DMC5のクリフォトの樹の実をオイチイオイチイしまくってたら人魔問わず全方位から警戒されまくってて草   作:美味しいパンをクレメンス

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初めての収穫、そして初めての──

クリフォトの実が完熟した。それに伴い、クリフォトから供給されていた養分が完全に停止する。

全身に巻き付き、点滴のようにあちこちに刺さっていた触手が役目を終えた為に抜け落ち外れていく。

クリフォトは最終段階に入ったのだ。あとは果実が収穫されるのを待つだけという状態に。

ならば俺が行うことは一つのみ。今すぐクリフォトの頂点に実った果実を収穫し、食らうこと。

 

「閻魔刀」

 

バリアーとしての役目を果たす為にトゲトゲした水晶体に姿を変えていた閻魔刀が、俺の声に呼応して本来の姿──黒い鞘に納められた刀に戻る。

続けて念じた。クリフォトの頂上、果実が成っている場所まで空間を繋げと。

すると見えない手に操られるように鯉口が切られ、鞘から抜かれた閻魔刀はその美しい刀身を晒しつつ目の前の空間を十字に斬り裂く。

閻魔刀にはいくつかの能力が存在し、空間や次元を裂いて穴を開けたりするのはその内の一つだ。それを応用して空間転移を行える。DMC5でもバージルが何度かやってた。

斬り裂かれた空間へと踏み入る。

DMC5だとクリフォトの樹の実がある場所というのは、樹の頂上であるのは確かだがそこは魔界の樹だけあって人間の常識が通用しない。クリフォトの樹の頂上は地下。地面の奥底だ。ムービーシーンで、ダンテが『頂上』と聞いて頭上を見上げたらトリッシュから『逆よ』と指摘されてるシーンがあったなぁ。

頂上が地下なら地上から真っ直ぐ上に伸びてる部分は何なのか? それは俺も知らない。ゲーム本編でも語られてない、気がする。もしかしたらギャラリーとか設定資料か何かで説明があったかもしれんけど、俺は覚えてない。

で、閻魔刀使って進んだ先は広い半球状の大きな部屋みたいな空間。その中心には、肉の塊を材料に使い前衛芸術的な感じの樹を作成してみた、と言われてしまえば納得してしまいそうな気持ち悪い樹が一本生えている。その樹には葉っぱが一枚も生えておらず、唯一あるのは一つの果実が成っていることだけ。

本来ならこの空間は果実が幻覚を見せるらしい。DMC5だとバージルの記憶から作られた『家族と幸せに暮らしていた家』の風景が映し出される。

それが奪われたが故に、彼は人として生きるのではなく悪魔として生きることを、力を求めるようになった。なんとも切ない話である。閻魔刀によってバージルから切り離された人間の心と体である『V』を主人公にしたコミックス『Visions of V』では、そこら辺のことを事細やかに描写されてて俺は読んでて涙がちょちょ切れたぞ。

俺には過去と言えるそれらしいもんがすっぽり抜け落ちてるんで、何の幻覚も見えないし映らない、薄暗いただのクリフォトの樹の内部が広がってるだけなんですがね。

閑話休題。

クリフォトの樹の実。人間の血を養分とし、たった一つだけ実をつける。口にすれば絶大な力が手に入ると言われる禁断の果実。

 

「ダンテが言った通り、クソ不味そうだな」

 

手を伸ばせば届く距離まで近づいてしげしげと観察する。

シルエットはリンゴなんだけど果実の表面から血みたいなの滴ってるし、全体的に赤黒いし、赤黒くない部分は何故か黄色に光ってるし、はっきり言って見た目はマジでクッソ不味そう!!

しかもデカい。どんくらいデカいかっつーと人の頭くらいデカい。バージルは一口で食べてたけど、あれ、ユリゼンの姿の時ってお前悪魔から巨人族になったのかってくらいにバージルがデカかったからなんだよ。具体的にはダンテ達が二段ジャンプしないと近接武器での攻撃が顔に当たらないくらい身長高くなってたし。

そうなると自然とクリフォトの実も相対的にデカくなる訳で。

これ食うのユリゼンの姿じゃないと今後面倒だぞ。

まあ、次以降もクリフォトの種蒔いてから果実が完熟するまではユリゼンの姿でいるつもりだけどな。

 

「ということで、実際に食べてみよう」

 

壊れ物を大切に扱うように両手で優しく果実を掴み、収穫する。それほど抵抗なく枝からプツンと外れたそれを今一度眺めてから口の中に放り込み、噛む。

 

「...........................噛む度に血の味がするリンゴ」

 

いや、もうそう表現するしないわこれ。果肉そのものはあんまり美味しくない安物のリンゴの味で、果汁が血の味するんですわ。そういえばバージルが一噛みしたら血が吹き出てたなこの果実。

口に入れた瞬間吐くほど超不味い訳でもなければ、死ぬほど不味いとかじゃない。食えるけど、ただただ普通に不味い、美味しくない、という感想しか浮かばない。薬だと思って食うしかない。

文句を垂れながらモッキュモッキュとよく噛んで、ごっくんと飲み下す。

 

「げっぷ」

 

一度に一個食うのが限界だ。二個も三個も同時に収穫できたら日を分けて食うことになるが、幸いクリフォトの樹は一度に一つしか実をつけないので安心だ。

 

「お?」

 

食い終わると同時に体に力が溢れていくのを感じる。どんどん自分の魔力が、強さが上昇していくのを実感した。

 

「おお!」

 

その早さ、クリフォトと融合し養分を供給されていた時より遥かに早い。まさに段違い、否、桁違いに強くなっていく!!

 

「おおおおおおおおおおおっ!!!」

 

歓喜に震えながら天を仰いで咆哮する。しない訳にはいかない。俺の中の力が爆発的に高まっていくことに対して、

 

「最高にハイッてやつだぁぁぁぁぉ!!」

 

ってな心境だから。

これは訂正しよう! クリフォトの実オイチイ! 凄く凄くオイチイ! 何個でも、いや、無限に食えるねこいつは!!

腕がドリルになったみたいに掌クルックルしていたら、ゴゴゴゴゴという地響きと共に地面が揺れているのに気づいた。

 

「じ、地震?」

 

次第に地響きと揺れは強くなる。

見渡せば実が成っていた樹は白く石灰のようになったかと思えばボロボロと崩れてしまった。

それはDMC5で見たことがあった。クリフォトの樹がダンテ達の攻撃などで一部破壊されると、その部分が白くなって石灰のように脆く崩れ去る光景を。

 

「樹が枯れてる!?」

 

確かに俺個人としては果実を食ったら樹に用はないし、これ以上は周囲の迷惑(今更)だからとっとと斬り倒そうと思ってたけど、果実もいだら一分も経たずに枯れんのやめてくんない!!

部屋全体は既に白く石灰と化して皹が入り崩壊寸前といった様子だ。

くどい話だがクリフォトの樹の頂上とは地下。一番深い場所なので、このままじゃ生き埋めになる。

 

「や、や、閻魔刀ぉぉぉぉ!!」

 

俺の慌てた声に応じた閻魔刀が空間を斬り裂く。

あー、ホント最初にレッドオーブを捧げて入手した武器が、空間転移に応用できる閻魔刀で良かった。

 

 

 

閻魔刀のお陰でなんとか無事に脱出した俺は、樹が枯れて崩壊し、それによって山のように積み重なった残骸の前で安堵の溜め息を吐く。

ビビった。果実食ってハイテンションになってたのに一瞬で頭冷えたわ。今後は果実もいだら即離脱することにしよう。

頭が冷えたついでに思考を切り替える。いつまでもユリゼンの姿でいる必要はないので一番最初の人の姿に戻る。

戻ったら戻ったで全裸人間一丁上がりなので、早急に服を用意する必要があった。

DMC5のトリッシュみたいに魔力で服を構成できないかな、と思って試しに脳内でイメージしたら簡単にできてしまったのは嬉しい誤算。

今の俺の装いはDMC3のバージルの服装をしていた。なお、色は青ではなく赤。バージルでプレイしてる時に戦うボス敵バージルの色なのだ。所謂格ゲーの2Pカラー、同キャラ対決時の相手の色である。

 

「さて、とりあえず」

 

これからどうするのか方針を決める前に、やるべきことがある。

ユリゼンの姿ではできなかった、ずっとお預けを食らっていたあれが、今、人の姿に戻ったことで漸くできる。

それは、

 

「閻魔刀」

 

入手した武器をとりあえず振り回す、DMCシリーズお馴染みのシーンの再現だ。

呼び声に応じて手の中に顕れる日本刀の形をした魔具を握り、俺は笑みを浮かべた。

嗚呼、これ超やりたかった! でもユリゼンモードで玉座に座ってる間はやりたくてもできなかった。だから今この場でやるんだよ(使命感)!!

ちなみに閻魔刀の技は全て取得済み。強化はしてないので全部レベル1みたいなもんだが、それはこれから上げていけばいいのさ。

居合いの構えから鯉口を切り、抜刀。

目前のクリフォトの樹の残骸が斜めに斬り裂かれる。

うん! 体はイメージ通り動いてくれる。それが更に俺を興奮させた。

一太刀では終わらない。片手で何度かそのまま振り回してから、両手に持ち変えて更に何度も振り回す。その後一度納刀し、再度居合い斬りを放つ。

それから暫くの間、何度も何度も刀を振った。記憶の中にあるゲーム内での動きを自身の肉体で再現できることに涙が出そうなほど感動しながら。レッドオーブを捧げて得た技を、ムービーシーンであった動きを、妄想の中だけだったものも一つ残らず実際に試してみて、それが実現可能であることを確認し狂喜して、飽きることなく時間も忘れて動き続けた。

 

「あ」

 

気がつけば、目の前にあったはずの残骸の山が綺麗に消し飛んでいた。どうやらはしゃぎ過ぎたらしい。

まあ仕方ないよね。通過儀礼で様式美だよこんなの。スパーダの血族は新しい武器を手にしたらはしゃいでその場で振り回す、テストにボーナス問題として絶対出るからな。

血振りするように刀を一度振り、刀をくるくる回してから背中に回した鞘──鯉口が上になるよう垂直に持って納刀。チン、と小気味いい音が立つ。DMCファンからは背面納刀と呼ばれる、やたらカッコいいけどよく考えてみたら『なんで背中で納刀するん?』と首を傾げる納刀方法だ。全く以て実戦的じゃない背面納刀だが、敵を皆殺しにしたらいくらでもカッコつけていいんだよ! この一連の動きがカッコ良過ぎて脳汁出まくりだからこれでいいんだよ! DMCファンはそれがスタイリッシュなら野暮なツッコミはしない、いいね?

よし、ある程度は満足したし、これからどうしようかな?

まずは人里とか、人間が暮らしてる所で情報収集でもするかな。この世界のこと、来てから一ヶ月は経ってんのに何も知らないのヤバいし。

あれだけ人間殺しといて何考えてんだって話しだけど、別に俺は人類滅ばしたい訳じゃないし、快楽殺人者って訳でもない。確かに戦場の死体を利用させてもらったが、その後に問答無用で襲いかかってきたのはあっち。俺がやったのは殺意に対して殺意で返しただけ、売られた喧嘩を買っただけ。血祭りヒャッホーしてたのは事実だが、あれは殺しを楽しんでいたんじゃなくて強くなることが楽しかったんだ!! 苦しい言い訳だがつまりは、俺は悪くねぇ! 俺は悪くねぇ!! あ、そういえばこの台詞が出てくるゲームも何の因果かクリフォトって単語が出てくるっけ。

とにかく動こう、何処に行けばいいのか分からんが。

そう考えて辺りを見渡した瞬間、遠くから何かが近づいてくる気配を感じた。

こちらに近づく速度はとてつもなく速く、その気配から察せられる力量はとてつもなく強大だ。

一瞬、早く逃げなくてはと考えるが、逃げてどうするのか、本当に逃げられるのか、逃げても無駄だと判断し待つことを決める。

数秒後、少し離れた場所にそいつは音もなく優しく降り立った。

鮮血のような美しい赤い長髪と、髪と同じ色の赤い瞳を持つ、整った顔の成人男性の姿をした人物。しかし外見は普通の人間に見えてもその身から放たれる存在感と魔力は凄まじい。

何よりもその気配と匂いが、この男が俺と同族であることを本能的に理解し、確信させる。

悪魔。この世界の、俺が初めて出会う人間以外の存在。

つい閻魔刀の鞘を握る左手の力が強くなり、逆に右手はいつでも抜刀できるように力を抜く。

赤い男が口を開いた。

 

「よう。俺は『ギィ』。お前は?」

 

良く言えばとても気さくな感じで、悪く言えば馴れ馴れしい、まるで久しぶりに会った友人に対する口調で名を名乗りこちらの名を聞いてくる。

紳士的なのか、緊張している俺とは対照的に余裕があるのか、それともこれが素なのか、いまいち分からないが俺は彼から底知れぬ力を感じていたので警戒を緩めぬまま答えようとして、固まる。

俺の名前、どうしよう?

前世の......前世? ホントに前世か? とにかくオタク知識&現代知識の源である過去の俺の名前は思い出せない。まあ、この際それはいい。覚えていたとしても日本人ちっくな名前はこの姿に似合わないのでどちらにせよ名乗るつもりはない。

となると自分で考えるべきなのだが、DMCに関連する名前にはしたいものの、ダンテとか主人公達の名前を頂戴するのは流石に気が引ける。

どうする? とりあえず名前はまだないって答えておこう。

 

「......俺に名前はない」

「名無し? 本当か? それだけの力を持っていながら未だに名無しとは信じられねぇな。受肉はしているようだが......お前はどの系統だ?」

「受肉? 系統? 何の話だ?」

 

なんだか理解が追いつかない。思わず聞き返してしまうと、ギィは訝しげに首を傾げてこちらを睨んでくる。

俺の返答が悪かったらしいが、なんでそんな態度されるのかマジで分からん。まず名前なんてあっても無くてもどうでもよくね? 受肉って悪魔は現世で活動するには肉体が必要っていうあれ? 系統ってそもそも何のこと? 分からんことだらけでこっちも首を傾げてしまう。

 

「なら質問を変えるぜ、クリフォトの樹はどうした? さっきまでここにあったはずの、人間の血を吸う樹だ」

「......」

 

どう答えようか迷って、あることを悟り答えず黙った。きっと俺が何を言っても無駄だ。こいつの目的は、最初から俺だったのだから。

 

「配下が集めた情報によると、一ヶ月前に突然ここに巨大な樹が生えてきた。樹の名前はクリフォト。人間の血を吸う悪魔の樹。内部には樹の主たる悪魔がいて、自分を討伐しようとした人間達を一部を除き片っ端から始末していたらしい」

「......」

「それが今じゃ影も形もねぇ。その代わりお前がいた。一ヶ月前から、クリフォトの樹が生えてきてからずっと感じてた妖気(オーラ)と同じものを放つお前が」

「単刀直入に言え。何が言いたい」

 

遠回しな言い方に少し苛ついてきたので促しながら覚悟を決める。俺が気配と匂いでギィが悪魔だと察したように、ギィも俺の妖気(オーラ)とかいうので個人を特定できている。つまり言い逃れや誤魔化しが意味を成さない。

故にギィが俺に害意を抱いているならば、全力で対処するまで。

 

「もし仮に俺がクリフォトの樹の関係者だとして、貴様はどうするつもりだ? 配下になれとでも言うつもりか?」

「ハッ、話が早くて助かるが、その前に俺はお前を色々と試したい」

 

嬉しそうに獰猛な笑みを見せてからギィの気配が膨れ上がり、俺が閻魔刀を召喚するのと同じように一振りの剣を手にし、全身の肌がビリビリするほどの敵意がぶつけられる。

好戦的な奴だなと思いつつ、応じるように腰を落として居合いの構えを取った。

 

「奇遇だな。実は俺も()()試したいと思っていた」

 

緊張はしている。だが恐怖はない。むしろ興奮、高揚していた。

間違いなくギィは強い。人間達を相手にしていた時のような一方的な蹂躙とは異なり、必ず苦戦するだろうし激戦となる。そんな予感がした。

死ぬかもしれない命のやり取りの、真剣勝負。生まれて初めて──そして前世でもあり得なかったはずのシチュエーションに俺は期待せずにはいられない。

今の俺がどれほどのものなのか興味が尽きない。沸き上がる闘争本能が目の前の存在を叩き潰せと叫ぶ。

戦え、闘え、手にした力を思う存分行使しろと、まるで魂が言ってくるかのようだ。

 

「いくぞ、ギィ」

「来いよ、名無し」

 

それが開始の合図。

彼が応じた瞬間、俺は全力で踏み込んで刹那に間合いを詰めると居合い斬りを放つ。

その場から動かずギィは俺の斬撃に合わせるように片手で剣を振るう。

刃と刃が激突し、轟音を伴って衝撃波が発生。

俺の閻魔刀とギィの剣越しに互いの視線が交錯した後、示し合わせたように同じタイミングでバックステップを踏んで間合いを離す。

俺にとって初めての、本当の戦闘が始まった。

 




主人公、まだ名無し。武器は閻魔刀のみ。魔王種としては未覚醒。デビルトリガーは条件を満たしていない為使用不可。クリフォトの実が完成するまでエネルギー供給を受けた(1回目)。クリフォトの実を食べた(1回目)。

対するギィは既にネームド。受肉済み。魔王種としては覚醒済み。ヴェルダナーヴァとはまだ会ってないのでユニークスキル『傲慢者(プライド)』を持っていない。ルドラともまだ会ってないので『クリムゾン』と名付けられてない。
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