兎の女神のヒーローアカデミア   作:眼球舐めは通常性癖

7 / 32
ワラワ羞恥に悶える

「ささっまずは一杯飲みたまえ大筒木くん」

 

 雄英高校の応接室のソファに座りながら、正面の根津校長にお茶を勧められる。二足歩行のネズミそのものの見た目な校長は事実その通りで個性“ハイスペック”を持っているネズミだ。明らかに見てはいけないシーンを見てしまった私に、人間以上の頭脳を持つ校長に別室に通されてお茶を勧められる……ひょっとしてこのお茶に自白剤でも入れられてるんじゃないか?

 

「勿論、自白剤なんて入れてないさ。卒業生が送ってくれた玉露の逸品だよ。ん? どうして分かったって顔してるね。そんな不安そうな顔されたらなんとなく察しはつくってだけの話さ」

「……え? ワラワ……消される?」

「……うん。思った以上に混乱してるみたいだね。さっさと話を進めようか。オールマイト、入ってきてくれないか?」

 

 応接室のドアが開きやって来たのはオールマイト。戦闘で破れたシャツは新しい物に替えたらしい。しかしいつものマッチョスタイルでは無く白眼で見たことのあるガリガリスタイルだ。いよいよ話が怪しくなって来た。隠している筈のガリガリスタイルを見せるのは何故か? やっぱり私を始末しようって腹なのか? あの時見せたオールマイトらしい振る舞いは偽りで無かったと信じたい。

 

「まずは…すまない大筒木少女!! 私の到着が遅れたばかりに皆を不安な目に合わせてしまって……相澤君から君達の活躍を聞いたよ。そして……ありがとう!!」

「えっ!? あっ……はいなのじゃ」

「おいおいオールマイト。今回のメインはそうじゃないだろ? 君のその姿の件だ」

「そう……ですね。今まで黙ってて悪かったが実はーー」

 

 躊躇いがちに事情を話そうとするオールマイト<本物>を片手で遮る。こちらもある程度は事情を把握出来てる。私の中で目の前のオールマイト<本物>は本物だが、彼からしたら偽物なのだ。本人の口から私がオールマイトの偽物だなんて言わせるのは酷だろう。

 

「事情は大体察しておる。その姿が……真の姿なんじゃろう? 実は実践訓練の時から気づいておった」

「……そうか。大筒木少女の個性からして遠からず気付かれるのではないかと思っていたけど、そんなに前からか。……黙っていてすまない。他の生徒にはその事は?」

 

 え? ひょっとしてここで話していないって答えたらワラワやっぱ消されちゃう? 拙いと思って無言でイエスともノーともとられるように斜めに首肯しといた。ソファーから2mmだけ浮いて『それなら好都合』と言われた時を想定していつでも脱出出来るようにしておく。

 

「ありがとう……この姿を皆に見せる訳にはいかないからね」

「オールマイトの姿は見ての通りさ……この事は今までは雄英では緑谷君と教師陣だけしか知らない秘密なのさ。本来なら大筒木くんにも秘密保持契約書にチェックして貰わないといけない案件だけど、正直僕ら大人としては生徒に責任を押し付けたくない。今まで黙ってくれてた事もあるし、この件は大筒木くんを信用してこれからも黙っていて欲しいんだけど……お願い出来るかな?」

「うむ」

 

 やはり私の懸念はある程度当たっていた。偽オールマイトの存在は雄英教師陣内では周知の事実だったか……最初は偽オールマイトが何かを企んで潜り込んでいるのかと思ってたけど、そこまで知られているのならその線は無さそうだ。偽オールマイトの言動は立派だし、根津校長も私を脅してこない。この事が意味するのは……本物のオールマイト……いや、オールマイト<本物>も間違いなく本物ではあるのだけどややこしいから、以降『本オールマイト』が何かしらの事故で亡くなった、若しくは活動不能になったと見ていいだろう。本オールマイトはヒーローとしての象徴だ。彼が活動出来なくなったとの情報が広がるとヴィラン全体が活気付いて犯罪率が大きく上昇してしまうだろう。そこで声が掛かったのがオールマイト<本物>だ。彼の力も本オールマイトには及ばないものの十分強力だ。見た目も他の人の個性の力があれば姿を変えることは不可能では無い。本オールマイトと違っておそらく時間制限付きの個性だから、現場での活躍も控えられて近くの教師陣からサポートも受けられる雄英高校の教師になったと考えれば辻褄もあう。

 

 私もようやく腰を落ち着かせて警戒を解いた。

 

「それと話は変わるけど大筒木少女……君が脳無に撃った骨、あれは何だい? 確か個性届には自分の骨を操ることも出来るとはあったけど、あれは自分の骨を撃ち出しただけでは無いだろう?」

 

 ギクっ。嫌な事聞いてくれるなぁ……でも流石にいつまでも隠し切れる事でも無いか。オールマイトも本当の事を話してくれたし、私も本当の事を語るべきだろう。

 

「……ワラワは、アレを共殺の灰骨と呼んでおる」

「何だか随分物騒な名前だね」

「事実、聞いた話によると恐ろしい威力なのさ。超再生を持つ脳無の体を崩壊させるなんてね」

 

 ギロっと鋭い視線が刺さる。

 

「……正直アレは使いとう無かった。共殺の灰骨は刺さった部分から崩壊が始まり、いずれ体中に拡がり灰へと変わってしまう。脳無が自らの身体を千切って超再生で回復したのを見る直前までは生物に撃つべきでは無いと封じておった。しかし少しでもオールマイトの勝率を上げたかったのじゃ。脳無なら撃ったところから伝播するのを恐れて同じように引きちぎるじゃろう。そしてその隙を狙ってくれると信じて……ワラワは撃った」

「……もしそのせいで人を殺してしまうことになってもかい?」

「根津校長ッ!! 大筒木少女はあの場で出来る最善を尽くしてくれました!! その彼女を責めるのはーー」

「ーーだからこそだよ! ……だからこそ聞かなきゃいけないんだ」

 

 暫く沈黙が応接室を包んでーー

 

「……結果的に殺すことになっても、ワラワは皆を守りたかった。あの脳無の力は異常じゃ。戦闘が長引けば皆に被害が及ぶかも知れぬ。あのまま奴に共殺の灰骨を撃たないで、悲しい事件が起きてしまうよりかは良い……とワラワは判断した。もし殺したという結果になっていたとしてもワラワは後悔せぬだろう」

 

 あの時皆が犠牲になっていたら。緑谷君、轟君、爆豪君、切島君。或いは芦戸ちゃん、蛙吹ちゃん、そして響香……誰一人犠牲にしたくない。1ーAの誰一人でも帰らぬ人になってしまったら残された人たちは雄英高校での三年間、心の底から楽しめる時間は無くなってしまう。そう考えるとやはり私はあの時の判断が間違っていたとは思えない。

 

 自信を持って私は真っ直ぐに根津校長の目を見つめた。額の輪廻写輪眼で更に倍プッシュだ。

 

「ふぅーーーーっ、そんな目で見られると困っちゃうね。……分かった今回の件はお咎めなしと行こう。幸いなことに今回は皆無事だったし、緊急事態で元から責任を追求する気は無かったけどね。その代わりに今から約束をしてくれ」

「約束とは?」

「その共殺の灰骨をもう生物相手に使わないことさ。その力はヒーローの目指す非殺傷での敵捕獲に真正面から反抗するものだからね。使ったら今度は議論も抜きで即刻除籍、退学処分さ」

「……しかし、また同じような事があれば」

「それを阻止し、生徒を守るためにわたし達教師陣がいる! 今回に関しては本当に言い訳も出来ないが、次こそはこのような事の起きないように対策はしっかりさせて貰うよ!」

「雄英高校の校長として僕も勿論最大限尽力するさ」

 

 見た目だけマッチョのオールマイトがナイスガッツポーズで安心させようとしてくれた。校長もHAHAHAHAと凄みを感じさせる笑い声と瞳で後押しする。二人がかりでやるもんだから圧がスゴい。

 

「それに大筒木少女は実践経験と体の動かし方がまだまだだからね。これから先みっちり鍛えて、供殺の灰骨なんて物騒な最終兵器は全く使う必要ないぐらいの強いヒーローに導くのも我々教師の務めだよ!! 勿論他の1ーAの皆もね!! ……1ーAは大人の世界の恐怖を知って、それでも身を挺して戦い、生き残った。こんなにも多くの経験を積んだ一年生は過去にいない!!」

「……うむ」

「敵も馬鹿なことをした!! 1ーAは強いヒーローになるぞ!!」

 

 あぁ、この人は本当にオールマイトなんだなぁと改めて実感する。本オールマイト……象徴としてのヒーローはここにしっかり受け継がれてますよ。あまりに立派で眩しすぎて、私は耐えきれなくなってこの人を唐突に揶揄いたくなった。無言で任せてくれという間があんまりに居心地が良すぎて擽ったくなったんだと思う。

 

「……カンペ無しで授業をやっておれば、今ので素直に感動するところじゃがのぅ」

「ハッハッハッハ!! 大筒木少女は手厳しいねどうも!!」

「本物のオールマイトならもっとしっかりしておるぞ」

「本物……? 本物の……オールマイトだけど?」

「いや、そういうのよいから」

「……え?」

「……え?」

「「……何それ怖い」」

 

 

 

 

「ワァーーーーーーーーーーーッ!!」

 

 思い出すだけで羞恥心でジタバタしてしまう。家のクッションを投げまくって花瓶を壊して、それだけでも抑えきれずに天之御中の始球空間で共殺の灰骨を撃ちまくる。叫び声を上げながら掌底で辺りを疲れて動けなくなるまで破壊しまくった。

 

(いや、そりゃあそこまでソックリで本人の個性も言動も再現出来てたら普通本物だと思うでしょーーー!! 普通ならね。……つまり私は普通を優に超えた超絶級のおバカさんでぇす!! 今ならサインも書いちゃいま〜す!! …………あたしってホント馬鹿……死にたい……自分に共殺の灰骨打ち込んで灰になって消えて無くなりたい…………マジで)

 

 あの後お互いの誤解……っていうか私の一方的な誤解を話し合って解決した。なんでもオールマイトは数年前凶悪なヴィランと戦い、なんとか勝利は遂げたものの内臓の一部を失う大怪我を負ってしまってヒーローとしての活動時間が非常に短くなってしまったらしい。つまりオールマイト<本物>は本オールマイトその人だったのだ。……何だよオールマイト<本物>って……何だよ本オールマイトって……アホじゃない? そうだよアホだよ。

 

 オールマイトはメッチャ良い人だった。自分のとんでもない勘違いもその事件は公表されてないし、君の“個性”ならそのように判断するのも無理も無いと励ましてくれた。あまりに人が出来すぎてて、慰めてくれると逆に自分がとんでもなく惨めに思えて来る。根津校長が空気を読んでオールマイトを止めてくれなかったらその場で確実に天之御中を使って逃げていた。

 

 思い込みって……怖いなぁ。全くの的外れでは無く、ある程度辻褄があって真実も含んでいただけに、最初のオールマイト偽物説を疑うという考えさえ私には浮かばなかった。今回の件で私が今まで積み上げてきたクールキャラのイメージがオールマイトの中で崩れてしまったのは確実だろう。襲撃事件があって今日は休校だが、明日からどんな顔してオールマイトに会えばいいのか分からない。少なくとも暫く顔を合わせる度に脳内で羞恥の悲鳴を絶叫するのは間違いない。

 

「学校……行きたくないのぅ」

 

 しかし、話せる相手は今回の事件で増えたのだ。その事は素直に嬉しいし、これから友達になっていくには学校に通う以外の選択肢なんて無いわけで……鬱だ。

 

 とりあえず現実逃避気味に始球空間に逃げ込んで訓練することにした。今回の濃すぎる実践経験を通じて改善点や克服する点が大きく見つかった。今までは身体能力にものを言わせて突破して来たけど、今回の脳無のような相手が出て来た場合単純な肉弾戦では戦闘経験の少ない私では写輪眼で動きこそ捉えることは出来るが身体がその意識に追い付かない。これは体術の特訓が単純に必要になるだろう。ワープ男、黒霧に一人孤立して飛ばされた尾白君は一人で格闘術で対処したらしいし、彼や担任の相澤先生と組手で実践的な訓練が望ましい。今の私では身体能力で攻撃の威力こそ高いけど、相手に攻撃を当てるまでの技術が無いし、攻撃後の隙があり過ぎるんだよね。

 

 そして遠距離攻撃手段の確保だ。私の飛行能力と組み合わせることで、相手の攻撃が届かない距離でこちらだけ一方的に攻撃する。これに勝る戦法を私は知らない。共殺の灰骨はもともと威力が高過ぎた。校長からの約束が無くとも、よっぽどな状況でも無ければ私だって使いたくは無い。それに代わる攻撃手段はやはり屍骨脈による骨の射出だろう。君麻呂のように指の骨を飛ばす十指穿弾も出来なくは無いだろうが、なんか個性的に違和感を覚える。手の平から骨を射出するのがやはり正しく、安定する感じがした。感覚的なものだけど、個性社会においてその感覚は重要視されている。個性が意志を持つという個性論はオカルト染みていると馬鹿にされているけど私はある程度信じている。私がこの世界で生きているのが既に立派なオカルトなのだ。

 

 閑話休題。手の平からの骨の射出は同時に十の弾を放つ十指穿弾に数こそ劣っているものの悪いことばかりでは無い。まず安定性。基本的に人は手に武器を持って振ったり、殴ったり、或いは引き金を引いたりする。人間が一番器用に繊細に扱うことの出来る『手』からの射出は単純に狙いやすい。指全部を向けての攻撃は攻撃範囲が多い分、繊細な狙いがつけ難い。威力も一度に撃つ数を絞ることで指弾より上だし、威力の強弱の調整もし易い。

 

 今までは普通に先端を尖らせた骨を放っていたけど、回転速度の調整や、先端部分を潰して殺傷能力を抑えた骨の矢の開発も必要だ。尤も非殺傷のゴム弾と同じで当たりどころや数によっては残念な結果になってしまいかねない。そこらへんは要調整だな。

 

 逆に威力の高い骨の研究もしてかねば……。脳無クラスや切島君のように体を硬質化させる個性のヴィランの場合に効果が無ければ、封印した共殺の灰骨を使う事態になりかねない。

 

 そして黄泉比良坂の展開速度を早める事も目標の一つだ。黒霧のワープゲートの早さに黄泉比良坂は後手後手の対応を迫られた。もっと奴より早く展開させられていたら、クラスの皆がワープで別々に飛ばされる事もなかったかも知れない。黄泉比良坂の大きさ自体はこれ以上大きく出来る気がしないので、展開速度をもっと早くする事に集中する。

 

 原作でも次空間忍術は脳の処理能力が求められる高等忍術だ。三次元の空間指定ってのは普段使わない脳の機能を全開まで使用している気分だ。これをバンバン使っていた四代目火影波風ミナトや卑劣様、オビトは本当に尊敬するレベル。個性の後押しがあっても頭が良い訳では無い私だが、頑張るしかない。頭を使う個性といえば八百万ちゃんの『創造』がある。彼女に関しては対象物の分子構造さえも理解してその都度必要な物を創造するというのだから感嘆の一言だ。私のような一般人程度の頭だと一切役に立たない個性だけど彼女ほど頭が良ければ使いこなした時の効果は凄まじい。時代が違えば“神”と崇められるだけの能力だ。八百万ちゃんの個性と私では方向性が違うけど個性発動時の思考方法やコツ、単純なアドバイスを求めてみるのも手だろう。

 

 天之御中については瞬時に移動できる数を増やすことだ。しかしこれも正直敵相手に想定した場合、使い勝手がかなり悪い。酸の海や溶岩は殺傷能力が高過ぎるのでまず使えない。氷の世界もそれに次いでヤバい。砂漠世界も敵を放置したら死に直結だ。高重力は原作でもカグヤ本人にも効果があったように私も動けなくなってしまう。正直あれがカグヤの情け無い一面として一番有名なのでは無いだろうか。まだ重力に関しては相手も想定してないだろうから普通の敵相手には優位に立てるかもしれないけど、脳無クラスだと私より動けてしまうだろうからピンチになるだけだ。となると始球空間に移動せざるをえないわけだけど、移動するだけでは相手を倒すという目的ならあまり効果は無い。正直始球空間は私にとって一番居心地が良く、リラックス出来る空間なので雄英の皆や一般人を避難させる為に一時的に受け入れるならまだしも、敵をあまり長居させておきたくない。原作でもカグヤが始球空間にナルト達を入れたくなかったのは全ての空間に繋がる場所だし、チャクラの回復に適した場所なのもあるだろうが、そういった思いが無いわけでもないだろうなと今の私なら推測できる。

 

 輪廻写輪眼……写輪眼や白眼については使えるけど、輪廻写輪眼の輪廻眼については特にいまだ使える気配が無い。使えたとしてもそもそも輪廻眼の基本的な五大性質全てを扱える能力がここでは死んでいる。六道の術の餓鬼道のチャクラの吸収も意味ないし、畜生道の無尽蔵口寄せも別に私が何かと契約してる訳でも無し、口寄せ自体出来るか分からない。修羅道の絡繰の鎧や近代の武器の呼び寄せも同様。NARUTO世界ならいざ知らず普通に近代の武器がある以上、それを使った方が良いんじゃね?って感じだ。人間道や外道は普通に使えたとしたら有用だけど、魂由来の術がこの世界で使えるかどうか不明。私が別の世界で生きている以上、魂はあるのではないかと思ってるけど実際使えないし分からない。後は天道の引力と斥力。六道の術で直接的な攻撃力のある術はこれだけと言っても良い。これに関しては単純に憧れてるから使いたいところだけど、どうやって使えるようになればいいんだろ? やっぱり修行か? でも輪廻写輪眼自体は見た目からして既に開眼してるわけだしなぁ……

 

 色々考えていると残酷なまでに時間が過ぎるのが早い。あっという間に1日が終わってしまった。

 

 雄英の1ーAクラスへの襲撃事件は報道はされたもののそこまで大きな雄英への非難的な報道はほとんど無かった。生徒に大きな怪我を負った人がいないのが大きかったのだろう。安全性について疑問視される声はあったが、そもそも雄英高校のカリキュラムが敵に漏れたのは先日のマスコミが雄英バリアを突破してきた事件が発端である。そのこと自体はマスコミは覆い隠していたけど、雄英生や警察、ヒーロー公安委員会から何故か漏れてしまい、昨今のソーシャルメディアで広まった。ここで挫けないのがマスゴミ、もといマスコミである。今度は1ーAの危機を救った雄英のヒーローの活躍や1ーA自身の勇気ある敵への抵抗や、ヒーロー将来有望な個性を持った素晴らしい生徒たちだと持ち上げる形で掌を返したのだ。ここら辺の周到さ、恥知らずな振る舞いは前世と何一つ変わって無いものだなと呆れる。

 

 それでも以前のように雄英バリア前がマスコミで騒ついているということが無かったのは単純に嬉しかった。

 

「お早う」

「先生ご無事なようで安心しました!!」

 

 相澤先生も見た目程大きな怪我では無かったらしく、芦戸ちゃんの迅速な応急処置の効果もあってか鼻や頬にガーゼ、あと腕や脚に包帯を巻いているが歩くこと自体は普通に出来ているみたいだ。私がお姫様抱っこした甲斐もあるというもの。

 

「俺の安否をお前ら心配出来るような立場か?」

「えっ!?」

「また何かあるんですかっ?!」

 

「雄英体育祭が迫ってる!」

「クソ学校っぽいの来たぁぁあ!」

 

 雄英体育祭は有名だ。知らない人はいないだろう。前世と違い個性の登場で、個性のない時代を想定した画一化された競技で争うオリンピックが廃れたのはある意味当然だろう。そもそもの前提が違う以上、前時代のルールで争って勝つこと負けることにどれだけの価値があるだろう。

 雄英体育祭は個性を全て利用して学年毎に争う、今の時代でのオリンピックのようなものだ。当然その姿はマスコミによって放送されて視聴率も高い。プロヒーローもその活躍を見て生徒の中からインターンの受け入れを決める、いわばヒーロー科としての第一関門だ。ここで活躍するかどうかで将来のプロヒーローとしての一歩が大きく変わって来る。特に今年は1ーAが敵襲撃事件で実体験を積んでいることから大きく期待されている。つまりここでトンデモない失敗をしてしまったらその印象は大きく残ってしまうということだ。

 

 考えただけでお腹が痛くなって来た。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。