DMC5のクリフォトの樹の実をオイチイオイチイしまくってたら人魔問わず全方位から警戒されまくってて草 作:美味しいパンをクレメンス
時間が止まった世界の中でこちらを睨んでくるヴェルザード。
それと相対する俺は既に疲労困憊。はっきり言って体力的にも魔力的にもこれっぽっちも余裕がないので、話をとっとと終わらせて休みたい。
「俺と二人きりで話がしたいならこんな大袈裟なお膳立ては不要だ」
だから早く能力解除してくれません? 痩せ我慢してる身としてはこの状況で平静を装うのも辛いの。心理描写すると今の俺は生まれたてのバンビなの。そんくらい疲れてんの。一人で辛うじて立ってるの。心境的に足ガクブルしてるイメージなの(決して実際にガクブルしてる訳じゃない)。人をダメにするソファーにでもこの身を投げ出して脱力させたいんだよ。
言った瞬間、彼女は目を細めるといきなり殺気を溢れさせ貫手で攻撃してきた。
「っ!」
ファッ!? 問答無用かい!! 咄嗟に納刀したままの鞘で防ぐ。というかパリィ。
「!?」
攻撃を弾かれ大きく体勢を崩し仰け反り下がるヴェルザードに反撃などしない。あまりにも隙だらけだったので首と胴体を離婚させてやろうかと一瞬魔が差しそうになったがギィの知己に反撃でダァーイ(疾走居合)なんてできる訳がなかった。
なおギィは怪我が酷いせいか、もしくはそもそも止まった時の世界に対応できないのか不明だが動けない模様。どちらにせよやり過ぎたかなと少し反省。
「理由ぐらい聞かせてもらってもいいと思うがな」
「あなたの存在が危険だからよ」
冷たい返事に俺は首を傾げる。お前さんがそれを言う? 竜種のお前さんが? だいたいこの場に『危険じゃない奴』なんているの? 全員、人間の国家なんて大した労力も使わず片手間で消し炭にできるでしょうが。
「竜種の一体に危険視されるとは、誇っていいのか?」
「ふざけないで」
ピシャリと言い切られてしまう。
「......あなたは、得体が知れない」
「それはお互い様と言わないか? 人間から見れば俺もお前も化け物だ。神の妹と悪魔、どちらも得体が知れない存在だろう」
「あなたは薄気味悪い」
「俺もいきなり殺そうとしてきたお前が薄気味悪い」
「ギィに近寄らないで」
「それが本音だろうが」
ギィの方からこっちに寄って来るんだよなぁ。
つーか何なんだこの嫉妬深い女。結局彼ピッピの目が自分じゃなく男友達に向いてんのが気に食わねーだけじゃねーか!!
なんか頭に来たな。こいつ、バイタルスター(体力回復用アイテム)とデビルスター(魔力回復用アイテム)使って全回復してからボコッていいよね?
俺が左手の親指で刀の鍔を押し上げ、鯉口を切ったその時──
「いけないよ、ヴェルザード」
そいつは現れた。
「っ!?」
「お兄様っ!!」
突然の闖入者の存在に俺とヴェルザードは揃って仰天。
全く気配を感じなかった。声が聞こえるまで存在を認知できなかった。一体何者!? と考えたが答えは既に出ている。
この世界の創造主にして神、ヴェルザードの兄、星王竜ヴェルダナーヴァだ。
一見するとただの人間なのに底知れない何かを感じた。いつの間にか冷や汗をかいている。目の前の神に気圧されているのだろうか。
とにもかくにも第三者の乱入に気分が萎えた。戦う気が失せたので刀の鍔を押し上げていた親指の力を抜く。
「すまないね、妹が」
「......」
穏やかな口調での謝罪に俺はどうしたもんかなと悩み無言。
「お兄様、私は──」
「その前にギィ達も話に加えるべきだね」
何か言おうとする妹を遮りパチンッと指を鳴らせば、俺とヴェルザードの時間停止能力が強制的に解除され、止まっていた時が動き出す。
......マジかよ......!?
格上だ。しかも圧倒的なまでに。時間停止能力に対応するだけじゃなく、能力の強制解除まで呼吸をするように平然とやってのけた。
まさに何でもありの神様だ。この時点で妹のヴェルザードなんて比較対象にもならん。本当に同じ種族で兄妹なのかすら怪しい。それほどまでに両者の間に実力差があるのだと確信する。
クリフォトの樹をあと何十回育てたら勝てるかな?
「さて、お茶でも飲んで落ち着いて話そうか」
改めてメイドの二人がテーブルと椅子四つ、ティーセットを用意し、俺とギィとヴェルザード、そしてヴェルダナーヴァが席に着く。
「まずは自己紹介から。ボクはヴェルダナーヴァ、ヴェルザードの兄だ」
「ユリゼンだ、人間社会ではギルバと名乗ってる。呼び易い方で呼んでくれて構わない」
「ありがとうユリゼン。それから今一度謝罪させて欲しい、妹が本当にすまない」
柔和な笑みから一転、本当に申し訳なさそうな表情で頭を下げるヴェルダナーヴァ。
それに誰よりも反応したのはヴェルザードだ。
「お兄様が頭を下げるなんて!」
「ヴェルザードも下げるべきなんだよ?」
「......!」
感情を昂らせる妹に頭を下げたままジロリと横目で睨む兄。その口調は穏やかでおいたをした妹を嗜める兄のそれだが有無を言わせぬ圧力があり、数秒の逡巡後結局彼女は蚊の鳴くような小さな声で「ごめんなさい」と謝罪し兄同様こちらに頭を下げる。
「言っておくが、俺は敵意や殺意に対しては同じもので返す。害意を抱き攻撃してくる連中にやり返さないほど心が広い訳じゃない。むしろ後腐れがないように徹底的に、完膚なきまでに叩き潰す」
「流石は我が親友。その容赦のなさ、俺と共に『魔王』として君臨するに相応しい」
なんでギィが自慢気なんですかねぇ......というか、俺とお前って会ってまだ二回目だよね? なんでこんなに好感度高いの? あとさっきの勝負は俺の勝ちだから『魔王』にはならねーから! お前の仕事ちょっと手伝ったり相談に乗るくらいなら全然いいんだけどさ。
なお今のギィの発言にヴェルザードがちょっとショックを受けたような顔になる。さっきのように俺がヴェルザードに襲われて、もし返り討ちにあってもギィ本人はあまり気にしないということを意味するからだろう。彼としては自分から喧嘩を売っておいて負けても自己責任の範疇だから我関せず、というスタンスなのだ。
ま、男ってそういうことに関しては結構ドライだしな。むしろ女が感情的になり易くて湿気高くて面倒なんだよ。
「厚意や善意などに対しても同じだ。そういったものには誰が相手でも可能な限り礼を尽くすべきだと俺は考える」
「うん。それは素敵な考えだね」
腕を組んでうんうん頷き同意を示すはヴェルダナーヴァ。
これは俺の持論であり処世術である。自分を嫌ってる連中相手に下手に出たりへりくだったり媚びへつらったりする必要なんてない。逆にされてありがたいと感じたことは同じものを返していければいい。
人間社会で暮らすことが俺にとって都合がいいからこそ、俺も『ギルバ』という形で人間にとって都合がいい存在として人間社会に貢献している。困っている人達を助け、救い、その返礼を受け取る。利用し利用される、見事なギブアンドテイクだ。
じゃあ『ユリゼン』としての活動──クリフォトの樹を育て人間を養分とする行為は『ギルバ』の真逆じゃないかとなってくるが、そもそも本来の目的はこっちだ。力を手に入れる為、ただそれだけの為に人間を犠牲にしている。そこに忌避感や嫌悪感もなければ罪悪感もない。そんな殊勝な感情があれば良心の呵責に苛まされて最初からクリフォトの種を蒔こうとは思わない。
人殺しはいけないこと? 私利私欲の為に人間を蹂躙するのは悪? そうだな、そうだろうとも、あくまでも地球で特にモラルが高く平和ボケした日本人の価値観や倫理観そのままで、日本人として生きてくという話ならな。
人間を辞めた某金髪吸血鬼も言っていただろ? 『お前は今まで食ったパンの枚数を覚えているのか?』って。心も体も人間を逸脱した俺がまさにそんな心境だ。
俺は力を得る為にクリフォトの種を蒔いた。悪魔として生きることを選択した。その時点で倫理観はかつての人間とは異なっていた。ギィから初見で同族扱いされて違和感や不快感を覚えなかったし、ギィをはじめとした悪魔に対して同族意識がある。逆に人間には未だに同族意識が芽生えていない。
スパーダは人間を愛した? うん、そうだね。で? って感じ。別にスパーダムーブをするつもりなんて更々ないし、『ギルバ』としての活動は人間社会で暮らす為の仕事であり仮初めの顔だ。ギルド内の知人達や拠点にしている街とその住民達には愛着沸いてるから、いざという時は守るけど、人類全体に愛着がある訳じゃない。むしろ愚かな人類を粛清する『調停者』及び『魔王』の仕事には大いに賛成する。
クリフォトの樹の主、悪魔として生きると決めた俺に日本人としての常識やモラルなんてこの世界で生きる上で、便所のネズミのクソにも匹敵する下らん考え方だ。今の俺にとってはナンセンスで、そんなものに従うなどそれこそトチ狂ってるとしか思えない。
『ギルバ』としても『ユリゼン』としても『人間は最大限利用する』だけだ。
「とまあ、色々言ったが謝罪は受け取るのでこの一件はこれで終わりで構わない。二度目はないがな」
最後にしっかり釘を刺しておけば問題なかろう。
話は終わったとばかりに俺は紅茶を飲み干し、レインにお代わりを注いでもらう。あー、良い香りだぁ。今度機会があったらギィん家にお邪魔してメイド二人にお茶の淹れ方でも習おうかな?
......ってバカ! お茶のことをのんびり考えている場合じゃない! 折角隣にこの世界の神様がいんだから今の内に聞きたいことを聞いとくべきなんだよ!
「それよりヴェルダナーヴァ、少しいいか?」
「ん? 何かな?」
「この世界の神として聞かせて欲しい。この世界とは全く異なる別の世界、異世界についてだ」
これを皮切りに俺はヴェルダナーヴァに話し出す。
自分がかつては異世界に住む人間であり、気づけばこの世界にいたこと。そこは魔法や魔物、魔素が存在しない世界であること。この世界では当たり前となっている魔法が存在しない代わりに科学技術が発展していることなど。
DMCに関連することだけは話さない。俺の力の根幹に関わることだからいくら相手が神でも安易に話せなかった。
しかし話せる部分は包み隠さず全て話した。今まで誰にも話せなかっただけに、少し気持ちが楽になった気がする。
「なるほど、異世界か。興味深い」
最後まで口を挟まず黙って聞いてくれたヴェルダナーヴァは、紅茶で一度喉を潤してから真剣な表情でこう述べた。
「あり得ない話ではないよ。空間が歪んでそれぞれ異なる世界同士が一時的に繋がってしまい、それに偶然巻き込まれてこの世界に辿り着くというのも、死後に魂だけがある程度記憶を持ったままこの世界に来てそのまま転生したというのも絶対にないとは言い切れない。両者共にかなり確率は低いと思うけど」
「そう、か」
「ユリゼンは前の世界に帰りたいのかな?」
「いいや、全く」
「え? 随分あっさり言うね。未練とかないんだ?」
「今の生活が充実していて楽しいからな。何よりもギィやヴェルダナーヴァに出会えた、この巡り合わせは貴重だと思う。向こうではそもそも『悪魔』も『神』も『竜』も『魔法』も想像上の存在でしかない世界だ。未練はない」
無言で聞いていたギィが何故かニマニマ笑う。え? 何? 俺なんか変なこと言った?
「とにかく、俺個人に関する記憶がほぼない状態で気がつけばこの世界にいた。それ故にどういう経緯でこうなったのか少し気になっていたんだ。俺は死んで生まれ変わったのか、それとも世界を渡る際に肉体が別のものに変わったのか......そしてその際に記憶を失ったのか、と」
「それはそうだろうね」
親身になって付き合ってくれるヴェルダナーヴァに、俺は心が開いていくのを自覚する。この世界の神様、めっちゃ親しみ易いやん。しかもスゲー寛大だし世話焼きだし。あなたが神か? 問うまでもなく神だったわ! もうこれはヴェルダナーヴァ教に入信するしかないぞ。
ひっそり心の中でヴェルダナーヴァを崇め始めた俺の横で、ギィが快活に笑い飛ばす。
「まあそこまで難しく考える必要ねーだろ! 異世界から来たからってユリゼンが俺の親友であることには変わりねー、それに他に何か困ったことがあればヴェルダナーヴァもついてる、それじゃ不満か?」
「うん。異世界絡みだとボクでも分かりかねることが多いけど、もしかしたら何かの拍子にあっさり記憶が戻ったりするかもしれないし、ギィの言う通りボクもキミの力になれたらと思う」
気を遣われてしまっている。なんだか少し情けない気もするが、不思議と心地良い。
「ギィ、ヴェルダナーヴァ、恩に着る......その心遣いだけで十分だ」
この日以来、俺と彼らの交流が本格的に始まった。
交流といってもそんな堅苦しいものではない。
俺とギィとヴェルダナーヴァの野郎三人で、飲んだり遊びに出掛けたり、たまにガチンコで勝負したりをするようになったくらい。普段の日常生活にプラスアルファな感じだ。
それに追加する形で、しょっちゅうレインが「仕事サボりに来たので付き合ってください」といくつもの酒瓶を抱えてやって来て、しょうがないので付き合ってたら暫くするとミザリーが「レインあなた仕事サボって何やってるの!? ユリゼン様もユリゼン様でレインを甘やかさないでください!」と怒鳴りながら襲来。「違いますよユリゼン様がどうしても私と二人っきりで飲みたいって仰るから仕方なく付き合ってあげていただけです」「嘘をつけ!」とかなんとか二人が言い合ってる間に「俺抜きで何楽しそうにしてんだ!」とメイド二人がいなくなったことに気づいたギィが乱入し、その次に「私を除け者にするなんて!!」とヴェルザードがブチギレながら突撃してきて、最後にどうやって聞きつけたのか「ボクも仲間に入れてくれよ」とヴェルダナーヴァが現れる日々。
俺が毎日寝泊まりしてる安宿は、いつから人外魔境の飲み会の場になったの? 周りの迷惑にならないように音や振動を遮断する結界張ってやる分には全然構わんけど。
以前よりも遥かに騒がしく、だけど楽しくて充実していた。皆長命種の宿命か、誰もが退屈を嫌い面白いことに飢えていたので、俺の存在は暇潰しには丁度良い相手だったのかもしれない。
だからという訳ではないが、俺は地球の娯楽の中でも比較的再現が簡単そうなものを再現しそれを人間社会に広めて流行らせる、ということに手を出し始めた。トランプやウノなどのカードゲームから始まり、ビリヤードやダーツやボーリングなどの遊技場にあるタイプのもの、オセロやチェスや将棋といったボードゲームなどなど。既に似たようなものが存在していた場合もあったが、娯楽そのものが地球より遥かに少ない世界なので目的は概ね上手くいった。それらの地球産の娯楽は当然ギィ達も興味を示し、トランプを片手に酒を飲む日も多々あった。
ちなみに魔王になる云々の話は丁重に断った。勝負は俺が勝ったし、DMCじゃ魔王を名乗ったらろくな目に遭わないジンクスあるし(俺個人の見解)。その代わり魔王の『相談役』という立場に収まる。
つってもやることってあんま変わんないだよな。ミザリーの配下が人間社会で諜報活動をしてるらしく、戦争関連の情報を俺に流してくれるのでクリフォトの樹を育てるにあたり以前よりも少し動き易くなったって印象かな?
ただ、クリフォトの樹を全く育てる機会がない──人間社会で戦争が勃発しない時期が暫くして到来する。
いい加減人間達も学習したのか、クリフォトの樹が初めて現れてからこれまでの間に戦場でしか発生しないという事実から、ある程度戦争に対して抑止力として働くことになった時期だ。
これに関してギィとヴェルダナーヴァは素直に感心していたが、短命種である人間は世代交代が早いので数十年経過するとクリフォトの樹への恐怖が薄れたのか久しぶりに戦争が勃発する流れに。
持って五十年弱ってところかなー、とぼやきつつ俺は久方ぶりに種を蒔くことになった。
ちなみに俺も彼らと同じ不老長寿だったみたいで、何年経っても肉体の衰えもなければ老いる様子もない。相変わらず生活する上で必要な生理現象は人間と同じなのにそこら辺は完全に悪魔族と同一らしい。
そんなこんなで、彼らと交流するようになってから何百年という時間が流れて──
新たな出会いが訪れた。
しかも、よりにもよってクリフォトの樹と融合している時に、侵入者として現れたのだ。
「俺様はルドラ! ナスカ王国の王太子にして人々の希望を一身に受けし『勇者』! ルドラ・ナスカだ! 貴様の話は我が師ヴェルダナーヴァと魔王ギィから聞いてるぜ! 血に飢えた性悪な悪魔、災禍の魔樹クリフォトの主ユリゼン! 貴様をこの気色の悪い樹ごとぶった斬ってやるぜ!!」
剣の切っ先を向けられて、俺は反応に困る。
どういうこと!?
ヴェルダナーヴァとギィの知り合いっぽいけど、俺、二人から何も聞いてないんだけど!?
あいつら絶対に面白がってこの『勇者』を俺に黙って差し向けただろ!!
主人公との親密度
・ギィ、ヴェルダナーヴァ
親友
・レイン
暇潰しに文句言わずに付き合ってくれる人。その際によく美味しくて高いもの奢ってくれるし、ミザリーによるサボりの追及もよく庇ってくれるので嬉しい......フフン、さては私のこと好きだな(盛大な勘違い)。
・ミザリー
紳士だけど、仕事をよくサボるレインを甘やかさないで欲しい。
・ヴェルザード
元異世界人と聞いて違和感の正体には納得した模様。
しかしながら──
ギィのことを盗った、許さない。お兄様まで盗った、許さない。私から大切なものを二つも奪った。絶対に許さん、いつか必ず後悔させてやる。嫌い、腹立つ、ムカつく。どうして皆この男に構うの? 妬ましい憎らしいズルい悔しいいつもいつもいつもいつもいつもいつもギィとお兄様とあんなに楽しそうに!!