一領域目 俺の日常
「黒歌。今日さ、授業参観があるんだけど来る?」
「もちろんにゃ」
「……………………」
「どうしたにゃ? そんなにじーっと見て」
黒歌は今日もミニスカメイドさん。もちろん黒ニーソを履いて
さわりたい………あの領域を、聖なる領域を手に―――――
「めっ!! やるなら夜にゃ」
いつの間にか俺の右手が黒歌の太もも目がけて進撃を!? し、静まれ!! 俺の右手よ!! ………中二じゃないからね。
って―――――
「夜!? え? 夜ぅ!?」
「別にナニするわけじゃないにゃ」
「………ぶはっ!!」
「にゃ!? は、鼻血!? ティッシュ、ティッシュにゃ!!」
鼻血を出してしまった………。情けないけど仕方ないじゃないか!! 黒歌と………ナ、ナニを………いかんいかん!! これから学校なんだ。意識を切り替えなければ。
「と、とりあえずいってきます」
「いってらっしゃいにゃ」
†††
「おはよう結衣さん」
「おはよう一くん」
いつも通り結衣さんに挨拶をする。そしてそのまま自分の席に座って鞄をおろす。そのまま鞄から本を取り出して読む。いつも通りだね。
「今日はどんな本を読んでるの?」
「ケルト神話だよ」
「内容は訊かないでおくね。多分わからないから」
「う、うん………」
いつもは内容も訊いてくるのに………。まぁ本人がいいって言ったんだし、いいよね。
最近になって、面倒事というか厄介ごとっていうか、その系統のものがやってきた。ゼノヴィアさんだ。ゼノヴィアさんが駒王学園に転校してきた。しかも俺と同じクラスに。
すごいねこのクラス。悪魔が三人もいるよ。イッセーでしょ? アーシアさんでしょ? ゼノヴィアさんでしょ? どうしてか木場だけ他のクラス何だよね。どうしてだろう? あ、そうか。最初は木場だけだったんだもんね。悪魔だったの。イッセーが悪魔になってからだ。このクラスに悪魔が増えたのは。ちなみに、結衣さんは三人が悪魔だってことは知ってる。というか、この学校にいる悪魔全員知ってる。女の勘ってやつで全部当てたからね。
「ホームルーム始めるぞ~」
教師の声が聞えたので、本を閉じて鞄にしまう。
ホームルームの内容は授業参観に関してがほとんどだった。「親がいてもいつも通りにしてろよ」とかね。誰もはしゃがないっての。小学生かよ………
授業開始のチャイムが鳴るのとほぼ同時に、開け放たれた後ろの扉からクラスメートの親たちが入ってきた。
授業の教科は英語。いつもよりかなり気合の入った教師が長方形の物体を生徒に配っていく。
渡されたものは―――――か、紙粘土?
「いいですかー、いま渡した紙粘土で好きなものをつくってみてください。動物でもいい。人でもいい。家でもいい。自分がいま脳に思い描いたありのままの表現を形作ってください。そういう英会話もある」
絶対ないからね。絶対ないから。
紙粘土に触るのなんて小学生の時に夏休みの自由工作ぶりだよ。
「レッツトライ!!」
レッツトライじゃねぇよ。
これをやるしかないからやるけどさ………何をつくろう………。一番いいのはミニスカメイドの黒歌なんだけど………それをつくったら結衣さんに何を言われるかわからない。
そういえば黒歌は来てるのかな?
後ろを向いて、親の顔を確認していく。しばらくすると、黒歌の顔を見つけた。小さく手を振ってる。………着物で来ちゃったか。あ、着物なら問題ないか。そうと決まれば早速………
骨組みになるものがないから結構大変そうだなぁ。
まず始めに頭からだね。適量を手に取って、丸める。次は身体なんだけど………これは長方形から余分な場所を削っていった方がよさそうだね。
けずりけずり、けずりけずり…………………………よし。こんなもんでいいや。
次は顔。目を削って、鼻をつけてなめして………意外に簡単だった。ついでに髪もつくろう。頭に肉付けして調整していく。…………………………い、意外に難しい。あ、服……………着物かぁ。身体に肉付けして着物の形に削りだしていく。
けずりけずり、けずりけずり…………………………よし。こんなもんでいいや。
あとは残った粘土で小物をつくらねば。あまりをひとまとめにして、和傘の形に削りだす。
けずりけずり、けずりけずり…………………………よし。こんなもんでいいや。
あー………手を作り直さなきゃ。和傘を持たせて手を作り直し、直し直し、直し直し…………………………よし。こんなもんでいいや。
まだ少し粘土が余ったなぁ………。よし、猫でもつくろう。猫は結構簡単につくれた。そりゃ人に比べたらね。
と、ここでイッセーの周辺がうるさくなっているのに気づく。
「結衣さん、イッセーが何かやらかしたの?」
「違うよ。リアス先輩をそっくりそのまま紙粘土でつくったんだよ」
「へぇ………そこまで深い関係になってたんだ」
『
「一くんは何を―――――ってすごい!! って………この女、誰?」
「え………?」
「この女は………誰?」
結衣さんが黒歌をモデルにしたフィギュアを見た瞬間、瞳からハイライトが消えた。病んでる………? 結衣さんが病んだ………?
べ、弁明!! 弁明をせねば!!
「えっと………いとこだよ」
「いとこ?」
「うん。ほら、後ろに着物を着ている女の人がいるでしょ?」
「うん、そうだね………そうだよね。いとこだもんね。………なにもないよね」
こ、怖いぃぃぃぃぃぃぃ!! 結衣さん怖いよ………
†††
昼休みになったから黒歌に会いに行こう。
「一、どこいくにゃ」
「あ、黒歌。ちょうどよかった」
教室から出るのと同時に黒歌が話しかけて来てくれた。よかった、探す手間が省けた。
「はいこれ。黒歌が見に来た授業でつくったんだ」
「これ………私?」
「うん。結構上手にできたと思うんだよね」
「うれしい………ありがと、一」
目をうるうるさせながら黒歌が言ってくれた。そこまで喜んでもらえるとは思わなかった。
今度じっくりつくってみようかな。骨組みに始まって、肉付け、さらにカラーリング………いいね。今度やってみよ。
と、ここで廊下を走っている男子生徒を見つけた。それもひとりじゃない。十数人だ。何があったんだろう?
「黒歌。男が走り回ってる理由って何か知らない?」
「そういえば魔女っ子が撮影会をやってたにゃ」
「なん………だと………!?」
魔女っ子………これは新たな絶対領域を発見するチャンスだ!! さすがに俺はコスプレ撮影会とかまでには行ってないからね。魔女っ子を見るなんてめったにない。
「ちょっと行ってくるね」
「………にゃ。気をつけるにゃ」
何に気をつけるんだろう? そう思いながら、魔女っ子の撮影会が行われている場所へ向かった。
魔女っ子の撮影会は結構近くでやってた。
足下からじーっと見ていくと、そこには―――――ッ!? そこには、理想的な絶対領域があった。黒とピンクのしましまニーソ………いい!! そのままもったいないけど視線を上にずらしていく。なるほど、モデルは『魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ』か。かなりのクオリティだね。俺が知ってる理由? 言わせないでおくれ………
「―――――ッ!?」
顔を見た俺は驚いた。ま、まぁ確かにそんな予感はしてたんだ。俺が見た顔、それは魔王セラフォルー・レヴィアタンだ。
レヴィアたん………まさか人間界でもそんな服装をするとは思わなかったよ。普通さ、コスプレで授業参観に来る? 来ないでしょ。常識的に考えて。
しかしカメラ小僧が多いね。もしかしてレヴィアたんが呼んだのかな? ………それはないか。
「オラオラ!! 天下の往来で撮影会とはたーいいご身分だぜ!!」
この声は生徒会の………誰だっけ? まぁ生徒会の人が来たんだし撮影会もお開きだね。さっさと教室に戻ろう。
†††
家に帰ってきた俺は、自室にこもって黒歌のフィギュアをつくっていた。
まずは方眼紙に図面を描く。実際につくる大きさでね。20cmがちょうどいい。八分の一スケールだからね。次にアルミ線で図面の骨組みに合わせてねじっていく。太さは1~1.5cmくらいだね。ラジオペンチを使うと作業がはかどります。
骨組みがつくり終わったら、その骨組みに石粉粘土をくっつけていく。肉付けの作業だね。ゆっくりと、しっかりと、滑らかに。次に頭。石粉粘土を丸めて、ようじに刺して、ようじをスポンジに刺す。よし、安定した。ヘラを使って頭を滑らかにしていく。イメージしろ、黒歌を隅々まで、完璧に。
「一、夜ごはんができたにゃ」
黒歌が部屋の扉を開けて言った。もうそんな時間か………
「わかったよ。すぐいく」
今日はここまでか。ちょっと懲りすぎたかな? いや、そんなことはないだろう。多分三時間程度ぐらいしかたってないし。
リビングにいくと、いい匂いがした。
今日のメニューはピザにパスタ。炭水化物のオンパレードだった。まぁ美味しいからいいんだけどね。
夜ごはんを食べ終わった後、風呂に入って自室に戻った。
またフィギュア作成の続きをしようと思ったんだけど、せっかく風呂に入ったのにまた石粉粘土で汚れるのはいやだからやめた。
本を読んで寝よう。まだケルト神話が読み切ってないからね。
すいません………きりが良かったので今回も短いです。