確かに………確かに異世界だけどさ………これはちょっとひどくない? 俺は『人外共がひしめき合っていて、ある程度秩序の保たれた世界へつなぐ扉』って念じた。確かにその通りだ。
なんでこんなことになったチクショウが!! なんとなく嫌な予感はしてたんだよ。だってさ、空が紫色だったんだもん。前に一度サーゼクスのところに黒歌の件で特攻したときにも「空が紫色だなぁ………」とか考えてたもん。
だが今はそんなことを考えている暇はない!!
俺と結衣さんに向かってタンニーンが吹っ飛んできている。結界は張ってあるようだからこっちに突っ込んでくる前には止まるだろう。だがまて、こっちから向こうが見えるという事は、向こうからこっちが見えるという事じゃないか?
タンニーンとは
面が割れている。ということは助力を求められるかもしれないということだ。ま、まぁそれはないと思うんだけど………あったら嫌じゃん。
それでも気になる。っていうかいい機会かもしれない。まだ一度も人外同士の戦いを見たことのない結衣さんに、人外同士の戦いを見せる。でも
万が一、万が一俺と結衣さんがタンニーンと敵対している奴らに見つかったらどうなる? 問答無用で殺しにかかられるかもしれない。「見られてしまったか………なら仕方がない」的な感じで。俺は《
それはいかん!! 女の子に怪我をさせるわけにはいかん!!
究極の二択だ―――――って思ったんだけどそうでもなかったね。俺の絶対領域は俺を中心とした半径5.040mだ。その中にいれば結衣さんを守ることだってできる。あぁなんだ、そこまで悩むことじゃなかったね。
『ちょっと見に行こうか』
『えぇ!? だ、大丈夫なの?』
結衣さんが心配そうに訊いてくる。
『大丈夫だけど、俺のそばから絶対に離れないでね』
『う、うん………あ、そうだ』
『どうし―――――』
たの? って聞こうとしたんだけど言葉が繋げられなかった。理由は結衣さんが満面の笑みで俺の左手を握っていたから。
ちょ、ちょま、えぇ!? 確かに手をつないでいれば離れることはないだろうけど………ま、まぁ結衣さんがいいならいいか。別に嫌じゃないし。
『じゃ、じゃあ行こうか』
『うん♪ えへへ』
俺と結衣さんは手をつないだまま結界内に潜り込んだ。そのとき、感知されないようにいろいろと工夫したけど………すっげー大変だった。もう説明するのも面倒なくらい。念じる量がハンパなくてね。
それは置いておいて。
現在、俺と結衣さんの目の前には顔を真っ青にさせているリアス・グレモリーと白音、そして満身創痍で血だらけの逸せーがいる。結衣さんそれを見た瞬間飛び出しそうになったんだけどそこは『動くな』と念じて無理やりとどまらせた。
仕方ないでしょ。だって相手の人数も能力も力量もわからないんだよ? なにも情報がないのに突っ込んでいたってリアス・グレモリーと白音、イッセーの二の舞になっちゃうよ。ていうかなんでリアス・グレモリーと白音はドレスを着てるんだろう。
『見ちゃダメ!!』
『にゃにゃ!?』
思わずへんな声出しちゃったけど仕方ないよね。だって結衣さんが俺の目を手で覆ったんだもん。急にどうしたんだろう? まぁすぐに、って言っても五秒くらいたったかな。目隠しをやめてくれた。
『急にどうしたの………ってえぇ!?』
『ね、ねぇ………あの鎧って………』
結衣さんが言った通り、イッセーは赤い鎧を纏っていた。………あれって
『あれは
『へぇ~………一くんは?』
『俺はまだ至ってない』
きっかけがないからね。マジで。だって今の能力でも十分だし。
『そんなことより―――――ほら、見て。イッセーの動きが変わったでしょ?』
『う、うん………ていうか鬼畜?』
そうとらえてもしょうがないと思う。だってさ、イッセーのワンサイドゲームになってるんだもん。殴って殴って殴りまくってる。ちなみに相手はこの前駒王学園に来ていた
それにしてもイッセーの戦闘能力が上がっているなぁ。
『そういえばさっきのドラゴンはどうしたのかな?』
『タンニーンのこと? まぁしぶといし生きてはいると思うけど』
『あのドラゴンってタンニーンって言うんだ』
あれ? 結衣さんに説明しなかったっけ?
『「
『強いの?』
『強いよ。パワーだけなら魔王級だって』
タンニーンからの情報です。詳細は知りません。
『もうそろそろ逃げ―――――』
ようか。そう続けたかった。でも続けられなかった。理由? そんなの―――――
『い、今こっちにレーザーが………』
結衣さんが顔を真っ青にしながら言っているように、イッセーが魔力レーザーをこっちに飛ばしてきたのだ。まぁ
もちろんレーザーは無効化した。俺の絶対領域にもろかぶりだったからね。ちなみに不自然な消え方をしたレーザーを見てもまったく気にしないイッセーにモノ申したい。まぁ俺の絶対領域内の気配を消しているから見つかるわけがないんだけどね。完璧なステレスってやつ? 言い方は気にしないっ。
それは置いておいて。
『今度こそ逃げるよ!!』
『う、うん!!』
結衣さんと手をつないだまま駆け出す。俺も結衣さんも気で身体強化しているので結構な速度が出てる。結界をぶち破る勢いで結界から抜け出して、あえて遠回りをしてコテージへ向かう。追跡されにくいようにね。
コテージに着いた俺と結衣さんはとりあえず狐のお面と外套を脱いだ。
「はぁ………怖かったぁ………」
「まぁ、ね。それでどうだった? 初めて人外同士の戦いを見てみて」
「うーん………なんか現実じゃないっていうか………ゲームみたいだったかな」
なるほど。まぁわからなくもないね。初めて見たら
「結衣さんはこれからそこに飛び込むんだよ」
「うぅ………そうだよね………」
「まぁ自分からってわけじゃないけどね。あくまでも襲われたらやり返すって感じだね」
「うん。でも―――――」
「どうしたの?」
「な、なんでもないよっ」
急にどうしたんだろう? まぁいっか。
†††
「お待たせ一くん!!」
「いや、今来たところだよ」
このテンプレ的な会話。この会話をしているのは人間界だよ。夏休みを一〇日程残して戻ってきた。いや、念の為ね。
その念の為に残した時間で結衣さんに遊びに行こうと誘われました。
「一くん………」
「………………………………………………あ、ごめん」
まぁ、その………ね。結衣さんの服装がね。ノースリーブの白ブラウスに赤いチェックのミニスカート。そして黒ニーソ。前にも言ったように、この場合はミニスカート+ニーソ=絶対領域の公式が当てはまる。俺が絶対領域に注目しないとでも? 相変らずの「ぷにっ」と感がたまらない。
「それじゃあ行こうか」
「うん♪」
「結衣さん………その………これはいったい………」
「いいでしょ?」
そんな上目遣いをされてはことわれませぬ。
俺と結衣さんの行先は、プールと遊園地が一体化しているレジャー施設だ。なんとかサーゼクスリゾートだったかな? まぁ名前からもわかるように、サーゼクスが一枚かんでる。そのおかげですっごい豪華なんだけどね。
そこまでは駒王駅からバスがでてるので、それに乗った。乗車時間はおおよそ三〇分。けっこう早かったね。もっとかかると思ったんだけど。
目的地に着いた俺と結衣さんは、チケットを買って入場した後、それぞれ更衣室に向かった。午前中はプール、午後からは遊園地を楽しむって計画になってるんだ。
「まぁ俺の方が早いよね」
だって男だもの。下を履くだけっていうとっても簡単な作業でした。俺は普通のトランクスタイプの水着です。柄は黒白のモノトーンで千鳥格子が描かれている。
「おまたせっ。どう………かな?」
「………………………………………………綺麗だ」
「ふぇぇっ!?」
「あ………」
いや、マジで綺麗なんだけど。水着は白のビキニだった。別にきわどくない、普通のね。でも逆にそれがいい。大和撫子を体現したような容姿の結衣さんにはとても似合っていた。
「さ、最初はなにする?」
「うーん………流れるプールにしない?」
「りょーかい。いこっか」
「うん♪」
流れるプールの近くまで来た俺と結衣さん。ここで一つ問題が起きた。その問題とは、うきわだ。ここにはうきわがプールサイドに置いてあって自由に使っていいんだ。でね、うきわに問題があるわけじゃないんだ。数が問題なんだ。普通は一人一つでしょ? もちろん俺はそれを提案したんだけどね、結衣さんがさ………
「うきわは一つでいいよね?」
「え? 普通は一人一つの俺と結衣さんで二つじゃないの?」
「一つでいいのっ」
「ちょっ、ま―――――」
みたいな感じでね。結局くきわは一つになりました。
それでね、うきわの使い方がさ、結構クる。まず、結衣さんがうきわの穴に入ります。そして俺がその後に俺が穴に入ると………いや、完璧に恋人同士がやるアレですよね。ま、まぁいいんだけどね。でも肌と肌が触れ合うから妙な緊張感に襲われる。耐えろ………俺の理性よッ!!
しばらく流れるプールで流れた後、さらなる試練が俺を襲った。
「スライダーやろうよ!!」
「ス、スライダー!?」
そう、スライダーだ。それも二人で。ほら、二人で滑れるやつってあるじゃん。あれだよね。まぁうきわを使うならさ、俺もここまで驚かないよ。使わないからね。結衣さんが俺の手をひぱって連れて行っているところはうきわを使わないからね。
「早く早く!!」
「うぅ………」
やけに積極的だなぁ………俺、遊園地まで生きていけるかなぁ………
†††
水着から着替えた俺は、ベンチに座って項垂れていた。スライダー? どうにか乗り切ったよ、鼻血を出さないでね。すっごく疲れたけどね。
「お待たせっ」
結衣さんに声を掛けられて顔を上げる。
「早くいこっ!! 時間は限られてるしねっ」
結衣さんが元気すぎてすごくまぶしい。その元気、俺にも分けてほしいね。
結衣さんに引っ張られること数分。連れて行かれたのはジェットコースターだった。そのジェットコースターがまたエグイ。レールが見えたんだけどさ、内側にえぐれてるからね。いや、嘘じゃないからね。安全………なんだろうなぁ………なんせサーゼクスが経営してるんだし。
「ドキドキするぅ」
「…………………」
となりで結衣さんがめっちゃいい笑顔で言った。俺はそれどころじゃない。
ジェットコースターの安全バーが俺の命綱だ。そう思うとなんだからこのがっしりとしている安全バーも頼りなく思えてくる。
そして時が来た。
ゆっくり、ゆっくりと高くなっていった。しかもレールの脇に高さが記されている。50m………落ちたら死ぬね。そして限界まで高くなった。高さは100m。いや、おかしいだろ!! なんだよ100mって!! これが悪魔クオリティか!? そうなのか!?
そんでもって少しだけ落ちてそこで止まるとか………重力があるんだから早―――――
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
いきなりきたぁぁぁ!? 俺は驚きの叫び声を、結衣さんはどう聞き取っても楽しみの叫び声を上げた。
えぐれてる。レールがえぐれてるぅぅぅぅぅぅ!! と思ったら回っとる。めっさ回っとるぅぅぅぅぅ!? そ、そんなに回しちゃらめぇぇぇぇぇぇぇ!!
†††
「ぉぉぉぉぉおお………」
「だ、大丈夫?」
「ど、どうにか………」
叫びにならない叫び声を出していた俺に結衣さんが水を渡してくれた。
いやぁ、マジで吐くと思ったわ。回り方がえぐい。右回転にしまくった後に左回転で戻ったと思ったらまた右回転だからね。
自分で動く分には問題ないんだけどなぁ………
「それじゃあ次いこっか」
「え?」
「ささっ、早くいこっ」
俺、生きて帰ったらさ、黒歌の手作りごはんをお腹いっぱいに食べるんだ。