DMC5のクリフォトの樹の実をオイチイオイチイしまくってたら人魔問わず全方位から警戒されまくってて草 作:美味しいパンをクレメンス
クリフォトの樹と融合し玉座の間に座り触手に全身を絡まれた状態で、随分久しぶりにクリフォトの種を蒔いたな、と思い記憶を探ってみれば前回から百年以上経っていたことに驚く。
前回。つまりヴェルダナーヴァとルシアが死んだ原因となった国を滅ぼしてから、約百年。国一つ滅ぼせば人類は大規模な戦争を百年は控えるらしい。百年持ったと見るべきか、百年しか持たないのかと見るべきかは判断しかねるが。
勿論、クリフォトの樹を生やすに値しない小規模な戦争、小競り合いや紛争なんてのはしょっちゅうあるので、人類全体が一切戦争しないなんてのはないものの、抑止力という点ではやはりそれなりに効果があるらしい(今更感が酷過ぎる)。
で、その人類の中でも上手い感じに領土拡大を成功させているのがルドラの国──ナスカだ。
友人である彼は人類の中で唯一、俺がクリフォトの種を蒔く大まかな条件等を理解している。その為、その条件を満たさないギリギリのラインを見極めて戦争し、勝利を重ねて版図を広げてきたのだ。大したもんだと思う反面、大規模な戦争を勃発させると俺が介入するのを知っているからか、彼の国は小規模な戦争を年がら年中している修羅の国と化してしまい、そのことについて僅かに申し訳ない気持ちがあったりする。
なので、戦争しているのがナスカではなく、しかも大規模なものだったりするとこちらも気兼ねすることなく種を蒔き樹を育てることができるので、とても気が楽だ。
つっても、樹と融合し玉座の間でふんぞり返る段階になると、やることなくて暇なんだけどね。
なので種を蒔いてから果実を食うまでの一ヶ月間はドッペルゲンガーを使っていつも通りリモート冒険者活動だ(アリバイ工作含む)。冒険者パーティー『Devil May Cry』は今日も元気に首を狩る。
冒険者パーティー『Devil May Cry』といえば、ここ最近でちょっとした騒ぎがあったのである。
ラミリスが妖精になったことにより寿命ができていた事実が発覚。だからつい数年前にポックリ逝った。最初はお別れに涙したが、暫くして「ジャジャーン!!」と転生して戻ってきたことに俺の涙を返せと言いたくなった。本人曰く、どうやら記憶を継承しながら転生を繰り返す存在になったらしい。そういうことはもっと早く言いなさい、と友人を亡くした(字面的に間違ってはいない)と勘違いした俺とミリムとギィ達は彼女に説教し、ラミリスと特に仲良しのシャドウもこれにはご立腹。怒りながらも再会を喜びつつ彼女をベロベロ舐め回したのは言うまでもない。復活に憎まれ口を叩くグリフォンの口調がやけに嬉しげだったのが印象的だった。
閑話休題。
クリフォトは世界的に有名だ。俺がそれだけやりたい放題やったというのもあるが、兵の総数が十万を超える大規模な戦場じゃないと発生しないし(前回は例外)、発生しても一ヶ月放って置けば勝手に枯れる。人間的には数十年に一度の天災扱いで、同じ天災扱いのヴェルドラとはヘイトの集まり方に雲泥の差がある。
一度発生すると大量の死者が出るが、その戦場に参戦した者達とその関係者を除けば被害らしい被害は出ない。
世間の一般常識的には、クリフォトの樹が発生したら放置が一番、という認識が罷り通っていた。
まあそれでも、腕試しや名声を求めて襲来する向こう見ずな方々がたまーにいらっしゃるので盛大に歓迎してあげるが。
しかし今回は毛色が違った。
「侵入者?」
ドッペルゲンガー側の俺が本日の冒険者稼業を終え、ミリム達にご飯を食べさせてから寝かしつけが完了した後のタイミング。
クリフォトの樹に侵入者を感知。しかも人間じゃない。
ギィ達と同じ気配。この世界の悪魔だ。
「え? なんで?」
初めて悪魔がクリフォトに侵入してきたことに驚き思わず疑問を口にしつつ、いつの頃からかできるようになっていた樹の任意の場所に
「全員同じ顔の小人? 分身体、か?」
独り言の通り、数名の侵入者は全員が同じ顔で、小人のように小さい姿をしたのがいた。なんとなくだが複数の分身体を見る限り、そういうことに特化した能力持ちなんだろうか。
その顔は年端もいかない少年、小学生くらいだろうか? に見える。灰色の髪が特徴的で、幼い顔立ちではあるものの整っておりショタコンが今この光景を見たら「一人くらい連れ帰ってもええやろ」と誘拐してしまうだろう。そんな感じの小人が数名、クリフォトの内部を興味深そうにキョロキョロしながら進軍してくる。
薄暗くて禍々しい雰囲気のクリフォト内部を歩く少年的小人数名。R指定のダークファンタジーにメルヘンのキャラクターが迷い混んだかのような光景がミスマッチ過ぎてなかなかにシュールだぁ。
おまけにその表情が疲れ切ってる。まるで上司の無茶振りに何年も付き合わされてすっかり仕事に対して諦観してしまった中高年のおっさんみたいに疲労が滲み出ているし、纏う空気も苦労人特有のそれ。
「何しに来たんだこいつ?」
つーか誰?
ギィの眷属の赤、レインの眷属の青、ミザリーの眷属の緑とは異なる系統の悪魔だというのは分かる。そもそも彼らの眷属であればクリフォトに不用意に近づいたり侵入してきたりなんてことはない。もしそうなら事前に連絡があるだろうし。
そもそもこの世界の悪魔達ってDMCのクソ悪魔共と異なり、上位者に対して非常に礼儀正しく、性格も真面目なのが多い。白氷宮内で見掛けると凄く畏まって挨拶されるしな。彼ら曰く、俺は自分達の王と対等な友人関係でありお客様なので敬意を払って対応するのは当然とのこと。
だとすると残る白、黄、紫、黒の系統だろうか。
「......今まで縁がなかったんだよなー」
赤、青、緑の系統とはずっと付き合いがあったが、それ以外の系統とは全くない。
どいつもこいつも癖が強いから、もし付き合いを始めるなら覚悟した方がいいとギィ達からは言われていた。
たまたまクリフォトの樹を見掛けたから興味本位で侵入してきたのか、何か目的があるのか。
考えても答えが出る訳でもないし、俺は侵入者が玉座の間に来たら直接聞けばいいと思い直し待つことにした。
侵入者の小人みたいな少年悪魔くんは道が別れる度に分身を増やして二手に別れて進み続ける。丁寧にマッピングでもしてんのかね? って思うくらいにその歩みは慎重だし警戒を怠っていない。
が、結局玉座の間の前で別れた分身体全員と合流を果たし、侵入を阻む罠や敵がいなかったことに安堵するよりも、折角労力を割いたのに道中何もなければどの道も行き先は同じということにがっくりしたらしい。暫く四つん這いになって動かなくなってしまった。
四つん這いのままの小人の集団が消えると同時に、一人の少年──普通の子どものサイズ──だけが残される。恐らく本体なのだろう。
耳を澄ませば「もうやだ」「帰りたい」「疲れた」「何もないのにヤバい
......なんか普段から苦労してるのを察してしまう内容に変な笑みを浮かべてしまう。
愚痴の内容から本人は嫌々クリフォトに侵入したということがよーく分かった。そして彼に侵入するよう命じた者がいるということも。
これは是非とも彼から話を聞かせてもらわねばと思い直すも、玉座の間の前から彼は一向に動かない。
「......帰りたい......でも何もせず帰ったらお仕置きが......帰りたくない......でも進みたくない......やっぱり帰りたい」
来た道を戻ろうとして足を止め、踵を返して進もうとするがまた足が止まり、再び踵を返して来た道を戻ろうとする......というのをずっと繰り返している。
彼、鬱病なのでは? 大丈夫か? かつてクリフォトの樹に侵入してきた者達の中で、これほど憐れみを誘う者はいない。
暫くそっとしておこう。そう結論付けると放置を決め込む。
三時間後。
コン、コン、という控え目なノックの後、玉座の間の外からゆっくりと開けられる扉。
肉食獣に怯える草食獣みたいな雰囲気でおっかなびっくりしながら顔を出す少年。
俺はすかさず声を掛ける。
「ようこそ、招かれざる客人よ。漸く覚悟が決まったか?」
「し、失礼します」
震えた声で挨拶してくる少年は、やはりその端正な顔立ちからとても悪魔とは思えない。だが直接肉眼で確認し、その気配を間近で感じて確信する。ギィ達と同じこの世界の悪魔でありながら、ギィ達の眷属ではない。少なくとも白氷宮では見た顔ではない。白か黄か紫か黒の系統の悪魔で間違いない。
「まずは自己紹介だ。俺はユリゼン、この樹、クリフォトの主、ユリゼンだ」
「......これはご丁寧に。私は
優雅な動作でお辞儀をする少年。
思った通り、ギィ達の眷属ではなかったか。
しかしあれだな。意外とあっさり自身の系統を教えてくれたな。実は聞いても教えてくれないんじゃないかと勝手に思ってたのはここだけの秘密だ。
さて、自己紹介も終えたので本題に入ろう。
「それで、
嘘ではないが事実でもない。クリフォトは人間の血を吸って成長し、頂上──最下層に果実を実らせる。それ専用の空間と樹は早い段階で用意される。後は果実が成るのを待つばかりな状態だ。なので、
その果実を食らえば絶大な力が手に入ることを考えれば、それを欲する者は人魔を問わないだろう。単に、果実に関する情報を俺が誰にも漏らしていないだけ。きっと知られたらクリフォトには連日人間達や魔物の群れが押し寄せるに違いない。
勿論、果実のことは今後も俺だけの秘密、いや、俺と俺の眷属だけの秘密だ。グリフォンとシャドウは俺の能力によって召喚されたからか、当然のようにクリフォトの実について知っていた。この件が他言無用であることも。
彼の返答次第では戦闘も辞さない。しかしなるべく穏便に済ませたい。
ギィ達から聞いただけの話ではあるが、
さあ?
俺は相手の出方を窺う。
「その、ユリゼン殿にとってはあまり関係ないと思われるでしょうが、この地は我が主の支配領域でして......」
配下くんはその顔に疲労と苦悩を浮かばせながら語る。
今日も今日とて配下共をこき使い他の原初(紫と黄)との勢力争いに精を出していたら、クリフォトの樹が自身の土地に突如生えてきたではないか。
あら? お庭に突然素敵な植物が。でも困ったわ。ワタクシ、庭師にこんなことを頼んだ覚えがないのに......まあ一ヶ月も放置すれば勝手に枯れるしそのままでいいかしら。
と思って静観を決め込んでたら、暫くして不法侵入してきた
おや? 自身の支配領域にクリフォトが我が物顔で巣食っても顔色を変えないとはあなたらしくないですね? ああ! ネームドになっていなければ受肉もしていないあなたではクリフォトから放たれる
ザッケンナコラー! スッゾオラー! 馬鹿野郎お前ワタクシは勝つぞお前!! ということでまずはあなた責任者に文句言ってきなさい!!
......ええ(困惑)。
ということらしい。
まさか
でも思い返してみれば、ギィとの出会いもクリフォトの樹が切っ掛けだったんだよな。世界は違えど同じ悪魔だからか、魔界樹であるクリフォトって悪魔だとやっぱり気になる存在なのだろうか。
「そちらの事情は分かったが、生憎クリフォトは一度発生させたら枯れるまで消えない。それまで待て、としか言えんな」
「ですよねー」
完全に何もかも諦め切った顔の配下くん。クリフォトが枯れるまで待つしかないと主に報告したら、「分かってんだよそんなことは! それを何とかしてこいっつってんだよこの無能!」と罵倒され折檻でもされるのかな?
「クリフォトは大量の死者が出る大規模な戦場にのみ発生させる。文句があるなら、俺ではなく人間共に言うべきだな」
「それならここに来る前に終えております。自軍も敵軍もクリフォトに潰され全滅したことを知って皆青い顔でした。いい気味です」
当時のことを思い出しちょっと嬉しくなったのか配下くんが邪悪に笑う。
が、すぐにfxで有り金全部溶かした人の顔みたいになり、「うーあーこのまま帰ったら確実にお仕置きだー」と呻く。
......なんか不憫に思えてきたな。そんなに
「......」
丁度暇を持て余していたし、ギィ達以外の原初に興味がないと言えば嘘になる。彼らから聞いた他の原初の話も、現段階ではその通りの人物なのかそうでないのかも判別がつかない。だってかなりこき下ろした感じだったし。
少なくとも
「ギィ、レイン、ミザリーとは昔から交流があり、何度か戦ったことがあるが」
「え、はあ......」
「他の原初とはまだないな」
「......!」
「言いたいことがあるなら、配下なんか寄越さず自分で直接言いに来い」
それから、と続ける。
「もし俺に勝てたなら、クリフォトの秘密を教えてやる」
「クリフォトの秘密、ですか?」
「ああ。俺以外に誰も知らない、クリフォトの秘密。俺がクリフォトを発生させる真の目的だ」
「真の目的......」
ここで邪悪な笑みを忘れない。
たとえギィ達と同格だろうと負けるつもりは更々ない。暇潰しになればそれでいい。精々楽しませてもらおう。
「一語一句漏らさず、そのように伝えさせていただきます」
「うむ」
深々と頭を下げる配下くん。
「キミも大変だな」
「お心遣いに感謝します」
顔を上げ最後に乾いた笑みを見せ、配下くんは転移で消えた。
残された俺は一人、初めて会うギィ達以外の原初がどんな連中なのか想像して待つことになる。
そして待つこと数日。やって来たのはクリフォトの樹への核撃魔法だった。
「なかなか激しいノックだな」
ドカーン! バカーン! と遠慮など一切せず爆撃しまくってくれてるアンポンタンが外にいる。
とりあえず面を拝む為にクリフォトの外側に
誰だよ。
金髪の女子高生みたいな可愛い見た目の癖してやってることはとち狂ったテロリストよりも
とにかくクリフォトの樹に核撃魔法はやめて欲しい。
「誰だか知らんが調子に乗るな」
虚空から取り出し頭の上に載せるは『Dr.ファウスト』。テンガロンハットの形をした魔具で、DMC5のダンテ専用の銃器にカテゴライズされる武器。
レッドオーブを消費して敵にダメージを与える、というシリーズでも特異なタイプの武器であり、消費するレッドオーブの量が増えれば増えるほど火力も増す。
帽子を装備すると自動で赤いマフラーが首に巻かれるのだが、このマフラーが所持レッドオーブの残量を示すメーターの役割を担ってたりする。
核撃魔法を今もなお撃ちまくっているこいつにDr.ファウストの技『レッドホットナイト』をくれてやる。
『レッドホットナイト』は、簡単に一言で言えば隕石落とし。メテオである。大量のレッドオーブを消費する代わりに巨大な隕石を落とせる。その威力は最大で、最高難易度のボス敵ですらHPが一瞬で溶けるレベル。
帽子の鍔を左手で摘まみチャージ開始。
レッドオーブなんていつの頃からか使わずに余らせてばかりだから、こういう時に派手に使うに限る。
チャージしてる間に何発もの核撃魔法を樹に撃ち込まれるが、それに構わずチャージをし続けてから、
「レッドホットナイト!!」
発射!!
天から降り注ぐ赤く巨大な隕石の群れが、金髪の女の子に命中。大爆発を起こす。
「ぐぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
金髪の女の子が地面に叩きつけられてもなお隕石の群れは降り注ぐ。その度に連鎖的な大爆発が発生、彼女の悲鳴は掻き消され、やがて聞こえてくるのは爆音のみ。
「......」
爆音が止んでから数分待ってみるが、特に何も聞こえてこないので樹への攻撃は止めてくれたらしい。
それとも今のレッドホットナイトでくたばったかな?
まあ、なんでもいいや。
全く、核撃魔法撃ってくるなら俺に直接撃ってこいってんだ。
次に変なことしたらドッペルゲンガーを向かわせてキャバリエーレで轢き殺してやる。
「
「......し、死ぬ」
「キミ、魔素で作った仮初めの体が崩れかけてるじゃないか」
「樹の中に入る前の時点でその体たらくとは全く情けない。あなたは一体何しに来たんですか?」
「うるさい!! それにしても今の魔法は何だ!? 全然気づけなかったぞ!!」
「威力も凄まじかったわ。クリフォトの主ユリゼン、どの系統にも属さない謎の悪魔、一体何者なのかしら」
「それを確かめに来たのでしょう? ホラ、さっさと中に入りますよ。あと
「戦闘はできないがまだ帰らないぞ! せめてユリゼンって奴を一目見るまではな!」
「勝手にすれば? ボクの足を引っ張りさえしなければね」
「ワタクシの邪魔もしないで欲しいわ」
「クリフォトの樹の秘密......クフフフ、樹という点である程度予想はできていますが、一体どのようなものなのか楽しみです」
バカンッ! と勢いよく玉座の間の扉が蹴破られる。
蹴りを入れたのはさっきの頭がおかしい金髪核撃魔法娘だった。まだ生きていたのか。
そいつを先頭にぞろぞろと入ってくるのは一人の男性と二人の女性。
全員で計四名。
「招待してもらったからわざわざ参上してあげたわ。ワタクシは
白髪で紅い目をした深窓の令嬢みたいな美女が四人を代表するように一歩進み出て口を開く。
「歓迎しよう、お客人。俺はユリゼン、クリフォトの主ユリゼンだ。ご友人も連れてきてくれたようなので、紹介してくれると助かる」
俺の返答にいち早く反応したのは頭のおかしい金髪核撃魔法娘。
「私は
知らんがな。というか仮初めの体って......よく見たら全員受肉してないじゃん。え? あれ? なんで?
頭の上に疑問符を浮かべるこっちをよそに、女性の中で一番幼い外見の娘が言う。
「ボクは
最後に貴族風な格好をした黒髪の男性が優雅な仕草で一礼する。
「私は
昔ギィが冥界で引き分けたのがこいつか。確かに纏う雰囲気が他の三人とは違う。要警戒だな。
ま、それはそれとしてなんでネームドでもなければ受肉していないのか質問してみるか。
「お前達に質問だが、名前と肉体がないのは何か理由があるのか? ギィ達は初めて会った時点で既に名を持ち受肉していたから、他の原初も当然そうなのだと思っていたが」
四人が揃って不機嫌そうに顔を顰めた。名無しの体無しを指摘されたからか、それともギィ達の話を出したからか、もしくは両方か。
「......あなたとギィの関係を聞いても?」
「友人だ」
訝しむような
「ボク達、ボクと
と語り出すのは
「ゲーム?」
「そう。ボク達の中で誰がより良い肉体を得られるか、というゲームさ」
「つまり、その気になればいつでも受肉できるが、他の面子に自慢できるようなより良い肉体を得る為に選り好みをしている、ということか。ゲームというくらいなんだから、相手への妨害もしていたりするのか?」
「その通り。理解が早くて助かるよ」
面白いことを考えるな。俺がこいつらの立場だったらそんなこと考えずにさっさと受肉を終えているだろう。だが彼女達はその過程を楽しんでいるのだ。時間に縛られない長命種らしいゲーム。彼らと同じ長命種の仲間なのにどうしてもせっかちな人間の考え方が出てきてしまう俺にはできない遊びだった。
「ん? クロは違うのか?」
「私は強くなり過ぎると戦いがつまらなくなってしまうので、受肉にはあまり興味がありませんね」
これもまた珍しい考え方だ。
冥界時代では負けなし、唯一ギィが引き分けた存在、というだけでかなり強いはずだが、当の本人は強くなることに興味がないとは、なかなかに変な奴である。
「なるほどな」
なんか新鮮な気持ちになる。まさか大抵の
「今度はこちらから。あなたは何故クリフォトの樹を数十年に一度の間隔で発生させているのですか? 何か目的があるのでしょう?」
興味深そうに質問してくる
「人間は贄だ。クリフォトの樹を育てるには大量の人間の血が必要になる。だがやり過ぎると人間なんぞあっという間に絶滅してしまう。ならば人間が増え、自ら贄を用意するまで待てばいい。大規模な戦争が勃発した時を狙ってクリフォトを育てれば戦場以外に死者は出ない、大量の血が手に入るが人間の全体数はそこまで減らない、これが数十年に一度という頻度でクリフォトの樹が発生する理由だ」
クリフォトが人間の血を啜る吸血樹、というのは周知の事実。我ながらなかなかいい説明ができたのではないか?
と自画自賛していると、
「前回の、百年以上前の時は戦場ではなく国一つ滅ぼしていたようですが、それは特例ですか?」
ヴェルダナーヴァとルシアが死んだ時のことを思い出し、自身の顔から表情が抜け落ちていくのが分かった。
俺の変化に気づき「おや?」と疑問符を浮かべる原初の悪魔達に説明しておく。
「あの国は滅んで当然だ。我が友、星王竜ヴェルダナーヴァとその妻ルシアを殺害した愚かな人間共、百回滅ぼしても足りん」
「「「「っ!?」」」」
俺から放たれる怒りと憎悪混じりの
「元々、クリフォトによる大量虐殺はヴェルダナーヴァから認められていた。一度起こせば人間は暫くの間は大規模な戦争をしなくなる、と。抑止力として期待されていて、実際その通りだった。前回のはまあ、例外中の例外だ」
「そうでしたか」
ひとまず納得したような表情になる
何こいつ、知識欲の塊なの?
「どうぞ」
「クリフォトには大量の人間の血が必要、戦場でのみ発生するのはヴェルダナーヴァ様の意向で抑止力としての役割を果たしている為、概要については理解しましたが、分からないことがあります」
「何だ?」
「先程、人間はクリフォトを育てる為の贄、という風に表現しましたが、クリフォトが育ち切ると何か良いことでもあるのでしょうか?」
......核心に触れてきやがったな、
その隣の
「良いこと?」
「良いことって何なのさ」
よく分かってないのは
そんな二人にこれ見よがしに溜め息を吐き、呆れたような嘲笑うような視線を飛ばす
「察しが悪いですね全く。仕方がないので私の考えを教えてあげましょう。いいですか? クリフォトは植物なのですよ。本日外部と内部から見て、私が調べた限りその組成や組織は確かに他の植物とは異なる点も多々ありましたが、共通する点も非常に多い。つまりクリフォトは人間の血を栄養にしている、という特異性を持つ植物なのです」
「そんなこと最初っから分かってるが?」
「だから『樹』って言われてるんだろ」
ぶー垂れる
「種が蒔かれて発芽し、葉が茂って花を咲かせ、やがて種を残して枯れる、そういうサイクルがクリフォトの一ヶ月間にも存在している。そういうことでしょう?」
「ええ、
うわあ! 凄い着眼点してるなこいつ! 最早百点満点くれてやってもいい、ど真ん中のストレート、正解だよ正解! 仰る通りなんですわ!!
もうこの時点で全部ゲロッてもいいような気がしてきたけど、自信満々のドヤ顔で「どうなんですか?」と視線で訴えてくる
「......そこから先は答えられない。クリフォトの秘密に関わるからな」
「では、こんな話をしましょう。クリフォトの発生と同時に感じられる
「......」
沈黙を貫く時点で肯定しているようなものだ。
俺の反応や様子に
「ユリゼン、あなたがどの系統にも属さない理由はそこにあると私は考えます。恐らくあなたは悪魔でありながら突然変異的な存在として生まれた。クリフォトを用いて人間の血を得ることで強くなる、独自の進化手段を持った唯一無二の悪魔として。そして独自の進化を遂げたことで、我々と同じ
怖いくらいに何もかもが合ってるんだけど。
勘が鋭くて優れた観察眼と洞察力があって頭良いとか、一番敵に回したくないタイプじゃん。
ここまで見抜かれてると、いっそ清々しいものである。
確かにその通りではあるが、アホに関しては完全にレインの私怨としか思えない。
実際に会ってみて俺の
「......降参だ。クロ、全部お前の言う通りだ」
これ以上は何を言っても無駄だし苦しい言い訳にしかならないので、俺は早々に白旗を上げる。
「まさか俺の出自まで言い当てられるとはな」
「では、やはり?」
「ああ。俺は純粋な
「その外見で半分人間なの!?」
驚きの声を上げる
変身系悪魔って言えばいいのか、俺は状況によって姿が変わる。普段は人間だがクリフォトと融合時はユリゼンだし、
ぶっちゃけ、
「......それで、クリフォトの秘密は見事にクロによって暴かれてしまったが、これからどうする?」
思考が横に逸れたのを慌てて軌道修正しつつ、問う。
本来は、
正直、クリフォトの樹が鬱陶しいから消せと言われてもそんなことはできないし、たとえできたとしてもやりたくない。それこそ力ずくでやれるもんならやってみろ、という話になってくる。
四人──というか悪魔だから正確な数え方は四柱か──の様子を窺う。
「どうする?
「そもそも私はもう戦えないからそっちの好きにしたらいいぞ!」
「私はユリゼンと戦ってみたいから戦います。勝ち負けではなく、純粋に彼の力の一端に触れてみたいのです。先程
勝負に関しては、まあ十中八九俺が勝つだろう。ギィを基準に考えると、あいつはネームドで受肉済みで覚醒済みの
「ワタクシもやるわ。前々から人間達で騒がれていたユリゼンの実力に興味がないと言えば嘘になる。それにここはワタクシの支配領域ですもの」
「......折角来たんだから、何もせずに帰るのは味気ないかな。ボクもやるよ」
「決まりだな」
閻魔刀を召喚し、赤い水晶体──バリアーに変化させて戦闘準備を整える。
「名無しで受肉していないのであれば、ハンデが必要だろう? 三人まとめてかかって来い。俺を一度でも傷つけることができればそっちの勝ちでいい」
この時俺は、当然の気遣いとしてハンデ戦を提案したつもりだった。
くどいようだが目の前の原初は名無しで受肉してなくて未覚醒。現時点のギィとは比較にならないほど弱い。
閻魔刀バリアーを破って俺に一撃入れられたら負けでいいかな? くらいのノリで考えていた。
が、ここで失念していたのが、彼らは原初の悪魔だということ。
「力の差があるとはいえ、三人まとめてかかって来いとは、随分と舐められたものですね......!!」
「しかも傷をつけたら勝ちでいい? お前達では傷一つつけることすらできないと言われてるようね。ワタクシ、こんなに虚仮にされたのはいつ以来かしら」
「ちょっと調子に乗り過ぎなんじゃないの、キミ」
「ちっ、戦えればさっきのお返しをしてやれたのに!」
殺気を漲らせる
あー、地雷を踏んでしまった。今のギィの強さを基準に考えていたから、無意識に格下扱いしていた。個々の戦闘力じゃなくて、あくまでも『ギィ達と同格』として扱うべきだったのは火を見るよりも明らかなのに、ハンデなんて提案せず普通に順番に戦うべきだったぞ。
......まあいいか。今更謝っても許してくれそうにないし、三人相手でも負ける気がしないのは変わらない。
ギィ達の配下達のユリゼンへの評価。
自分達の王であるギィ達と対等な友人関係であり、とてつもなく強いので尊敬と憧れの対象。図らずも、DMCにおける魔界を裏切る前のスパーダと似た感じ。
強いからって尊大な態度を取る訳じゃないし、気さくに挨拶してくれるし、紳士だし、ということで評価は高い。
特にレインの配下達にとっては『推しのお方』なので本人が知らないところでアイドル扱いされている。
レインの配下(ミソラ)などからは、「レイン様がユリゼン様と......尊い!!」とのこと。