一領域目 俺と結衣さんと体育祭準備
夏休みが、終わってしまった。もう一度言うね。夏休みが、終わってしまった。
思い返せばこの夏休み、結衣さんと冥界で合宿した以外には、結衣さんとプールと遊園地に行った以外思い出がない。あぁ、ちなみに夏休みが終わったのは結構前だからね。始業式という体育館に缶詰にされて熱中症寸前まで校長先生の話を聞く最悪なものもとっくに終わっている。
黒歌のつくってくれた朝ごはんをいただいて、身だしなみを整えて学校に行く準備を完了させる。
「それじゃあ行ってくるね」
「いってらっしゃい」
「いってきます」
黒歌に見送られて玄関扉を開ける。
「うおぉぉぉ………あつぃ………」
九月だからね。まだまだ暑い。日差しに加えて日本特有の湿気。まったく………これだから夏は嫌なんだ。でもまぁ………女の子が薄着になってくれるのはうれしいけどね。
「あはよう一くん」
「おはよう結衣さ………ん?」
条件反射であいさつをしちゃったけどさ、ここ、俺の家の前だよね?
「どうしたの結衣さん? 家まで来て」
「一緒に学校に行こうかなって………ダメ?」
「いいですけど………」
「やったー!!」
断れるとでも? もう一度言おう。断れるとでも? ていうかもうここまで来ちゃってるから断ってもついてくるよね。………病んだ目で。
「………一くん」
「……………………………………………………あぅ」
制服には制服の良さってものがある。駒王学園の制服、ミニスカート。結構オシャレだよね。それが引き立てるのは純白のニーソックス。さて、ここで当てはまる公式はミニスカート+ニーソ=絶対領域だよね? まぁ見るよね。ガン見だよね。
冥界であれだけ外で生活していたのに日焼けをしていない健康的な白さの太もも。白ニーソに少しだけ締め付けられていて「ぷにっ」としている太もも。目が離せないっ。
†††
新学期―――――二学期は既に始まっている。現在駒王学園は九月のイベント、体育祭の準備をしている。
それでね、この時期になると湧くんだよ。何がだって? 夏デビュー(笑)した奴だよ。髪型だけカッコイイ男とか、今時の流行にすぐにのっかて制服とかを改造する女子。まぁそれを全部許容している駒王学園が少しおかしいのかもしれないけど。
正直、普通が一番だよね。結衣さんを見てください。まぁスカートの短さについては俺得だから触れないでおくね。髪は夏が明ける前から綺麗だったし、制服も改造はしてない。いいですね。最高です。
後ろの方で変態三人組が何やら騒いでいる。たまに放送位禁止用語が聞こえてくるあたり、夏の過ごし方でも話をしているんだろうね。
「このクラスに転校生が来る!! 女子だ!!」
突然教室に駆け込んできた名前も知らないクラスの男子が叫んだ。いや、そこまで騒ぐことじゃないでしょ。
「「「「「えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」」」」」
みんな驚きすぎでしょ。結衣さんを見習いなさい。静かに座って本を読んでいるでしょう。
しばらくすると、先生が教室に入ってきた。ホームルームが始まる少し前だね。
「えー、このような時期に珍しいかもしれませんが、このクラスに新たな仲間が増えます」
男共のテンションが高すぎて気持ち悪い。女子は女子で男共の反応に呆れつつも興味津々なみたいだね。
「じゃあ、入ってきて」
先生の声に促されて入室してきたのは―――――おっふ………
「「「「「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」
男共が叫んでいるが俺はそれどころじゃなかった。
登場したのは栗毛ツインテールの美少女。ここで分かった人もいるだろう。あぁそうだよ………こいつは―――――
「紫藤イリナです。皆さん、どうぞよろしくお願いします!!」
エクスカリバー(笑)事件でおなじみ、ゼノヴィアさんと一緒に駒王町に派遣されてきた教会の戦士(笑)、紫藤イリナさんです。
一つ………気になることがある。イリナさんの気配が人間のものじゃない。悪魔特有の魔の気配でもない。これは聖の気配だ。まさか………天使化したのか? だけど転生システムは悪魔しか使えないはず………同盟をいいことに技術提供でもしたのか? 悪魔が? ちょっと考えられないなぁ………
†††
イリナさんが駒王学園に転校してきてから数日がたった。
「はいはい!! 私、借り物レースに出まーす!!」
そう言って手を挙げるのは元気いっぱいのイリナさん。すごいね。既にクラスに溶け込んでるんだから。
現在、ホームルーム中です。体育祭で誰が何の競技をするのかを決めているんだけど………結衣さんからの視線が凄く痛い。
結衣さんに言われてしまったのだ。「私と一緒に二人三脚に出よっ」ってね。まぁ了承しましたとも。だってさ、拒否の言葉の一文字目を言った瞬間だよ? 「ゴ―――――」この段階で目が病んだからね。瞳からはハイライトが消え去って、首をかくんとかしげる。なんか背後には紫色のオーラが………それは気ですか!? 気なんですか!?
あー………マジで怖かった。そのまま包丁で刺されるかと思った。いや、槍で串刺しか。どちらにせよ、死は………免れないッ!!
結局俺は結衣さんと二人三脚に出ることになった。その他には―――――なん………だとッ!? な、なんで俺が100m走と4×100mリレーに選ばれてんだよ!! 俺は手を挙げていないし………男共が俺を推薦するはずがない。残りは―――――
「えへへ………」
あなたですか………結衣さん。隣の席の結衣さんはとてもほっこりした顔です。俺が顔を向けた時の「えへへ」発言。犯人は―――――結衣さんだッ!!
しかしまぁ、よく他の人が反対しなかったね。普通なら反対しそうだけどね。ほら、俺ってクラスでの交友関係は結衣さん以外ほとんどないから。結衣さん以外とは日直か先生からの伝言を伝える程度だし。べ、別にボッチじゃねぇし!! 結衣さんがいるしっ。
まぁ結衣さんの意見には男も女子も反対はしないよね。だって人気だし、結衣さん。これだけ清楚な女の子は知らないね。病んでる女の子も知らないけど。
結衣さんは病んでいることが確認できました。もう病みかけている、って段階じゃない。病んでます。でもハードな病みじゃない。まだソフトだから。家まで来て一回のチャイムで出ないと「いるのはわかってるよ♥」って言ってピンポン押しまくったり、お弁当が赤く染まってたり、ストーキングはされてない。あれだね、他の女の子と話をしたりするとちょっと危ない。
それにしても二人三脚かぁ………
二人三脚。それは走者二人が内側の足首を紐などで結び調子を合わせて走るもの。運動会やクラスマッチなどで行なわれる。
むぅん………練習が必要だよね。でもあんまり人前では練習したくないなぁ………その、恥ずかしいじゃん。周りからの視線も痛そうだし。
†††
翌日―――――今日から学園全体で体育祭の練習などが始まってしまった。そう、始まってしまったのだ………
俺のクラスの奴らも体操着に着替えて、男女合同でグラウンドで競技の練習をしている。
体操着に着替えた俺は、100m走のレーンの一つに立っていた。理由はリレーの順番を決めるためだ。俺はニ番目か三番目辺りがいいんだけどさ、選ばれた奴らの中でも遅い人から走らせたいみたいでね。ていうかやる前に結果なんて見えてるでしょ。
俺以外の三人は現役陸上部のワンツースリーだよ? どこに勝ち目があるんだよ。気? そんなもん使うかよ。使った瞬間白音辺りに俺が
気がなければ俺はただの人間だから、現役陸上部ワンツースリーにはかないっこありあせん。あ、ちなみに二年のワンツースリーだからね。
それでね、さっきからニヤニヤうざったいんだ。その三人が。まぁどうでもいいから無視だけど。
「一くん頑張って!!」
「あはは………」
結衣さんが応援してくれても苦笑いしかできない。だって三人からの視線が痛いんだもん。
「On your mark―――――」
スターターの声でしゃがみこみ、いい感じになるまで姿勢を整える。
「―――――get set」
腰を上げて前傾姿勢になる。そしてその瞬間を待つ。少し間を開けてそれは鳴った。
―――――ドン
低いスタートの合図。スタートを知らせるピストルの音。
鳴った瞬間、俺は駆けだした。ついでに隣の三人も。横、後ろは気にしない。真っ直ぐ前を向いて駆けるのみ!!
ゴール―――――俺の前には、誰もいなかった。ってえぇ!? おかしくね!? 俺って帰宅部だよ? なんで現役陸上部ワンツースリーに勝ってるの!? あ、でもよく考えたら納得かも。だってさ、はぐれ悪魔狩りとかである程度は筋力も鍛えらえてるわけじゃん。加えて俺の戦闘スタイルは走ったり跳躍したりが多い。だから走りもそれなりに………あぁ………まぁいいや。
「一くん!! 速かったね!!」
ゴールしたあと、結衣さんが駆け寄ってきてタオルを俺に渡しながら言った。
「あー………まぁ色々とあるからね」
「た、確かに………」
はぐれ悪魔狩りとか。夏休みの合宿で結衣さんは痛いほど知ったからね。
「ちょうどいいや。このまま二人三脚の練習しようよ」
「あ、いいね!! やろうやろう!!」
すでに同じクラスの男女ペアが組んで練習してる。簡単に見た感じ、うまい奴はうまい。でも息が合わないと大変って感じ。顔を見てみると、うん、恥ずかしいのか少し赤い。イッセーもアーシアさんと練習をしていた。
「結衣さん、どっちの足を結ぶ?」
「うーん………右足がいいかな」
「りょーかい」
俺の左足と結衣さんの右足にひもを結ぶ。きつすぎず、ゆるすぎず。ちょうどいい感じにね。
「それじゃあいこうか」
「うん♪」
さぁ、ここで問題が発生したぞ。
二人三脚ってさ、くっついてるじゃん。周りのペアもそうなんだけどさ、みんなパートナーの腰に手を回してるんだよね。ま、まぁそっちの方が動きやすいんだろうけどさぁ………
「ほら、しっかりしてっ」
「うわぁぁぁ!?」
結衣さんが俺の左手を取ってじ、自分の腰にぃぃぃぃぃ!! や、やわらかい………
なんか結衣さんの髪からいい匂いが………ぴったりしてるから結衣さんの身体が………
「それじゃあ『いち』で内側の足を前に出してね?」
「う、うん………」
俺はそれどころじゃないんだけど。プールの時もそうだったけどさ、結衣さんってスタイルがいいから………その………ね。なんでもありませぬ。
「せーの―――――」
「「いち、に、いち、に、いち、に、いちにいちにいちにいちにいちにいちにいちに―――――」」
だんだんスピードが上がっていった。すごいよ、だってもうほぼ全力疾走だもん。そのままペースのままトラック一周した。したんだけど………
「きゃっ」
最後の最後で転びかけた。躓いた瞬間に左手で結衣さんの上半身を支えた。
「ちょっと調子乗りすぎたね?」
そう言って結衣さんの方を向いた。………あれ? なんか結衣さんの顔が赤くなってるんだけど………そういえば左手がすごくやわらかいものを―――――あぁ、胸ですか。って胸えぇぇぇぇぇぇ!?
あれ? 俺はお腹の辺りを支えたはずなんだけど………えぇ!? は、早くてをどかさなきゃ!!
「ごめん!! すぐにどかすからっ!!」
「べ、別に………」
「ほぇ?」
「な、なんでもないよっ!!」
とりあえず結衣さんを起こして手を離す。はぁ………すごく疲れたよ。
†††
家に帰った俺は、黒歌とお風呂に入った後、夜ごはんを食べて自室にこもっていた。
ここ最近さ、俺は
そこで俺は考えた。俺を中心とした半径5.040m―――――俺の絶対領域内でコスチュームを創造して、それを可愛い女の子に着させて写真を撮ったりにゃんにゃんできないかと。黒歌はいつも絶対領域を展開してくれているから今のままでいい。他の可愛い女の子の絶対領域も、見てみたいじゃないか!! 結衣さんはここ最近毎日絶対領域を展開してくれている。なんか俺の反応を楽しんでいるみたいだけど………細かいことは気にしない!!
というわけで、悪魔でも呼んでみますか(笑)
悪魔は代償を払えば何でもしてくれる。だから俺が創造したコスチュームを着てもらって、写真撮影やにゃんにゃんできたらな、と思いまして。もし仮に、グレモリー眷属が来てしまっても大丈夫だ。グレモリー眷属は俺が
今日は呼ばない。今日はもう疲れたからね。それにカメラもないし。明日一眼レフとレンズを買って、コスチュームを用意できたら呼んでみようと思う。
さぁ、一世一代のギャンブルをしようかッ!!