DMC5のクリフォトの樹の実をオイチイオイチイしまくってたら人魔問わず全方位から警戒されまくってて草   作:美味しいパンをクレメンス

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前回のあらすじ!!
久しぶりにクリフォトの樹を生やして禁断の果実をオイチイ!オイチイ!しようと思ってたらその地はギィと同格の原初の白(ブラン)の支配領域だった!?
やがてなんだかんだでクリフォトに集まってきた白、黒、黄、紫の原初の悪魔達。
そして四柱が集まる切っ掛けとなった原初の黒(ノワール)によりクリフォトの秘密が暴かれてしまう。
その後なんやかんやで原初の黄(ジョーヌ)を除いた三柱と戦うことになったのだ!!!


原初の悪魔達 後編

これまでクリフォトに挑戦してきた者達の中で、閻魔刀バリアーを破り俺に傷をつけることができたのは、ルドラただ一人。

そしてルドラはギィと互角。ネームドで受肉済みで覚醒済みで究極能力(アルティメットスキル)持ちのギィと、だ。

たとえ三人纏めてとはいえ、やはり名無しで受肉してなくて未覚醒で究極能力(アルティメットスキル)を保有してなさそうな連中では、閻魔刀バリアーを破るのは困難だった。

というか戦い始めて分かったことだが、こいつら初めて会った時のギィより遥かに弱い。それだけ名前の有無の差、受肉しているかいないかの差、覚醒済みと未覚醒の差は大きく、越えられない壁として立ち塞がるものなのだと実感する。

 

(どうしてもギィを基準にしてしまうのは申し訳ないが)

 

名前+肉体+覚醒の有り有り有りなギィ、逆に無し無し無しの白と黒と紫の原初。同じ土俵に立つなら同じ状態になってからにしろ、となる訳で。

 

「うわー......」

 

参戦せず見届け人に徹底していた原初の黄(ジョーヌ)が呆れた様子で呟くが、俺としては当然の結果だ。

目の前には地面に這いつくばる原初の白(ブラン)原初の紫(ヴィオレ)。少し離れた場所で辛うじて立っているだけの原初の黒(ノワール)

 

(そもそもこいつら、誰一人として協力して戦おうって気がないしな)

 

先程まで行われていたコントのような戦闘のことを思い出す。

 

 

まず原初の紫(ヴィオレ)が怒りに任せて魔法攻撃してくるが、閻魔刀バリアーに防がれる。

それを見て原初の白(ブラン)が何をやってるのと原初の紫(ヴィオレ)を押し退け魔法を放つが当然防がれる。

魔法が効かないなら物理じゃないですかアホなんですかと原初の黒(ノワール)が手を鉤爪みたいにして突っ込んできたが容易く防ぎ、お返しに至近距離から火炎弾をぶち当て吹っ飛ばす。

原初の白(ブラン)原初の紫(ヴィオレ)がアホはお前だろと二人揃って罵り嘲笑すれば、起き上がった原初の黒(ノワール)がだったらあなた達で何とかしてみなさいこの無能と言い返す。

そのまま三人がこっちをそっちのけでギャーギャー言い合う。

隙だらけなので極太レーザー発射。

いち早くそれを察知した原初の黒(ノワール)原初の紫(ヴィオレ)原初の白(ブラン)を肉盾にする。

ぶっ飛ぶ原初の紫(ヴィオレ)原初の白(ブラン)

そんな二人がキレて原初の黒(ノワール)に攻撃開始、当然の如く迎え撃つ原初の黒(ノワール)

内輪揉めしてるところに俺が五月雨幻影剣で三人纏めて動きを止めてから、烈風幻影剣で上空に打ち上げて急襲幻影剣で壁に縫い付けた。

その後はもう乱闘だ。スマ○シュブラザーズみたいな大乱闘。本来なら一対三となるはずが、蓋を開けてみれば一対一対一対一。原初の紫(ヴィオレ)原初の白(ブラン)ですら「邪魔だよ!」「ワタクシの邪魔してるのはそっちよ!」と仲違い勃発。自分以外は全員敵だといった感じで暴れる原初の悪魔三人。「死んじゃえ!」「死になさい!」「死ね!」と叫びながら必殺の魔法合戦で玉座の間は破壊の光が荒れ狂い、最終的には大爆発が何度も起こって三人纏めてぶっ倒れたのである。

やがて唯一立ち上がることができたのは原初の黒(ノワール)のみだったが、そんな彼も膝が笑っているので戦闘続行は難しそうだ。

俺? 未だに閻魔刀バリアー破られてないから無傷だけど。

そんな訳で──

 

 

「お前達が死ぬほど仲が悪いのがよく分かった」

 

レインとミザリーは仲良しなのになー、と二人を思い浮かべながら目の前の原初達に告げると、くたばり損ないと化してろくに返事もできない三人ではなく原初の黄(ジョーヌ)が「当たり前だろ!」と怒鳴り返してきた。

え? 当たり前なの? 俺の認識の方がおかしいのこれ?

ま、いいや。

 

「とりあえず気が済んだなら帰ってくれ、と言いたいところだが、クリフォトの一ヶ月の成果に興味はあるか?」

 

四人がピクリと反応したのを確認してから言葉を続ける。

 

「興味があるならまた後日来てくれ。見学してくれて構わん」

 

勿論、見せるだけのつもりだが、もしこいつらが果実を見て欲しがったらそれを巡って乱闘するのも楽しそうだ。

それならギィ達も誘わなければ。今日知り合ったこいつらがクリフォトの秘密を知ってて、彼らが知らないままなのは不公平だろう。長い付き合いのある彼らを誘わない訳にはいかない。

 

「クリフォトの秘密......果実が熟したらまた会おう」

 

四人を見送った後、俺はギィに連絡を入れた。

ちなみにだが、ミリム達『Devil May Cry』には連絡を入れない。何故なら、もし乱闘になった場合ほぼ確実に手加減を忘れたミリムによってクリフォトの樹が周囲一帯を巻き込んで消し飛ぶから。

 

 

 

そんでもってクリフォトの実が熟して──

クリフォトの樹の内部、玉座の間にて原初の悪魔が勢揃いしている。

が、空気が最悪だった。

どのくらい空気が悪いかというと、今にも殺し合いが始まりそうなくらいに。

構図としては、ギィとレインとミザリーの三人が、原初の黄(ジョーヌ)原初の白(ブラン)原初の紫(ヴィオレ)原初の黒(ノワール)を睨み一方的に敵意を向け、それに対して四人が敵意を返している状況。

なんで? どうしてこうなったの?

気まずい沈黙が続く中、口火を切ったのはギィである。

 

「......ユリゼン」

「何だギィ」

 

視線を同胞から外さないまま、低い声でギィから呼ばれる。

 

「クリフォトの樹の秘密を教えてくれるって言うから来てみれば、なんでこいつらがいるんだ?」

 

それ言ったよね!? 事の経緯を全部予め言ったはずだよね? なんで改めて問う必要があるんですか!?

 

「以前こちらに訪問した時に私がクリフォトの秘密を言い当てたら、ユリゼンが見学していけと言ってくれただけですよ」

 

しれっと応答する原初の黒(ノワール)

小声でレインが「てめぇには聞いてねぇよ」と吐き捨てる。そんな彼女の今まで一度も聞いたことがない荒い口調に俺は酷く動揺してしまう。

なんでこんなに仲が悪いんですか!? 原初の悪魔達って!!

 

「つまりテメェらは、ユリゼンの能力を暴いたってことか」

「確かに暴いたと言えば暴きましたが、別に弱味を握って脅した訳でも武力で無理矢理聞き出した訳でもありません。私がこれまでクリフォトを観察して至った考えを伝えたら、ユリゼンが正解と答えただけです」

「......」

「勘違いしないで欲しいのですが、私達がここにいるのはあくまでユリゼンの善意です。クリフォトの秘密、人間の血を吸った樹が一ヶ月かけて実をつけるのでそれが熟したら見学していけと」

「ユリゼン!!」

「「ユリゼン様!!」」

 

ひぃっ! なんでギィ達三人の矛先がこっちに向くの?

 

「あれ~? もしかしてユリゼンとは付き合いが長いのにクリフォトの樹の秘密を今までろくに知らなかったの~? ぽっと出のボク達にすら簡単に教えてくれたのに~?」

 

煽り口調の原初の紫(ヴィオレ)がとんでもなくメスガキっぽいが、彼女の言葉で俺は腑に落ちた気がした。

要するにギィ達三人は嫉妬してる、ということでいいのか? 原初の紫(ヴィオレ)の言う通り、付き合いの長い自分達ですらあえて触れてこなかったクリフォト(俺の能力)に、俺が自らほぼ初対面の連中に詳細を打ち明けていたことが気に食わない、と。

だとすると今回配慮が欠けてたのは俺の方、だよな?

 

「ギィ、レイン、ミザリー、すまん。原初の黒(ノワール)がクリフォトの秘密についてあまりにも正確に言い当てるものだから隠し通せなかった。俺が他の悪魔族と異なることや、本来なら誰にも教えるつもりがなかったことも含めてな」

「......つまり原初の黒(ノワール)のアホがその変態的な異常性を発揮してクリフォトについてストーカーみたいに執拗なまでの調査をしていたからバレてしまったと?」

 

ジト目でこちらを見つめるレインの私怨混じりの言い方に何とも言えない気分になりながらも頷いておく。

するとギィ達三人は敵意を霧散させ盛大に溜め息を吐く。

 

「災難だったな、ユリゼン」

原初の黒(ノワール)については(タチ)の悪い病気に罹患した犬に噛まれたと思って諦めてください」

「困ったことがあればすぐに教えてくださいね、力になりますので」

 

今度はなんだか可哀想な人を見る目で見られてしまう。

......もう、この場が収まるならなんでもいいや。

 

 

 

閻魔刀を用いて空間を斬り裂き転移したそこは、クリフォトの頂上にして最下層。

雲一つない青い空の下、牧歌的な人間の村の中にいるような風景が広がっていた。

 

「ここは? 人間の村?」

「随分と景色が様変わりしたわね」

「何処なんだここは?」

 

原初の紫(ヴィオレ)原初の白(ブラン)原初の黄(ジョーヌ)はそれぞれ首を傾げたり周囲をキョロキョロ見渡したりしている横で、原初の黒(ノワール)だけが鋭く目を細める。

 

「............幻覚、ですね。しかも恐ろしく精度の高い。この私ですらすぐには気が付きませんでした」

 

相変わらずの凄まじさを発揮する原初の黒(ノワール)に俺は頷く。

 

「ここはクリフォトの樹の頂上であり、最も深い場所。そしてこの光景は果実が見せている幻だ」

 

クリフォトが普通の植物と異なり頂上が地下にあること、果実が成る部屋には俺の記憶から再現された幻が映し出されることを説明する。

 

「......ユリゼン」

「何も言うなギィ。心の何処かでヴェルダナーヴァのことを未だに引き摺っている自覚はあるが、大丈夫だ」

 

気遣うような視線に対して安心させるように手を軽く振る。

初めてクリフォトの樹を育てた時は何も見えなかったこの部屋も、今ではすっかり俺の心象風景を映していた。

かつて人間の村や街で遊び歩いた記憶。収穫祭やら記念祭やらに参加してバカ騒ぎした思い出。友が亡くなる前の楽しかった日々を惜しむように、果実が幻を見せてくるのだ。

 

「ううっ」

「はい、ハンカチ」

「ぢ~~~~ん」

「ちょっと......」

 

レインが当時を思い出し涙ぐむのでミザリーがハンカチを手渡せば、思いっ切り鼻をかまれていた。

ハンカチを鼻水まみれにされて、そういうつもりで貸した訳じゃないのにと悲しそうな目をするミザリーをあえて無視。

 

「で、あれが果実だ」

 

原初の悪魔達に一通りの説明を終えて指を差すのは部屋の中央。牧歌的な人間の村には似つかわしくない、場違いなまでに気色悪い小さな樹が一本。

表面の樹皮が血のように赤い、サルスベリにも見えるような樹に禍々しい気配を醸し出す果実が一つだけ成っていた。

数多の人間の血を吸い、肉を喰らい、魂すら糧とした樹が育む禁断の果実。口にすれば絶大な力を手に入れられる悪魔の実。

受肉していない悪魔族(デーモン)でもこれを食べれば受肉を完了させ、覚醒にすら至る。*1

力を求める者ならば誰もが喉から手が出るほど欲しがる果実であったが──

 

「なんか、凄く不味そう」

 

バッサリと切り捨てた原初の紫(ヴィオレ)の意見に俺を含めたこの場の全員が完全に同意した。

だって見た目が美味しくなさそうだし、実際味も悪くて不味いし、その通りなんですわ! 俺だって毎回良薬口に苦しって思いながら食ってるもん。

 

「よく一目で見破った。流石は原初の悪魔だ。実際不味いぞ、おまけに後味も最悪だ」

「誰だって見りゃ分かるでしょそんなの! あれ見て美味しそうって思える奴がいたらそいつはゲテモノマニアだよ!!」

「食うか?」

「ボクがゲテモノマニアって言った直後になんで勧めてくるのさ!?」

 

俺の言葉に原初の紫(ヴィオレ)が拒否反応を示す。

まあ、ギィ達の食生活から分かる通り、悪魔の味覚って人間とそう変わらないんだよな。で、原初である彼らは力は勿論のこと、眷属への権力及び人手、人間を含めた他種族への人脈やコネを持っていたりする。それらを最大限活かして、本来なら飲食を必要としないのに嗜好品として最上級のものを取り寄せていたりする。

そう、悪魔の中でも最高位にいる彼らはグルメなのだ。

舌が肥えてるので、不味いと分かってるなら手を出す気にはなれない。地球の何処ぞの動画投稿者のようにネタに走って買い漁って品評しながらバカ食いとかはしないのである。

 

「......気になることがあるのだけど」

 

遠慮がちにそう切り出すのは原初の白(ブラン)

 

「この果実を、これまで貴方以外の他者が食べたことはあるのかしら?」

「いいや」

 

大切に育てた収穫物をくれてやるなんてこと、今まで一度たりともなかったので何も考えずに返答すれば、原初の白(ブラン)は眉間に皺を寄せて少し黙考してから続ける。

 

「貴方の能力で生み出されたこの果実は、本当に貴方以外の者が食べて大丈夫なの?」

「どういう意味だ?」

「そのままの意味よ。果実を食べれば強大な力が手に入るのは分かるわ。けど、それに代償があるかもしれないということ」

 

代償? いまいちピンとこない。が、俺以外はそうではないのか、原初の悪魔達は何かに気づいたかのように考え始めた。

クリフォトの実を食べることに代償なんてあったっけ? 原典であるDMC5を思い出してみてもそれらしいものが見当たらない。精々ダンテが果実を食べたバージルに対して『人間らしさを失った』的なことを言っていたくらいだっけ?

俺に『人間らしさ』なんて今更だしなぁ......人間性を捧げよ! って感じで今まで好き勝手してきたし。そんな人間性とか人間らしさを大切にしてたらそもそも最初から(ハナッから)クリフォトの種なんて撒かないっつの。

 

「例えばです。もしユリゼン以外の者が果実を食べた場合、ユリゼンに絶対の忠誠を誓うようになってしまう、なんてことはありませんか?」

 

俺が内心で開き直っていたら、原初の黒(ノワール)がいかにも『リスクがあるとしたらこれに違いない』という風に自信あり気に根拠のないことを言い出す。

そして原初の黒(ノワール)の発言は、俺にとっては『何言ってんだコイツ?』と思わざる得ない見当違いも甚だしい内容であったが、原初の悪魔達にとっては違うらしい。どいつもこいつも重大な問題に気づいてしまったとばかりに驚愕の顔になる。

 

「いや、知らんけど」

「そうです、きっとそうに違いありません! 少し考えてみれば馬鹿でも分かることじゃないですか! クリフォトの樹はあなたの能力によって生み出された。そして果実はその樹が一ヶ月という時間を掛けて育んだ成果そのもの。それを口にした者の魂が無事でいられる訳がありません!!」

 

......そうかな......そうかも......? 

 

「クフフフ。危ないところでしたよ、まさかこんな狡猾な罠が仕掛けられていたとは......果実の見た目があまりにも不味そうで、逆にどれほど不味いのかほんの少しだけ興味が湧いていましたからね、本当に危なかった。この事実に気づいていなければ不味いものを食わされた上にあなたの下僕と化していたでしょう」

 

勘違いが加速してる気もするけど、試してみない限り原初の黒(ノワール)の考えは否定も肯定もできない。もしかしたら、という可能性を提示されただけでもありがたい、のか?

 

「しかし残念でしたねユリゼン。申し訳ないのですがあなたは私が仕えるに相応しい主ではありません。色々と面白そうなのであなたのことは嫌いではないのですが、今回の件については白紙とさせていただきます」

 

......何の話? 実はお前だけ就職の為に面接しに来たつもりだったの? でも若干思ってたのと違うから内定蹴る、みたいな?

 

原初の黒(ノワール)の言うことを真に受けるのは癪だが、そういう危険性があるなら私も食べない」

 

原初の黄(ジョーヌ)が述べれば、原初の白(ブラン)原初の紫(ヴィオレ)も同意見を示す。

 

「ワタクシも遠慮するわ。誰かの下につくなんてたとえ心核が砕けてもゴメンよ」

「ボクも要らないかな。美味しくないものを食べたくないしね」

 

これで黒、黄、白、紫の原初がクリフォトの実を拒否したことになる。

やはり原初の悪魔は悪魔族(デーモン)の王だけあって、プライドが高く誰かの配下になんてなりたくないようだ。

俺だってギィ達を配下にしたいとは思わない。対等な友人関係が一番楽しい。配下や下僕を手に入れるより友達を増やした方が何倍も人生得した気になる。

それに果実を欲しがられたりしても、譲る気はないのでそれはそれで困るしな。原初の黒(ノワール)が作り出した流れに任せるのが無難だろう。

 

「いいのレイン? 果実を食べなくて? いい口実になると思うわ」

「俺から鞍替えする千載一遇のチャンスだぞ! 配下は持たない主義とか公言してるが、いざって時はちゃんと責任取る奴だぞ!!」

「二人共放っておいてくださいよ!!」

 

ん? ミザリーとギィがレインに詰め寄り、顔を真っ赤にしたレインが二人に怒鳴り返していた。何やってんだろ?

ま、いいや。

 

「クリフォトの秘密に関しては以上だ。果実をもぐとすぐに樹が枯れる、当然ここは崩壊するから転移で帰る準備だけはしておけ」

 

言外にもう解散であることを告げて、果実をもぐ為に歩き出す。そばまで近寄り、果実を片手で掴み皆の準備が整ったのを確認してから果実をもぐ。

ガラスに皹が入り砕け散るように幻が消え失せ、瞬く間に部屋全体が石灰化するように白くなるのに合わせて地響きが発生。樹が枯れて崩壊し始めたと同時に原初の悪魔達が各々転移しクリフォトの内部から離脱していく。

俺も閻魔刀で空間を斬り裂き転移しながら先のやり取りを反芻する。

クリフォトの実は俺以外の者が食べると俺に忠誠を誓うようになる、か。

そんなのあり得るかぁ? さっきは原初の黒(ノワール)に押し切られるような形で納得してしまったがやはり考え過ぎだと思うし、他の連中も真に受けてるだけだと思うけどなー。

まあ実際、かつてギィに喧嘩売ったレインとミザリーが返り討ちにされて配下になったって話は聞いた。レイン曰くやろうと思えば逆らえるしそこまで強制力はないって言ってたが、『自分を倒した相手に従ってしまう』という前例があるせいで変に意識してるだけじゃないかな。

 

「気軽に試せないのが悩みどころだな」

 

 

 

 

 

「ということがあってだな」

 

と言いつつ、俺は新鮮もぎたてのクリフォトの実を皿の上に載っけた。

場所はギルバとして冒険者活動をする際に拠点として利用しているいつもの人間の街。ハンター時代から今までお世話になっている、何十代と続く歴史ある安宿の一室。

広目の丸テーブルの中央に載せた平皿にクリフォトの実を載せれば、俺の帰りを待っていたミリムとラミリスとグリフォンとシャドウが興味津々に覗き込む。

 

「話には聞いていたが本当にクッソ不味そうな見た目なのだ」

「これ見てるだけで食欲失せるねぇ」

「で、持って帰ってきたのはいいがどうすんだよコレ? くれんのか?」

「グルル」

 

半眼になって「私は絶対に食わないぞ」「アタシもパス」と断固たる拒絶を表明するミリムとラミリスとは異なり、グリフォンとシャドウはそれなりに興味があるらしい。やっぱクリフォトと同じDMCシリーズ由来の悪魔だからか、拒否感らしいものは見受けられない。

 

「ユリゼンが食わねーってんなら俺に食わせろよ」

「グルルルル」

「んだよ猫ちゃん? ここは自分に譲れって? はあ!? 寝言は寝て言いやがれ! これは俺のだ!!」

「ガァァァァ!!」

「てめっ! やんのかゴラァ!!」

 

と思ってたらいきなり喧嘩が勃発した。グリフォンが威嚇するように紫電を纏うとシャドウが咆哮し、二体はほぼ同時に相手に向かって飛びかかるとそのまま揉みくちゃになって部屋の窓を突き破り、安宿の外で戦い始める。

 

「「「え?」」」

 

普段は仲の良い悪魔コンビの二体だっただけに、こんな食い物で喧嘩するとは思ってなかった俺とミリムとラミリスは完全に反応が遅れた。

 

「バーベキューにしてやらぁ!!」

「グオオアアア!!」

「クタバリやがれぇぇぇ!!」

「シャッ!!」

 

雷を身に纏い雷撃を飛ばすグリフォン、己の身を様々な武器に変形させて攻撃を繰り出すシャドウ。

幸いなことに、結構なスペースがある宿の庭で戦っていたので人的被害は今のところ出ていなかったが、とっとと止めた方がいいだろう。

特にグリフォンが本気になったら特大の落雷が雨のように降り注ぐことになる。ここら一帯が黒焦げの更地になる前に止めるなら早いに越したことはない。

 

「ミリム、ぶん殴ってでも二体を止めろ」

「了解なのだ!」

 

元気な返事と共にミリムが窓から飛び出しシャドウまで一瞬で間合いを詰めると、右アッパー。

ボグシャアッ! って感じのとんでもなく重たい音がした。

顎に一発食らったシャドウは、そのまま星となり何処へ飛んで行ってしまった。 このままもし落ちてこなかったら大気圏を飛び出たってことになるから、回収する場合は悪魔召喚なり眷属召喚なりして呼び戻すしか方法がない。

 

「次はグリフォンの番だぞ」

「ちょっ──」

 

何か言う前にミリムのパンチがグリフォンの腹部にクリーンヒット。再度ボグシャアッ! って音と共に「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」という汚い悲鳴を上げてすっ飛んでったグリフォンもまたシャドウと同様に星となってしまう。

二体が星になったのを唖然とした様子で見ていたラミリスが、呆れたように呟く。

 

「喧嘩の原因になったあの不味そうな実、さっさとアンタが食べるかグリフォンとシャドウに半分こして渡すかしないと、また揉めるわよ」

「......半分こして与えるとしよう」

 

まさか二体が目の色変えて実を奪い合うとは予想外だったので、騒動の発端の癖して傍観者になってしまったが、クリフォトの実を求める姿こそDMCシリーズの悪魔って感じで少し嬉しくてホッとしたのは内緒だ。

だって食えば絶大な力が手に入るのに誰一人として欲しがらないんだもん。俺がおかしいのかな? ってちょっと疑っちまったぞ。

 

 

 

「摩擦熱で全身火炙りにされたと思ったら宇宙空間で氷付け、レンジでチンする冷凍食品になった気分を味合わされたぜ。あのまま考えるのをやめるとこだっただろうが!!」

「......」

 

召喚し直したグリフォンとシャドウが凍らせた炭みたいになっていたので解凍と回復を行ったら、開口一番がこれである。

戻ってきて早速喧しいグリフォンと無言で非難するような視線を向けてくるシャドウを、俺はテキトーにあしらう。

 

「悪魔なんだから転移を使え」

「ミリムの嬢ちゃんに殴られたダメージでそんな余裕あるかバカタレ!」

「いきなり喧嘩するグリフォンとシャドウが悪いのだ」

「加減しろってんだよ! 喧嘩の仲裁で殴られて大気圏突破するとか誰が予想できるか!」

 

それに関してはごもっとも。

 

「まーまー、ユリゼンがクリフォトの実を半分こしてアンタ達にあげるって言うし、それで機嫌直しなさいよ」

「マジかよユリゼン太っ腹だぜ!」

 

取りなすようにラミリスが口を挟めば、その発言に大喜びする現金なグリフォン。変わり身早いなおい。

シャドウも期待するように尻尾をゆらゆらさせている。

二つに割った実をそれぞれ皿に載せて二体の前に置けば、まだいいとも言ってないのに勝手にガツガツ食い始めた。

食い終わるまで見守っていると、久しぶりに世界の言葉が聞こえてくる。

 

《告。個体名『グリフォン』と『シャドウ』の魔王への進化(ハーヴェストフェスティバル)が開始されます》

 

すると二体同時にぶっ倒れた。

 

「ちょっとどうしたの!?」

「やっぱり腹でも下したのか!」

 

唐突に倒れたようにしか見えない二体の様子に慌てるラミリスとミリムであったが、

 

「ぐー」

「スピー」

 

という気の抜けるような寝息に胸を撫で下ろす。

そういえば覚醒魔王に進化する際って眠っちまうんだっけ。二体は俺の眷属だから俺にはちゃんと世界の言葉が聞こえたが、そういう関係ではないラミリスとミリムには聞こえていなかったようだ。その辺りについて二人に説明し、心配無用なので暫く放置しておくことに決定。

そして数日後、

 

「相手がどんな奴であろうと負けはしない! 俺は今究極のパワーを手に入れたのだぁぁ!!」

 

と、目を覚ましたグリフォンがナメ○ク星に到着しネイ○と同化した直後のヒ○ッコロさんみたいな調子こいたことを言うので、とりあえずミリムにもう一度星にしてもらった。

なお、グリフォンは前回とは異なり自力で戻ってきたと明記しておく。

 

 

 

 

 

そんなこんなで数年後。

日々の生活の中でギィ達以外の原初の悪魔達と初邂逅したことをすっかり忘れていたら、ある日ギィから「お前宛てに手紙を預かってるから今度ウチで飲み会ついでに取りに来いよ」的な呼び出しを食らう。

俺に手紙って誰から? ギィに預ける時点で『ギルバ』宛てではないというのは確実。すると『ユリゼン』宛てということだが、わざわざ手紙を送ってくる相手に心当たりがない。

一瞬、ギィ経由ならルドラか? と思ったがあいつからの場合は俺に直接『ギルバ』宛てで届くはずなのでそれはない。

何だろう? と疑問を抱きつつ、ギィの家で美味いもんがただで飲み食いできるぞー!! と騒ぐミリム達を引き連れ白氷宮に赴く。

 

「ほらよ」

 

到着早々、ギィから手渡された一通の手紙をしげしげ眺めながら問う。

 

「誰からだ?」

原初の白(ブラン)からだ。ルドラを除けば俺達以外で『ユリゼン=ギルバ』ってこと知らねぇだろ? 最近あいつの配下がお前を探してるって聞いたから俺が預かっておいた。手紙ついでに土産もあるぜ」

 

返答しつつパチンと指を鳴らせば、台車を押して入室してくるレインとミザリー。

台車の上に載るのは大量の飲食物。

え? 何? どういうこと? 訳が分からない。

視線で答えを求めるようにギィを見ると、手紙を指差す。まずは読め、ということだ。

とりあえず手紙を開封し読んでみれば、その内容が感謝状的なものであったことに驚く。

 

 

 

クリフォトの樹が枯れた後にその地に残るは、砂漠かと思わざる得ないほどの大量の白い砂だ。果実をもぐと山みたいな質量の樹が石灰化のような現象を起こして白くなり、枯れると同時に崩れ落ちるからだ。

で、樹が枯れた後に残されたこの白い砂と広大な土地を、原初の白(ブラン)は何かに有効利用できないかと思い立ち、砂そのものやかつて俺が樹を発生させた場所が現在どうなっているかを調べてみたらしい。

そういえばあの時にクリフォトの種を蒔いた場所って原初の白(ブラン)の支配領域だったわ。そりゃ確かに普通の感性なら自分の土地にやたら広大な白い砂漠があったらそのままにしておく訳にはいかんよな。

そして調査の結果、砂には植物が育つ上で必要な栄養やミネラルが豊富に含まれており、その証拠に過去に樹が発生した場所のその後は何処もかしこも人が立ち入らない樹海になっているか、人の手により豊作が続く農耕地になっていた。

原初の白(ブラン)は結果を見てこう結論付ける。数多の生命を吸って育つクリフォトの樹は、その役目を終えると数多の生命を育む為に世界に還元されるのだ。故にヴェルダナーヴァ様はユリゼンを友と認めていらっしゃったのだ、と。

折角なので配下くん達をこき使いありとあらゆる人脈等を駆使して田畑を耕し砂を肥料として撒けば、笑えるくらいの大豊作。

しかも採れる果物や野菜は病気や害虫に強くて質が良い。これは想定を超える拾い物をしたと原初の白(ブラン)は高笑い。収穫したもので酒造りを配下くん達に命令し、できあがった酒で晩酌する日々。

 

「それでこれ、ね」

 

お土産の内容物は大半が野菜や穀物、果物、そしてその加工品だ。ワインやブランデーやウイスキーなどの酒から始まり、何種類もの果物のジュース、お菓子やパンなどの食料品。種類もジャンルもピンきりで手広くやってんなぁと感心した。

つまり、手紙の中身はお前が残してった砂使って農協みたいなことをしたら成功したからありがとね、ってことらしい。

人間や他種族相手に商売というか言いくるめて農業させて利益を得ているのであろうことは想像に難くない。

 

「で、実際のところ味はどうなんだ?」

「すっごく美味しいですよ! ユリゼン様も飲みます?」

 

何故か既に酒瓶をラッパ飲みしてるレインの返答に、なんでお前がもう飲んでんだと言わんばかりにギィとミザリーが彼女を白い目で睨む。

 

「美味い! 美味い!」

「美味しい!!」

「うめ~なこれ」

「グルル」

 

レインが飲んでるから自分達もいいと判断したのか、勝手に貪り始めるお子ちゃま二人と悪魔二体。

これは今後の教育の為に何か言った方がいいのだろうかと悩んでいると、ギィが背後から優しく肩を叩いてくる。

 

「飲もうぜ。何飲む?」

「......折角だから原初の白(ブラン)にちなんで白ワインを。ギィは何から飲む?」

「俺は当然赤からだ。決まってんだろ?」

 

互いにニヤリと笑みを浮かべ、乾杯した。

 

 

 

 

 

なお、これにより原初の白(ブラン)の支配領域では農業が確実に成功するという噂が生まれ、それは人魔問わずあっちこっちに伝わって、集まってきたたくさんの人と魔物が住み処を奪い合い、肥沃な土地を巡って血で血を洗う戦争が勃発。泥沼化した挙げ句数年後に再度俺がクリフォトの樹を発生させることとなり、人も魔物も互いに大量の死者を出した結果、『災禍の魔樹クリフォトの主ユリゼン』を邪神と崇める邪教が爆誕。その名もクリフォト教。

曰く、血を啜り死を振り撒く悪魔と大地を育む豊穣の神は表裏一体、生と死の循環を司る混沌の化身......とかなんとか。

クリフォトの樹の跡地は聖域であり禁足地であると世界に広まるが、悪魔及び邪神を崇拝するやベー邪教の言うことを行儀良く守ろうなんて奴の方が少なくて、結局今度は跡地の砂を巡って個人規模から国家規模までの悪どい商売や犯罪が頻発、最終的にはまたしても砂を巡る戦争が勃発し俺がクリフォトの樹を発生させ大量の死者が出るという始末。そして残された砂を巡ってまた──

無限ループって怖くね?

抑止力とは一体......うごごご!!

*1
放置されていた死体の山を利用した一回目とユリゼンが覚醒魔王に至った二回目を除き、三回目以降のクリフォトの実には受肉と覚醒を一気に済ませられるだけのエネルギー(人間の魂含む)が十分に含まれている為




・クリフォトの樹
大量の兵が投入される戦場に突如出現し、大量の死者を出す悪魔の樹。強大な力を持つ悪魔ユリゼンの根城。犠牲者の血を啜り成長することから吸血樹とも呼ばれる。ユリゼンを討伐しようとしてその樹洞に入り生きて帰った者はあんまりいないが、全くいないことはない。
ちなみに、ユリゼンを崇める邪教徒が入ると問答無用ではあるが無傷で叩き出される。

・クリフォトの実
食べれば絶大な力が手に入る禁断の果実。この実について知っているのは現時点で原初の悪魔達とユリゼンの身内のみ。
味も見た目も不味いので、今のところユリゼンを除けばグリフォンとシャドウしか食べたがらない。

・クリフォトの種
樹から果実をもぐとユリゼンが再度スキルで生成することができる。見た目はリンゴの種。
成長する為の血が無いと発芽しない。

・クリフォトの砂
樹が枯れて白く石灰のようになり崩れて残る砂。
植物が育つ上で必要な栄養とミネラルが豊富に含まれており、これを撒くだけで不毛な土地ですら大豊作が期待できる。植物にとっては肥料であると同時に優秀な土や堆肥や土壌改良材も兼ねており、実は砂だけの状況下でも植物は逞しく育つ。

・クリフォト教
なんでか生まれてしまった邪教。ミザリーを神と崇める悪魔崇拝者集団『緑の使徒(ヴェルト)』と協力関係を結んでいる。
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