DMC5のクリフォトの樹の実をオイチイオイチイしまくってたら人魔問わず全方位から警戒されまくってて草 作:美味しいパンをクレメンス
気がついてまず目についたのは血の海。鼻腔をくすぐるのはむせ返るほどの血の匂い。太陽が真上から眩しい光を降り注ぎ、足の踏み場がないほどに埋め尽くされた死体達を照らす。
何がなんだか分からず呆然として、暫くの間立ち尽くしていた。
何故こんな場所にいるのか、ついさっきまで自分が何をしていたのか、そもそも自分が何者なのかすら分からない。
突然のことで頭の中は混乱していたが、心の何処かで冷静に状況を把握しようとしている自分に気づく。
やがて、俺は眼前に広がる血の海とその中に浮かぶ大量の死体の様子から、ここが戦場の跡なのだということを理解する。
視界いっぱいには死屍累々。鎧を身に付けた人間の死体の山。扱う者を失い血の海に沈む剣や槍、斧や棘の付いた鉄球といった武器の数々。死体や地面に刺さりまくっている多量の矢。そして死体や武器と比べて数は多くないが二種類の国旗があちこちに打ち捨てられたように点在していた。
戦争、なのだろう。鎧や武器を見る限りでは中世かそれ以前の。旗が二種類ということは二つの国による戦争だと思われる。地平線の彼方まで死体で覆われていることから、戦争していた国は二つでも規模は大きかったというのは簡単に想像できるが。
何千人、いや、何万人か、もしくはそれより遥かに多いのか。この戦場で失われた命を数えることはできはしない。
それにしても──
「結構冷静だな、俺」
ん? なんか凄くイケメンボイスなんですけど?
しかもいきなり死体なんて目の前にしたらガクブルジョワー確実のはずなのに。股間の息子ソードがその存在を極端に縮ませてもおかしくないのにそこまで動揺していない。
あれ? 股間の息子ソードよ、いつの間に貴様銀髪になってるの!? あんなに黒々としてたジャングルが、綺麗に染めたみたいに銀色よ!
っていうか全裸!? あれ俺なんで全裸!? 身に纏うもんがないから丸出しで丸見えなんだけど!
どういうことなん!? なんで全裸でその上黒いはずのモジャンボが特殊個体銀モジャンボみたいなメガ進化してんだよふざけんな!
更に言えば俺の首から下は『ウホッ、いい男!』と思わず唸ってトイレに連行したくなるくらいに無駄なく鍛え上げられていた。健康的でマッシブで、それでいて無駄がない、しなやかな体躯を誇る肉食獣のようだ。
一体何処のどなたのもの? 絶対に間違いなく『本来の俺』の体じゃないのは確か。
股間のソードもよく観察すれば慣れ親しんだ気がしない。以前の俺のがフォースエッジだとしたら今のこいつは魔剣スパーダみたいだよ。スティンガーすると伸びそうだし、赤黒いオーラを幻視しそう。
他にも変化がないかその場で可能な限り確認してみることにする。
次はとにかく鏡みたいなのが欲しい。この際贅沢言わん。死体の鎧とか兜とかの板金? みたいなので顔見たい。
魔剣スパーダ(意味深)を納刀しないままそこら辺に転がる死体を何度か引っ繰り返すが良いのが見つからず。結局は死体に突き刺さってる剣(本物)を引っこ抜いてべったり付着した血を振り払いその刀身を鏡代わりにした。
そして驚愕する。目がこれでもかと見開く。
何なら『気づいたら死体だらけの場所で記憶喪失』よりも衝撃だ。
「......顔は、声もか、デビルメイクライ5のネロで、髪型は3のダンテね。首から下は誰のか知らんけど......」
つまりはそういうことである。若々しいしイケメンだしで非の打ち所がないとはこのことだ。
「................................................」
いや、どういうこと!?
訳が分からんし、俺がスパーダの血族(?)みたいになってることにも意味分からんし、何がどういう経緯で結果的にこうなったの!?
剣を放り捨てて一頻り頭を抱えてたらなんか段々思い出してきた。思い出したっつっても『本来の俺』の名前、俺がどんな奴だったのか、どんな生活をしていたかは思い出せないまま。
思い出せるのは、趣味に関する知識だ。それはつまりゲームやマンガ、アニメやラノベなどのオタク趣味。あとはついでのような感じの現代知識。
一番重要な本人のパーソナルデータないんですけど! オタク趣味な知識が一番重要だから、とか言われたグーの音も出ないけどさ!!
「畜生! これが夢でも幻覚でもなく現実で、俺が異世界転生したとかいうならなんか特典とか出ろファックユー!!!」
もうなんだかヤケクソになった。ヤケクソになったから右手の中指を立てて腕を高く掲げた。デビルメイクライ5──DMC5でネロがデビルトリガーを発動させる時の動作をまんましてやった。ついでに言えば最後のF言葉も本家の通りである。
今更冷静に考えると、変身ヒーローの主人公がファック言いながら中指おっ立てて変身するってどうなの? しかもラスボスと戦ってる時のセリフだからなこれ。カプコンさん気合い入り過ぎだよ。
「......何も起きな、うっ、ぐ!」
と思ってたら全身を襲う虚脱感。まるで体に力が入らない、むしろどんどん力が抜けていく。立っていることすらできず膝を突く。
「な、何が......」
なにが起きたのか分からない。だが俺の動作に連動してこれは起きた。だとしたら何か意味があるはず、と思いたい。
虚脱感がなくなるまで蹲っていたら、とあることに気づく。中指を立ていた右手の中に、何かある。
恐る恐る手を開けば──
「豆? いや、なんかの種か?」
としか思えない奇妙なものが一粒あった。大きさは大豆より大きく空豆よりも小さい。見た目はリンゴの種のまんま。
いつの間に? こんなものを握っていたはずはない。
訝しんで掌の上のものを左手の人差し指と親指で優しく摘まむ。
と、
《クリフォトの種》
脳内に情報が流れてきた。声が聞こえてきた訳でもなければ説明文的なものが表示された訳でもない。すっ、と頭の中に入ってきてまるで既知の出来事を振り返るかのような、不思議な感覚。
何だこれは?
......ま、それは一旦置いておくとして。
情報が流れてきてこれが何なのか分かったのはいいけど、クリフォトの種ってあれだろ? 人間の血を吸って成長する魔界の樹、その種ってこと? 最終的には禁断の果実をつけて、それを食ったものは絶大な力を得る......DMC5におけるキーアイテム的な存在。
ゲームにおけるクリフォトの樹は、人間を何万人も犠牲にした。もし本当にこれがクリフォトの樹の種ならば、どう考えても文字通りの意味で災害の種でしかない。
こんな厄ネタは捨てるの一択でいいはずなのだが。
「捨てるって、何処に?」
辺り一面血だらけの死体だらけ。こんな場所に捨てたら即発芽してトトロの森なんて比較にならんほど巨大な樹が生えまくってナウシカの腐海すら霞むくらいヤバイ環境が誕生する気がする。
しかもこれ、なんでか知らんけど俺の手の中から出てきたんだよな? ってことは俺が生み出した俺の種......いや、下ネタ的な意味ではなくて。
「うーん」
摘まんだ種をしげしげ眺めつつ、もう片方の手を顎に当てて考える。
捨てるのがいいと分かっているが、どうしても捨てるという選択肢を選べない。
いや、正直に白状するなら捨てるなんてとんでもない、使ってみたいというのが本音だ。
まるで種が声なき声を囁いているかのようだ。
種を蒔いて発芽させろ、樹を育てて果実を食らえ、そして絶大な力を手に入れろ、と。
まさにそれは悪魔の囁きだった。
少しずつだが確実に《魔》というものに、絶大な力が手に入るということに魅入られていくのを自覚する。
この世は弱肉強食。弱い者は強い者に食われて死に、強い者は弱い者を食って生きる。その摂理にはたとえ神でも抗えない。
弱いままで生き続けることは愚かなことだ。弱いままでは何も守れない。自分の命さえも!
だから言え、あの言葉を口にしろ。魂の奥底から願え!!
誘惑に抗えない。
頭に、心に響いてくる悪魔の声に応じるようにして、否、むしろそうするのが自然だと、謎の声に従うことが当たり前だと感じながら俺は言葉を紡ぐ。
「I need more power」
それはまさに引き金となる言葉。
次の瞬間、掌の上にあったクリフォトの種がひとりでに動く。手から勝手に弾かれたように飛び出し、足下の死体にくっ付く。
種が割れて発芽。先端が針のように鋭い触手(恐らく根や蔓)が死体に絡み付いて突き刺さり、その血を吸い始めた。
吸血を開始して間もなく、死体が乾いていきミイラみたいになると同時に触手は肥大化し、瞬く間にアナコンダのような太さと長さになる。
それからは爆発的だった。最初の死体──既に元が何なのか分からないほどにボロカス状態──に絡み付いていたクリフォトの触手は、新たな触手を十数本を発生させ放射線状に広がり周囲の死体を食い荒らす。そしてまたその身を増殖させて広がり続けていく。
悍ましい光景に目を離せないまま呆けていたら、すっかり周囲はクリフォトの触手だらけになっており逃げ場を失っていた。
「あー、俺、触手プレイ的なのはあんま好きじゃ──」
ない、と言い切る前に触手の群れが襲いかかってくる。ろくに抵抗も許されず全身に触手が巻き付き体を拘束され、腕や足、腹、胸、背中に鋭い先端が突き刺さり、激痛に悶えつつ早まったと後悔し始めたところでもう遅い。
これは死ぬ。体内の血液どころか何もかもを吸い尽くされて干からびて朽ちる。惨めで無様で哀れな末路を迎えるのか。
だが、待っていたのは全く逆のことだった。
「は? 痛みが......」
痛みが消えている。体中を穴だらけにされたのに、今はもう痛くも痒くもない。
それどころか力が溢れてくる。活力が漲ってくる。体内の奥に、魂の底に大量の何かが外部から流し込まれるのを感じた。
体と魂が別の何かへと変質し、作り変えられていく。
クリフォトの触手は人間の死体から血を吸うのに対し、俺には何かを注いでいるんだ。
脳裏に過るのはDMC5におけるクリフォトの樹の設定。人間の血を養分に成長するクリフォトは、最終段階にまで育ち切るとこれまで得た養分を凝縮させた果実をつける。
その果実を食らうことで絶大な力を得ることになるのだが、種が発芽して果実が実るまでの約1ヶ月強、その他の方法でも力を得ることが可能だ。当然、力を得られる量は果実を食らうよりも劣るのだが。
それは、クリフォトから養分を注がれること。
バージルがそうだった。クリフォトが発芽してそれほど時間が経ってない段階で、当時既に敵無しの強さを誇るダンテを一蹴するほどの強さを見せた。DMC1のラスボスである魔帝ムンドゥス、それと同格とされるアニメ版のラスボスのアビゲイルとDMC2のラスボスの覇王アルゴサクスを打ち倒したダンテを相手に、である。
最強の
つまり、今俺の身に起きていることこそが、バージルに起きたことと同じということ。
「つまり! 理由はよく分からんが俺にバージルムーブをしろという神のお告──」
《レッドオーブを入手。これにより『時空神像』の利用が解放。レッドオーブを時空神像に捧げることで武器やアイテム、スキルの入手、入手した武器やスキルの強化が可能》
「──げぇ?」
突如脳内に流れ込んでくる情報。先ほどクリフォトの種を見て理解した時のように、不思議な感覚が訪れる。
『古の戦いの技を欲す者。我に血を捧げよ』
頭の中に浮かぶのは、大きな砂時計を掲げている獅子の頭部を持つ人を象った黄金像の姿。DMCシリーズでお馴染みの時空神像だ。悪魔の血が結晶化したレッドオーブを捧げると主人公達を強化してくれるサポート的な存在。
......あのさ、悪魔の血なんて何処にもないからレッドオーブなんて入手できないはずなんですけど。
『我に血を捧げよ』
血ならなんでもいいんかい。じゃあやっぱりさっき入手したレッドオーブって悪魔の血じゃなくて人間の血なのね。
うーん。血を捧げると力をくれるとか、完全に邪神の類いだよね。時空神像って外見は凄く神々しいというか神聖な感じの黄金像なんだけど、それでいいのか。しかも人間の血で代用が利くとなると、まるで俺がカルト宗教の信者みたいでなんかヤダな。
ま、DMC4には悪魔である魔剣士スパーダを神と崇める宗教が登場するし、別にいいのか。
それに、上半身は人間の美少女で下半身は蛇の邪神も言ってたっけ。『命は粗末にしていいが食べ物は粗末にするな』的なことを。
この場合、時空神像にとって食べ物は血で、それを得る為の命は粗末にしていいことになる。
なら、問題ないか。
......なんだか倫理観が普通の人間から逸脱してきてるな俺。
まだ某ゲームのように人間性を捧げてはいないはずなのだが、クリフォトの種を手にしていた時に聞こえた悪魔の囁きに耳を傾けた時点で知らない内に捧げていたのかもしれない。
今はただ、クリフォトの実を食らうその瞬間が楽しみで仕方ない。
クリフォトの触手でぐるぐる巻きにされてて視界も塞がり身動きも取れない状態で、自身の肉体が異形へ変じていくことに心地良さを覚えながら俺はほくそ笑んだ。
主人公、名前はまだない。
DMCシリーズが大好き。オタク趣味系の知識はあるが転スラの原作知識なし。
現在の保有スキル
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生命体の血を養分とするクリフォトの種を生み出し、果実が成るまで樹を育てる能力。種は一度に一つまでしか生み出せない。樹が枯れない限り新たな種を生み出すことはできない。果実を収穫すると樹は枯れる。
果実が成るまでの間、クリフォトと融合し養分を供給されることで果実を食らうほどではないが強大な力を継続的に得られる。吸ったはいいが使い切れない余剰分の血は、レッドオーブに変換される。
なお、同じ植物系のトレントやドライアド達からは蛇蝎の如く嫌われる。
・
レッドオーブを捧げると力をくれる。アイテム、武器、技、能力の入手、それらの強化などが可能。
ちなみに代価として要求されるレッドオーブの数は多いので、スキルの癖して守銭奴めいている。
レッドオーブ
DMCシリーズにおける通貨ような存在のアイテム。本来は悪魔の血が結晶化したもの。基本的には時空神像に捧げて自己強化する為に使用する。
シリーズを通して見た目が苦悶の表情を浮かべる人の顔みたいなので、DMCファンからは「ブチャイク」と呼ばれている。
この世界では主人公にしか認知できない物質で、血を吸ったクリフォトから受け取るか、主人公が誰かにダメージを与えたり倒したりすると入手できる。また、何らかの仕事をこなすと何故か報酬として手に入る。
はい、まだ転スラ要素皆無ですけど、息抜きを兼ねてゆっくりまったりちょっとずつ更新できたらなと思います。
あ、プロローグの時系列は転スラ本編の遥か昔(ギィが現世に召喚されたくらい)ってことでよろしくお願いします。