DMC5のクリフォトの樹の実をオイチイオイチイしまくってたら人魔問わず全方位から警戒されまくってて草   作:美味しいパンをクレメンス

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お前も魔王にならないか?

「場所を移そう」

「ああ」

 

ギルド内では色々と都合が悪いと考え提案すればギィは文句言わずに頷いてくれるので、閻魔刀の鯉口を切り抜刀してから目の前の空間を十字に斬り裂く。

閻魔刀の能力により空間に穴が開き、空間転移が可能となる。そこに俺が閻魔刀を納刀し踏み入れば、ギィと美女三人が追従。

転移先は当然ながらギルドの外。俺が拠点にしている街のすぐそばにある山の頂上。そこから街を一望できる景色が良い場所であり、俺が鍛練などでよく利用する場所でもあった。

 

「ここなら人はいない。話を聞こう」

 

振り返り促せば、ギィは「まあ待て」と言ってから三人の美女の内メイドの格好をしている二人に視線を飛ばす。

二人のメイド──青い髪の女性と緑の髪の女性は恭しくお辞儀をすると、青い髪の方が恐らく魔法か何かで何処からともなく円形のテーブルを取り出し、緑の髪の方が白いテーブルクロスを取り出しテーブルにかける。それから二人はテキパキとした動きで(やはり魔法を使いながら)三人分の椅子、ティーセットと焼き菓子を用意し、ティータイムの準備が完了した。

準備が整い次第ギィが勝手に椅子に座り、三人の美女の内最後の一人──白髪の美女がその隣に座る。

 

「ユリゼン様もどうぞこちらに」

 

緑髪のメイドがギィと白髪美女の対面に座るよう促すので俺は促されるまま座ることに。

俺が座るのを見届けて、二人のメイドはギィの背後に控えるように立つ。

 

「では改めて。久しぶりだな、ユリゼン」

「ああ。久しいな、ギィ」

 

紅茶と焼き菓子の良い香りを嗅ぎながら、やり取りはとても穏やかに始まった。

 

「突然の来訪には驚いたが、どうした? 絶世の美女を三人も引き連れて。お前と共に来たのであれば勿論紹介はしてくれるんだろう?」

 

来訪目的が「こいつら全員俺の女だ! 羨ましいだろ!」とかいうただの自慢だったら熱々の中身がまだ入っているティーカップでぶん殴ってやると密かに心に誓う。

 

「あら、お上手ですこと」

 

クスリと笑みを浮かべる白髪の美女は、優雅な仕草で紅茶を一口飲むとティーカップを置いてから立ち上がる。

 

「私はヴェルザード。以後、お見知りおきを」

「ギィ様の忠実なる下僕、ミザリーと申します」

「同じくギィ様の忠実なる下僕、レインと申します」

 

美女三人が丁寧にお辞儀をしてくるので俺も立ち上がり軽く頭を下げた。

 

「クリフォトの主、ユリゼンだ。訳あって人間社会でギルバと名乗っている。気軽にユリゼンと呼んでくれて構わないが、事情を知らない者がいる場合はギルバと呼んでくれ」

 

言って着席。三人は頷き、白髪の美女──ヴェルザードも着席する。

緑髪のメイド──ミザリーと青髪のメイド──レインは立ったままだが服装の通りメイドらしいので気にする必要はないな。

折角用意してもらったのだから紅茶と焼き菓子を堪能しよう。

 

「......ふむ、どちらも美味いな。素晴らしい」

 

両方共恐らく最高級と思われる品質に違いない。香りも良い、味も良い、後味も良い。だが何よりも用意してくれた二人の腕が良いのだ。故に最高に美味いのだと分かる。

俺の視線を受けて僅かにメイド二人の顔が綻び、会釈する程度に頭を下げた。

 

「ギィ、少しは見習って。この紳士ぶりを」

「俺が紳士じゃないとでも?」

「......ハア」

 

ヴェルザードが肘で隣のギィを小突くが彼は動じないので、彼女はこれ見よがしにクソでか溜め息を吐く。今ので二人の関係を垣間見た気がした。

それから俺とギィは互いに、あの別れからどうしていたか話し合う。

俺が人間社会に紛れ込み人間のハンター(今は冒険者)として生活しており、これまでどんな日々を送っていたかの経緯は向こうは概ね知っていたようだ。彼はかなりの数の配下がいるらしく情報収集の一環で調べさせることもあれば、彼自身が娯楽として人間社会に様子を見に来るとのこと。

で、俺の話は一旦置いといて彼の話に移るのだが、彼は彼で結構色々あったようだ。

まず、この世界を作った神──星王竜ヴェルダナーヴァと出会い、勝負を挑んでボロ負けしたんだと。

いや神って何だよ? とこの世界に来たばかりの俺なら笑い飛ばす内容だが、今の俺は信じるに値すると思っている。マジでこの世界は剣と魔法のファンタジーだから、悪魔も天使も精霊もエルフもドワーフもドラゴンも獣人も吸血鬼もそれ以外の多種多様な種族が存在しているのを知っている。そりゃそんな世界なら神様の一人や二人くらいいてもおかしくない、と半ば諦めの境地である。神様なら俺がこの世界に来たことについても何か知ってたりするんだろうか?

んで、その神様ってのは竜種というドラゴンの祖先みたいなもんで、竜種と呼ばれる存在はこの世界で四体のみ。

その内の一体(神様)に喧嘩を売ってボロ負けして友情が芽生えたので、それ以来神様から頼まれた『調停者』という仕事に勤しんでいるとかなんとか。『調停者』とは『魔王』として世界に君臨しつつ、世界が崩壊しないように、人類が絶滅しないように上手いことやっていく役目、と彼は誇らしげに笑う。が、俺には話のスケールが壮大過ぎてとてもやってられん仕事だ。いくら神様からの頼みだからってそんな面倒臭そうなことによく首を縦に振ったなと思う。

ちなみにヴェルザードはヴェルダナーヴァの妹で、兄に認められたギィを試す為に喧嘩を吹っ掛けたのが二人の馴れ初めだという。

確か少し前に天変地異が起きたり、大陸全土で年間の気候が変になって以来戻らなくなったり、気になって調べてみたら地軸がおかしくなってたりなことあったな。あれ全部お前らのせいか。

なお、この世界を創造した神である星王竜ヴェルダナーヴァには二人の妹と一人の弟がいる。

一人目の妹が目の前にいる白氷竜ヴェルザード。人の姿をしているが、本当の姿は竜とのこと。

二人目の妹が灼熱竜ヴェルグリンド。

最後の弟にして末っ子が暴風竜ヴェルドラ。

実はヴェルドラと遭遇したことはないが、その名前だけはハンター時代からたまに耳にしていた。よく暴れては酷い被害を出す生きた天災扱いで、人間の誰もが自分の住んでる国に、街に、村に来んなと思っていることもよく知っている。ある意味、戦争が勃発すると戦場に乱入してくる俺『クリフォトの主』とどっこいどっこいなくらいに畏怖されてたり。まあ、俺は主に王族や貴族や軍関係者などの政治及び戦争に直接関わる者達から、ヴェルドラは人類全体からという違いはあるが。

ヴェルドラ以外の名をあまり聞かないのは、単に他の三体が無駄に暴れたりしないからだ。

 

「とまあ、俺の話はこんなもんだ」

 

語り終えたのかギィはティーカップに手を伸ばす。

俺よりも遥かに濃い日々を送っていたのだなぁ、と思わせる話に苦笑し俺もティーカップに手を伸ばし紅茶を飲み干す。

直ぐ様レインが動き紅茶のお代わりを用意してくれたので「ありがとう」と礼を述べると、ギィがティーカップを置いて少し前のめりになって口を開く。

 

「ユリゼン、お前も魔王にならないか?」

「......」

 

話の流れからなんとなく、そんなことを言われるんじゃないかと予想はしていた。いや、むしろ本題はこっちに違いない。

 

「理由を聞いてもいいか?」

「いくつかある」

 

質問にギィは返答する。

まず、最大の理由がユリゼンとしての活動とギルバとしての活動が『魔王』の仕事に合致すること。無辜の民を守りつつ増長した愚かな一部の人間を粛正する、というのがいかにも『魔王』だと映るらしい。

次。『魔王』は人々から畏怖される存在でなくてはならず、ある程度の強さが必要であること。これに関しても俺は問題なし。『クリフォトの主、ユリゼン』の評判は文句の付け所がないと言う。

最後に、俺とは気心知れている仲であること。仲間にするなら気が合う者がいいとか......最後の理由だけやけに可愛いな。悪魔なのに随分と人間臭い男だ。

もうあれだ、この世界の悪魔とDMCシリーズの悪魔を同じ悪魔と見るのはやめよう。同じカテゴリーの別種族だということで納得しよう。だってDMCに登場する悪魔、極一部を除き見た目が完全にモンスターだしな。しかもどいつもこいつも破壊と殺戮しか考えてない、まさに文字通りの化け物共。理性と知性がありコミュニケーションが取れるギィ達とは全く別な存在だ。

しかし魔王か。俺の脳内でDMCシリーズの『魔王』達が浮かんでは消えていく。『魔帝ムンドゥス』、『覇王アルゴサクス』、前の二名と同格とされる大悪魔『アビゲイル』、そして俺の名前の元ネタである『反逆王ユリゼン』(バージル)。

うん、どいつもこいつも最終的にダンテにボコられた連中じゃねーか!!

ついでにスパーダの力を手にして『神』になろうとしたクソオブザクソ野郎な人間二名も何故か一緒に思い出す。

DMCシリーズにおいて『魔王』や『神』を名乗ることは後にボコられるフラグでしかないんだよなぁ。

そう考えると『魔王』になるのは気が進まない。以前の『世界の言葉』から察するに俺が魔王として覚醒進化を果たしていようとも、だ。

そこで俺はハッとなる。良いことを思い付いた。

 

「そういえば、お前とはまだ決着がついていなかったな」

 

突然脈絡なく話を変えた俺の意図に気づいたギィの顔が好戦的にニヤつく。

 

「いいぜ。そういうことなら、決着といこうか?」

 

和やかなお茶会の雰囲気が変わる。闘争の気配が醸し出され空気がピりつく。

ミザリーとレインが素早い動きでティーセットと焼き菓子を載せた皿とテーブルクロスを片付けて下がり、ヴェルザードがゆっくりと立ち上がってから跳躍してその場を離れる。

残されたのはテーブルと三つの椅子、睨み合う俺とギィ。

奇しくも計ったようなタイミングで俺とギィは同時にテーブルを真上に蹴り上げた。

空高く舞い上がるテーブルになど目もくれず閻魔刀の鯉口を切り抜刀。ギィに斬りかかり、彼もいつの間にか手にした剣で応じる。

甲高い金属音が響く。一度や二度では終わらない。何度も何度も刀と剣がぶつかり合い、交錯し、鎬を削り合う。

発生した衝撃波の余波で三つの椅子が消し飛ぶが気にしない。

俺とギィとの間にテーブルが落下してくるが構わず斬り結び、超高速で振るわれる刀と剣の間に割って入ったことでテーブルが一瞬にして原形を失い木屑と化す。

やがていくつもの剣戟の果て、鍔迫り合いとなり至近距離で睨み合いになった。

 

「前より随分力をつけたじゃねーか、ユリゼン!」

「それはお互い様だろう、ギィ!」

「当然だ! ヴェルダナーヴァと出会ってユニークスキル『傲慢者(プライド)』を手にし、それがヴェルザードと喧嘩して究極能力(アルティメットスキル)傲慢之王(ルシファー)』にまで進化したからよ!!」

「ベラベラとよく喋る! 自慢か!?」

「お前はどうなんだって聞いてんだよ!!」

 

互いに後ろに跳んで距離を離す。

 

「俺か? 俺は......」

 

俺にはギィのような出会いとそれによる強化イベントには恵まれなかったが、勿論何もせずに漫然と過ごしていた訳ではない。

彼と初めて出会って以来、俺は何度クリフォトの種を蒔いただろうか?

樹を育てる為に一体何人の血を樹に吸わせただろうか?

これまでどれほどのエネルギーを樹から供給され、いくつ果実を食っただろうか?

どれだけのレッドオーブを『時空神像』に捧げたのだろうか?

そして『ギルバ』として生活していく中で、どれだけ技を磨いてきただろうか?

ただひたすらに力を求めた結果を、今この場で示す時。

 

「俺もお前と同じだ。以前とは比較にならないほど自身を高めていた」

 

小手調べも探り合いもここから先は不要。全開で飛ばしていく。

あの時のように、勝負を下らん理由で中断することがないように。

圧倒的な力ですぐに終わらせてやる。

だから──

 

 

真・魔人化(シン・デビルトリガー)発動!!!

 

 

変身に伴い青い衝撃波が妖気(オーラ)と共に全身から放たれる。

以前彼に見せた魔人化(デビルトリガー)の更に上の形態。魔人化(デビルトリガー)を超えた魔人化(デビルトリガー)

強さは宣言通り以前とは比較にならない。

驚愕の表情となるギィには悪いがもっと驚いてもらう。

ここから更に追加で『ドッペルゲンガー』を発動。

真・魔人化形態の俺の隣にもう一人の俺が真・魔人化形態で現れる。つまり戦力は単純に二倍。

これで押し潰す。

 

「......面白くなってきたじゃねーか」

 

そう言うギィの頬に流れる汗は冷や汗だ。この状況で強がりとはいえ笑っていられる彼の胆力には心から尊敬する。

 

「「いくぞ」」

 

閻魔刀を構えた二人の俺が同時に彼に突撃した。

 

 

 

 

 

目の前で──周囲に被害を出さないように張った結界内──激しい戦闘が繰り広げられている。

しかし、その戦いは互角ではない。端的に言えば一方的であった。

ギィは必死に食らいついているが、相手は二人。自分と同格の存在を二人同時に相手にしている状況。分が悪いのは当然だ。

二人の戦う距離は武器を振るえば届く間合い、つまりは接近戦。本来であれば優れた剣士であるギィが得意とする距離だが、相手の能力が著しく彼の優位性を損なわせていた。

原因はユリゼンの技の一つ、幻影剣。

ユリゼンの魔力で構成された剣で、それを飛び道具として発射してくる。簡単に説明すればそれだけの代物なのだが、これが非常に嫌らしい使い方をされる。

ただの飛び道具として使うだけなら対処は容易い。が、当たり前だがそれだけではない。出現した時点で既にギィを全方位から囲むように配置されたり、配置されたそれらが瞬間移動を行う為の基点として使用されたり、ユリゼンを守るように円陣を組んだ幻影剣の群れがぐるぐる回っていたり。

常にギィの周囲を、真上を、正面を、背後を、左右を、死角を、いつの間にか配置された大量の幻影剣が狙っている。しかもその状態のギィに対して、二人のユリゼンが円陣を組んだ幻影剣に守られた状態で突っ込んでくる。

おまけにユリゼンの幻影剣は魔法と大きく異なり、顕現する際にそれらしい予備動作を見せないし準備も必要としないらしい。どんな体勢、姿勢、何かの動作中でも、それこそ剣で斬られていても構わず幻影剣を配置もしくは飛ばしてくるのだ。

幻影剣も厄介だがそれと同様に厄介なのがもう一人のユリゼン──ドッペルゲンガーの存在である。

ドッペルゲンガー自体はただの『本体の影』でしかない。ただし戦闘能力は本体と同一である為、純粋に本体が一人増えたもの。単純に戦力が二倍となっただけでも不利は否めない。

少しでも油断すれば幻影剣に即串刺し。幻影剣に気を取られると二人のユリゼンから攻撃を受ける。

思いっ切り距離を離しての遠距離戦も意味はない。先の通り幻影剣は出現した時点でギィを包囲しており、その幻影剣がある場所に瞬間移動するユリゼン、そしてもう一人のユリゼンが距離に関係なく居合い斬り──次元斬を当ててくる。

加えて酷いのがユリゼンのタフさと再生能力。ギィが肉を切らせて骨を断つ決死の覚悟で繰り出した一撃に全く怯まない。たとえ剣で心臓を貫かれようと、自爆覚悟の範囲攻撃に類する魔法を食らっても平然としながら反撃してきた。ダメージを受けてはいるようだが少しも気にした様子もなければ痛痒を感じない振る舞い、瞬時に再生する回復力に不死身なのかと疑う。

なのにギィの傷は再生しない。厳密には閻魔刀で斬られた傷だけは治らない。厄介な性能を持つ刀を所持していた。

前回が結果的に見れば互角に渡り合っていただけに、両者の力の差にこれほど開きがある事実に驚きを禁じ得ない。

それなのにギィは笑っていた。とても楽しそうに、嬉しそうに、まるで遊びに興じる幼子のような笑みで。

 

「彼、危険ね」

 

ポツリと呟くヴェルザードの表情、目つき、氷のように冷たく刃のように鋭い視線も危険だとミザリーとレインは思ったが、決して口にはしない。

 

「似たような能力はいくつか知ってるけど、それらとは根本的に何か違うわ。いえ、そもそも彼の能力、彼の存在そのものが全体的に私達とは異なる気がする......彼は一体何者なの?」

 

紡がれた疑問は一人言のようでありメイド二人の返答を待っている訳ではないようだが、二人は可能な限り答えることとした。

 

「ユリゼン様は、我々と同じ悪魔族でありながらどの系統にも属していません」

「どの系統でもない?」

 

ミザリーの言葉にヴェルザードが訝しむ。

 

「はい。最初は変身したお姿が青いのでギィ様やミザリーは私の系統かと思いましたが、もしそうであればそもそも私がユリゼン様の存在を認知していないはずがないのです」

「......」

 

レインの補足にヴェルザードは形の良い眉を少し歪めて考え込む。

 

「本来なら存在し得ない、どの系統にも属さない悪魔」

「ギィ様曰く、初めて会った時のユリゼン様は本当に何も知らない赤子のようで、悪魔族についても、この世界についても何一つ知らなかったそうです」

「同胞としては認識できるのですが、こう、表現し難い違和感のようなものが拭えない、そんな不思議な方ですね」

「違和感、そう、それよ。私も彼には違和感を覚えるわ」

 

ミザリーの言うことに頷き、レインの補足にヴェルザードは同意。

確かに生まれたばかりの悪魔はどの系統にも属していない。だが、いずれはどれかの系統に属することになる。これに例外はない、はずだった。

だがユリゼンは違うのだ。生まれてから何年経ってもどの系統にも属さない。しかも生まれたばかりなのに当時からギィに匹敵する戦闘力を保有していた。

悪魔族としては明らかに異常で異質な存在、それがユリゼンだ。

 

「おまけにユリゼン様には物質生命体、具体的には人間と全く同じ生理現象があるのがそれに拍車をかけています」

「生理現象? そういえば以前は彼が途中でトイレに行きたくなったから決着がつかなかったって......」

「はい。悪魔なのに生命活動上で必要なものが人間と同じなんですよ。ユリゼン様は」

 

ヴェルザードはまるで知らない別世界からやって来た生物の話を聞かされているような気分になってきた。

悪魔でありながら悪魔らしくないその生態。かといって人間かと問われれば確実に否だ。あの凶悪なまでの妖気(オーラ)、あの禍々しい姿こそ変身系の能力を持つ悪魔の一言に尽きる。

聞けば聞くほど謎が深まる。お兄様なら何かご存知かしら? と頭の片隅でそんなことが浮かんだ。

ギィは何故かやたらと彼を気に入っているようで、ヴェルザードとしてはそれが気に食わないという個人的な感情に加えて、直感した通り危険な存在だと考えていた。

できることなら早急に排除したい。女としての感情と竜種としての本能が訴える。だがそれを実行に移せばギィに嫌われるのは分かり切っていた。

 

(こっちの気も知らないで、私よりも男の友情を優先するんだから)

「......決着がつきそうです」

「ギィ様、もうダメそう」

 

主が敗色濃厚で少し不満そうなミザリーはともかく、なんだかちょっと面白そうに言うレインに下僕としてその態度はどうなんだと内心で舌打ちする。

やがて、ヴェルザードがユリゼンを睨み付けるその青い宝石のような美しい瞳は、金色へと変化して──

 

 

 

 

 

両手で握った閻魔刀を袈裟斬りに振り下ろし、その斬撃をまともに食らいギィは片膝を突く。

 

「くっ......!」

「勝負あったな」

 

剣を杖のようにして立ち上がろうとしているギィに告げて真・魔人化を解除し、血振りしてから閻魔刀を納刀する。

するとドッペルゲンガーがいかにも「俺の勝ちだぁぁぁっ!!」と言わんばかりに閻魔刀を持った右腕を高く掲げてガッツポーズ。

いや、何やってんだ早く消えてくれ。

だがドッペルゲンガーは俺の意思に反して消えない。それどころかギィの周囲を回りながら踊り始めた。

やめろ! なんで急に『DMC5SE』のバージルのEX挑発みたいなことしてんだ!? 手拍子を打つな! 『カモンカモン、一緒に踊ろう』じゃねーから! 煽ってるようにしか見えねーだろ!!

 

「そこまでだ!!」

 

内心焦りまくった俺は慌ててサタデーナイトフィーバーのポーズを決めたドッペルゲンガーを閻魔刀で真っ二つにぶった斬って消滅させた。

お、怒ってないかな? ドキドキしながらギィの顔色を窺えば、今の一連のやり取りが面白かったのか腹を押さえて必死に笑いを堪えている。

怒ってないみたいだ。良かった。

それにしても、と思う。

幻影剣とドッペルゲンガーがなかったら負けてたかもしれない。

やっぱ強いわこの二つ。ゲーム内ではなく現実だからこそ可能となる操作や運用が、戦局をこちらを有利にしてくれる。その分、魔力消費激しいんだけどね。真・魔人化形態でやるならなおのこと。

傍から見れば俺に余裕があるように映るけど、実際は魔力の残りも僅かで、もう少し粘られたら魔力切れになってたからかなり際どい勝負だった。

正直に言わせてもらうと、真・魔人化まで使ってんだから余裕で勝てんだろ! ダメ押しにドッペルゲンガーも使うから圧倒的だな我が軍は! 勝ったなガハハッ!! って高を括ってたら予想以上にギィも強くなってて全然倒れてくんねーから内心ヒヤヒヤしたわ。途中から、こっちは真・魔人化してドッペルゲンガーまで使って残り魔力とか後先とか考えず惜しみなく幻影剣も使いまくってんだから早く倒れろバカ野郎ぉぉぉっ!! ってなってたし。

ユニークスキル『傲慢者(プライド)』をゲットして、それが究極能力(アルティメットスキル)傲慢之王(ルシファー)』にまで進化したとか言ってたっけ? 聞かされた時はなんかイマイチよく分かってなかったけど、魔人化(デビルトリガー)できるようになって暫くしたら真・魔人化(シン・デビルトリガー)もできるようになったよ、って言い換えるとギィの以前を遥かに凌ぐ強さに「なるほど!!」と納得できてしまう不思議。

体に蓄積された疲労を吐き出すように溜め息を吐いたその時、何か違和感を覚えた。

身体が、動かない?

指一本動かせない。眼球も動かせないので視界は固定されたまま。その変えられない視界内でのギィもまるで時間が止まったかのように動きを止めている。呼吸すら止まり彫像になってしまったか、もしくはビデオ映像を一時停止したかのように。

......時間が止まってる?

まさか!?

 

 

()()()()()()クイックシルバー、発動!!!

 

 

世界の時間が止められている現象に言い知れない不安と危機感を覚えた俺は、ある意味では真・魔人化を超える奥の手中の奥の手を躊躇せず発動させる。

 

 

 

DMCシリーズにも時間に干渉する能力や敵キャラ、アイテムは存在した。『1』だとアイテムとして『イエローオーブ』と『時の腕輪』、『3』では敵キャラの『妖馬ゲリュオン』とそいつを倒すと手に入る能力『クイックシルバー』、『5』では『妖馬ゲリュオン』の再登場とそれに伴う諸々。

イエローオーブは死亡すると死亡する少し前に時間を戻してくれるアイテム。要するに『死に戻り』。ゲーム内のメタ的な言い方をすればコンティニュー用の消費アイテム(残機)で、これが尽きたらゲームオーバーを意味する。

時の腕輪は戦闘に利用する装備アイテム。魔力を消費することで自分以外の時間を止めることが可能。欠点は魔力を消費する関係で装備中は魔人化できない、強敵(ボスキャラ)には通じないこと。

妖馬ゲリュオンは時空間を操る能力を持つ馬の姿をした悪魔。元々は太古の人間社会で名馬と呼ばれたほどの馬だったのが、魔界に迷い込んで瘴気を浴び続けたら悪魔化してしまったという設定があったり。この馬、馬の癖して空間転移ができたり、自分以外の存在の時間を止めたりゆっくりにしたりが可能。そんでゲリュオンを倒すと取得するのがクイックシルバー。魔力と引き換えに自分以外の存在の動きを一定時間スローモーションにできる『タイムラグ』を発動させるスタイルアクションで、分類的にはアイテムや装備品ではなく特殊能力。しかもこれボスにも通用する反則技、なのだが魔力をバカ食いするので使う場面を考える必要があった。

時間に干渉する能力ってどんな創作物でも反則級に強力だけど、DMCシリーズもその例に漏れない。

『2』と『4』はどうしたかって? あるにはあるけど『2』の『クロノハート』は魔人化中に剣での攻撃を敵に当てるとその周囲の時間が遅くなるクイックシルバーの下位互換な装備品なので印象に残らない、『4』の『クロノスの鍵』はステージギミックを突破する為のキーアイテム(時間を遅くして罠を回避し易くする)でやっぱり印象に残らないので割愛だ割愛。

で、俺がこれらをどうしたかというと、当然ながらレッドオーブを『時空神像』に捧げて取得済み。

イエローオーブはゲーム内だとただのコンティニュー用消費アイテムだが現実世界だと所持してるだけで『死に戻り』ができるチートアイテムなので、購入の際に必要なレッドオーブがアホかと思うほど高くて二個しか買えてない。時の腕輪も高かったけど思い出補正が発動して衝動買いしたから持ってる。ちなみに時期は真・魔人化を取得してからの話である。

クイックシルバーは実は前の二つより先に取得していた。いつかというと一番最初にクリフォトの樹を生やした時だ。樹と融合しつつ玉座に座った状態で戦えるように取得した能力の中の一つとして。ほら、『5』でユリゼン(俺じゃなくてバージルの方)と戦う時『ゲリュオン』の技使ってくるじゃん、あれねあれ。

補足すると、『3』と『5』の時間干渉能力って『ゲリュオン』由来のものだから、それぞれの作品で仕様や運用が若干異なってても『時空神像』的には『同じ能力』と見なしてるみたいで、レッドオーブを消費して入手する能力は一種類『クイックシルバー』のみって扱いだった。

まあ、結局当時はクイックシルバーが必要な強敵は来訪しなかったが。

『2』の『クロノハート』と『4』の『クロノスの鍵』は? 知らない子ですね(すっとぼけ)。

そして重要なのがここから。

クイックシルバーを保有している状態で時の腕輪を入手すると、その時不思議なことが起こった!

 

《レッドオーブを消費することで『クイックシルバー』と『時の腕輪』を合成、進化させることが可能》

 

そんなことできるん!? というのが当時の率直な感想。

この合成進化、何を隠そう『魔剣スパーダ』や『魔剣ダンテ』を作成する為に元々『時空神像』に備わってた機能みたいなんだよね。

例えば『魔剣スパーダ』を作るには、まず『フォースエッジ』っていう何の能力も持ってない『1』の初期装備と、『アミュレット』っていうやはり何の能力も持ってないただのアクセサリーのアイテム(ダンテ用とバージル用で二つ)が必要で、それらを合成進化させると『魔剣スパーダ』になる、という過程を踏まなければならない。

ストーリー的には『フォースエッジ』は『魔剣スパーダ』の本来の力が封印された状態で、その封印を解く鍵がダンテとバージルがそれぞれ母の形見として所持してる二つの『アミュレット』、父スパーダの魂を正しく継承したダンテが全てを揃えることで『フォースエッジ』は真の姿『魔剣スパーダ』へと変化する、という初期装備が最強武器になる熱い展開がある。

前置きが長くなってしまったが、合成進化とはつまり特殊な条件に当てはまる能力やアイテムを文字通り一つに纏めてより上位のものへと置換すること。

その過程を経たが故に、クイックシルバーはゲームオリジナルには存在しない『パーフェクトクイックシルバー』(命名は俺)となったのだ。

進化したそれは完全なる時間停止能力。所謂『ザ・ワールド! 時よ止まれ!』だ。これでスタンドバトルごっこが捗る。

しかし、やはりお約束というか何というか、同じ能力を持ってる相手には『今、動いたぞ......こいつ......バカなッ! まさか、まさか、同じタイプのスタンド!? 我が止まった時の世界に入門してくるとは......!』ってなるんですよね、お互いに。

 

 

 

............あれ? このアイテム合成進化の理論でいくと下位互換だったりステージギミック突破用アイテムだったりしても、とりあえず手に入れておけばパーフェクトクイックシルバーの更なる強化に繋がるんじゃね? と気がつくのはこの一件が終わってからである。間抜けがぁ!!

 

 

 

 

 

時間が止まった世界の中で、俺は背後に振り返る。

そこには、金色の瞳を輝かせ危険な光を放つヴェルザードが。

こちらを射殺さんばかりの眼光は、露骨な警戒心と敵意が宿っていた。

何だ? なんでこんな風になってんだ彼女? 彼ピッピが負けたことそんなに気に食わない?

とりあえず一戦終えて疲れた体に鞭打って残り少ない魔力絞り出してパーフェクトクイックシルバー発動させてるから、とっとと話を進めないと。

......二連戦は勘弁だぞ。




ギィがユニークスキルをゲットしてそれが究極能力に進化したこと言っちゃってますけど、現段階では原作開始の遥か前だし、友達に自慢したかったので言っちゃった感ありです。ちなみにまだルドラと出会ってないので『クリムゾン』と名付けはされてません。
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