俺は九重ちゃんを肩に乗せるんじゃなくて抱きかかえた。お姫様抱っこでやつだね。こっちの方が動きやすいんだ。
気で身体強化をする。今回は最初から本気だ。身体の周りにピンク色のオーラがはっきりと見えるまで強化したからね。
そして八坂さんまで一瞬で近づく。
「母上!! 九重です!! お目覚めくだされ!!」
九重ちゃんが声をかけるけど、八坂さんは反応しない。瞳が陰っていて無表情のところを見ると暗示か何かされたんだろうね。
でもそれがどうかしましたか?
八坂さんは俺の絶対領域内に侵入している。これが意味することは―――――
「………ここは?」
八坂さんはふらふらとしている。そしておぼろげだけど意識が戻り始めえたようだ。
俺はただ『意識を取り戻せ』『身体を蝕むもの全ての消滅』って念じただけだよ? 例え
九重ちゃんは八坂さんの胸に飛び込んで、泣き叫んだ。
「母上ぇぇぇっ!! 母上ぇぇぇっ!!」
八坂さんはやさしく九重ちゃんを抱いて、頭をなでた。
「………どうしたのじゃ、九重。おまえは、いつまで経っても泣き虫じゃな」
目から熱いものが流れた。流れないはずがない。いくら簡単に助けられたとしてもいままで会えなかった二人が再開したんだもん。
さて、感動的な再開をしているのにイケナイことをしようとしている結界使い。テメェの血は、何色だい?
俺、九重ちゃん、八坂さんの足元に薄く霧が立ち込めてきた。でもすぐに霧散する。当たり前だ。俺の絶対領域には何人たりとも侵させない。
『ダメだよ邪魔しちゃ。あんまりおイタばかりしてると―――――塵にしちゃうぞ☆』
「「「「「……………………………」」」」」
白けてしまった。やらかしてしまった。でもさ………後悔はしてないよ。自分でもやらかしたってわかったしね。
『そうだよ英雄派のみんな。あんまりおイタしてると―――――尻にブリューナクぶっ刺して奥歯ガタガタ言わせるよ☆』
俺の聞き間違いじゃないよね? いま「尻にブリューナクぶっ刺して奥歯ガタガタ言わせるよ☆」って結衣さん言ったよね? だよね? いったよね!?
こんなの………結衣さんのキャラじゃないよ!!
いやいやいや本当に結衣さんどうしちゃったの!? なんか京都に来てからおかしいよね? 病むことは無くなったけど、かわりに体の芯から冷えるような冷淡な笑みとかするようになったんだよ? 一体何があったんだ………まったく見当がつかない………
『
『は、はい。かしこまりました』
俺は八坂さんを抱きかかえて、九重ちゃんと一緒にアザゼル達がいるところに移動する。
下手したら俺まで結衣さんの攻撃に巻きこまれちゃからね。
「な、なぁ
『俺にもわからないんだ。京都に来てからなのかな? いや、九重ちゃんのお母さんがさらわれて実験道具にされかけているのを知ってからなのかな? 見当がつかない………』
「そ、そうか………それであいつは強いのか?」
『うーん………あの状態ではどうかは知らないけど、素の状態ではかなりの実力だよ。武だけで勝負したらボコボコにされるね。グレモリー眷属とやり合うとしたらそうだね………木場とゼノヴィアさんぐらいならボコボコにできるんじゃないかな?』
「それほどか!?」
だって木場はただ速いだけで、ゼノヴィアさんはパワーバカ。両極端すぎるんだよね。
そうそう八坂さんなんだけどさ、また寝ちゃったよ。現在俺が膝枕中でございます。九重ちゃんはその寝ている八坂さんに抱き着いております。
さて、現実逃避もこの辺にしておこうか。
今目の前でね、結衣さんが無双してるんだ。
もはや戦闘じゃない………一方的な虐殺だッ!!
『あはははは!! 見て見て
『やめろぉぉぉぉぉ!! 全力でやめて!! こんなの………こんなの
どこぞのアニメなんかでやってそうなやり取りだね。さらに、ここで不気味なのが俺も結衣さんも電子音で話していることなんだよね。
『………絶対に許せないの。親を―――――家族を実験に使うなんて。それも九重ちゃんはまだまだ幼い子なんだよ? そんな子から親をさらって、その上実験道具にしようとしたんだよ? そんなの許せるわけないよ』
なるほどね。だからあそこまで怒ってたのか。だとしても変わりすぎじゃない? もうさ、もともとの面影が無に等しいんだけど。
これが………女子か………
結衣さんがゲイ・ボルグでの槍投げを初めて数分。辺りは焦土と化してしまった。
アザゼルからの情報で曹操が
結衣さんマジTUEEE!!
《
しょうがないよね………だって結衣さんがゲイ・ボルグを投擲しまくるんだもん。あれぞまさに無双だよ。無双って言葉はこの為にあるんだなってつくづく思ったよ。
「な、なんなんだいそいつは!?
曹操、ご乱心でございます。
ま、まぁ俺が曹操の立場でもそうなるね。むしろ発狂していないだけまだマシだよね。
「
『えー………』
「えー、じゃねぇよ。さすがにあれは―――――」
『かわいそうとでも言いたいの? それはないんじゃないかな?』
大体先に手を出してきたのは曹操じゃん。八坂さんを実験の道具にしようとしたのは曹操じゃん。それに誰かが言っていた(ような気がする)―――――
殺られる覚悟がないのなら殺るな。
はいはーい!! 僕には殺られる覚悟なんてありませーん!! 当たり前だろ!? すごく怖いじゃん。
話を戻そうか。
結局は自業自得ってやつでしょ? 英雄の子孫だったのに自分からテロリストになってそれで襲ってきた。ならなにをされても文句は言えないはずだ。
結論を言うとだね………自分のことじゃないからどうでもいい。そしてできれば今すぐこの場から逃げ出したい。
でもまぁしょうがないから結衣さんのそろそろストップをかけようか。これ以上させたら九重ちゃんの精神衛生上よろしくない。それに今の状態の結衣さんに話しかけられるのは俺だけだろうし。
『
叫ぶように結衣さんに声をかける。
『え………? あ、あぁそうだね。………ていうか私今まで何を? あれ? なんで更地になってるの!? 二条城は!?』
ま、まさかのトランス状態でしたか!? ゆ、結衣さん………恐ろしい子………
でもそれはそれでありがたいかもしれない。もしアレを素でやってたとしたら………考えただけで恐ろしい。
アレの状態のまま病み度ルナティックになったら俺の命がマジで危うい。
想像してごらん………瞳から完全にハイライトが消えて闇色のオーラを身体に纏い、右手にはブリューナク、左手にはゲイ・ボルグを引きずってくる。ガリガリガリガリって音がするんだ。それで近くまで来てコテンと首を倒しながら「一緒に行こ♥」って言うんだ。
一体どこに連れて逝かれるんですか!?
『ひいぃぃぃぃぃぃ!!』
『ど、どうしたの
『い、いや………なんでもないよ………』
いつの間にか結衣さんがすぐ隣にいた………なんだか結衣さんが遠いよ………
†††
修学旅行も最終日になった。
あ、昨日の襲撃については結構簡単に決着がついたよ。
結衣さんが俺のそばに来たあと、曹操はそれをチャンスと思ったのか仲間を連れて逃げて行ったらしい。ちなみに片手で数えられる人数だったらしい。
らしい、っていうのはアザゼルから聞いたからだ。俺が実際にこの目で確認したわけじゃない。
アザゼルとグレモリー眷属は特に怪我はなかったらしい。まぁ当たり前だよね。だって結衣さんが無双してただけなんだから。
八坂さんも後遺症はなかった。それに関してはすごく感謝された。おもに九重ちゃんからね。
と、まぁこんな感じで八坂さん誘拐事件は幕を閉じたとさ。
修学旅行最終日の今日は、名所めぐりをするわけじゃない。基本的にはお土産屋をめぐる。
生八ッ橋、買いましたよ。抹茶、黒ごま、白ごま、チョコバナナ、チョコレート、焼きいも、栗とバラエティ豊かにね。店員さんが大変そうだったよ。少しかわいそうだった。
そして現在。集合時間まで三〇分である。
京都駅の近くにあった高級そうなお茶屋でまどろんでいた。もちろん俺だけじゃなくて、八坂さんと九重ちゃんがいる。
結衣さんには遠慮してもらった。いろいろとつもる話もあるし。………ある、よね?
「先日はすまなかった」
「いえいえ、俺も前に八坂さんにお世話になりましたから」
「だとしてもじゃ。わらわが操られておるときに九重を守ってくれておったのじゃろう?」
「えぇまぁ………」
八坂さんが操られていたとしても、実質俺達には被害がなかったんだけどね。会ったとすれば曹操達からの襲撃への警戒ぐらい? それと結衣さんご乱心の件。
そしてまったく会話に集中できない。理由? そんなの決まってるじゃないか―――――
八坂さんの谷間がすごいんですたい。
絶対領域だと思った? いやいやさすがにそれは無理があるって。あ、年齢的とか容姿的な意味じゃないよ? 八坂さんは今でもピチピチです。美少女です。
あの………ね。椅子に腰かけてるわけじゃん。それに机があるわけだし………足下は見えないよね。
いやぁそれにしてもすごいね。黒歌も着物をはだけさせて着るから胸元―――――谷間が見えるんだけどそれ以上だ。やっぱり九尾の狐は一味違う。
九重ちゃんとお揃いの巫女装束なんだ。でもミニじゃないよ? 普通の丈だよ。それがまたいいんだよね。大人の魅力をグッとね。妖艶な感じがハンパない。
「そんなに気になるのかえ?」
八坂さんがグッと胸を両腕で抱え上げながら言った。
「ま、まぁ俺も男ですからね」
「フフフ、わらわもまだ捨てたものではないのう」
「むぅぅぅ………」
妖艶に笑う八坂さんに、プクーと頬をふくらませてうなる九重ちゃん。八坂さんは美しくて、九重ちゃんはかわいい。
俺………駒王に戻ったら死んじゃうのかな? こんなにいい思いしてていいのかな?
「冗談はこの辺にしておくかの。九重に嫉妬されてしまうからのう」
「は、母上!! べ、別にわらわは嫉妬などしておりませぬ!!」
「フフフ、まぁそういうことにしておくかのう」
目の前のやり取りについては聞かなかったことにしよう。
あれ、そういえばそろそろ駅に向かわないとまずくないか? 時間ぜんぜん気にしてなかったけど。
時計を見て見ると………集合時間まであと一〇分。もうそろそろ出ないとマズイ。ていうか正直ヤバイ。
「八坂さん、そろそろ時間なんで………」
「む? もうそんな時間か」
「行ってしまうのか
そんな上目遣いで見つめないでおくれ九重ちゃん。帰れなくなっちゃうよ………
「ゴメン九重ちゃん。また今度―――――そうだね。一ヶ月か二ヶ月以内にはまた来るから」
「本当か?」
「うん。今度は裏京都に泊まるよ。いいですよね? 八坂さん」
「うむ。歓迎するぞ」
八坂さんの返答を聞いた俺は荷物を纏める。と言っても特に広げてないから大したことはしないんだけどね。
「それじゃあまた。八坂さん、九重ちゃん」
「うむ、いつでも来るがよい」
「母上のいう通りじゃ。いつでも来ていいからの!!」
九重ちゃんがほんのり顔を赤くしながら言った。照れてるのかな? 萌えますね。
まぁこうして俺の修学旅行はなんとか終わった。
†††
京都から返ってきた俺は、学校を経由しないで直接自宅に帰ってきた。
玄関を開けて「ただいま」と言った瞬間に黒歌がリビングから出てきた俺に抱き着いてきたのには驚いた。
「久々の
すりすりと胸元に頬ずりしてくる黒歌。なんか猫みたいでかわいい。ていうか猫又でしたね。
黒歌をどうにか離した俺は、荷物をリビングに入れてお風呂に入った。あぁ、もちろん黒歌も一緒に入りましたよ。特に声はかけなかったんだけどね。
お風呂を上がったらいつも通り牛乳を飲んだ。
「京都で何かあったの?」
「うん。八坂さんが誘拐されたんだ」
「にゃ!? 八坂がかにゃん!?」
「そうなんだ」
とりあえず京都での出来事を簡単に黒歌に話した。
黒歌は「うー」やら「にゃにゃ!?」とつぶやいててちょっと可愛かった。ちなみに黒歌に説明しているとき、ずっと俺は黒歌に膝枕されてました。
今日の黒歌はホットパンツを履いているから太ももが………もうムッチムチで堪りませんでした。さすがにニーソは履いてなかった。締め付けられるからしょうがないよね。特に外に出るわけじゃないし。
「そういえばもうすぐ学園祭かぁ………」
「もちろん私も見に行くにゃん」
「………いい加減、白音と仲直りしないとね」
「そうだにゃ………」
なんだかしんみりしてしまった。
京都への修学旅行が終わったばかりなのにもう学園祭だ。二年生のこの時期は忙しすぎる。もうちょっとどうにかならないのかな………
俺達のクラスは何やるんだろう。俺はコスプレ喫茶とかいいと思うんだ。ほら、駒王学園って女子のレベルが高いからさ。
それでね、コスプレには必ずニーソを履いてもらうんだ。それでね、絶対領域を観測するんだ。
まぁ通らないだろうけど。
もう少しクラス内カーストが上だったら希望はあったのに………チクショウ。
2014/10/07 『やめろぉぉぉぉぉ!! 全力でやめて!! こんなの………こんなの結衣さんじゃないよ!!』→『やめろぉぉぉぉぉ!! 全力でやめて!! こんなの………こんなの