が切れそうになってしまったけどなんとか維持したまま試合開始までもってくることが出来た。

 

 通路を抜けて光さすスタジアムの中へ一歩踏み出せば、歓声と会場中の視線が私に集中した。

 

『ステージを渇かして次の対決は!! B組からの刺客!! キレイなアレにはトゲがある!? 塩崎茨!』

『バーサス』

『予選から常に上位にランクイン!! 個性の暴力ミステリアスガール大筒木カグヤだ!!』

 

 対戦相手の塩崎さんは天然さんなのか刺客という点をプレゼントマイク先生に異議申し立てをしている。正直私も異議申し立てしたい気持ちだ。個性の暴力は百歩譲っていいとして、ミステリアスなムーブをしたことなど一度も無い。それにしても彼女、髪の毛の代わりにツルが生えているということはおそらくアレを操るのだろう。どんぐりのようなパチっとした目にカッコ可愛い系の顔立ち。雄英高校のヒーロー科の女の子は可愛い子しかいないのだろうか?

 

(えぇい呑まれるなワラワ! 連絡先は後で聞けば良いだけの話だ!)

 

『START!!』

 

 開始と同時に彼女の正面にツルで出来た壁が現れる。頭のツルは伸縮自在で、意思のままに操れるってところだろうか。ツルの壁の一部がそのまま此方を狙って一斉に伸びてきた。飛行で横にズレるように躱したけどツルは過たずこちらを追ってくる。ツルの壁越しで視界は通っていないにも関わらずこちらの動きに合わせてきた。考えられるのはツル自体に別の意思があるか、ツルに感覚器官があって彼女の意思で手動で操っているか。前者ならオート動作な分、不意打ちは狙いにくいけど手動操作よりかは融通が利かない。後者なら不意打ちのチャンスはあるけど、融通が利く。

 

 白眼でツルの壁越しに彼女自身の様子を確認してみると、どうやら目を閉じてうずくまり集中しているように見える。おそらく後者かな? どちらにしろ止まってくれているのならこちらもやり易い。手の平から屍骨脈で先端を潰して非殺傷性能に特化した骨を準備してツルの壁に撃ち込む。

 

『大筒木の骨矢は……塩崎のツルの壁を突破出来ない!? こいつは大した防御力だぜぇ!!』

 

 ツルの壁の表面は貫いたけどあえて貫通力を落とした非殺傷版では無理か。それでも同じ箇所に何発か撃てば突破出来そうな気配はした。塩崎さんもそれを懸念に思ったのかツルの壁は厚くなり、彼女を覆うようにドーム型の壁が出来上がる。しかし防御一辺倒というわけでもなく、こちらに最初に放ったツルの一部がスタジアムの戦闘エリアの地面に根を張り、そこを起点にして再びこちらを襲おうという腹づもりのようだ。単純な髪の毛を起点とした個性ではなく応用力もある。良い個性だ。

 

「ならばこちらも考えがあるぞ」

 

 本気の先端を鋭利に尖らせた屍骨脈に回転も多めに加えて射出! 手の平から30センチ程先に黄泉比良坂を展開、射出した骨を転移する先は塩崎さんのツルドームの上空。射出はし続けたまま、一本ずつ展開先の裂け目の角度だけ細かに調整する。威力を上げた骨はそのままツルの壁を容易に貫通して彼女の屈んだ体に少し間を空けて地面に突き刺さる。10秒後にはツルのドームは彼女自らの手で解かれて、現れたのは彼女を囲むように骨の矢が地面を貫通して針の筵状態になった姿。一歩も動けなくなってしまい塩崎さんも自らの敗北を認めたのだろう。こちらを見る目は若干怯えているようにも見える。

 

(大丈夫。もし少しでも動くようなら射出途中の骨矢の先に黄泉比良坂出して明後日に逸らす予定だったから!)

 

『エグい! エグいぞ大筒木!?』

「……2回戦進出は大筒木さん!」

 

(……勝てて良かった〜。けど集中力めっちゃ使うしもう二度とこんな戦いはしたくない。輪廻写輪眼と白眼併用すると情報量が過多になって疲れるんだよね〜)

 

 緊張した今の状況で最高のパフォーマンスが持続出来るのはほんの僅かだった。だから速攻で戦意を刈って安定性を高めた結果こうなった。正直今の私ではこのやり方は動かない相手にしか使えない。安定してこのぐらいのパフォーマンスが出来たら良いんだけどなぁ。……う、緊張が緩んだらお腹も緩んできた気がする。

 

 通路の先で上鳴が緊張して次の試合を待っていた。何か言いたげな顔でこちらを見る上鳴。私は軽く目線を合わせてそのまま通路を通り過ぎて行った。

 

(ゴメン、上鳴。ワラワ……自分の尊厳のが大事だから)

 

 

 

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