DMC5のクリフォトの樹の実をオイチイオイチイしまくってたら人魔問わず全方位から警戒されまくってて草 作:美味しいパンをクレメンス
「よくも、よくも、よくもよくもよくも!! 裏切ったな! 俺様の気持ちを裏切ったんだな!!」
「知らん」
激情と共に何度も何度も振るわれる剣撃を、刀を納めた鞘を左手で握り受け流す。ついでに言われたこともテケトーに受け流す。
するとルドラの怒りのボルテージが更に上昇し、それに比例して攻撃も激しさを増していく。
「クソッ、クソッ、この悪魔め!!」
「悪魔だが、何か?」
「おちょくってんのか貴様は!?」
俺はまだ抜刀していないものの、鍔迫り合いの形となる。
「そう聞こえたなら謝罪しよう。こちらとしてはお前の事情など知ったことでもなければ心底どうでもいいんだが、小さな子どもの幻想を厳しい現実で打ち砕いてしまったのは事実だ。だが喜べ、大人になるとはこういうことだ。誰もが理想と現実のギャップを思い知り、己の無力や不運に嘆きながらも折り合いをつけて妥協点を探りながら生きている。成長するということは無垢ではいられない。年を重ねる毎に少しずつ穢れていき、その穢れを厭いながらも自分の一部として認め生きていくのが大人になった証──」
「それの何処が謝罪だ大嘘つきめ! 何勝手に講釈垂れてんだこのクソ野郎っ!!」
ダメだ。口を開けば開くほどルドラが怒ってしまう。これでは火に油だ。どうにかして彼の怒りを鎮めたいのだが、いくら考えてもいいアイディアが浮かばない。
(仕方ない。こういう時は──)
鍔迫り合い状態から一旦距離を置いたのを機に、俺は納刀したままの閻魔刀をヴェルグリンドとルシアに向かって放り投げる。
放物線を描いた閻魔刀をルシアが慌てて受け止めたのを視界の端に捉えつつ、こちらに真っ直ぐ突撃してくるルドラに対してファイティングポーズを取ると、俺の両手足が白く眩い光に包まれ籠手と具足が装着された。
ベオウルフ。光の力を宿した格闘用の魔具でDMCシリーズでの初出は『3』。ストーリー的には同名の悪魔がダンテと戦った後、バージルにトドメを刺されて魔具になり、暫くはバージルの武器として使用されるが最終的にダンテが手にするという経緯がある。DMCファンからは主人公のダンテの格闘武器というよりはバージル専用の格闘武器という印象が強い。何故ならダンテの武器は一部を除きシリーズ毎に一新されるが、バージルのプレイアブルキャラとしての武器は常に固定されている為。ダンテの格闘武器が作品毎に異なるのに対してバージルは毎回ベオウルフ。なのでベオウルフ=バージル専用と思っているファンが大半で、俺もその例に漏れない。
「!?」
ルドラは剣士と聞いていた俺が拳闘士に早変わりしたことに驚き目を見開く。それが俺には致命的な隙に見えたので
(──とりあえず気絶するまで殴るに限る)
錐揉み回転しながら面白いくらいにぶっ飛んで、地面に三回バウンドしてからゴロゴロ転がりそこら辺の岩に激突してから漸く止まるルドラ。
やったか? と思ったのも束の間。ガバッと起き上がり元気に怒鳴ってきた。
「いってぇぇぇぇ! ギルバが拳闘士の真似事するなんて聞いたことねぇぞ!! それに何だその姿!? さっきのと全然違うじゃねぇか!!!」
「それは固定観念だ、小僧。誰が剣しか振るわないと言った? 誰が変身した姿が一つしかないと言った? そんなんだからそんなんなんだ、お前は」
「うるせぇっ!」
しまった。つい余計なことを口走ってしまった。
それにしてもタフだな。本当に人間なのか疑わしい。いや、魔王に対抗する勇者ならこのレベルが標準なのだろうか? ベオウルフの一撃は閻魔刀よりも威力が高い。しかも
まあ、ギィと引き分けたんだから加減の必要がないのは正直ありがたい。とにかく全力でタコ殴りにしてやろう。気絶したらお供の二人に預けてトンズラこく、これでヨシッ!
「ハッ!」
俺は気合いを入れて高く跳躍し、ルドラ目掛けて斜めに急降下しながら蹴りを放つ。流星脚という技名だがどう見てもライダーキック。
ルドラが横に回避し、立っていた場所に俺の足が突き刺さり地面が陥没する。
「この......!」
反撃としてルドラが剣を振るおうとするが甘い。まだ俺の追加攻撃が終了してないぜ!
「フンッ!」
流星脚が斜めに向かって放つ急降下キックなら、流星脚の追加攻撃はその逆。斜めに向かって急上昇しながらの飛び蹴り。つまりもう一回蹴り入れるドン! ちなみにこれを初めて見た時俺は
「砕けろ」
引力に逆らわず自由落下に身を任せながら右の拳に力を込めて真っ直ぐ振り下ろす。
寸でのところでルドラに避けられるが構わず地面をぶん殴った。
拳が地面を叩いた瞬間、目を灼く閃光を伴う魔力の爆発が発生。光の柱が俺の周囲を覆う。ヴォルケイノ──元はダンテがベオウルフを装備し更にソードマスターという戦闘スタイル時に使える技。地面を拳で叩くと光の奔流が柱となって自身の周囲を吹き飛ばすカッチョいい技だ。ちなみにバージルにもベオウルフ装備時に似たような技──ヘルオンアースというのがあるが、そっちは三つある秘奥義の内の一つで、破壊力と攻撃範囲がヴォルケイノよりも段違いに強化されている代わりに技発動まで隙がとても大きくて使い勝手が悪い。
そもそも人間にヘルオンアースなんて当てたら、いくらタフでも大怪我しかねない。
至近距離にいたルドラが衝撃波をまともに受けて吹き飛ぶ。
「さあ、ペースを上げるぞ」
ルドラを囲むように数十もの幻影剣を全方位に配置。
樹の内部での戦いを思い出し、彼は即座にドーム状の防御魔法を展開。
ここで閻魔刀を装備していれば次元斬で
当然防御壁が俺の拳を阻む訳だが、突然俺が視界から消えたことと背後からの轟音にルドラが驚愕の表情で振り返った。
俺は再度エアトリック。ルドラの死角となった場所に配置されていた幻影剣のそばに現れ、防御壁に蹴りを、踵を打ち付ける。
ルドラがこちらを向いたその時を待ってから彼の死角に瞬間移動し攻撃、というのを何度も繰り返していくとやがて防御壁に罅が入り、次第に罅は大きく広がり脆くなっていく。
「貴様......!」
焦燥の滲んだ声。どうやらこちらの意図が何であるかだいたいは察したらしい。
しかし流石は勇者というか、防御壁が破られるまで手をこまねくなど言語道断らしく、
「舐めるな!!」
幻影剣と俺を纏めて吹き飛ばすように、防御壁のエネルギーを外側に向かって放射、爆発させ衝撃波を生む。
(バリアバーストか。思い切りがいいな)
これには距離を取らざる得ないし幻影剣も全て消滅。
一旦間合いが離れるが、今度はルドラが素早く踏み込み体を回転させながら剣を横薙ぎに払う。
高速移動回避──トリックドッジを使用し後方へ下がって剣を避けてから右足で一歩大きく踏み込みそれを軸足にして左ハイキックを繰り出す。
体を一回転させていたルドラが遠心力を利用して再度剣を袈裟懸けに振る。
ゴッ!!
ベオウルフを装着した左足とルドラの剣が激突し、轟音と衝撃と閃光が発生。
力と力が拮抗して互いに攻撃した体勢から動けなくなるなるものの、俺はそのままの体勢で幻影剣をルドラの鼻先に三本配置。
「っ!?」
視界のほとんどが突如幻影剣に塞がれたこと、俺の体勢に関係なく幻影剣が配置されたことに動揺した隙を見逃さず、左足を一度戻してから配置した三本の幻影剣の下を潜らせるよう左足による突き蹴りの連続──百裂脚をお見舞いしてやる。
鎧越しなのであまりダメージは期待できないが手応えはあったしルドラの体勢を崩すことには成功。
配置していた三本の幻影剣を一本ずつ飛ばし体勢を整えさせないようにし、三本目の射出から僅かに遅れたタイミングで踏み込む。
幻影剣の対処に追われて俺に反応できないルドラに、速度と体重を十分に乗せた右ストレートを顔面にぶち込んでからの、
「鉄山靠!!」
背中からぶつかる体当たり、八極拳の技の一つを追撃にくれてやる。なお正式名称は違う模様。
もんどり打って転がる拍子に彼が手にしていた剣も一緒に転がる。
真っ先にそれを拾い上げると地面に深々と突き刺し、柄を二、三度踏みつけ地中に埋めておく。
「貴様、何を──」
「後で回収するのを忘れるなよ」
言って、尻餅を着き上体を起こしただけという明らかに不利な体勢のルドラに対し間合いを一瞬で詰め、高速で繰り出すは蹴りによる八連撃──
最後の蹴り上げでルドラの体を浮かす。
追撃の手ならぬ足を俺は緩めない。
日輪脚──またしても横に一回転して遠心力をつけ跳躍しながら左足で下から弧を描くように蹴り上げ、更に右足で同じく下から弧を描くように蹴り上げて勢いそのままにくるりと横回転。なお、日輪脚のことを見て『KOF』の『ジェノサイドカッター』みたいだと思ったならその人はただの格ゲーファン、跳躍しながら下から弧を描く蹴りの二連撃だから『ジェノサイドカッター』の強化版の『ダークジェノサイド』だと思ったならその人は訓練された真の『KOF』ファンだ。
最後におまけの月輪脚──今までの蹴撃では全て横回転だったが今度は縦回転、前方宙返りしながらの左足による踵落とし。しかも連続で八回。冗談みたいな速さで前方宙返りを行い一回転する度に踵を落とす。計七回踵落としをかましたら、最後に一瞬溜めを作ってから渾身の踵落としでフィニッシュ、地面に叩きつける。
一連の技を順に並べると、
「ぐ、う」
カエルみたいに地面にビターンしていたルドラも流石に効いたのかなかなか起き上がらない。
そのそばに着地し、これで終わりかなと思って
ゆっくりとだが、ルドラが立ち上がろうとしている。
震える腕になんとか力を入れ、顔を上げ、固い決意を宿した瞳でこちらを見ていた。
「まだやる気か?」
「当たり前なことを抜かしてんじゃねぇ......やられっぱなしで引き下がれるかよ」
「諦めが悪いのは嫌いじゃないが無理はするな。限界が近いのは自分でもよく分かってるはずだ」
「限界? ハッ、笑わせやがる。限界ってのは──」
這いつくばっていた彼が急に勢いよく飛び上がり、
「俺様にとっちゃ、超えてくもんなんだよぉ!!」
何処にそんな力が残っていたのか疑問に感じるほど力強く殴りかかってきた。
(やられた振りをしていたのか!?)
だとしたら滅茶苦茶強かだな。というか、ベオウルフの攻撃って実は思ったほど効いてない?
完全に油断していた俺は咄嗟に反応できず、右の拳を左頬にまともに食らう。今度は俺が何度も地面に転がる番だ。
「立てこの野郎! この程度じゃ済まさねぇぞ! 俺様の子ども時代の純情と同じくらい粉々になるまで殴りまくってやるぜオラァッ!!」
最早地中に埋まった愛剣など目もくれない。拳を振りかざしてこちらにダッシュ、間合いを詰めると立ち上がったばかりの俺に殴りかかってくる。
「ナイスガッツだ、気に入った」
応じるように俺も拳を突き出す。
「オラァッ!」
「ハアアッ!」
同時に互いの顔に拳がめり込み、弾かれたように仰け反るのはルドラ。俺は
彼がダメージから復帰して体勢を整えるまで待ち、こちらに向かってパンチを繰り出すのをあえて受けてから、お返しに俺もパンチ。
殴って、殴られて、蹴って、蹴られて。互いに一発ずつ交換し合うように攻撃。
ステゴロの殴り合いが始まった(俺は籠手と具足装備しているけど)。
ヤベー、なんか凄く楽しくなってきた!
俺が今装備しているベオウルフは、先の通り光の力を宿した籠手と具足で、くどいようだが同名の悪魔がバージルに殺害された際に魂が屈服しその力が魔具となったものだ。
なんで悪魔が光の力を駆使していたのか? それはDMC内でも語られていないので分からない。
しかし悪魔ベオウルフが神々しい白く輝く天使のような翼を二対持ち、『光』属性を操り、弱点が『闇』属性だったのは事実。
ちなみに『闇』属性に該当するのが閻魔刀だったり。
で、ここでちょっと疑問が。
DMCシリーズにおける武器の属性って、この世界だとどうなんの? その効果はどのくらい?
この疑問を解明する為、以前ギィ相手にやってみた実験がある。
閻魔刀だけで戦った場合とベオウルフだけで戦った場合を比較してみる。悪魔族であり属性的には『魔』や『闇』に類するギィはどうなるのか?
以下、結果。
閻魔刀の場合。閻魔刀の『闇を切り裂き食らい尽くす』という特性により斬撃によるダメージは回復できないが、かなり粘る。とにかく粘る。正直早く倒れろバカ野郎と思うくらい一回の勝負が長引く。恐らく『闇』の属性ダメージは一切入っていない、むしろそれが変に作用して力を与えているんじゃ? と疑っているくらいだ。
んで、ベオウルフの場合はというと、これがあっさり負けを認める。こっちが拍子抜けするくらい潔く。ベオウルフから受けるダメージは閻魔刀と異なり回復するというのにだ。ギィ本人曰く『閻魔刀の攻撃はスパッと斬られてそれで終わりだが、ベオウルフの攻撃は......しんどい』とのこと。閻魔刀より攻撃力が高いことに加えて、がっつり『光』の属性ダメージが入るらしい。ギィと同じ悪魔族のミザリーとレインも、ベオウルフで殴られるくらいなら閻魔刀で斬られる方がマシと言っていた。
結果的に見れば武器の属性は、相手によっては非常に有効だというのが分かったのだ。
これを鑑みるに、『勇者』であるルドラに『光』属性のベオウルフで戦う場合、思ったよりもダメージが与えられないのは当然の帰結なのかもしれない。現にギィならとっくに負けを認めるであろう回数を攻撃しているが、ルドラはなかなか倒れない。打撃による物理ダメージは入っているものの、『光』の属性ダメージが入っていないのは明らかだ。
だがしかし、彼の奮闘も長くは続かない。
真っ正面からの殴り合いを始めて十数分後。
「......」
「カヒュー、カヒュー」
変な音がする呼吸をし出したのでもうレフェリーストップやドクターストップがかかってもいい頃合いだと思うんだが?
顔もギャグマンガみたいにボコボコで赤く腫れ上がり、折角のイケメンが作るの失敗したアンハ○ンマンの顔みたいになっている。しかもそのせいで前が見えてないのか、時折フラフラと体を左右に揺らし目の前に立つ俺を探す素振りを見せる。
身に付けていた鎧も既に砕け散って破片となったものが転がっており、彼の現状も相まって殴り合いの激しさを物語っていた。
「ルドラ、もういいだろう。お前は頑張った」
「う、うるしぇぇ、おれしゃまは、まだ、やれりゅ」
呂律が回ってない。辛うじて意識はまだあるようだが、これ以上は本当に危険な気がする。
助けを求めるようにルシアとヴェルグリンドに目配せするが、二人は覚悟を決めたような顔をしていた。いや、止めろよ。お前らの仲間だろうが。
「ちっ」
舌打ちしながら考える。もうこうなったら強力な攻撃でルドラの意識を刈り取るしかない。
「これで最後だ。死ぬなよ」
まず丁寧に距離を測る為に左でジャブを打つ。威力は込めない。ピシッ、ピシッ、とルドラの顔に当てるだけ。
これにすらろくに反応を示さない時点で限界超えてんのが丸分かりだ。
距離を確認したら、次に打つのは右のコークスクリュー・ブロー。先に右手首を外側に捻ってから、左足で踏み込む動きに連動させて腰、肩、肘、手首を捻り打つ。
狙うは心臓。
「......っ!!」
鎧が壊れて喪失したルドラの無防備な左胸に俺の右拳が突き刺されると、思惑通り彼の動きがピタリと固まったように止まり動かなくなる。
その隙に俺は次の、そして最後の攻撃の準備に入った。
一歩踏み込みルドラの懐に潜り込むようにして屈む。
次に右の拳に力を集約させ、それに伴い右手の籠手が白く輝く。
そして溜めた力を解放すると同時に、跳躍しながら渾身のアッパーカットを放つ。
DMCシリーズの『3』『4』『5』におけるダンテが持つ必殺技の中でトップクラスの破壊力。ジャンプアッパーカットの前に溜めが必要という隙が大きく、攻撃範囲もアッパーカット故に狭いので使いどころは限られるが、当たれば雑魚敵は勿論のことボスキャラですら大ダメージを与えられる一撃。ただ一発殴るだけ、だがそれが最強の破壊力を誇る、一種のロマン技でもある。
こんなもんをいきなりぶっ放しても当たる訳ないので、確実に当てるには事前準備が必要だ。相手を気絶させたり動きを止めたり等々。今回に限ってはルドラが既にグロッキーだった為、幻影剣や特殊能力ではなく『はじめ○一歩』を読んで得た知識を活用しフラフラしているのを止めさせてもらった。
え? なんでバージルの
とにかくこれでルドラも気絶するだろう、と確信していた俺の拳がめり込んだのは、ルドラの顔ではなかった。
(は?)
目の前にいるのは、俺の拳がめり込んだのは、
(はぁっ!?)
ヴェルダナーヴァの顔面に、俺の拳がぶち当たっている。
(ダメだ! もう動きを止められない!!)
特殊能力など一切使っていないが体感時間が引き伸ばされ、スローモーションのようにゆっくりと世界が動いていく中で、俺の肉体は昇り龍の如く跳躍しながら拳を振り切り、親友でありこの世界の創造神であるヴェルダナーヴァを空高くぶっ飛ばす。
いつからルドラがヴェルダナーヴァに入れ替わっていた? 拳が当たる直前までは確かにルドラがいたはずなのに!!
「ぐふぅっ!!」
くぐもった悲鳴。
ヴェルダナーヴァの体は顔面から血飛沫を吹きながら大きな大きな放物線を描き、まともに受け身も取れず頭から地面に激突した。その際ドシャアッ!! という嫌な音がやけに響く。
スゲー綺麗な車田飛びと車田落ち! 我ながら惚れ惚れする! ってそんな感傷に浸ってる場合ではない。
「ヴェルダナーヴァ! お前、何をやっているんだ!?」
「ヴェルダナーヴァ様! なんて無茶を!!」
「お兄様なら殴られずに済んだでしょうに!!」
ルシアとヴェルグリンドもそばまで走ってきた。
「おいヴェルダナーヴァ! しっかりしろ!」
「......前が見えない」
そりゃそうだ! だって今のお前、『前が見えねェ』状態だもん!
「回復魔法を」
「はい......!」
「それでお兄様、ルドラは何処に?」
俺の指示にルシアが素直に従い、ヴェルグリンドがキョロキョロと辺りを見回す。
「こっちだ。こいつにも回復魔法を頼むぜ」
声がした方に顔を向ければ何もない空間が一瞬歪み、そこから意識を完全に失っているルドラをお姫様抱っこしたギィが現れた。
ヴェルダナーヴァを師とし、俺より前にギィと戦ったというのであれば、二人が近くで隠れて様子を窺っているのではと予想していたが、まさか勝負の途中でヴェルダナーヴァが割って入ってくるとは想定外だった。
「まあ、その、ルドラにはユリゼンのことをあえて教えなかったし、ユリゼンにもルドラのことを一切伝えようとしなかったからね。とりあえず一発殴られておこうかなと思って」
「お前らしいとは思うが......あ、おい無理して立つな、まだ座っていろ。膝が笑っているぞ」
「正直死ぬかと思ったよ、さっきのパンチ。凄い威力だったね」
「......」
真面目で誠実なことを言う神様の相変わらずな態度に呆れてしまう。だからと言ってDMCシリーズにおける必殺技の中で最大火力を誇る
リアルインパクトの元ネタはDMCシリーズを生み出したCAPCOMの別作品、超人気格ゲー『ストリートファイター』シリーズに登場する必殺技だ。設定上、天──つまりは神仏に拳を向けるという意味を持つ為、禁じ手扱いになっている技でもある(どいつもこいつも使いまくるけど)。
......まさかそういった設定が『属性』となってこの世界の『神』であるヴェルダナーヴァに大ダメージを与えたんじゃないだろうな? アニメやゲームでなんかそういうのあったよな。確か概念武装とか哲学兵装とかなんとか。
やれやれと溜め息を吐いて妙な思考を追い出し頭を切り替え、まだ意識が戻らないルドラに視線を移す。
彼は今、ヴェルグリンドに膝枕をしてもらっている。ルシアから回復魔法も受けているので、すっかり元のイケメン面に戻っていた。
(それにしてもバカだよなこいつ)
でも、嫌いなタイプのバカじゃない。愛すべきバカと言えばいいのか、好感を持てるタイプのバカだ。
さっき戦いの最中に地中に埋めてしまったルドラの剣を掘り出すと、魔力でタオルを作り出し綺麗に汚れを落とし、横になっている彼のそばに置かれた鞘に納刀、そばに置いておく。
「あら優しい」
「違う。埋めたから掘り返した、当然のことをしたまでだ」
「......フフ、そういうことにしておきましょうか」
俺の行為にヴェルグリンドが感心したように言うので否定したら、彼女は僅かに驚いた表情を見せてから柔らかく微笑んだ。
やがて「ううーん」とルドラが呻き声を上げた後に目を覚ます。
「ルドラ、大丈夫?」
「心配したんですからね」
彼の額を愛しげに撫でながら問うヴェルグリンドと若干怒ったようなルシアにすぐには応えず、自身を上から覗き込む面々を見回し状況把握に努めた後、右手で顔を覆ってから「ああ、もう平気だ。すまない」と返答する。
「ルドラ、すまない。ボクが──」
「謝らないでくれヴェルダナーヴァ。俺様がガキだっただけだ」
上体を起こしたルドラにヴェルダナーヴァが頭を下げるが、ルドラはそれを遮り自嘲気味に笑う。
「......」
「......」
「......」
「......」
「......」
「......」
なんとも気まずい空気がどんよりとこの場を支配し、皆黙ってしまった。
事実を黙っていた師匠と何も知らずに憧れを抱いていた弟子。事情がどうであれ、今回の件でちょっとした蟠りができてしまったのは仕方がないのかもしれない。
でも俺には直接関係ないし、後は当人同士で気が済むまで腹割って話し合えばいいことである。
ということで!!
「俺は帰る」
「えええええ!? ユリゼンお前この空気放置してか!? って待て、おい本当に待てってば!!」
踵を返し閻魔刀で空間転移しようとしたらギィに背後から羽交い締めにされた。
「放せギィ。動いたから腹が減った、だから帰る、当然のことだ。そもそもヴェルダナーヴァとルドラの師弟関係を今日初めて聞かされた俺にどうしろと? ヴェルダナーヴァは謝罪したがルドラは既に怒る気もなければ謝罪を必要としていない、ならそれでいいだろう? 後のことは俺の知ったことではない。当人同士で納得いくまで話し合え」
「言ってることはごもっともだが俺を置いていくな!」
「お前は自分で転移できるだろう」
「だからって置いてくなよ!」
「お前も自分の家に帰ればいいだろうが! まさか最初からウチに来るつもりだったのか!?」
「つれねぇこと言うなよ? 俺とお前の仲だろう?」
「今日はもう疲れたから勘弁しろ!」
放せ! 放さねぇ! と二人でわちゃわちゃやっていたら、ルシアが「ウホッ☆」と変な声を出したような気がしたがきっと気のせいだ。
「おいこらそこの悪魔共」
「「あ?」」
ルドラの声。ギィが俺を放し、二人揃って振り返った。
「俺様は諦めてないからな。また後日貴様らに戦いを挑む」
これってもしや今後は顔合わせる度に勝負挑まれる感じか?
戦うことそれ自体は嫌いじゃない、むしろ好きな方だが、毎回それってのは少し味気ないな。というか、俺に挑むならまずギィに勝ってからにして欲しいんだが。
それなら──
「ならルドラ、今から俺の街に来い。次は飲みで勝負だ」
「何?」
鳩が豆鉄砲食らったような顔になるルドラ、ルシア、ヴェルグリンド。たぶん心の中で「急に何言ってんだこいつ」と思われてるんだろうけど。自分の都合に他人を付き合わせるなら、他人の都合に付き合わされることも了承しないとな。
彼らのそばでヴェルダナーヴァが微笑ましそうにしている。
「酒だ。下戸で飲めないなら無理に付き合わせるつもりはないが」
「さっき『今日はもう疲れたから勘弁しろ』って言ったじゃねぇか!!」
「拗ねるなギィ、気が変わったんだ。それに結果的にお前のお望み通りになっただろう? 全員ついて来い」
あー腹減った何食おう、と考えながら閻魔刀で拠点にしている街まで空間を繋ぎ、皆を促す。
ギィは当然といった面持ちで、ヴェルダナーヴァは苦笑しながら、ルドラ一行は困惑しながらついてくる。
こうして、なんやかんやあったが『勇者』であるルドラとの縁ができたのであった。
それにしても『ルドラ』と『ルシア』か。ただの偶然だろうが、DMCシリーズにも同名の存在があった。
『ルドラ』は『3』にてダンテの敵&武器として登場した『アグニ&ルドラ』と同じ名前だ。
『ルシア』は『2』に登場したヒロイン、及びもう一人の主人公。『5』の前日譚の小説にファンサービスで出てきたのはとても良かった。
確実に偶然でしかないが、これも何かの縁に違いない。この出会いを大切にしようと思う。
・ルドラ
色々あったが結果的に友達になる。
主人公、ギィ、ヴェルダナーヴァ、ルドラの野郎四人で遊びに出掛けることが頻発。
実力が拮抗しているのはギィなのに何故かギィよりも勝負を挑まれる頻度が多い。むしろどっちが主人公に挑むかで二人が争う始末。
なお、主人公を中心に野郎四人でばっかり行動しているせいか、嫉妬したヴェルザードとヴェルグリンドから喧嘩を売られ、そしてルシアからは変な目で観察される。
・ルシア
兄に友達が増えて純粋に嬉しい。
ギィが主人公を羽交い締めにしているのを見て覚醒してしまい、男同士の友情最高やな! 男四人だから組み合わせもたくさんあるし! ってなる。
・ヴェルグリンド
主人公をルドラと仲の良い友人としては認めているが、ルドラが構い過ぎててちょっと嫉妬してる。なのでたまに腹いせに喧嘩を売るが、ヴェルザードほどガチじゃなくて遊び半分。