絶対☆領域 【凍結】   作:-Msk-

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四領域目 俺は焦った

 朝、俺は日が上りきらないうちに起きる。朝ごはんの準備をしないといけないからね。

 

 この前つくったかまどもどきに火を入れて、鉄板を温める。温めているうちにマフィンを切る。鉄板が意外に早く温まったので、卵を鉄板の上に割る。数は二つ。一人一個だからね。ベーコンも鉄板で焼く。焼き終えたら両方ともマフィンの間に挟む。ついでにレタスも。

 

 

「一くんおはよー」

「あ、おはよう結衣さん」

 

 

 ナイスタイミングで起きてきたね結衣さん。朝ごはんをつくり終わって呼びに行こうとしてたからちょうどよかったよ。

 

 

「はいこれ」

「ありがと」

「じゃあ―――――」

「「いただきます」」

 

 

 朝ごはんは何のアクシデントも無く食べ終わった。普通はアクシデントが起きる方がおかしいんだけどね。まぁここ異世界だし、なにがあるかわからないからね。

 

 俺が朝ごはんの片づけをしているうちに結衣さんには着替えをしてもらった。結衣さんが外に出てきて着替えが終わったことを確認してから俺も着替えるためにコテージに入った。

 

 服装は俺も結衣さんも昨日と同じだ。今日のニーソはしましまか………目が離せん。「ぷにっ」と感が………

 

 

「一くん………」

「………………………………あ」

 

 

 そんなジト目で見ないでおくれ。クセになりそうだから。………嘘だからね。

 

 

「そ、それじゃあ結衣さん。はじめよっか」

「うん!!」

 

 

 今日は結衣さんの槍術の型を見せてもらうことになった。だって俺さ、やることないし。

 

 結衣さんが目をつぶって深呼吸した。そして目を見開くのと同時に、

 

 

「―――――ブリューナク!!」

 

 

 そう叫んだ。すると結衣さんの右手に蒼く輝く槍が収まっていた。穂先は五つに分かれていて、とても扱いにくそうだった。

 

 

「じゃ、じゃあいくよ?」

「うん」

 

 

 瞬間、辺りの空気が変わった。………結衣さん、気、使っておりますやん。え? マジでぇ………これってさぁ………完全に結衣さんのおじいちゃんの仕業だよねぇ? 「槍術のついでに気の扱い方でも教えてやるかのぅ」的なノリだったの? それとも気が扱えないと不可能なほど難しい槍術なの? どちらにせよ、ただの槍術じゃあなさそうだね。

 

 

「―――――立華流壱ノ型『壱岸花(ひがんばな)』!!」

 

 

 結衣さんが型の名らしきものを叫ぶのと同時に動き出した。

 

 槍を両手で持って左下から斜めに円を描くように振り回した。途中で左手を離したんだけど………それと同時になんか槍の穂先から炎が出てるんだけど………多分斬りつけた対象を燃やすんだろうね。えげつねー。あつそー。

 

 ていうか、結衣さん何気に気の性質変化させとるやん。魔力が感知できなかったから必然的にさっきの炎は気の仕業ってことになるんだけど………俺の魔力感知がゴミで感知できないわけじゃないよね?

 

 

「ふぅ………ど、どう?」

 

 

 ちょっと恥ずかしそうに訊いてくる結衣さん。

 

 

「すごいね。気も使ってるみたいだったけどおじちゃんに教わったの?」

「うん!! なんか気が使えないと自分がボロボロになっちゃうらしいんだ」

 

 

 どんだけ身体に負担がかかるんだよ。え? 普通の槍術じゃなかったの? まぁ槍の穂先から炎が出るような槍術は普通とは言わないけど。その前におじいちゃんマジで何者だよ。気を扱える+槍術+おじいちゃん=異常。これは……何かありそうだね。

 

 

「後どれだけ型があるの?」

「私は一〇個しか使えないんだけど………おじいちゃんが『我が立華流の奥義は一〇八あるのだァァァァァ!!』って言ってたよ」

 

 

 ネタだろそれ。絶対ネタ。逆にネタじゃなかったら怖い。多分、ていうか絶対結衣さんの知ってる一〇個で全部でしょ。その他に最終奥義的なのはあるかもしれないけど。

 

 あ、そういえば―――――

 

 

「結衣さん。なんかさ、ブリューナクの輝きが少し強くなってない?」

「え? あ、ホントだ。それになんか柄の部分に稲妻の模様が………」

「マジで!?」

「う、うん………まだちょっとだけだけど。―――――ほら」

 

 

 結衣さんにうながされるままに槍の柄を見る。おぉ………蒼い稲妻模様だね。もしかしてこれが練度の具合を現してるのかな? この蒼い稲妻が穂先まで到達した時、ブリューナクは完全に覚醒する―――――的な? この調子で行けば結構早く模様が行き渡りそうだね。………そんなに甘くなさそうだけど。ダイエットでいう停滞期的な? 

 

 俺も少しナイフを使った戦闘の練習しよ。練習っていうか見直しかな? 結衣さんは集中してて勝手に槍術の練習してるし………いいよね?

 

 

 

†††

 

 

 

 午後になりました。昼ごはんは焼きそばで我慢してもらいました。

 

 午後になったからって特に何があるわけでもない。午前同様に結衣さんは槍術を見直すのと同時にブリューナクの練度上げ、俺は………何しようか? 

 

 いやぁ………暇だね。あ、そうだ。黒歌に電話しよ。すっかり忘れてたけどそろそろ連絡しないと。

 

 スマホで電話帳を開いて『黒歌』を開く。電話番号のとこを押して………プルルルル鳴ってる。あ、つながった。ワンコールだぜ。

 

 

「もしもし黒歌?」

『一!! 今何処にいるにゃ!!』

 

 

 焦りに焦った黒歌の声が聞こえてくる。何かあったのかな?

 

 

「えーっと………名前すら知らない異世界」

『にゃにゃ!?』

 

 

 めっちゃ驚いてる。もうめっちゃ驚いてるね。

 

 

「それで何かあった?」

『べ、別に何もないけど………』

「よかった………そういえば黒歌は今どこにいるの?」

『家にゃ』

「りょーかい。じゃね」

『にゃ』

 

 ここで黒歌との通話を終える。

 

 多分黒歌これからどこか行くね。なんか声音が震えてたもん。まぁその辺は黒歌の自由だからね。俺はダメって言えないよ。

 

 黒歌の件はとりあえず………とりあえずだからね? とりあえず置いておこう。

 

 午後は何をしよう? さっきも言ったかもしれないけど特にやることがない。あ………気の収束でも練習しようかな。

 

 気弾をつくるのに、辺りの生きとし生ける全てのもの気を少しずつ集めてつくったら俺の気を使わないで済むと思わない? その練習をしてみようと思うんだ。最終的にはそれも身体強化に回せるようになれたい。そうすれば俺自身の気はほとんど使わんなくて済むしね。

 

 とりあえず瞑想してみよ。………なんか迷走しそうだね。

 

 

 

†††

 

 

 

 どうも結衣です!! 一くんに言われた通り、午後からも立華流の見直しをやってるんだ。それと同時にブリューナクの練度を稼いでます。

 

 このブリューナクって結構―――――いや、かなり使いにくいんだよね。穂先が五つに分かれてる槍なんて普通は使わないもん!! おじいちゃんに槍術を教わった時だって薙刀で練習したし………

 

 私が知ってる立華流は全部で一〇個。

 

 立華流壱ノ型『壱岸花(ひがんばな)

 

 立華流弐ノ型『弐貴桜(ふきざくら)

 

 立華流参ノ型『参茶花(さざんか)

 

 立華流肆ノ型『肆莪(しゃが)

 

 立華流伍ノ型『伍蝶蘭(こちょうらん)

 

 立華流陸ノ型『陸璃唐草(るりからくさ)

 

 立華流柒ノ型『柒変化(しちへんげ)

 

 立華流捌ノ型『捌薙一華(はないちげ)

 

 立華流玖ノ型『雛戯玖(ひなぎく)

 

 立華流拾ノ型『拾二単(じゅうにひとえ)

 

 どれも癖があって使いどころを選ぶんだけど、威力はすごい。おじいちゃんも一くんと同じで昔ははぐれ悪魔を相手に戦っていたらしいんだよね。誰かに命令されてたわけじゃなくて、自主的に。理由はまだ教えてもらえないんだけどね。なんか結構ドロドロした理由のような気がしてしょうがないなぁ………

 

 技の名前からわかるように全部花に関することなんだよね。さすが橘―――――立華流だよね。

 

 立華流の件はこの辺にしておいて。

 

 一くんのところに行ってみよう。もう気が半分くらいになちゃってこれ以上槍術の型をやっても集中できそうにないからね。ま、まぁ戦いになったらそんなの関係ないけどっ。

 

 さっきからずっと動かないんだけど………なにやってるんだろう? でもなんだろう。一くんの周りはなんだからポカポカしてる。なんだか穏やか気分になるなぁ。天気もいいしね。ふと、空を見上げてみる。

 

 

「なにあれ………」

 

 

 太陽が………二つあった。

 

 

 

†††

 

 

 

「なにあれ………」

 

 

 結衣さんの声が聞こえてきた。目を開けて、辺りを見回す。右、左、そして―――――上。おぉ………!! で、できた!! 

 

 

「できたぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 上空には太陽のように輝いているとても大きな気弾が存在していた。いやぁ疲れたなぁ………ってあれぇ? ちょっと油断しただけで気弾が霧散しちゃったんだけど。むぅん………どんだけ難しいんだよこれ。これだとあれだね。まだまだ実戦投入はできないね。

 

 

「一くん、今のって………」

「ん? 今のはね、辺りの生きとし生ける全てのもの気を少しずつ集めてつくってみたんだけど………ちょっと油断したら霧散しちゃったよ」

「周りの生物の気を集めたの!?」

「うん」

 

 

 俺も結構軽く答えてるけど実際さ、かなりしんどいからね。もう集中しまくんないといけないしさ。現にさっき瞑想してたじゃん。

 

 これからどうしようか結衣さんに訊こうとした時だった。

 

 ―――――ドオォォォォォォォォォォォン

 

 

「今の何!?」

 

 

 結衣さんがびくっ、としながら言った。

 

 多分今のは爆発だね。それか何かが地面に叩きつけられた。どちらにせよただ事じゃないね。

 

 

「ちょっと見てくるね。結衣さんはここに―――――」

「ヤダ!! 私も行く!!」

 

 

 いて。って言いたかったんだけどなぁ………まぁいいか。

 

 《桃源郷の探索者(エクスプロール・シャングリラ)》を発動させて、俺を中心とした半径5.040m―――――俺の絶対領域が展開されるのを確認。そのまま『狐のお面』と『軍服みたいな外套』を念じて俺の絶対領域内に()()創造する。

 

 

「はいこれ。一応着けてね」

「え? え?」

「一緒に来るんでしょ?」

「うん!!」

 

 

 すごくいい笑顔で結衣さんが言った。

 

 俺も狐のお面と外套を纏って探索者(エクスプローラー)の格好になる。結衣さんの方を見ると、結衣さんも狐のお面と外套を纏っていた。

 

 

『じゃあ行こうか』

『うん!! ってあれ!? 声が………』

『お面にそう言う効果が出るように細工しておいたんだ』

『な、なるほど………』

 

 

 一応声音を変えておかないとね。一応。万が一っていうのもあるかもしれないからね。まぁないと思うけど。なんていったってここは異世界だからね。

 

 とりあえずなんか煙が出てるところに向かおう。

 

 

『―――――ブリューナク!!』

 

 

 結衣さんがブリューナクを出現させたのを確認して歩みを進める。俺は《桃源郷の探索者(エクスプロール・シャングリラ)》―――――ナイフをもう右手で逆手に持ってるし。

 

 辺りを警戒しながら進んでいく。前は俺が、後ろは結衣さんがね。そして原因であろう場所へついた。何か結界が張ってあるみたいなんだけど………何だろこれ。

 

 結界の中を覗く。………これは回れ右だ。完全に回れ右だ。今すぐ全力で回れ右だッ!!

 

 

『結衣さんすぐにコテージに戻ろう!!』

『え? ど、どうしたの急に』

『これはマズいよ………マズすぎる!!』

『な、何があったの?』

 

 

 この魔力の質と気。そしてドラゴンのオーラ。

 

 

『簡単に言えばあそこに―――――』

 

 

 そこからは言葉が出せなかった。なぜか? こっちに向かって飛んできてるからだよ!! 

 

 

『ド、ドラゴン!?』

 

 

 結衣さんが悲鳴に近い叫び声を上げた。

 

 そうだよ。こっちに向かって飛んできてるんだよ。正確には吹っ飛んできてるだけど。ドラゴン。それも『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』のタンニーンが!! 

 




最後の最後に一くんがどんな世界に行ったかわかりましたよね?
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