DMC5のクリフォトの樹の実をオイチイオイチイしまくってたら人魔問わず全方位から警戒されまくってて草   作:美味しいパンをクレメンス

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地獄之王(ザキングオブヘル)

それに最初に気づくことができたのは、魔法に詳しい者達だけだった。

突然、前触れもなく張られる結界。

しかもただの結界ではない。その国をすっぽり覆ってしまうほどに広範囲かつ大規模な代物。人の行き来を制限する類いのそれは、異変に気づいた優秀な魔法使いが解析してみれば、範囲内の人間の脱出を禁止し、発動者を殺害しなければ決して解くことはできないという効果を持っていた。

続いて訪れた異変は魔法不能領域(アンチマジックエリア)

結界内全域に効果を及ぼし、発動直後にその国に存在していた全ての魔法使いを一瞬で無力化する。

発動者を殺害しないと脱出不可能な結界が張られ、魔法が使えなくなったことに各所で困惑と疑問が生まれるのを他所に、事態は無慈悲に進む。

その国の王都、王城の上空に巨大な魔法陣が描かれる。

まるで血のように赤黒く、禍々しい光を放つ魔法陣だ。

雲一つない快晴である青い空の下、赤黒い色の魔法陣を人々が不安を胸に抱えて見上げていると、その魔法陣から血が滴るように何かが大量に降り注ぐ。

滴り落ちたそれらは地上に激突する前に蠢き、産声を上げ、形を成してその姿を顕す。

 

「うわあああああああ!!!」

 

目撃した者達は皆一様に恐怖し絶望の悲鳴を上げ、我先にと逃げ出す。

何故ならそこには化け物共がいたから。

魔法陣から止めどなく降り注ぎ、生み落とされる化け物共。

まるでこの世のありとあらゆる邪悪が形を成したかのような化け物共が。

人を本能的に恐怖に追いやる妖気(オーラ)を惜し気もなく放ち、殺意に満ちた血走った眼差しで睥睨し、これから哀れな獲物を蹂躙する悦びに期待し嗤う。

化け物共は多種多様だった。鎌を手にした死神のような姿をした者や、短剣や散弾銃で武装した人間大の糸操り人形(マリオネット)、兜と盾で武装した蜥蜴、拷問器具のようなもので全身を拘束された白骨死体、重厚な全身鎧と剣や槍を装備した騎士、人を簡単に補食できそうな体躯を持つ蝙蝠や猛禽や蝿、猿に似た何か、宙に浮く頭蓋骨、蟷螂のような前足を持つ巨大な蟲、容易く人を真っ二つにできそうな大きな鋏を手にして飛び回る仮面を着けた悪霊(ゴースト)のような存在、その姿を変幻自在に変える影、女性の上半身に蜘蛛の体というアラクネのような姿の者、鋭い背鰭が特徴的な地面を泳ぐ魚、鳥のように空を飛ぶ剣など、他にも様々な種類の化け物共が枚挙の暇がないほどにいた。

そして、一斉にそれらが人々に殺到、襲いかかる。

化け物共の爪が、牙が、剣が、槍が、銃が、鎌が、ありとあらゆる攻撃手段が容赦なく人々を肉片へと変えていく。

 

「ぎゃああああああ!!」

「誰か助け、助けぐぼぉっ!!!」

「ひぃ! や、やめ──」

「嫌だあ! 嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「に、逃げ──」

「死にたくない、死にたくない!!!」

「やめろ、やめてくれ! やめてくださ──」

 

引き裂かれ、斬り裂かれ、刺し貫かれ、咬み千切られ、粉砕され、叩き潰され、踏み潰され、弄ばれては消えていく命の灯火。

一方的な殺戮が開始され、ろくな抵抗も許されず蹂躙される人々。目を覆いたくなる惨劇があちこちで生まれ、その度に血飛沫が舞い血の雨が降り、犠牲者が恐ろしい速度で増えていき、次々と打ち捨てられる無惨な屍が血の海を作る。

絶望の絶叫、断末魔の悲鳴、必死の命乞いがそこら中に響き渡った。

同時に歓喜の嗤い声が上がる。我慢できないと言わんばかりに愉悦の咆哮を上げ、逃げ惑うことしかできない人々の命を狩ることに、虐殺に対して悦に入った化け物共の狂喜乱舞する嘲笑が。

それはまさしく悪魔だった。地獄の住人に相応しい悍ましさだ。やること成すこと全てが悪魔の所業であり、人間を老若男女問わず悦んで殺し返り血を浴び嗤う姿は悪魔であり、その悍ましい行為と姿と精神は悪魔以外の何者でもなかった。

化け物共改め悪魔の軍勢は人間を一人残さず血祭りに上げながら進軍していく。

これに対抗すべく人間側の軍及び騎士団が遅まきながら迎撃を開始するが、嵐の中の河川のような濁流を凌駕する勢いの悪魔達相手にあまり意味は成さない。

人間達の剣や槍は木の枝のようにへし折られ、身を守るべき鎧や盾は床に叩きつけた皿のように粉砕され、鍛え上げられた肉体は紙屑のように吹き飛ばされ、皆揃って物言わぬ肉塊にされた。

犠牲者を求める魔の手は何処までも伸びていく。王都を完全に制圧したら次へ。他の人間の住み処に向けて凄まじい速度で移動を開始。そして行く先々で同様の虐殺を繰り返す。

悪魔達は移動と虐殺を嬉々としてひたすら繰り返す。それが自分達に課された使命であり、最高に楽しめる仕事なのだから。

この国の人間を根絶やしにするまで。

悪魔の軍勢により、人々の営みや平穏な日々が阿鼻叫喚の地獄絵図に塗り潰されていく。

やがて──

 

 

 

悲鳴や絶叫の類いが止む。()()()()が一切聞こえなくなる。生きた人間は誰一人としていなくなってしまった証だ。()()()()()()()が、さっきまで命だったものがこの国中に散らばり転がるのみとなった。

この瞬間、この国の人間は全滅し、国としてはこれ以上ないほど完璧に滅亡したことが確定する。

残ったのは死体の山と血の海。田畑は踏み荒らされ、村々は更地と化し、王都を含めた全ての街は制圧され、建築物などの類いは種類を問わず軒並み破壊され尽くし、瓦礫という名の残骸がかつてこの国に人間が暮らしていた証拠だということを物語っていた。

悪魔の軍勢は既にいない。皆殺しが完了した時点で全ての悪魔が直ぐ様送還されたからだ。

王都もその他の街も悉くが死都と化し、悪魔の襲撃でありとあらゆる建築物は一つ残らず崩れ落ち以前の姿など見る影もなく、僅かな期間でこの国はただの墓場へ、建築物の残骸は墓標へと成り果てていた。

その時、死臭が漂う広大な墓場に血を啜る魔樹の種が蒔かれる。

災禍の魔樹クリフォト、その種だ。

種は蒔かれた刹那に発芽すると死体の山を喰らい、血の海を吸い尽くし、爆発的に増殖と巨大化を繰り返しうず高く積み上げられた瓦礫の山すら呑み込み、それでもなお留まることなく周囲を侵食し続け、最終的には滅亡した国を隅から隅まで埋め尽くすほどの超巨大な樹となりその存在を世界に知らしめる。

 

 

 

 

 

「やりやがったな、あいつ」

 

白氷宮、その玉座の間にて。

ワイングラスを片手に玉座に腰掛けたギィが、もう片方の手で頬杖をつきながら感慨深げに呟く。

彼の視線の先には、()()が始まる前に予め用意された魔法で映し出された遥か遠くの映像。ヴェルダナーヴァとルシアが殺された復讐としてユリゼンが赴いた土地。悪魔の軍勢が召喚され、その国の住民を一人残らず抹殺し、クリフォトの樹が出現するまでの一部始終を見守っていた。

 

「あれが、ユリゼン様の眷属......」

「......あのようなことが可能だなんて」

 

ギィの隣に控えていたメイドのレインとミザリーは、ユリゼンとは長い付き合いがあるのに今日初めて目にした眷属召喚能力に驚いている。

 

「......」

 

ヴェルザードは視線を映像に向けたまま、固い表情でひたすら無言を貫いているのでどういう心境なのか読めない。

とにかく、ギィも眷属召喚には内心でびっくりだ。何故なら彼もユリゼンから一切聞いたことがなかったから。

何より個として他を圧倒する戦闘力を保有するユリゼンが、その性格上『数』に頼る戦い方や能力を保有しているとは夢にも思わなかった。

召喚された悪魔の大半は恐らくユリゼンにとって雑兵でしかないのだろう。その証拠に保有するエネルギー量が少なく、そういう種族は雑魚らしく同種が複数体で固まって行動しているのを確認できたしそもそも数が多かった。

しかし、後半になって魔法不能領域(アンチマジックエリア)が解除されて以降に召喚された連中は明らかに違う。エネルギー量が桁違いに高くその上巨体で、同種が存在しない唯一個体であり、単独で行動していた。溶岩や火炎を吐き出す白い蜘蛛、雷を纏い体に複数の嘴を持つ猛禽、三つ首の犬、二対の白い翼を広げ光を操る獣、チョウチンアンコウの誘引突起に似た器官を持ち氷を操る蛙などといった、やはり多種多様な悪魔が我が物顔で好き勝手に暴れ回っていたのだ。

 

 

 

──『地獄を見せてやる』

 

 

 

彼はあの時そう言った。あれはギィ達仲間に向けた言葉であり、同時に今滅ぼされた国の住民に対しても向けた言葉でもあったのだ。

なるほど、確かに彼は地獄を見せてくれた。彼の眷属が、異形の化け物共が人間を一人残らず蹂躙しその魂すら穢し弄ぶ様は、悪魔族の頂点に君臨し魔王として恐怖で世界を支配するギィの視点から見ても、素晴らしいの一言だ。

だからこそ残念である。彼の力の一端を見ることができたこの機会が、よりにもよって亡くなってしまった友への手向けになった事実に。

 

(......ヴェルダナーヴァ......)

 

ベッドの上で眠るヴェルダナーヴァとルシア、その二人の亡骸の前で膝を突き涙を零したユリゼンの後ろ姿、自身を責めるルドラの横顔が脳裏を過る。

 

「......」

 

無言でワイングラスを呷ってから、ギィは顔を顰めた。

最高級のものを用意させたはずなのに、全く美味いと感じない。

こんなものと比べたら、以前四人で面白そうだという理由で何処ぞの小国にあった小汚ない場末のバーで飲んだ安酒の方が遥かに美味かった。

あの時に飲んだ酒は安酒なのに、とても楽しく飲めた酒だった。

 

「クソ......!」

 

嗚呼、本当にクソみたいだ。

あれほど美味かった酒はもう二度と味わえないという事実を改めて思い知り、ギィは心の底から悔しくて毒づいた。

 

 

 

 

 

ギィ達同様、ルドラとヴェルグリンドもナスカ王国内のルドラの自室にて一部始終を見ていたのだが、あまりにも酷い惨劇の連続と結末にルドラは嘆くことしかできない。

 

「俺が、俺がもっとしっかりしていれば、二人をちゃんと守れていたなら、こんなことにはならなかった......」

「ルドラ......あまり自分を責めないで」

 

ヴェルグリンドはルドラに寄り添いその手を握り慰める。

彼女とてユリゼンと同じ気持ちだった。敬愛する兄と可愛い義妹が殺されて黙っていられる訳がなかった。しかし自分よりもずっと悲しみ怒り泣きながら憎悪を抱えていたユリゼンを見て彼に全て任せることにした。結果が想像以上の地獄で血の気が引いたが、彼女にとって死んだ人間達も滅んだ国も元々ナスカ王国の敵国、つまりルドラの敵という認識だったのでざまあみろとは思っても可哀想とは微塵も思わない。

ただ、敵国の人間が死に絶えたことに心を痛める慈悲深いルドラが自分を責めるのは見過ごせない。

 

「ルドラ、あなたは何も悪くない、悪くないのよ。あなたはいつだって最善を尽くしてる、それはこれまであなたをそばで見てきた私が保証するわ」

「......ヴェルグリンド」

「だってギィとユリゼンはあなたを責めた? お兄様とルシアが死んだのはルドラのせいだって言った? 言ってないでしょう」

「......」

「二人共ルドラが頑張ってるのをよく分かってるの。特にユリゼンはお兄様が力を失うことを何より危惧していた。きっとこうなってしまう可能性を考えていたのよ」

「だからこそ俺がもっとしっかりしていれば──」

「ルドラだけじゃないわ、私もよ」

 

叫ぶルドラの言葉を強引に遮る。

 

「私も......私がもっとしっかりしていればよかったの。『別身体』を使えば、お兄様達のそばを片時も離れなければ、こんなこと、起きなかったのよ」

「ヴェ、ヴェルグリンド」

「馬鹿よね、私。私の能力は護衛に向いていたのに、皆の中で一番近くにいたのに」

 

自分で言いながら、段々悔しくなってきた。本当にその通りだったから。

その時、不意に葬式の最中にユリゼンとギィが交わしたやり取りを思い出す。

不滅の竜種から人間へとなった兄は、もう二度と復活できないと言われた。

 

「あ」

 

そもそも兄の性格的に妻である義妹が死んで自分だけ復活などしないと言われ、納得せざるを得なかった。

 

「あ、あ......あ」

 

ヴェルグリンドの目からポロポロと涙が溢れていく。

今更になってやっと二人の死を認めて、でもそれを防げる可能性が一番高かったのは間違いなく自分であったと気づいて、そしてもう取り返すことができないと思い知らされて──

 

「ごめんなさい、ごめんなさいルドラ......私が、私が」

「泣くなヴェルグリンド、お前まで泣くなよ」

 

今度はルドラがヴェルグリンドを慰める番だった。

二人は互いを抱き締め合いながら声を押し殺して泣く。泣き続けた。

今はただ、それしかできなかったから。

 

 

 

 

 

クリフォトの種を蒔いてから一ヶ月が経過。

それまでの間、樹に侵入してくる者は皆無だった。

理由は知らない。国一つ丸々呑み込む規模なんて初めてだからか、国民を全員皆殺しにしたからか、レッドオーブを使えるだけ使って悪魔を召喚しまくったからかは分からない。はっきり言ってどうでもいい。

今俺は、クリフォトの樹の頂上──地下の最下層にいる。クリフォトの樹の実が完熟を迎えたから収穫しに来たのだ。

薄暗い半円状のホールのような広い空間内で、その空間の中心には赤黒くて気味の悪いサルスベリみたいな木が一本生えている。その木にたった一つだけ果実が成っており、果実であるにも関わらず血が滴っていた。

クリフォトの樹の実。人間の血を養分にして成る禁断の果実。

相変わらず何度見ても不味そうな外見で、実際普通に不味いのだが。

これまでは戦場でしか種を蒔いたことがないので、多くても吸った命は十万前後が最高だった。が、今回は国一つ、国民全員を贄として捧げ為、少なくとも吸った命は数十万から百万は越えているだろう。結構な大国だったからもっといくかもしれない。

まあ、ヴェルダナーヴァとルシアの二人の命と比べたらカスみたいなもんだ。万だろが億だろうが兆だろうが知ったことではない。

果実をもぎ取り、食らいつく。

 

「......しょっぱい」

 

血の味がするはずの果実は、零れた涙が口の中に入るせいでしょっぱい。

 

「畜生、しょっぱいなあ、クッソ不味いなあ」

 

俺はぶつぶつ文句を言いながら、泣きながら果実を食い続ける。

結局、果実は最後の一口までしょっぱかった。

 

 

 

 

 

果実を収穫してすぐにクリフォトの樹が枯れる。

樹全体が石灰のようになり、脆く崩れて倒れ伏す。

石灰のようになった樹の残骸は風に吹かれて砂となり、砂は舞い散りいずれは樹が発生していた痕跡すら消えてしまう。

故に、クリフォトに呑み込まれたその国は、最早何も残らない。生き残った者もいない、建築物も何一つ残っていない、文化も全て残らない。ただ広大な大地が残るのみ。

やがてその土地もナスカ王国に併呑され、歴史書に初めてクリフォトの樹に滅ぼされた国として名を記すのみとなった。




この物語の主人公、ユリゼンが知らない裏話。

ヴェルダナーヴァが亡くなる少し前から、原作通りギィとルドラは天魔大戦の発端となるゲームを既に開始しています。
条件等はほぼ原作通りですが、ユリゼンに関してはいくつか条件が設けられています。

①ゲームのことをユリゼンには教えるのは禁止。
何らかの理由により知られてしまったり、ユリゼンから問い詰められて答えるのはOK。自分及び自陣営の事情を知る者から教えるのはNG。

②ユリゼンを自陣営に引き込むのは禁止。
ゲームのことをユリゼンが知っている知らないに関わらず、自陣営に引き込むのはNG。だが事情を知っている知らないに関わらずユリゼンの意思で勝手に自陣営に加わるのはOK。

上記の条件は、ユリゼンが半分悪魔で半分人間という体質かつ人間の冒険者としての顔とクリフォトの主としての顔を持つ為設けられた、というのが建前。
本音は、ユリゼンが味方になると圧倒的有利、逆に敵に回ると圧倒的不利となるバランスブレイカーの為。ギィとルドラが互いにユリゼンを味方につけたいけど相手に取られたくない、という気持ちがぶつかり長い話し合いと妥協の末、ゲームのことを教えない、勧誘禁止というルールになった。
しかし、ユリゼンは『魔王の相談役』という立場・役職である為、『魔王』であるギィが実は若干有利というルールの穴がある。ギィは悪魔族、契約は重んじるが契約の穴を突くことを得意とする悪魔なのであった。
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