堕天使を殺す準備は順調に進んでいた。
準備と言っても大掛かりなことをするわけではない。体調を整えて最高のパフォーマンスが出せるようにする。ただそれだけだ。だって他にすることなくない? 俺の武器は神器と気だよ? どっちも自分の体調や気持ち次第で力が変動するものだ。だから自分の体調を整えることが殺し合いの準備というわけだ。
最高状態に持ってくるまで二、三日かかっちゃったけどね。勝負は今夜だ。本当は昨日あたりが良かった。理由はグレモリー眷属とかち合わないためだ。
イッセーがアーシアという名の金髪シスターに夢中らしく、そのアーシアが目の前で堕天使にさらわれたんだと。それを助けに行くため、今夜グレモリー眷属全員で廃教会に乗り込むらしい。ちなみに全部黒歌からの情報ね。
念には念を入れてと思って最高の状態まで我慢していたら最悪の状態になっちゃったよ。俺って運がないのかなぁ………
うじうじ言っていても仕方がない。こうなったら日が暮れた瞬間に出撃だ。
「なんか暇潰すことはない? 黒歌」
「じゃあ撫でてくれにゃ」
「うん♪」
黒歌が黒猫の状態ではなく、人間の状態でそんなことを言ってきた。たまにこうやって甘えてくれるんだよね。もうこの甘えてきたときの黒歌が最高に可愛いんだよ。
「ほれほれ」
「うにゃぁぁぁ………」
「うりうり」
「にゃあぁぁぁん………」
や、やばい………ムラムラしてきちゃった。人の姿でこんなに甘い声出されたら………いかんいかん、今は黒歌を撫でるのに集中しなければ。せっかく撫でさせてもらってるんだ。堪能しなきゃ。
―――と、思ったんだけどそろそろ時間だ。
「黒歌。いってくるよ」
「にゃ。絶対に無茶しちゃだめにゃ。無事に帰ってくるにゃ」
「うん」
ゆっくりとソファから立ち上がり、狐のお面と黒い軍服みたいな外套を纏う。ついでに《
玄関まで黒歌と一緒に歩いて行く。
「いってきます」
「いってらっしゃいにゃ」
さくっと殺して黒歌を安心させよう。
気で身体強化をして屋根の上に向かって跳ぶ。今回の標的、堕天使がいる廃教会まで屋根の上を跳んで一直線に向かう。
廃教会に到着して一番初めに思ったことは汚いだった。あと生臭い。血の匂いだ、これは。大分中で人殺してるでしょこれ。
目標は聖堂の地下。まずは聖堂に向かわないと。
廃教会の敷地内に足を踏み入れるのと同時に何かに引っかかった。これは堕天使の感知結界か………まぁ知られたのなら仕方ない。でも堂々行くわけじゃないよ?
聖堂へ繋がる両開きの扉を開ける。ギギィ、と嫌な音が鳴る。中は俺が想像していたよりも綺麗だった。血の跡もないし、破壊しつくされた跡もない。
聖堂には長椅子と祭壇があった。それをロウソクの灯りと電気の灯りが照らしていた。ここまではまともだ。さらに十字架に磔になっている聖人の彫刻。そしてその彫刻が破壊されている。趣味悪いねぇ………
―――――パチパチパチパチパチ
突然、聖堂内に拍手が鳴り響いた。音源の方向を向く。そこにはちょうど柱の物陰から神父らしき人影が現れた。
「あれぇ? きみぃは誰かなぁ?」
気持ち悪い笑みを浮かべながら言ってきた。俺はこいつの顔を見た瞬間、生理的に受け付けないことがわかった。堕天使じゃなけどここにいるってことは仲間という事でしょ? なら殺しても問題ないよね?
外套のホルスターから《
「おんやぁ? ヤるきですかぁ?」
キモ神父はヘラヘラしながら言ってくる。俺はそれを無視して両足に気を溜める。そして一気に駆ける。キモ神父と擦れ違い際にナイフで首を狩りにいく。だが―――
「おぉっと!! 手クセが悪いねこのクソガキは!!」
どこから取り出したかはわからないけど、光の剣で俺の一撃を防いだ。よく追いついたな………かなりの早さだったはずなんだけど。
キモ神父から距離をとりキモ神父の武器を確認する。なんか30cmくらいの銀色の筒から黄色い光が1mくらい出ていた。多分あの光が剣でいう刃の代わりなのだろう。俺は人間だから普通の剣程度の威力しかないだろうけどあれを光が弱点である悪魔がくらうとなると………おぉ、痛そうだ。
正直、《
ナイフを順手に持ち直し、気を流し込む。気は刃の形を形成していき、1mぐらいの大きさになる。
「わぁお!! もしかしてあなた様もクソ教会の戦士だったぁ?」
「そんなわけねぇだろキモ神父」
まったく、あんな狂っている奴らと一緒にしないでもらいたい。既にいない神を信仰し続けるなんてありえないでしょ。
というかあんまりここでもたもたしてるとグレモリー眷属が来ちゃうな………さっさと片付けるか。
ナイフを左側に構える。そこから一気に右に振り抜くのと同時に気を思いっきり込める。すると気でできた刃は一気に伸びていき、キモ神父も斬り裂いた。
「なん………だよそれ………」
一応腹を斬り裂いたのでショックで気絶しただけだろう。まぁそのうち出血多量で死ぬだろうから先を急ごうか。
ナイフに流している気を身体強化に回して走り出す。確か祭壇の下に地下への階段があったはずだ。
祭壇を蹴り飛ばすと、地下への隠し階段が見つかった。しかもこの先から魔力が感じられる。当たりだ。
地下への階段を駆け下りて行く。電気は来ているようで、灯りがついている。階段を下りると、奥へ続く一本道があった。両脇には時折扉があるけど気にしない。
奥に進むにつれて堕天使の気配だけではなく人間の気配もしてきた。多分堕天使にそそのかされたバカ共だろう。
「お邪魔します」
そう言いながら扉を蹴り飛ばす。中には堕天使が一人と神父がたくさんいた。
「いらっしゃい。悪魔の皆さ―――――あんた誰?」
もしかして俺をグレモリー眷属と間違った? 失礼だな、俺の気配は完全に人間のものなんだけど。それに悪魔の翼も尻尾もないし。
「俺は
「
まだまだ続きそうなのでこの儀式場の構造を把握するために辺りを見回す。すると、奥の方に十字架に磔にされている女の子を見つけた。金髪の美少女さんだ。白いワンピースみたいな服を着ているが、はだけていて片方の胸が丸見えだ。あとは………特に何もない。障害物もないし。しいて言うなら神父がうじょうじょいて気持ち悪いくらいだ。
まずは神父どもを塵にしよう。俺が近づいて塵にしようとしたら向こうの方から俺の周りに集まってきてくれた。そして俺の絶対領域内に全ての神父が侵入したのを確認してから言う。
「この場にいる神父よ―――――『塵になれ』」
「「「「「―――――ッ!?」」」」」」
いつも通り叫ぶ暇もなく神父たちは塵になって消えて行った。この光景をベラベラと自慢げに何かを話していた堕天使も見ていたらしく、目を見開いて驚いていた。
「あ、あなた一体何をしたの!?」
ワナワナと震えながら問いかけてきた。怯えている、というよりも驚いているって感じだ。まだ実感してないんだろうね。
「何をしたかって訊かれると―――塵にしたって答えるしかないね」
「ち、塵………? それもあの一瞬で………? 嘘でしょ………」
「嘘じゃないよ。お前の目は節穴なの?」
現実を受け入れないと何も始まらないぞ堕天使さん。ということで、現実を受け入れない堕天使さんにはとっとと死んでもらおう。
ゆっくり、ゆっくりと堕天使に向かって歩みを進める。
「ひっ………く、来るな!!」
「嫌だよ」
「く、来るなよぉ………来ないで………」
あ、あれ? なんかすごい乙女みたいな声になってるんですけど………まぁいいか。自業自得だしね。
ナイフを逆手に構えて、いかにもナイフで襲い掛かりますよ的な雰囲気を出す。もちろんこんなの見せかけだ。ナイフを使って殺すより、俺の絶対領域内に入った瞬間塵にしたほうが早い。堕天使さんも腰が砕けて地面にへたり込んでるし。
「じゃあね。堕天使よ―――――『塵になれ』」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
あれれ? いつもと違って叫び声が聞こえる。なんでだろう? 答えは簡単。『塵になれ』って声に出したけど『炎に包まれて死ね』って念じたからでした。
「安心しなよ。数分後には死ねるから」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……………」
「聞いてないか………」
とりあえず火だるまになってる堕天使は放っておいて奥で磔になっている金髪美少女を助けようか。
十字架に近づいて、俺の絶対領域に入ったのを確認して十字架が消滅するように念じる。十字架が消えると、磔にされていた金髪美少女が落ちてきた。それを受け止めて、地面に寝かせ―――るのは心ともないので、ベットを俺の絶対領域内に創造してその上に寝かせる。
これからどうしよう………金髪美少女の目が覚めるまで待ってたらグレモリー眷属が来るし………
「アーシアァァァ!!」
ほら来た。しかもグレモリー眷属全員だ。リアス・グレモリーとその『
「てめぇ!! アーシアに何しやがった!!」
イッセーが俺を見ながら言ってきた。え? 俺? 俺は普通に堕天使殺して十字架に磔にされてた金髪美少女を助けただけなんだけど………
とりあえず声質を《
『十字架に磔にされてたから助けただけだよ。それでベットに寝かせた。気絶してたみたいだしね』
「問答無用だ!! セイクリッド・ギアァァァァァァァァ!!」
―――――Dragon booster!!
なら訊くなよ………というか問答無用すぎだろ。ちゃんと俺は説明したのに。
イッセーの叫びに応えるように、イッセーの左腕に着いている赤い籠手型の神器が動き出した。手の甲の宝玉も眩く輝いている。そしてそこには―――おいおい嘘だろ………
そこには龍の紋章が浮き上がっていた。
なるほど………兵士の駒八個分っていうのも納得だ。だってイッセーの神器は《
《
そんな規格外な神器を相手なんかしてられない………どうしようか?
2014/11/24 文頭に空白設置。文章表現の堅さ調節。
2014/12/24 ルビ振り。文章表現の変更。