目覚めは最高だった。なんせ、とってもすばらしい写真が撮れたのだから!!
今日は土曜日だ。確か結衣さんの家にお邪魔するんだったかな? おじいちゃんを紹介してくれるんだって。俺は殺されないか心配だよ。誰がだって? 俺に決まってんだろうが。
結衣さんが家まで迎えに来てくれる時間が一一時ジャストだから………まだ二時間はあるね。今は九時ジャストだし。
クローゼットから適当に服を取り出して着替える。そして黒歌が待っているであろうリビングへ向かう。
リビングへの扉を開けながらあいさつをする。
「黒歌おは………よ………う………」
「おはよう、一」
少しどもったのには理由があるんです。黒歌からさ、なんか闇色のオーラが立ち上ってるんだ。すごく………怖いです………
黒歌は無言でソファから立ち上がって、俺に抱き着いてきた。
「ちょっ、黒歌!?」
首筋に顔をうずめて匂いを嗅いでいるみたいだった。………ま、まさか!?
「他の女の匂いがするんだけ………どうして?」
「あ、あはは………」
「どうして?」
おいおい………まさか黒歌まで病んじまったのか!? いや………それはないだろう。だって瞳にはハイライトが………って、雫? も、もしかして黒歌、泣いてる?
俺は黒歌の目尻にある雫を人差し指で拭いながら言う。
「ごめんね………別にナニがあったわけじゃないんだ。ただ膝枕を―――――」
「膝枕!? それは私の特権だにゃ!!」
「ごめん………」
でも俺の夢のためなんだ………いやでも………くぅぅぅ………
「じゃあ私の言うこと一つ聞いてよ………」
「え?」
「ダメ?」
「うぅ………」
そ、そんな上目遣いで見ないでおくれ………でもまぁ俺が悪いんだそれくらいはいいか。
「わかったよ………」
「やったー!!」
そう言って抱きしめる力を強くする黒歌。
「で、でもエッチなことはダメだよ? お風呂まではいいけどその先はダメ」
「えぇ!? そ、そんにゃ………」
エッチなことする気だったのかよ!? 冗談で言ったのに!! ま、まぁそういうのに興味がないわけじゃないんだけどさ………初めてはちゃんと、ね。命令とかお願いとかじゃないほうがいいと思うんだよね。
黒歌が離れてくれたあと、俺はすぐに自室に戻った。理由は昨日取った写真のデータを守るためだよ。
昨日の写真のデータはノートパソコンに入れてある。その他にもカメラのSDカードにも入っているんだけど………なんか心配じゃん。データを存在を知った黒歌がSDカードをカメラごと壊したり、念のためとか言ってパソコンまで壊したりしたら………考えるだけで寒気がする。
俺は《
始めようか………俺の夢をも守るために!! 俺は念じた。『絶対に壊れない』と。これで俺の領域内に侵入しているパソコンとカメラは『絶対に壊れない』ね。
「ふぅ………ミッションコンプリートだ」
ここまでしておけば心配ないだろう。もう核爆発があってもパソコンとカメラは壊れないね。まぁこの家も『絶対に壊れない』んだけどね。
†††
「ここが私の家だよ!!」
「おぉ………」
俺は結衣さんに案内されて結衣さんの家に来ました。想像通りと言っていいのかな? まぁ想像通りの日本屋敷だった。これ………いくらかかってんだろう………全く想像できないんだけど………
石畳を歩くこと数分。やっと屋敷についた。扉をがらがらとスライドさせて玄関へ――――――玄関広っ!! なんだこれ!?
「ただいまー」
「お、お邪魔します………」
おそるおそる一歩踏み出す。その瞬間―――――
「危ねっ!!」
矢が廊下の奥の方から飛んできた。俺はそれを右手で掴んで握り砕いた。危ないなぁ………対侵入者用のトラップか何かかな? それにしては凶悪すぎるだろ………ヘタしたら死人が出るぞこれ………
「だ、大丈夫一くん!!」
「う、うん………俺じゃなかったら死んでるぞこれ………」
まぁ人外は別だよ? だって人間じゃないんだから。あと武術の達人ね。
その後も何回か矢が飛んできた。途中で面倒になったから紙一重で避ける練習をしてみた。たまに失敗して髪の毛が数本舞ったけど、そこまでひどいことにはならなかった。
「ここだよ。ここにおじいちゃんがいるんだ」
結衣さんがそう言って立ち止まった。うん、そうだろうね。だって凄い気だもん。なんて言うえばいいんだろ………全てを包み込むようなとても優しい気、って感じだね。おおらかって言うのかな?
部屋に入ると、まず目に入ったのが結衣さんのおじいちゃんであろう老人。凄まじかいね。あ、顔じゃないよ? 気配って言うのか、重圧って言うか………とりあえず歴戦の戦士感がハンパない。
「座りたまえ………」
「失礼………します………」
少しどもりながら返事をして座布団に座る。よかった………何もされなかった。座った瞬間に薙刀で斬りかかられるかと思ったよ………
「すまないね。わざわざこんなところまで足を運んでもらって」
「いえ、そんなことはありませんよ」
お茶をすすりながら話を進めていく。
「まず始めに―――――はぐれ悪魔に襲われていた結衣を助けてくれてありがとう」
「まぁ運が良かったっていうのもありますけどね。結衣さんを襲っていたはぐれ悪魔が俺の討伐対象でしたので………」
「それでもだ。君がいなかったら結衣はこうして生きていたかもわからない」
そうだろうね………
「それで………俺を呼んだ理由とはなんでしょうか?」
「………結衣に、
「えぇ。それも
そう言った瞬間、結衣さんのおじいちゃんの顔が歪んだ。何か嫌なことを思い出した時のようにだ。とても………とても悲しそうだった。
「君も
「持っています。能力はお教えできませんが………」
「この夏、結衣に
「はい」
俺の返事を聞いた結衣さんのおじいちゃんは、何か決心をしたような表情になった。今まで秘密にしていたことを話そう………そんな感じのだ。
「私はこれでも人外を相手に戦っていたのだ」
「………………………………………………………」
ど、どう反応していいかわからないんだけど。無言を突き通すしか俺には選択肢がないんだけど。
「うちの血筋はね、少々『魔』に狙われやすいのだ。私の先祖も代々『魔』と戦っていたのだ」
ここから結衣さんのおじいちゃんによる橘の血筋について説明を受けた。
橘家は代々『魔』と戦っていたらしい。最初は妖怪だけだった。時間がたつにつれてその幅が広がっていったらしい。妖怪、霊、魔獣、そして悪魔に堕天使。
ここまで聞いて思った。先祖様一体何をやらかしたんだって。いや、先祖様のせいじゃないかもしれないよ? もともと橘の血が『魔』から見たらとても魅力的なのかもしれないよ? でもさぁ………なんだこのゲーム的設定。あとさ、今まで日本の歴史を振り返っても橘っていう苗字の陰陽師とかいなかったと思うんだけど。裏歴史的な? 表に出てこなかった裏の凄腕陰陽師―――――
結衣さんのおじいちゃんがまだ
案の定、その予想は当たっていた。当時、結衣さんのおじいちゃんが持っていた
まぁこれでやっとわかったよ。なんで結衣さんに宿っている
推測だけど、子孫に引き継がれることによってより血に馴染んでいったんだろうね。それによって能力が徐々に強大になっていった。最初は本当にちょっと特殊な槍が創造できる程度だったんだろうね。一〇〇や一〇〇〇の年月が経ち、ここまで強力な能力になったんだろう。ていうか、
結衣さんのおじいちゃんの親は別に深く調べなかったらしい。そういうものだと思い込んでいたらしい。
「人外共からスカウトはこなかったんですか?」
さすがに俺は訊いてしまった。
だって『魔』と戦ってるんだぜ? 信仰心がなくても天界がスカウトしないわけがない。その他にも
「もちろんあった。一番初めに接触してきたのは天界だ。次に堕天使、最後に悪魔だ。だが全て断った。当たり前だろう? さんざん襲ってきたのに信用できるはずがない。私は断った。先祖様もそうだったらしい。誰一人人外にはつかなかった。それも一つの理由ではあるのだ」
「なるほど………」
納得だ。今までさんざん攻撃してきた相手の仲間になるのは………無理でしょ。まぁ天界とはアレだろ、宗教的な問題? 日本人に聖書の神を信仰しろって方が無理だろ。あ、聖書の神は大昔に死んじゃってたんだったね。
まだ結衣さんのおじいちゃんの話は続いてるからね。
《
「結衣さんの親は
「うむ。だが引き継がなかったという表現より、覚醒しなかったという表現の方が正しいな。《
ようは、結衣さんのおじいちゃんの子、いわゆる結衣さんの親が生まれた瞬間、
そうだとしたら結衣さんのおじいちゃんはすごいな。ただの薙刀と立華流だけで子孫を襲いに来るはぐれ悪魔や暴走堕天使を返り討ちにしていたわけでしょ? どれだけの実力者だよ………でも血による恩恵も多少はあるのかな? だって『魔』に対抗し続けてるんだぜ? それに通じる何か………ねぇ? まぁ深くは考えないでおこう。俺の頭脳じゃあ無理だ。
「まぁ結局何が言いたいかというとだな―――――」
俺は息を呑んだ。今まで以上に真剣な顔で結衣さんのおじいちゃんは続けた。
「―――――結衣を、守ってくれないか」
「は、はい!!」
俺は思わず返事をしてしまった。まぁいいでしょ? 唯一と言ってもいい友達だよ? 守らない理由なんてないよ。
「そうか………すまないね」
「さ、さすがに家にいるときはお願いしますよ? 学校や外にいるときはともかく………」
「わかっている。そこまでしてくれれば十分だ」
さすがに結衣さんが家にいるときはね。学校にいるときは………基本的にはないだろうけどさ、万が一襲撃があったら責任もって守りますとも。
まぁこうして俺の結衣さんのおじいちゃんとの初コンタクトは終了した。あ、あと初めて女の子の家に来た。
結衣さんのおじいちゃん………激強です。
悪魔も最上級の下の方なら勝負できます。
結衣さんの
代々橘家の魂と血と共にあったんです。
そのことによって能力が熟成するのとともに強大になっていく―――――っていうのが自分の解釈です。