俺は今、大切な選択をせまられている。どんな選択かって? それは―――――
『というわけで、今度のリーアたんのゲームを見に来てくれないか?』
「何が!? 一体何がどうなってその結論に至ったんだ!?」
俺がレーティングゲームを見に行くか、行かないかだ。
サーゼクスから電話が来て、どうせはぐれ悪魔狩りの依頼だと思ったら違った………レーティングゲーム観覧のお誘いだった。
良く考えろ一!! ここで行くと答えればどうなる? 答えは簡単だ。観覧席に連れて行かれてグダグダとサーゼクスの
行かないと答えるとどうなる? 俺に直接的被害は皆無と言っていい。ダラダラとサーゼクスの
あぁ………これが詰み、って状態か。ははっ………所詮負けゲーだ。どうにかして回避できないかって思ったんだけど………別にいっか。まぁ結果を選ばなければいくらでも方法はあるんだけどね………さすがに魔王の精神をぶっ壊すわけにはいかないからね。結衣さんも連れて行って若手悪魔―――――同世代の人外の戦いを見るのもいいよね。
結衣さんが今まで見た人外の戦いは二種類しかない。
一つ目は、はぐれ悪魔と俺の戦闘(笑)だね。まぁいつも通り『塵になれ』で塵にしただけだから戦闘とは言えないよね。
二つ目はこの前の冥界での合宿中の対魔物戦だ。こっちは結衣さんも相手してたけど………正直、相手になってなかったね。魔物が。もうブリューナク片手に無双してたもん。立華流とブリューナクの掛け合わせはすさまじかった………
どちらも共通しているのが人型じゃないってことだね。はぐれ悪魔もなんかいろんな生物の部位が集まった感じだったからね。マジ醜悪だった。
以上の理由から、人の形している人外の戦いを見るのもいいんじゃないかな? しかも同世代。なんとなく力の基準がわかるからね。結衣さんがOKしてくれたら一緒に行こう。絶対に俺一人じゃあ行きたくないし。黒歌? あぁ
「しゃーなし。行くよ」
『そうかい!! いやぁ誘ってみるものだね』
どんだけ浮かれてんだサーゼクス。レーティングゲームを見に行くだけだぜ?
「あと一ついい?」
『なんだい? なんでも言ってごらん』
なんでだろう………すごくムカつくんだけど………
「俺の仲間連れてくわ」
『ぶふぅ!? な、仲間!? き、君に仲間なんて―――――』
「塵にするぞコラ」
『ハハハ、冗談に決まってるじゃないか』
覚えておけよこの野郎………今度会うときに地味に嫌なことしてやる。例えば俺と結衣さんの装備品を全て銀で創ったり。水風船の水を聖水で創ってぶつけたりとか。飲み物に水銀を混ぜたりとか………ははは、楽しみだなぁ………
「お土産用意しておいてね」
『ふむ………何がいいかな?』
やべぇ、全く何も考えてなかった。食べ物でいいや。冥界のおいしい食べ物とか食べてみたいし。サーゼクスならいろいろ知ってそうだからね。なんせ魔王だからね。
「じゃあおいしい食べ物で」
『うーん………ミノタウロスなんてどうだい?』
ミノタウロス!? それだったら普通に神戸牛とかの方がいいんだけど。同じ牛だけどなんかこう、ね? 抵抗が………
「人間界に来たときに神戸牛を1kg送ってよ。さすがにミノタウロスは無理」
『そうかい? 結構おいしいんだけどね。まぁ君がいいならいいけど』
「それじゃあな」
『迎えにはグレイフィアを行かせるから』
「りょーかい」
サーゼクスとの通話を終わりにして、そのまま次は結衣さんに電話をする。内容はもちろんレーティングゲーム観覧へのお誘い。
「もしもし結衣さん?」
『うんそうだよ』
「今大丈夫?」
『うん。どうしたの?』
「今度さ、リアス・グレモリーが同世代の悪魔とレーティングをやるらしいんだ。それでね、サーゼクス―――――魔王に見に来いって言われちゃってね。一人で見に行くのも何だからって結衣さんを誘おうと思ったんだけど………どう?」
『もちろん行く!!』
即答かよ!! 誘っておいてなんだけど驚いたわ!! まさか即答されるとは思わなかったよ………
「それじゃあ明日ね」
『うん―――――って明日!?』
「うん明日。一応戦闘準備はしておいて」
『戦闘準備って………』
「念の為だよ。まぁ動きやすい格好をしてくるのは必須だね」
マジで何があるかわからないからね。マジで。いつもサーゼクスの案に乗ると必ず何かがあるからね。今までの経験からそれはわかりきっているからね。
†††
リアス・グレモリーと誰かさんのレーティングゲームまで残り数十分。既に家に結衣さんが来ていて、準備をしていた。
基本的な準備は家でしてきてもらったんだけど、正体がバレないようにする変装はしてないからね。それを今してもらってる。ちなみに変装セットは夏休みに使った狐のお面と軍服みたいな外套だ。
俺も
『結衣さん。俺のことは
『う、うん』
そう言えば結衣さんの裏の名前的なものはまだなかったよね? 実名で呼んでもいいんだけどさ、万が一ってのがあるからね。
『結衣さんはどうしようか………なにか自分でない?』
『うーん…………………………………あ、
『おぉ!! いいんじゃないかな』
橘からの
転移した瞬間に戦闘ってことはないだろうけど、万が一があるから
さて、もうそろそろ迎えが来てもいいはずなんだけど………
と、そんなことを考えた時だった。部屋の中心に魔法陣が展開された。色は銀色。どうやらやっと迎えが来てくれたようだ。
「お待たせいたしました」
迎えはサーゼクスの言った通りグレイフィアさんだった。メイド服を見慣れていないのか、結衣さんがやたら目を輝かせているのはスル―しておこうか。
『それじゃあお願いします』
『お、お願いします!!』
俺に続いて結衣さんも言う。
「かしこまりました。それでは―――――」
グレイフィアさんはすぐに転移魔法陣を展開した。魔法陣が足から頭に移動しきった時、景色が変わった。
俺の部屋からめっちゃ豪華な観覧席的な場所へ。しかしまぁひな壇とは………確かに見やすいだろうけど………映画館みたいで見やすいだろうけどさ。いや、マジで映画館みたいだわ。前にすごくデカいモニターがあって、ひな壇型の座席。でも映画館のソレとは違ってかなりふかふかですわり心地がよさそうです。
そのひな壇の一番上のところに奴はいた。奴はとてもいい笑顔をしている。くそぅ、イケメンめ!!
奴のそばまで行き、声をかける。
『来たけど何処に座ればいいの? サーゼクス』
「やぁ
『は、初めまして!!
ま、まぁ弟子なのかな?
「君………弟子取ってたんだね………」
『ま、まぁね』
「君達の席はそこだ。まぁ隣だね」
サーゼクスに示された席にそれぞれ俺と結衣さんが着く。サーゼクスの隣に俺、俺の隣に結衣さん。俺がサーゼクスと結衣さんに挟まれてます。
「ほら、もう始まるよ」
サーゼクスよ、もう少し早く迎えに来てくれればこんなに切羽はつまらなかったと思うんだけど? グレイフィアさんが忙しいのは何となくわかるけどさ。だったら別の人を迎えに寄越せよ。
つーかまだ始まらないの? もう始まるとか言って全然始まらないんですけど。どういうことですか? ていうか―――――
『ここどこ?』
「あはは………なんか襲撃受けてるみたい」
『はぁ!?』
襲撃受けてるのになんで笑ってんだよ。ていうか状況把握能力が高いな。一瞬で襲撃って判断するなんて………さすが魔王だな。
『で? 俺はもう帰っていい感じ?』
「ま、まぁまぁそう言わないでくれよ。少し遊んで行っても―――――」
『いやいやいや。もともとゲームを見に来ただけなんだよ? 襲撃の対処は俺の仕事じゃないでしょ? それともなに? 俺に依頼しちゃう? 高いよー、スゲー高いよー』
「ぐぅ………はぁ、依頼しよう」
あ、これは言葉間違ったぞ俺。これじゃあ依頼だったら殺ってやるよっていうツンデレ的表現になっちゃってるんじゃ………
『依頼内容と襲撃者に関しての情報。それと報酬をどうぞ。あ、
『私もここで
『さ、さいですか………』
なかなか根性あるね結衣さん。普通なら襲撃を受けたってことを知った時点である程度取り乱すと思うんだけど。
『―――――サーゼクス』
「依頼内容は襲撃者の捕縛、もしくは殺害。出来れば捕縛がいいね。襲撃者は
『三億』
「一億五〇〇〇」
『それでいい』
「
『なに?』
「アーシア―――――リーアたんの眷属がさらわれたらしい。それも今日レーティングゲームをするはずだった相手、ディオドラ・アスタロトによって」
『はぁ………』
溜息出るわぁ………マジ何やってんだよ。でもまぁそれは依頼に入ってないし俺には関係―――――ないわけじゃないな。そうだよ………忘れちまったのか一!! アーシアさんにはミニスカメイドとにミニスカナースとミニスカ和装してもらったじゃねぇか!! 写真を撮らせてもらった上に膝枕までしてもらったじゃねぇか!! 太ももの感触、最高でしたッ!! この恩を今返さないでいつ返すんだ? 答えろ!! 佐藤一!!
『まかせろサーゼクス。アーシアさんには良くしてもらっているから』
『どんなことをしてもらったのかな? かな?』
『え………?』
『どんなことをしてもらったのかな? かな?』
い、いつの間に背後に………ていうかゆ、結衣さんが病んだ!! 病みモードに入った!! くそぅ………もう病みの浸食がミディアムまで………
『それは後で言うから!! 今は―――――』
『きゃっ!!』
『―――――周りのカス共を片付けないと』
結衣さんに襲い掛かろうとしていた奴を気で身体強化をしながら本気で蹴り飛ばす。敵は地面に何度かバウンドして止まった。多分息の根も止まってると思う。なんか肋骨を折った感触がしたもん。
『
『う、うん!!―――――ブリューナク!!』
結衣さんは夏の間にブリューナクだけは完全に使えるようになった。だから名前を呼ぶだけですぐにブリューナクを顕現できるようになった。
『穂先からレーザー出しまくってじゃんじゃん殺っちゃって!!』
『うん!!』
皆さん、こうやって話をしているから結構余裕そうに思うでしょ? 実際は全く違うからね。もうね、五人ぐらい一気に襲ってくるから対処がキツい。
全然気にしないで無双してるけど、捕縛の方がいいってサーゼクス言ってたよね? でもできればって言ってたし………むぅん。
『ハァァァァァ!!』
結衣さんは全く気にしてないみたい。ブリューナク片手に無双してます。軽く見た程度だから分からないけど、立華流は使ってないと思う。穂先から出る五つのレーザーで攻撃してる感じ。神話通りになら一度で五人を倒す素晴らしいレーザーなんだけどね。
さて、結衣さんにまかせっきりってのも悪いからね。
『俺も頑張りますよっと!!』
常に『二四時間気絶』と念じながら敵集団に突っ込んでいく。すると、絶対領域に侵入した敵からどんどん倒れ伏していく。近辺に気絶していない敵はいない。それに気配もないからとりあえず一安心だ。
結衣さんの方に駆け寄って声をかける。
『大丈夫?』
『う、うん。でも大変だね。全然休む暇がないもん』
初めての対人戦だもんね。プレッシャーとかが魔物とは違うから疲労感も違うだろうね。
『うおぉ!?』
『
な、なんだ今の? 凄まじい威圧感が………それもドラゴンのオーラが………だけどここからは結構距離がある。なら気にしなくても大丈夫だろう。それに近くにはアザゼルに気もあるしさ。アザゼルが何とかしてくれるさ(笑)
近辺の敵を狩り尽くした俺と結衣さんは、とりあえずフィールドを詮索することにした。ゆっくり、ゆっくりと歩いていく。警戒のレベルは最大にしてね。
ムーヴ………ムーヴ………ムーヴ………ストップ!!
『ね、ねぇ
『やっぱり?』
叫び声のような何かが聞こえてくるんだけどうまく聞き取れないなぁ。
しょうがないので『聴力を規格外に』と念じて聴力を良くする。そして良くした瞬間、聞こえた。否、聞えてしまった。
―――――グギュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!!
『うる………せぇ………』
誰の叫び声だクソッタレ!! 聴力を戻しながら頭を手で押さえる。
『だ、大丈夫?』
結衣さんが心配そうに訊いてくる。
『あー………大丈夫じゃないかな』
『え………?』
だってすっげー嫌な予感がするもん。今までとは比べものにならないくらいの。
一くん、気の感知はすばらしくできます。
そして最後の叫び声………おわかりでしょう?
結衣さん、初めて対人戦をする。結果はブリューナク無双。
立華流の出番はまだまだ先―――――かな?