森を消滅させようと思ったんだけど、どうしたらいいだろうか?
確かに俺を中心とした半径5.040m―――――俺の絶対領域を展開したまま歩いて『消滅しろ』って念じていれば森は消えていくんだけどさ、それだと焼き鳥の驚いた顔が見れないんだよね。派手に消滅させればさせるほど驚いてくれるからね。
でも別にいいか。さっさと消滅させて焼き鳥の駒を倒しに行こう。
『消滅しろ』と念じながら森を歩いて行く。端から端へ警戒しながら。いくら俺の絶対領域があって、攻撃の影響を受けないとしても攻撃されると驚くからね。心臓に悪い。
大体五分弱で森を消滅させられた。そこまで広くなかったっていうのもあるけど、途中から走ったからね。いやぁ、早く焼き鳥の駒と戦ってみたくてね。
どこに行けば駒がたくさんいるかな? やっぱり運動場かな? あそこは開けているし、多分『
とりあえず運動場に行ってみよう。
運動場には、俺の予想通り『
『こんにちは。ヒマそうだね?』
「あぁ、ヒマだ。なんだ? お前が私の相手をしてくれるのか?」
『いいよ。俺もヒマしてたからね』
俺が承諾した瞬間だった。相手の『
こっちに走り出したスピードを利用しての右ストレート。それを右手を使って受け流す。………痛い………すっげぇ痛い。さすがって言ったらいいのかな?
相手の一撃をいなした後、すぐに気で身体強化をした。だってあのクラスの一撃を腹にくらったら気絶するぜ? あ、でも俺の絶対領域が展開されてるからそれはないか。焦って損したぜ。
今度は俺の番だね。
気を気弾にして俺の背後に浮かべる。数は九個。それを別々に操って相手に攻撃を仕掛ける。
一つは真正面から、一つは右から、一つは右上から、一つは右下から、一つは左から、一つは左上から、一つは左下から、一つは頭上から、一つは背後から。
「デタラメだな!!」
『失礼だなぁ。これくらいなら修行すればできるようになるよ』
まぁ習得にかかる時間は人それぞれだけどね。
相手は拳で弾いたり避けたりしながらこっちに近づいてくる。もちろん、俺はそれに合わせてどんどん離れていく。ちなみに気弾は拳で弾かれても霧散しない。そのまま残るので、俺が操作して再び相手に向けて放っている。
「くそっ!! うっとおしい!!」
相手がイライラし始めたね。そろそろ肉弾戦といきましょうか。
気で身体強化したまま相手に向かって走る。相手が俺のことを認識しきらないうちに足下に潜り込む。そしてそのまま跳躍―――――跳躍の勢いを利用した右アッパーを相手の顎にプレゼントする。
「―――――ッ!?」
顎を砕いた感触がしたので、多分しゃべれなくなったんだろう。
さらに、落下するついでに踵落としを脳天にプレゼント。ふっ、これで完全に沈んだな。
それを証明するように、相手の身体が光に包まれた。転移だね。
『ライザー・フェニックス様の「
グレイフィアさんがアナウンスしたから確実だね。
残るは『
『きみは戦うの?』
「わ、私は戦いませんけど………」
『そう』
ならどうでもいいや。
そろそろ焼き鳥を倒しに行こう。他の駒は他の奴らが倒してくれるだろうし。
『ライザー・フェニックス様の「
ほら、思った通りだ。
なんか一気に焼き鳥の駒がリタイアしてない? それだけ俺以外の奴らが頑張った手ことだね。まぁ俺はあくまでも助っ人なわけだからさ、一人倒しただけでも貢献したことにはなるよね?
『リアス・グレモリー様の「
あれれぇ? なんかこっちもすごくリタイアしてない? もしかして相討ちだった? でも『
どう考えてもイッセーよりリタイアしていった白音、木場、朱乃さんの方が役に立つもん。イッセーは全然戦い方を知らない。でも白音、木場、朱乃さんは、イッセーより先に悪魔になっているから、はぐれ悪魔狩りなどで戦い方を知ることができて、戦いに慣れているはず。
以上のことから、イッセーが生き残るより、白音、木場、朱乃さんが生き残った方がいい、まる。
イッセーは今どういう状況なんだろう? 瀕死? 重体? 重傷? 軽傷? 無傷? 瀕死、重体、重傷だったら生き残った意味がほとんどない。俺が治療しないといけないし。イッセーを治療しているうちに、我慢できなくなったリアス・グレモリーが焼き鳥に一騎打ち的なことを仕掛けるかもしれない。
あー………嫌だ嫌だ。面倒事がどんどん増えてくね。
こうなったらさっさと焼き鳥を倒そう。
焼き鳥の気配は―――――新校舎の屋上だね。………気のせいかな? そこにリアス・グレモリー、アーシアさん、イッセーの気配もするんだけど。
†††
「もう………もうやめてイッセー!!」
イッセーがライザーに殴られて飛んでいった。凄い量の血を口から吐き出しながら。瞳もゆらゆら揺れていて、焦点が全く合ってない。ふらふらと立ち上がって、またライザーに向かって走っていった。
「ごふっ………」
「イッセー!!」
またライザーに殴られて飛んでいった。あの子は何度も何度も飛ばされてもライザーに立ち向かっていった。
もう………いいの………戦況は明らかにこちらが不利―――――いえ、詰んでいるわ。だから、もう、いいの………
私はイッセー駆け寄った。そして抱きしめる。抱きしめたイッセーの身体は血と汗まみれ、酷い有様ね………それでも、それでも私はこの子が愛おしい。
「………イッセー、よくやったわ。もういいわ。よくやったわ。よくやったわ」
私が優しく呟いてもイッセーは私の身体から離れて身を起こそうとする。
「もういいの!! イッセー!!」
イッセーは私の手を払い、のろのろと力なく立ち上がった。そのまま、無言のまま、また一歩と前に進む。
ダメ!! このままだと―――――これ以上やらせれば私はイッセーを失ってしまう。これからまだまだ可愛がるつもりなの………だからこんなところで失うわけにはいかない!!
私はイッセーとライザーの間に入って、イッセーの前に立つ。
「イッセー!! 止まりなさい!! 私の言うことが聞けない―――――」
その先は、言えなかった。
イッセーはすでに意識を失っていた。双眸も虚ろで、口元も開いたまま。それなにの、この子は私の為に、前へ前へ出ようとしている。
震える拳を握りしめたまま………
「………バカね」
前へ出ようとするイッセーを私は抱きしめ―――――られなかった。
え………? なんであなたがここにいるの? あなたはとっくにリタイアしたんじゃ………
『イッセー………お前の根性見せてもらったよ。大切な女を守るために意識を失っても前に進む。すげぇよ………そんなこと誰にでもできることじゃない。あとは俺に任せて休んで。安心して。絶対に焼き鳥は俺が倒すから』
『リアス・グレモリー。絶対に
「え、えぇ………でもあなた、不死であるライザーに勝てるの?」
ライザーはフェニックス―――――不死鳥だ。名前の通り、不死の鳥。何度攻撃をを加えても再生してしまう。
倒すには圧倒的な力で押し通すか、起き上がるたびに何度も何度も倒して相手の精神を潰すしかない。
彼にそれができるとはとても思えない。でも彼は―――――
『当たり前だよ。たかが焼き鳥に俺が負けるわけがない。それに俺のことをたかが人間ってバカにした。人間の可能性を見せてやる!!』
彼はグッと拳を握って言った。
………少し焦点が違うような気がするのだけれど、彼に任せるしかないわよね。私ではどうあがいたとしてもライザーには勝てないもの。
「頼んだわよ、
『頼まれたよ』
†††
どうにかこうにか、ギリギリでリアス・グレモリーが
危ない危ない。もう少しで俺が参加した意味が全くなくなるところだったよ。なんかリアス・グレモリーの驚いた顔を見る限り、俺がとっくに倒されて退場してるとでも思ってたんだろうね。そんなに簡単に倒されてたら助っ人の意味がないっての。
「人間!! 貴様、俺のことを焼き鳥と言ったな!!」
『そうだよ焼き鳥。さっさとかかってきなよ。お前が馬鹿にした人間の力、見せてやる!!』
《
焼き鳥が炎弾を放ってきた。数は五つ。それを全てナイフを振るって霧散させる。
「貴様!! 人間の分際で俺の炎をッ!!」
『その人間にお前は負けるんだよ』
「ほざけッ!!」
焼き鳥が激昂しながら炎弾をさらに放ってきた。まったく………芸がないなぁ。
今度は炎弾をナイフで霧散させるんじゃなくて、炎弾の間をすり抜けるようにして避ける。そして避けながら焼き鳥に近づいていく。
焼き鳥が俺のナイフの間合いに入った瞬間、一気にナイフを横に振り抜く。もちろん、焼き鳥の上半身と下半身がわかれた―――――はずなんだけどなぁ………
「俺に一撃を………許さん!!」
すぐにくっついちゃったよ。さすが腐っても
次は手数を増やそう。一撃から一〇連撃に。
焼き鳥の真正面から背後に一瞬と呼ばれる時間で回り込む。そして背後から一〇回連続で焼き鳥を斬り刻む。
「があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
焼き鳥がものすっごい悲鳴を上げた。なんか………気持ちがスカッとしたかも。
しばらくすると、焼き鳥が炎を体に纏いながら復活した。少しカッコイイなと思ってしまった。なんか負けた気分だ………
「もう何を言っても許さん!! 灰にしてやる!!」
『さっきから許さないって何回も聞いたよ。』
まだ二回目だけどね。焼き鳥は攻撃されて復活するごとに許さないって言わないとダメなのかよ。
もうそろそろ決着をつけようかな。よし、アレを試してみよう!! 俺って運がいいね♪ 焼き鳥は俺の絶対領域ないに侵入している。ならやるしかないでしょ!!
『焼き鳥―――――「塵になれ」』
「―――――ッ!?」
やっぱりというかいつも通り、叫ぶ暇も与えないで焼き鳥は塵になった。でも徐々に塵が集まっていき、再び焼き鳥の形になっていった。
なるほど、こんな感じで再生するのね。でも悲惨だなぁ………塵になった恐怖と痛みが何度でも襲ってくるんだぜ? 案外不死っていうのも面倒なのかもね。
「はぁ………はぁ………はぁ………き、貴様………今………何をした………」
『俺が宣言した通り、塵にしただけだよ。でもすぐにフェニックスの力で再生しちゃったけどね。さて、どんどん行こうか―――――』
「ま、待て!!」
『―――――「呼吸をやめろ」』
「く………くはっ………」
こんなにすばらしい実験体なんていないね。どんなことしてもすぐに再生してくれる。これならいろんなことが試せるね。俺のことも馬鹿にしてくれたし、しばらくは実験に付き合ってもらおう。
†††
『ライザー・フェニックス様の戦闘の続行が不可能となった為、このゲーム、リアス・グレモリー様の勝利となります』
グレイフィアさんのアナウンスが聞こえてきた。どうやら焼き鳥は精神をすり減らし過ぎて再生の速度がすごく遅くなってしまって、
もう少し耐えてもらいたかったなぁ。
塵にしたり、呼吸を止めさせたり、血流を止めたり、聖水を全身に浴びせさせたり、聖剣で斬り刻んだりしただけなんだけどね。
「………さすがにやりすぎよ」
リアス・グレモリーが俺に近づいてきて言った。
『そう? でもこのくらいはやらないと俺が出た意味がないからね。それとこの後の勧誘とか面倒じゃん? 一応グレイフィアさんが釘を打っておいてくれたけどさ、絶対に勧誘に来ないって保証はないわけ。あとは………』
「あとは?」
『俺がムカついたっていうが一番大きいかも。人間ってだけでバカにされたしね』
「なるほどね………」
納得してくれたようで何よりだね。
このゲームは俺のうさも晴れた上に、俺の絶対領域の性能実験までできたから俺的には一石二鳥だったよ。
このゲームで俺は一つ学んだよ。俺が考えている以上に俺の
俺を中心とした半径5.040m以内ではどんなことでもできるんだもん。物体を何の例外もなく塵にできるし、聖剣も創造できたし。俺が念じたことがなんでもできる。
それにまだ―――――と―――――もある。この二つは一度発動したっきり一度も発動してないんだよね。理由は力が大きすぎるからだ。いやぁ、怖かったね。脳のキャパシティオーバーしかけたもん。
†††
「ただいま」
「おかえりにゃ!!」
「うわわっ」
家に帰ってきた俺は、
「ケガは? ケガはない?」
「うん。無傷だよ」
「よかった………本当によかった………」
黒歌が今にも泣き出しそうな顔で言った。抱き着く力も強くなってるような気がする。
俺もそれに応えるように黒歌を抱きしめる。このままでいたい………いたいんだけどお風呂に入らないと。さすがに汗をかいたからね。このまま寝るわけにはいかないよ。
「黒歌。俺はお風呂に―――――」
「背中を流すにゃ」
「―――――わかった、ありがとう」
今思ったよ。俺って面倒なことが起きても、必ず最後はいいことがあるって。