でも納得してください。そういうものなんです。
滑るんです。
好きなんです。
愛しているんです。
一くんの思考が途中からトリップします。
七つの能力があるからどうした? 《
村雨では対応しきれないだろう。だから俺はある槍を創造する。
『―――――ロンギヌス!!』
ロンギヌスの槍は、キリスト教において十字架に磔にされたキリストの生死を確認するために脇腹を刺したとされる槍である。そう、
だが伝わる伝説はどれも凄まじいものである。
所有する者に世界を制する力を与えると伝えられているのだ。逆に失うと所有者は滅びるとされている。
ロンギヌスの形状は、二つの紅い細い刃がねじれて一つのものになって、穂先が二股に分かれている。曹操の持っている聖槍とはかけ離れている。
「おい
『そうだよ。イエス・キリストの生死を確認するために脇腹を刺したとされる槍のレプリカさ』
「レプリカか………だから形状が違うのか? いや待て、エクスカリバーは本物と同じ形状だったはずだ」
『そんなの知らんがな』
本物のエクスカリバーなんて見たことがないからな。なんぜ俺が生まれる前に破壊されたんだ、見れるはずがない。
ロンギヌスに至っては目の前にあるからね。曹操が持っている聖槍とは形状が全く違うのがわかる。
エクスカリバーは本物と同じで、ロンギヌスは本物と違う形状。何が違うんだろうね。
「君の槍と俺の槍………どちらが強いか決めようではないか!!」
そう叫びながらくるくると聖槍を回す曹操。曹操はどうやら槍を回すのがお好きなようだ。
「七宝が一つ―――――
曹操がそう小さく呟くと、フッと球体の一つが消え去り―――――俺のロンギヌスにぶつかった。だが何も起きない。
当たり前だ。なんせ俺の絶対領域内に侵入しているのだ、すべては俺の思い通りだ。俺を中心とした半径5.040mは俺のものだ。
「なぜ………なぜ壊れない?
自己完結はやめてもらいたい。自分で質問しといて自分で回答するのはやめてもらいたい。本当に。
『曹操、次は俺の番だよね?』
そう言いながらロンギヌスをくるくる回す。………結構楽しいなこれ。
ロンギヌスをくるくる回すのを止めるのと同時に、曹操に向かって走り出す。どうせ投擲しても避けられるのがオチだろう。なら直接槍を当てに言った方がいい。
気での身体強化の段階を一段階上げる。俺の身体にはっきりとピンク色のオーラが見えるようになる。
魔力で足場をつくり、そこをジグザグに跳躍して曹操に近づく。曹操の目の前まで言ったら上に跳躍し、更に足場をつくって跳躍。曹操の頭上からロンギヌスを振るう。
―――――ガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!
凄まじい音を上げて、俺のロンギヌスと曹操の聖槍がぶつかり合う。さすがに破壊まではいかないか。あくまでも俺のはレプリカってことか。俺のロンギヌスもヒビ一つ入っていないんだけどな。
これは相手に合わせてロンギヌスを使っている場合じゃないかもしれないな。対人能力は大したことが無いのだから。世界ごとどうにかするのならこのままでもいいが、今回は曹操個人だ。オーバーキルもいいところだ。
ロンギヌスを霧散させながら曹操を見る。曹操も俺を見ている。目が合う。気まずいな………
「おい
黄金の鎧を纏ったアザゼルが俺の片に手を乗せながら言った。隣りには純白の鎧を纏った白龍皇がいた。少しカッコイイと思ってしまったのはナイショだ。
「堕天使の総督と白龍皇が相手をしてくれるのか? 素晴らしいな!! これ御することができれば俺はさらに高みを目指せるなッ!!」
曹操はすごいポジティブだな。俺だったら絶対に嫌だ。ラスボスと同じような存在が二人同時に襲い掛かってくるんだぞ? 無理ゲーに程がある。
アザゼルと白龍皇は凄まじい速度で拳を曹操にぶち込んでいく。だがそれを曹操は紙一重で避けていく。
さすがにこれは英雄の子孫ということだけで片付けるのには無理があると思う。
「力の権化たる鎧装着型の
なるほど………そういうことか。だが曹操は目に魔力や気を集中させているわけではない。これは確かだ。それなのに見えるということは………目自体が普通のものではないのか?
曹操の身体を舐めるように見回すと、右目が金色に輝いているのを発見した。どうやら本当に目自体に秘密があるらしい。
「
このようにかなり規格外なものだ。そう簡単に手に入る代物ではないんだけどな………さすがテロリストと言った方がいいのか? 赤龍帝と白龍皇の対処をするためとはいえわざわざ
アザゼルと白龍皇の攻撃を避けきった曹操は、視線を下に向けた。すると、アザゼルの足元が石化していった。
「―――――メデューサの眼かッ!!」
メデューサは、宝石のように輝く目を持ち、見たものを石に変える能力を持つ。頭髪は無数の毒蛇で、イノシシの歯、青銅の手、黄金の翼を持っている化物だ。
メデューサに実際に会ったら俺は間違いなく気絶する。これは確定だ。髪が蛇なんだぞ? キモイわ。
―――――ドズンッ!!
鈍い音と共にアザゼルの腹部に突き刺さった。難なく黄金の鎧を破壊するとは………さすが聖槍と言ったところか。
「………ぐはっ!! ………なんだ、こいつのバカげた強さは………」
アザゼルは口から大量の血を吐き出し、崩れ倒れた。俺はアザゼルにゆっくりと近づいて、周囲の陽気を集めて傷にあてる。自然治癒力を高めているのだ。念じればそれでいいんだけど、今までさんざんアザゼルに面倒事を押し付けられたからな。これくらいはしてもいいだろう。回復の手助けをするだけでもありがたく思ってほしい。
曹操は聖槍を引き抜きながら言う。
「いえ、あなたとは一度戦いましたから、対処はできてました。その人工
「アザゼルッ!! おのれ、曹操ォォォォォォォォッ!!」
アザゼルがやられたことに激昂するとは………意外な一面だったな。いくら育ての親といえ、戦う事しか頭にない白龍皇だからな。
白龍皇は、曹操に向かって巨大な魔力弾を撃ちだした。だが曹操は焦っている様子がない。
「
―――――ギュゥゥゥゥゥゥンッ!!
白龍皇の放った魔力弾が前方に生まれた黒い渦に吸い込まれていった。全てを吸い取った渦は消失し、白音の前方に新たな渦が―――――ッ!?
攻撃を受け流すとはそういうことかッ!! マズイ………マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ!!
地面を跳躍して白音と魔力弾の間に滑り―――――
『うおぉぉぉぉぉ!?』
クソッ!! アザゼルの血で滑りやがった!! ホテルの従業員は何してやがる!! こんな
「バカ、なんで避けないの!! 白音ッ!!」
黒歌が白音と魔力弾の間に入った。いくら黒歌が仙術を使えるからってソレはマズイ!! 白龍皇―――――ルシファーの末裔の魔力弾だぞ? 威力はかなりのものだ。黒歌の仙術だけじゃあ防ぐことはできない。
―――――ゴバァァァァァァァァァァンッ!!
爆音がロビー内に駆け回った。白音の目の前で黒歌は―――――曹操に受け流された白龍皇の魔力弾をまともに受けてしまった。
血を吹き出し、煙を上げて倒れていく黒歌。白音がすぐにその身体を抱きとめた。俺はその光景を呆然と見ることしかできなかった。
「………な、なに、ちんたらしてんのよ………」
消え入りそうな声音で黒歌は言った。白音が首を横に振って叫ぶ。
「………ね、姉さまッ!!」
白音の声を聞いてやっと行動に出ることができた。
黒歌まで近づ―――――くことができなかった。
「君ならあの程度の傷、すぐに治してしまうだろ? 行きたかったら俺を倒してからにしてくれないか?」
『曹操ォォォォォォォ!!』
叫んでも仕方がないことは分っている。だが叫ばずにはいられない。
どうする? どうすればいい? どうすれば黒歌の傷を癒せる? アーシアさんはゼノヴィアとイッセーに付きっ切りだ。あと傷を治癒できるのは俺しかいない。でも俺の中心とした半径5.040m以内じゃないと効果はない。
黒歌までの距離は10m以上ある。クソッ!! 今の俺には何よりも効果範囲が足りないッ!!
どうすればいい? 曹操と戦いながら黒歌に近づくのは無理がある。黒歌に戦闘の流れ弾が当たるかもしれない。
思わずお面に手をかける。―――――ッ!? 何だこの感覚………今までに無かったぞこんなこと。この感覚は俺の絶対領域が広がる感覚………?
さらにおでこが見えるくらいまでお面をずらす。………確定だ。このお面を外せば俺の絶対領域が広がる。
だがなぜ? このお面と俺の絶対領域は何も関係ないはずだ………―――――ッ!! アレか………あの演説か!!
『我々は一歩間違えれば社会的な死を迎えることになる挑戦者だ』
確かにそう言っていた。俺はお面をつけて、素性を隠している。これでは絶対領域愛好者を名乗れないというのかッ!! 俺はお面で素性を隠し、社会的な死を迎えないように備えている。そんな臆病者には絶対領域を―――――全ての絶対領域を支配する資格は無いというのか!!
思えば、この能力も少し違和感があった。俺は『全ての絶対領域を支配したい』と望んだはずだ。なのに発現した能力は俺を中心とした半径5.040mを支配する能力。とても全ての絶対領域を支配するこは出来ない。精々多くても二つ三つだ。これはもしかして
俺が
俺には―――――覚悟が足りなかったんだ。
変態と罵られても、キモイと蔑んだ目で見られても、自分の性癖をバラされても、近寄られなくなっても、社会的な死を迎えても―――――絶対領域を愛するという覚悟がッ!!
今はどうだ? ―――――勿論あるッ!!
変態とののしられても、キモイとさげすんだ目で見られても、自分の性癖をバラされても、近寄られなくなっても、社会的な死を迎えても―――――絶対領域を愛するという覚悟がッ!! 今の俺にあるッ!!
行くぞ!! 今こそ絶対領域への愛を確かめる時ッ!!
『オオオォォォォォォォォォォォ―――――』
お面に手をかけて一気に下に下ろす。
「―――――ォォォォォォォォォォォォオオオ!!」
声音は電子音から肉声に。
括目しろッ!! これが俺の絶対領域への愛だッ!!
瞬間、俺の中で何かが弾けた。それと同時に歯車がガッチリ噛み合い、回りだしたような感覚が襲った。
途中から書いてて、何か違うかなって思いましたよ? でも自分の力量ではこれが限界です。
「いや、あのときこうすればよくね?」と思う表現があるかもしれません。
我慢してください。
一くんは結構焦ってますから判断能力が鈍っています。
このタイミングで一くんが禁手しないと、タイミングがないなって思ってる自分です。
正体バラすタイミングも無さそうな気がしまして。
この後は特にビックなイベントがなかったような気がするのです。吸血鬼騒動まで。
吸血鬼騒動まで行くと、―――――も参加する予定ですので、探索者での限界を感じます。駒王学園もはぐれ魔法使いに襲撃されますしね。
まぁ結論を言えば、ここでバラすのが一番簡単だと思いました。
後で大幅修正の可能性があります。基本的には考えていませんが。