「おはよう黒歌」
「おはようにゃ」
「………………え?」
「どうかしたのかにゃ?」
朝起きて、リビングに行ったら黒歌がいた。そこまではいつも通りだ。問題なのは服装だ。いつもは着物をはだけさせて着ていた。ちなみに胸元ね。でも今日は違った。メイド服だ。ミニスカメイド。もちろん黒ニーソ装備済みで理想的な絶対領域も存在している。
少しだけ残っていた眠気が一瞬で吹っ飛んだ。だ、だって黒歌がメイド服着てるんだよ? しかも理想的な絶対領域まで存在してるし。あと黒ニーソが太股を締め付けたところにできる「ぷにっ」と感がたまらない!!
「ありがとうございます!!」
「きゅ、急にどうしたんだにゃ!?」
思わず腰を直角に折ってお辞儀をしながお礼を言ってしまった。それにたいしてビクッとしながら返事をしてきた黒歌。すごく可愛いです。朝からいいものを見せてもらったなぁ………
「そ、それでどうしてメイド服なんて着てるの?」
「にゃ? だ、だって私は……………」
「ん?」
「き、気分だにゃ!! 今日はメイド服を着たかっただけにゃ!!」
黒歌が誤魔化すように叫んだ。メイド服が来たくなるような気分ってなんだろう? 虐げられたい? 奉仕したい? それとも―――調教されたいのかな? さすがにそれはないか。まぁ俺からしてみれば特しかないからどちらでもいいんだけどね。
「そ、それは置いておいて朝ごはんを食べるにゃ。早くしないと冷めるにゃ」
「う、うん。わかった」
そうだね。置いておけないけどせっかく黒歌がつくってくれた朝食を冷めちゃったらもったいないし。
今日の朝食はトーストに目玉焼き、牛乳にコーンスープだ。もちろん全部おいしくいただきました。
「それじゃあ行ってくるね」
「いってらっしゃいにゃ。……………ご主人」
「え………?」
「いってらしゃいにゃ!!」
「う、うん。いってきます」
な、なんか最後にとても響きのいい言葉があったような気がしたんだけど。気のせい―――ではないよね。確かに聞こえたよ、ご主人って。や、やっぱり奉仕してくれる感じだった? そ、それとも調教されたい感じ? ひゃー、妄想が凄いことに………
落ち着け、まずは落ち着け。ここでうんうんうなっていても仕方がない。さっさと学校に行こう。そうすれば少しは―――変わらないかも………
でもいいものが見れたなぁ………今日は絶対にいい一日になるね。うん。
†††
「あはよう一くん」
「おはよう結衣さん」
教室に入るとすぐに結衣さんがあいさつをしてくれた。もう毎朝の習慣みたいなものだ。でも結衣さんとあいさつするたびに周りからの視線が痛い。もう慣れたけどね。
自分の席に真っ直ぐ行き、鞄を置く。鞄から本を取り出して読書を始める。これもいつも通りだ。
「一くんっていつも本読んでるけどどんな本読んでるの?」
いつの間にか結衣さんは自分の席についていて、俺に話しかけてきた。
「神話とかが多いかな。なかなかおもしろいんだよこれが」
「ふぅん。今は何を読んでいるの?」
「『アーサー王物語』だよ」
しおりを挟んでから本を閉じて表紙を見せながら言う。
「どんな話なの?」
「アーサー王を中心とする騎士道物語群だよ。大きく四つの部分に分ける事ができるんだけどね」
「なんだか難しそうだね………」
「そんなに難しくないよ」
俺の場合は知らなくちゃいけないから仕方なくというのもあるけど。この世界には悪魔、天使、堕天使の三大陣営の他にも様々な陣営がある。そのほとんどが神話をなぞっている。なので神話などの物語を読めば少しは情報が手に入る。この少しの情報が俺の生死を分けるからね。なおさら本気になっちゃうよ。何気に面白いしね。
しばらくすると、担任の教師が来た。それと同時にホームルーム開始のチャイムが鳴って、ホームルームが開始された。そういえばイッセーが来てないけど何かあったのかね。多分―――いや、絶対悪魔関係のことだと思うけどね。あーやだやだ。どんどん面倒な事になってきているじゃないか。
ホームルームが終わったのと同時に俺は教室を出た。今日の授業は全部サボる。とりあえず登校しているから大丈夫だろう。最悪、留年しそうになったらサーゼクスに頼めば問題ないし。
やってきたのは屋上。教師の目から逃れるのも慣れてきたのですんなりこれた。今日は天気がいいのでここで昼寝をしよう。と、その前に―――
「黒歌、どうやってここに来たの?」
「普通に来たにゃ」
黒猫になっている黒歌に話しかける。よくバレないよね。さすがに転移してきたら魔力を感知されてバレちゃうだろうけど。だからといって堂々と入って来るとは………まぁ見た目はただの黒猫だからね。
「ふぁぁぁ………黒歌。俺は少し寝るね。最近さ、面倒事が多すぎて夜ぐっすり眠れなくて眠いんだ」
「そうかにゃ。じゃあ私も………」
そう言いながら黒歌は横になった俺の胸元の上に飛び乗ってきた。飛び乗るのはやめてほしかったな………ちょっと苦しかった。でもこの重量感は結構心地いい。
ぐっすりと寝てしまった俺が起きたのは放課後だった。どうやら帰りのホームルームもすっぽかしてしまったらしく、スマホには結衣さんからメールがかなり来ていた。悪いことしちゃったなぁ………
「黒歌。帰るよ」
「うにゃぁ………わかったにゃ」
ぐーっと伸びをしてから黒歌が返事をした。すぐに反応したってことは………こいつめ、さては起きてたな。とりあえず結衣さんからのメールを確認しようか。
『どこにいるの?』『もうお昼だよ?』『午後の授業が始まっちゃうよ?』『もう授業終わっちゃったよ?』『帰りのホールムール終わったよ?』………や、病んでる? いや、まだ間に合うはずだ。そ、それに俺を心配して送ってくれたわけだし別に病んでるわけじゃないよね。
こんな感じで結衣さんからのメールを一つ一つ確認しているときだった。
サーゼクスから電話が来た。一体何だろう? はぐれ悪魔狩りならメールで依頼してくるし、よほど緊急なことじゃないと電話なんてしてこないはずなんだけど。
「もしもし」
『あぁ一くんかい? 少し厄介なことになってしまってね』
「………一体何してくれたんだこの野郎」
『ハハハ、別に僕が何かしたわけじゃないよ。妹のリアスから訊かれてしまったんだよ』
ものすごく嫌な予感しかしない。このタイミングでのリアス・グレモリーから魔王サーゼクスへの連絡。も、もしかして………
「それで何を訊かれたの?」
『「この前大公から依頼されたはぐれ悪魔バイザーを倒しに行ったときにいた人間は誰? 魔王様から依頼を受けたって言っていたのだけれど………何か知らないかしら?」ってね』
嫌な予感的中だね。まさか魔王に訊くとなぁ………で、でもサーゼクスがバラさなければ俺は大丈夫なわけでして………
「バラしてないよね?」
『もちろんだよ。でもねもうそろそろバラそうと思っているんだ』
「あぁ?」
なんでだよ………なんでなんだよっ!! 別にバラさなくていいじゃないか。今まで通りwin-winの関係でいいじゃないか!!
「なんで? それを許して俺に利益はあるの?」
『フェニックスの涙を毎月定数個送ろう』
フェニックスの涙っていったらかなり優秀な回復薬じゃないか。でもそうまでして俺の正体をバラさなきゃいけないことって一体なんだ? 絶対面倒事だろ。しかも今までにないくらいの、とびっきりのやつ。
「そこまでしてまで俺の正体をバラしたいの?」
『うん。実は妹のリアスの婚約が決まっていてね』
「それで?」
『その相手がフェニックス家の三男なんだけどね?』
「クズなの?」
『クズだね』
わぁお………結構優しいサーゼクスがここまで言うってことはよっぽどだな。ハーレムでも作っちゃったのかね。そのフェニックス家の三男は。
「でも俺には関係ないよね?」
『ところがどっこい。僕はね、君ならリアスと結婚しても―――』
「言わせねぇよぉ!!」
『―――いいと思っているんだ』
クソッ!! 俺のフォローをかいかぐって言い切りやがった。というか俺がリアス・グレモリーの夫? ふざけんなよ。俺にもう黒歌が―――ってそれは置いておこうか。
「俺は嫌だよ。それにリアス・グレモリーは新しく入った子に興味があるみたいだよ?」
『そのようだね。確か兵士の駒八個分使って転生したんだったよね?』
「そうらしいね。そうだよ、そいつがいるから余計嫌なんだよ!! 絶対厄介ごとに巻き込まれるでしょ!? 俺は黒歌と一緒に静かに平和に楽しく暮らしたいの!!」
『まぁ君がなんと言おうといずれはバラすのだけれどね』
こ、この野郎………本気で冥界滅ぼしてやろうか? 俺の
「はぁ………まだやめてね? なんか最近この駒王に堕天使が来ているらしくてね?」
『その堕天使にリアスの眷属になった子は殺されたのかい?』
「その通り。なんだか最近活動が活発になってきててね。そろそろ塵にしようと思ってたんだ。このままじゃ俺と黒歌の静かで平和で楽しい生活に支障が出そうだからね」
『まぁこちらに堕天使陣営からそのような連絡は来ていないから下の者が勝手に暴走しただけだろうね』
「じゃあ殺しても問題は?」
『無いんじゃないかな』
決定した。準備が整ったらさっさと堕天使をぶっ殺す。そんで黒歌と静かで平和で楽しい生活を送るんだ。今もそうだけどきっともっと良くなるよね。
「じゃあねサーゼクス。仮に俺の正体をバラすとしたら、その前にはちゃんと連絡してね」
『了解。またね』
サーゼクスとの通話を終える。黒歌が顔を少し赤く染めながら俺の方を見ている。ていうかいつの間にか人間の姿になったんだ? 俺が黒歌に声を掛けようとした瞬間だった。
「ありがとね」
そう言いながら黒歌が抱き着いてきた。ど、どうしたんだろう急に。
「私も一と一緒に、静かに、平和に、楽しく過ごしたい」
「黒歌………」
「でも無理はしちゃダメだよ? 一が傷つくのは嫌だから」
「うん………」
はぁ………幸せだ。こんなに可愛い子に心配されて。
「じゃあ帰ろうか。俺達の家に」
「にゃ。帰ろう。私達の家に」
そう言い合い、俺と黒歌は手をつないだ。そして屋上から飛び降りる。幸い、もう生徒は学校にはいない。だから周りを気にしないでいい。でもね―――
「一、今日も背中流すにゃ」
「そう言うのは家に帰ってから言おうね」
2014/11/20 文頭に空白を設置。文章の堅さの若干の変更。
2014/12/24 ルビ振り。誤字脱字を修正。