DMC5のクリフォトの樹の実をオイチイオイチイしまくってたら人魔問わず全方位から警戒されまくってて草 作:美味しいパンをクレメンス
目が覚めると、一年前に一ヶ月間飽きるほど見たクリフォトの樹の内部──玉座の間にいた。
なんとか生き延びたことに安堵の溜め息を吐き、そこで漸く玉座に座る俺の眼前に跪く六体の悪魔に気づく。厳密には跪いているのは三体で、残り三体は犬や猫などの四足獣の『伏せ』なのだが。
跪く三体はヒューリーという悪魔。『5』に登場し、見た目は赤い体表のリザードマン。瞬間移動かと思うほど動きがアホみたいに速く(実際目の前から消える)ゴリ押しでは絶対に攻撃が当たらない、シリーズファンからは蛇蝎の如く嫌われていた敵キャラ。その攻略法はヒューリーが攻撃してきたらそれを近接攻撃で弾いて隙を作り殴ってダウンさせてから高火力を叩き込み一気に体力を削ること。はっきり言って敵に回すとクッソ面倒だが、味方だと頼もしいと思う。有象無象の人間相手なら倒される心配しなくていいしね。
『伏せ』をしている残りの三体がシャドウ。その名の通り肉体が実体のない影の悪魔。初登場は『1』、『5』にてなんとまさかの味方キャラとして再登場。基本的には黒豹の姿をしているが、移動や攻撃の際はその影の体を変幻自在に変形させるバリエーションが多彩な奴である。こいつも戦う時はかなり面倒で、近接攻撃を行うと魔力の槍をカウンターとして飛ばしてくる(ゲーム最高難易度だと近づくだけで飛ばしてくる)。その為弱点の核を露出するまで遠距離から銃器で攻撃し、核が出たら地面からの槍攻撃に注意しつつ殴り、一定のダメージを与えると自爆モードに移行するので勝手に爆発するまでひたすら逃げる、という倒すまでが面倒なので可能なら相手にしたくない敵キャラだった。
そんなシリーズファンからは『クソ敵キャラ認定』された悪魔達に問う。
「俺が寝てからどのくらい経過した?」
すると、三日です、という思念が届けられた。
こいつ、直接脳内に!? とネタに走りたい衝動に駆られるが話が進まないので更に問う。
「あの時戦場にいた人間の殲滅は?」
──ご命令通り、完了しております。
「その三日間でクリフォトの樹に侵入者はいたか?」
──いいえ、誰も来ていません。
もたらされた情報にそんなもんかと頷く。大規模な戦場に突然出現したクリフォトの樹。戦場からは誰一人として帰らない。樹が発生してからまだ三日。人間の軍なら斥候を送って遠くから様子を見る、くらいはしているだろうがいきなり内部に侵入させるような無謀なことは流石にしないだろう。
島津なら次の日には来そうだけど、あれは日本の歴史が生み出した戦闘民族だから。人の形をした妖怪首置いてけだから。
──妖怪首置いてけは主様も該当するかと。
「喧しいわ!!」
真面目な口調で届く思念に思わず突っ込みを入れてしまう。
「......とにかく、ご苦労だった。もう帰っていいぞ」
──はっ、またの召喚を心よりお待ちしております。
そう言い残し、六体の悪魔はその肉体を霧散させて消える。
おっ、こいつら召喚した時に使ったレッドオーブがホントに返ってきた。ありがてぇ、ありがてぇ。使い勝手がなかなか良さそうな新スキルで助かるなー。
一人になった玉座の間で溜め息を吐いてから、これからどうしようか考えを巡らせることにした。
その後、散発的に人間の軍が討伐にやって来たので適切な処理の下養分にし、取得したレッドオーブで『時空神像』から何を購入しようか悩む日々。
軍以外にも俺を討伐しに来たハンターと思われる数人のパーティが何組もいたが、幸か不幸か顔見知りは誰一人としていなかった。
で、特に何事もなく一ヶ月が経過し実が成ったのでとっとと収穫してその場で食って樹を枯らすと、とっととトンズラこくことに。
拠点にしている街にはすぐには帰らず、増大した力に体と感覚を慣らしながら諸国を巡る旅行に洒落込む。
いや、だってすぐに帰ったら「あいつクリフォトの樹があった時だけいなくね?」って変な邪推されんのヤじゃん。それに折角の異世界なんだからあっちこっち行ってみたいし。ということであと一ヶ月間は戻らないぞと心に誓い、気が向くままに風が吹くままに旅を楽しむことに。
様々な土地に赴き、色々なものを見て、聞いて、食べて、学んで、たまに行く先々で魔物退治をして人々から感謝されて、充実した旅行の日々を過ごして一ヶ月。
ソロモンよ、私は帰ってきた!! と心中のテンションとは大きく異なる静かな態度で馴染みのギルドの建物に足を踏み入れる。
と、
「う、そ......ギルバ、さん?」
「久しいな」
そうだよ、ギルバさんのお帰りだよ! お土産いっぱいあるから期待してね! と思って施設内入ったら、なんか受付嬢達の態度がおかしい。まるで信じられないと言わんばかりに目を見開き、それから幽霊を見るような目でこちらを見つめてから、癇癪を起こした子どものように泣きながら口々に叫び出す。
「ギルバさん、ギルバさん、よくご無事で!」
「誰かギルマス呼んできて! ギルバさん生きてた! 帰ってきたって伝えて!」
「うわああああん! ギルバさんのバカぁぁぁぁ! もうとっくに死んじゃったと思ってたよう!!」
え? 何この反応? 死んだと思われてたの俺?
「ギルバァァお前この野郎! 心配させやがって!!」
「流石のギルバも今回はダメかと思ってたぜ」
「だから言ったろ。こいつなら必ず無事に帰ってくるってな」
「お、俺は全くこれっぽっちも心配してねーからな!」
他のハンター達も一安心したとばかりに言いながら歩み寄ってきた。
「ギルバが帰ってきたのは本当か!?」
血相変えて奥から飛び出してきたのはギルドマスターだ。俺の顔を見た瞬間、ほろりと涙を零しつつ呟く。
「バカ野郎、無事なら無事と連絡の一つでも寄越せ、この問題児め」
詳しい話を聞かせてもらうと。
俺が旅立ってから暫くしてクリフォトの樹が出現したという情報を得たハンターズギルドは、クリフォトの樹の除去と内部に潜む悪魔の主を討伐するという依頼を、全て断るという方針を取っていたんだとか。
前回の出現の際、所属していた凄腕ハンターのほとんどが帰らぬ人となり、僅かに生き残った者(俺があえて逃がした女性ハンター)も引退。ギルドとしては依頼は達成できないし、ベテランは軒並み失うしで良いことが何一つなかった。それ故に今回はクリフォトに挑戦すること自体を厳禁とした。
が、旅に出ると言っていなくなった俺が、クリフォトの樹が枯れて一ヶ月経っても帰ってこない。
まさかギルドを介さない討伐依頼を受けたか、もしくは個人的な理由で一人で討伐に向かい、返り討ちにあったのではないか。
そう思い込んでいたところに俺がひょっこり帰ってきたから、先ほどの大騒ぎになったのだという。
いやー、心配してもらって申し訳ないけど、そのクリフォトの主が俺だから要らぬ心配なんだよねー。こんなマッチポンプ仕込むつもりなかったんだけど。
「で、結局お前さん、クリフォトの樹に挑戦したのか?」
ずっと気になっていたのか質問してきたギルドマスターだけでなく他の皆も一斉に身を乗り出してきたので、一歩引きながら俺は嘘を並び立てることにした。
「挑んではみたが、あれは無理だな。逃げ出すだけで精一杯だ」
「そうか、お前さんでも勝てないか」
「ギルバさんが勝てないなら誰がやっても無理ですね」
「くぅぅ! 『首狩り剣士ギルバ』でも樹の主には勝てねーとか、どんな化け物だよ!!」
とりあえず俺でも無理だと分かれば、今後またクリフォトの樹が出現してもこの人達は関わろうとしないだろう。それでいい、それでいいのだ。クリフォトの養分にする為に人殺しを嬉々として実行する俺ではあるが、知人を容赦なく殺せるかと問われればやりたくないとしか返答できない。
勿論、天秤が傾くのはクリフォトの成長だ。それは何よりも優先される。しかし、俺は前回も今回も討伐しに来た連中の一部はわざと見逃していた。前例を作っておけば、もし知人がやって来たとしても追っ払うだけでいい。確かにクリフォトの成長に人間の血は必要だが、必要な量は万人単位。しかもその数は種を撒く時点で既に揃っている。なので後から追加で来た数人分を見逃した程度で支障はない。
「皆、聞いてくれ。ギルバでも討伐に失敗した以上、クリフォトの樹に関わるのは百害あって一利なしだ。どれだけ金を積まれようと、たとえ国王からの正式な依頼や命令だろうと我々は絶対に受けない。命あっての物種だ。このハンターズギルドに所属する者はクリフォトに関わるのを厳禁とする、もし関わろうとした場合は登録を抹消するのでそのつもりでな」
厳かに告げるギルドマスターの言葉に野次が飛んだ。
「ギルマスに言われるまでもねぇ!」
「誰が行くかよあんな化け物の樹に!」
「軍が数万単位で食われてんだぞ!!」
「名声なんてクソ食らえだ!!」
「あんなの災害と同じだ災害と! 人間の手に負えねぇよ!!」
ハンター達のごもっともなご意見にギルマスは満足気に頷く。
ま、放っておいても一ヶ月程度で枯れるしな。関わらないのが一番が正解である。
「一つ、追加で情報がある。奴の名だ」
俺の発言に「......やはりネームドか」と色めき立つが構わず続けた。
「奴の名は『ユリゼン』。クリフォトの主、『ユリゼン』だ。覚えておけ」
こうしてこの世界の歴史に俺の悪名が刻まれるのであった。
それは、『首狩り剣士ギルバ』の名声なんぞとは比較にならないくらいに誇らしく嬉しい瞬間であった。
うーん、しかし一つ問題が浮上してしまった。
今後クリフォトの樹を使うにあたって、毎回毎回数ヶ月間も『ギルバ』が不在だと、「あいつクリフォトが現れる時期にいつも旅に出るな」とか言われてしまうことが可能性として考えられる。考え過ぎ、自意識過剰、被害妄想乙、と断じられて笑われそうであるが、アリバイを用意できるようになるに越したことはないと思う。
ということで何か良いアリバイ工作及び解決方法がないか模索していて白羽の矢が立ったのは、『ドッペルゲンガー』だ。
簡単に言えば分身の術。自身のコピーを一体だけ作り出す能力で、初登場は『3』。同名の敵悪魔をダンテが倒すことで手に入る能力にして、『5』ではバージルが使用する形で復活。戦闘以外にも普段の日常生活から俺の代わりとして問題なく運用できるようになれば凄く便利なのではないかと。
よし決めた。これから暫くの間はドッペルゲンガーを取得し訓練に励むようにしよう。
何もクリフォトの種を撒いて実がなるまでの一ヶ月間を全てドッペルゲンガーで切り抜ける訳じゃない。それはいくらなんでも難しい、ていうか無理。魔力が持つか怪しいことこの上ない。
俺にはバイクや瞬間移動や空間転移といった移動手段があるのはギルドの誰もが周知の事実として認識している。そこを逆手に取って、人前に出る必要がある時だけドッペルゲンガーを送り込めばいい。ドッペルゲンガーが次の瞬間にはいなくなっていたとしても、「あ、ギルバさん転移したんだな」としか思われないはず。
本体がクリフォトと融合している一ヶ月間、ドッペルゲンガーがちょくちょくギルドに顔を出して仕事をいくつかこなす、それで十分のはずである。
だいたい、俺はソロで魔物や犯罪者の討伐しか受けない。護衛任務などと異なり長時間人前に姿を晒す必要性が皆無。ドッペルゲンガーが人前にいる時間など最低限でいいのだ、最低限で。
バトルオンリーのゲーム内と異なり、日常生活においてドッペルゲンガーは非常に有用だということが早々に分かってしまった。
単純にもう一人自分が増えるのだ。それだけであらゆる面でできることが増えたり、時間短縮に繋がったりするというもの。
何よりも素晴らしいのが、本体である俺とドッペルゲンガーは常にリンクしており、たとえ距離が離れていようとドッペルゲンガーの状況が分かり、見聞きしたものをリアルタイムで把握できること。こちらの指示にも即時対応してくれること。そもそも『自分の影』なので指示がなくても臨機応変に動いてくれること。そして戦闘能力はオリジナルの俺と同じであること。
「......なんでもっと早くドッペルゲンガー取得しなかったんだろ」
あんまりにも有能過ぎて喜ぶ前にこの能力を今まで有効活用できなかった事実に悲しくなったぞ。
頭を抱える俺の肩をドッペルゲンガーが優しく叩きながら仕方ないさと言わんばかりに首を横に振る......なんで自分の能力に慰められてんだ俺。
しかし打ちひしがれていても時間は戻らない。前を向こう、前を。
とにかく、これならクリフォトの樹を出現させても支障がないと証明された。アリバイ工作もバッチリ。後顧の憂いを断つことができてめでたしめでたし。
問題があるとすれば二十回に一回の頻度で、ドッペルゲンガーが顕現した瞬間から命令を一切受け付けず勝手に踊り始めるくらいか。たぶん、この能力における仕様なのだと思う。『5SE』でもバージルの挑発にそんなのがあったし。もうそういう時はドッペルゲンガーの気が済むまで踊らせてあげている。躍りの内容がマイケルだったりブレイクダンスだったりパラパラだったりと毎回違うのがむしろ面白かったりして和むし、躍り終わると満足したのかその後はちゃんと命令通り動いてくれるし。
こうして俺は、表では魔物の退治を生業とするハンター『首狩り剣士ギルバ』としての顔で人間社会で堂々と生活しつつ、裏では『クリフォトの主ユリゼン』としての顔で人間同士の戦争に乱入し、人間を養分にする為に殺戮を繰り返していた。
そんな二つの顔を使い分けて暮らす日々を送っていたらあっという間に数年経過していて、いつしか『ハンター』は『冒険者』、『ハンターズギルド』は『冒険者ギルド』と呼ばれるようになっていた。
ある日。
『冒険者ギルバ』としての盗賊団殲滅の仕事が片付いたのでギルドに立ち寄り依頼完了の報告をしていたら──
「よう、久しぶりだなユ、ギルバ! 元気してたか?」
赤毛と赤目が特徴的な美丈夫にして悪魔であるギィが、美女三人を引き連れて来訪してきたのだ。
......久しぶりだけど連絡もなしに急に何しに来たの?
とりあえず、この場で俺のことを『ユリゼン』ではなく『ギルバ』と呼んでくれた気遣いに感謝し、ギィへと向き直った。