朝、目が覚めたらすぐに黒歌フィギュアの状態を確認する。状態は良好だね。綺麗に乾いていて、滑らかな関節部になった。完成が待ち遠しいね。
パジャマを脱いで、ハンガーにかかっている制服に着替える。本棚から適当に本を取って、いつも学校に持っていっている鞄に入れる。そして鞄を持ってリビングへ向かう。
ちなみに一緒に寝ていた黒歌はとっくに起きてるよ。黒歌が起きてから俺が寝たからすごく眠い。結局一時間ぐらいしか寝れなかったよ。
リビングに向かうと、黒歌がちょうど出てきた。多分俺を起こしに来てくれたんだね。
黒歌の服装はやっぱりミニスカメイドさん。今日のニーソは―――――しましまニーソだね。水色と白のしましま。ちょっとコスプレっぽくなっちゃってるところがいいね。
「一、じーっと見てないで早く来るにゃ」
「…………………………あ、ごめん」
絶対領域に目を奪われてたよ。黒歌も絶対わかっててやってるよね? そうしないとここまでドストライクな服装を毎日してくれるわけないし。
「「いただきます」」
今日の朝ごはんのメニューは、トースト、スクランブルエッグ、コーンスープ、牛乳だ。
「おいしい」
「ありがとにゃ」
黒歌の料理スキルが高すぎる件について。たいていの料理はうまいからね。
朝ごはんを食べ終わったので、食器を台所に持っていく。そのまま洗面所にいって身だしなみを整える。
「それじゃあ行ってくるね」
「いってらっしゃいにゃ」
「いってきます」
今日も一日頑張りますか。
†††
「おはよう結衣さん」
「おはよう一くん」
女子の視線をこの身に受けながら、俺は自らの席へ向かった、まる。
ちょっとカッコつけてみたけど、普通にじーっとっていうか、ジロジロっていうか、そんな感じの視線を向けられながら席に座っただけなんだよね。鞄を机の横におろして、そのまま鞄から本を取り出して読む。
「今日は何の本?」
いつものように笑顔で結衣さんが言う。いつも、いつも、いつも通り。このやり取りも俺の日常の一つ。大切なね。
「今日は創世記だね。イスラム教の啓典である聖書―――――旧約聖書の最初の書で、正典の一つの」
「わ、わからないから説明はいいって!!」
「でも一応ね」
「もうっ」
「―――――ッ!?」
結衣さんの方を向いて気づいたことがある。結衣さん、今日は黒ニーソを履いてる。今まではストッキングだったのに………あ、でも一回だけ前にも黒ニーソを履いて来てたね。いつだったかは忘れたけど。
駒王学園の女子の制服はスカートだ。
スカート+ニーソ=絶対領域
これ、テストに出るから絶対に覚えておいてね。絶対領域を結衣さんが展開してるなんてめったにないからね。しっかりと脳内に保存せねば!!
「一くん………どこ見てるのかな?」
「…………………………え? あ、ごめん」
「謝らなくていいからね? どこ見てたのかを聞いてるんだよ?」
すごくイイ笑顔で結衣さんが訊いてくる。怖いです。
「え、えと………その………スカートとニーソックスの間に存在する神秘的空間」
「そこまで具体的に言わなくていいからっ!!」
「いひゃい、いひゃいよ結衣ひゃん」
結衣さんが俺のほっぺたをつねりながら言う。これさ、地味に痛いよね………
「ホームルーム始めるぞ~」
相変らずナイスタイミングで来てくれるな、担任よ。
「ほ、ほりゃ、先生来たかりゃ」
「ふんっ!!」
「いって!!」
最後のひとつねりが痛い………
†††
「一くん。ちょっと………いいかな?」
四時限目終了のチャイムが鳴り、教師が教室が出ていくのと同時に結衣さんに話しかけられた。
「どうしたの?」
「いいからっ!!」
そのまま手を引かれて連れて行かれたのは屋上。なんだろう、すごく嫌な予感がするんだけど………
「あのね、一くん。私もいい加減覚えようと思うんだ」
「何を?」
「
嫌な予感大的中。確かに結衣さんが
「どうしたの突然」
「一くんがさ、はぐれ悪魔から私を助けてくれた時からずっと考えてたんだけどね。一くん、私を助けてくれた時にさ、私に
「うん」
確かに言った。あの時は
「大丈夫?」って聞いたときの声で正体がバレちゃったのがマズかったよね………あの時は電子音で話してなかったから。
結衣さんに俺の正体がバレて、仕方なくある程度裏事情を教えたんだけど………その時、結衣さんに
「私もさ、一くんの力になりたいの」
「えぇ………いや、でも、えぇ………」
「まだはぐれ悪魔狩りはしてるんでしょ?」
「い、一応………」
まだ、はぐれ悪魔狩りは続けている。すっごくたまにだけどね。身体が鈍らないようにするためだから週一程度だけど。
「それの手伝いがしたいの」
て、手伝いですか………。いや、それはちょっと無理でしょ………。だって殺さないといけないし。血、出るし。もうブシャブシャ出るし。
「うーん………それは無理だね」
「な、なんで!?」
「いや、だってはぐれ悪魔は殺さないといけないし。血、めっちゃ出るし」
「う………」
そんな悲しそうな顔されるとなぁ………。でも事実だし。
「でもさ、
「ホント!?」
「うん。もし俺が間にあわなくて結衣さんが怪我したら嫌だしね」
「は、一くん………」
そんな顔を真っ赤にされても………すごく反応に困るんだけど。
結衣さんに
はぐれ悪魔に結衣さんが襲われていた時は、偶然俺が助けた。そう、偶然だ。偶然結衣さんを襲っているはぐれ悪魔が俺の依頼の対象だったから、俺が現れて助けられた。まぁこれからは基本的には助けにいくけどさ、間に合わない時だってある。その時は結衣さんに自分でどうにかしてもらうしかないわけだからね。
「じゃあ今度の休日ね」
「うん♪ よろしくね、一くん」
るんるんとスキップをしながら屋上と校舎内をつなぐ扉の方にスキップしていった結衣さん。そんなに跳ねるとスカートの中が―――――あー………黒ですか。
†††
家に帰ってきて、夜ご飯を食べ終わった俺は、自室で黒歌のフィギュア作りの続きをしていた。
今回はボディ―――――上半身の肉付けだ。豊満な黒歌の胸を再現しなければ!! まぁすっごく難しいんだけどね。大きすぎても小さすぎてもダメ。
ちょうどいい大きさにするために胸部に石粉粘土を付けてはヘラで削る。結局この作業は一時間かかった。でも納得できるのができた。最後に水を付けた指で滑らかにする。
とりあえずここで乾燥させる。
ここで一つ問題が出た。衣装だ。
衣装の製作は上半身と下半身を分割したほうがやりやすいんだけどさ、ポーズがねぇ………座ってるんだよ。分割できねぇ………してもきっとくっつけにくいよね………。ならこのままいくしかないでしょ。
よし、乾燥させているうちに小物をつくっておこう。
新しい石粉粘土の袋を開ける。まず始めは椅子かな。長椅子。江戸時代の店先とかに置いてありそうなアレね。
今回は長方形からつくるんじゃなくて、木材みたいに形成してから繋げる。木目がリアルになるからね。
30×2×2mm状の板をつくっていく。大体一〇枚くらいかな。次にそれを並べていく。長椅子の形になるようにね。板を半分にしたりして、長さや模様を調節するのもよいでしょう。実際に俺は今やってるしね。
並べ終わったら、裏になるほうに薄く石粉粘土を伸ばしてつける。これで椅子の座る部分は完成だ。
次は椅子の脚だね。10×2×2mmの板を六つつくる。
どっちも滑らかにしてから乾燥させる。感想するまで何もできないから今日はここまでだね。
明日は学校に行くからもう寝ますか。ベットに入った瞬間だった。コンコン、と部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「一、もう終わった?」
「うん。どうしたの?」
「一緒に寝るにゃ」
「わかった」
最早日常だよね。
†††
―――――ドオォォォォォォォォォォン
「うぅん………」
「にゃあぁぁぁん………」
―――――ドオォォォォォォォォォォン
「あぁぁ………」
「にゃぁぁぁ………」
―――――ズドオォォォォォォォォォォォン
「あーうるせぇ!!」
「うるさいにゃ………」
なんだこんな夜中にまったく。せっかく黒歌の抱き着きになれてきて眠れるようになったのに、こんなに爆発音がうるさかったら寝れないよ………
「まったく何なんだよ………」
「わからないにゃ。でも――――」
「「すごい魔力だね」」
いろいろな種類の魔力が駒王学園に集まっている。大きさも魔王並みのが結構いる。
「あ………」
「どうしたにゃ?」
「そういえばサーゼクスから今夜駒王学園に来るように言われてたんだった………」
裏仕事用のスマホにサーゼクスからメールがきたのをすっかり忘れていたよ。黒歌フィギュアつくりに夢中でさ………
今夜三大陣営が和平を結ぶとかなんとか言っていたなぁ………。多分襲撃でもされたんだろうね。そりゃそうだ。三大陣営のトップがそろうなんてめったにないからね。
―――――ズドドドドドオォォォォォォォォォォン!!
「いい加減うるさいなぁ」
「にゃ」
「ちょっとシめてくるね」
「無茶しちゃダメにゃ」
「わかってる」
今度は爆発音と同時に結構な揺れが起きた。結構な揺れだからね。今度はお隣さんも起きたね。絶対。
俺と黒歌の睡眠を妨害した罪は重いぞ。
結衣さん、
結衣さんがこれからどう話にかかわるかが結構重要―――――かも。
一くん、すっかりフィギュアつくりにはまってます。
2014/08/09 次話につなげるために、『今度は爆発音と同時に結構な揺れが起きた。結構な揺れだからね。今度はお隣さんも起きたね。絶対。』を追加。