絶対☆領域 【凍結】   作:-Msk-

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次の出来事への説明回です。



二領域目 俺は吸血鬼を初めて見る

 太陽が沈み、月が昇っている。夜だ。それも深夜。

 

 現在、俺と結衣さんはオカルト研究部の部室にいる。こんな夜中になぜオカルト研究部の部室にいるかと言うと、吸血鬼と会談をするからだ。怪談じゃないぞ、会談だ。

 

 もちろん、何があるか分からないので《桃源郷の探索者(エクスプロール・シャングリラ)》は発動している。俺を中心とした半径5.040m―――――俺の絶対領域の展開は確認済みだ。

 

 今ここにいるのは、リアス・グレモリーとその眷属、ソーナ・シトリー、真羅さん、アザゼル。そして―――――

 

 

「あいさつが遅れました。私、この地域の天界スタッフを統括しております、グリゼルダ・クァルタと申します。赤龍帝さんやシスター・アーシアとは少し前にごあいさつできたのですが、皆様とはまだでしたので、改めまして今後ともなにとぞよろしくお願い出来たら幸いです」

「私の上司様です!!」

 

 

 ―――――グリゼルダさんとイリナさんだ。

 

 そしてグリゼルダさん、なぜ俺の方を向いて笑顔を向けている。誘っているのか? 天界陣営に誘っているのか? 絶対に行かんがな。なぜミカエルをたたえないといけないんだ。俺には無理だ。勢い余って塵にしてしまいそうだ。

 

 グリゼルダさんは、この地域にいる天界側のスタッフを統括する転生天使だ。転生天使―――――ということから分かるように、グリゼルダさんは元人間だ。

 

 御使い(ブレイブ・セイント)―――――それが転生天使の呼び名だ。トランプを模した転生システムで、1~10、J(ジャック)Q(クイーン)K(キング)とあり、もちろん―――――JOKER(切り札)もある。

 

 悪魔の駒(イーヴィル・ピース)にもそれぞれ特性があるように、トランプにもそれぞれ特性がある。

 

 ロイヤルストレートフラッシュ、ストレートフラッシュ、フルハウスを揃えれば、力が上がる。どのように上がるかは知らないが。詳しくは聞いていないのだ。仕方がないだろう。

 

 四大熾天使(セラフ)のガブリエルのQ(クイーン)で、イリナさんの上司で、ゼノヴィアさんの祖国の知人だそうだ。ガブリエルは、ハートの札を掌っているそうだ。ハートのQ(クイーン)だから、『クイーン・オブ・ハート』と呼ばれているらしい。

 

 グリゼルダさんのあいさつが終わり、あとは吸血鬼が来るまで待つだけだ。

 

 外は完全に静まり返り、皆も会話を少なくした頃、外から結構な量の陰気が集まってきたのが分かった。他の者も、異様さを把握したのか全員が窓の方―――――旧校舎の入口がある方向に視線を向けていた。

 

 

「来たようね………相変らず、吸血鬼の凍ったように静かだわ」

 

 

 リアス・グレモリーが立ち上がり、木場に視線を向けながら言った。木場は立ち上がり、一礼してから部屋をあとにした。吸血鬼を迎えに行ったのだろう。

 

 吸血鬼は、正体されたことのない建物に入れない。鏡に姿が映らず、影もない。流水を渡れず、ニンニンクを嫌い、教会のシンボルである十字架、聖水に弱い。そして、自分の棺で眠らないと自己の回復が出来ない。

 

 ギャスパーのようなハーフは違う点がいくつかある。影はあるし、姿も鏡に映る。川も渡れて、ニンニクも克服しつつあるらしい。自分の棺で絶対にねむらないと いけないわけではないらしい。

 

 現在ソファに座っているのは、俺、リアス・グレモリー、ソーナ・シトリー、アザゼル、グリゼルダさんだ。

 

 リアス・グレモリー、ソーナ・シトリー、グリゼルダさんの背後にはそれぞれ眷属、部下が立っている。俺の背後にも結衣さんが立っていて、戦闘になっても瞬時に反応できるように警戒している。

 

 朱乃さんは給仕できるように専用の台車の前に待機していた。すごくしっくりきているのは俺だけだろうか?

 

 しばらくして、扉がコンコンとノックされた。

 

 

「お客様をお連れしました」

 

 

 扉が開き、件の吸血鬼が部屋に入ってきた。

 

 その姿は、中世のお姫様が着るようなドレスに身を包む人形のような少女だった。人形と表現したのは、顔立ちがあまりにも綺麗過ぎるからだ。それに顔色が悪すぎる。

 

 色白なんて次元ではない。生気が完全に感じ取れないような肌の色合いだ。そして赤い双眸は、ハーフであるギャスパーのものよりも深くて濃い。そして影は無い。

 

 少女の背後にいはスーツを着た男女が一人ずつ立っている。ボディーガードのつもりなのだろう。ただ、そこまで強そうに見えないのは俺の気のせいだろうか? この二人程度なら、結衣さんでも余裕で勝ててしまうだろう。ブリューナク無双である。

 

 

「ごきげんよう、三大勢力の皆様。特に魔王様の妹君のお二人に、堕天使の前総督様にお会いできるなんて、光栄の至りです」

 

 

 そこに赤龍帝は入らないのか? 正直、今出た三人よりも赤龍帝の方がレアだと思う。あくまでも個人的な観点からだから他の奴は違うのかもしれないが。

 

 

「私はエルメンヒルデ・カルスタイン。エルメとお呼びください」

 

 

 リアス・グレモリーの対面の席に座る前に言った。

 

 すごく長い名前だ。正直、最後に言ったエルメしか覚えていない。

 

 

「………カルンスタイン。確か、吸血鬼二大派閥の一つ、カーミラ派のなかでも最上位クラスの家だ。久しぶりだな、純血で高位のヴァンパイアに会うのは………」

 

 

 アザゼルが説明してくれているが、何を言っているのかさっぱりわからない。

 

 朱乃さんがエルメにお茶を出したのをかくにんして、リアス・グレモリーが率直な質問をした。

 

 どうして今まで接触を避けていたカーミラの者が、突然グレモリー、シトリー、アザゼルのもとに来たのかと。

 

 それに対しえてエルメは、ギャスパーの力を借りたいと答えた。

 

 理由は結構深刻なものだった。

 

 現在、吸血鬼の世界でとある出来事が起きており、根底の価値観を崩すほどのものになってきているらしい。

 

 神滅具(ロンギヌス)を持つ者がツェペシュ側のハーフから出てしまったらしい。神滅具(ロンギヌス)の名は《幽世の聖杯(セフィロト・グラール)》。聖遺物(レリック)の一つ、聖杯だ。

 

 聖遺物(レリック)は三つある。

 

 聖槍―――――《黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)

 

 聖杯―――――《幽世の聖杯(セフィロト・グラール)

 

 聖十字架―――――《紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)

 

 この三つだ。どれも最高にチートな神滅具(ロンギヌス)だ。俺の禁手(バランス・ブレイカー)はチートじゃないぞ。バグだ。

 

 その《幽世の聖杯(セフィロト・グラール)》でやったことは簡単だ。

 

 絶対に死なない身体を得たのだ。杭で心臓を抉られても、十字架を突きつけられようとも、自分の棺で眠らなずとも、太陽光を浴びようとも、決して滅びない身体を得たようだ。正確には滅びにくい身体らしい。聖杯の力はまだ不完全のようだ。

 

 結論を言うと、何も弱点のない存在になろうとしているらしいのだ。

 

 その一環で、ツェペシュ側はカーミラ側を襲撃したらしい。犠牲者もチラホラ出てる。それを許すつもりはもちろんなく、同じ吸血鬼で粛清するんだと。

 

 簡単に言えば、カーミラ側は吸血鬼としての生き方を否定して、襲撃してきたツェペシュ側のやり方が気に入らないということだ。

 

 ギャスパーはその暴挙を食い止めるために来てもらいたいんだと。 

 

 ギャスパー単体が出たところで何ができる? そう思うだろう。だが、ギャスパーは眠っていた力が目覚めたらしい。

 

 ごく(まれ)に本来の吸血鬼の持つ異能から逸脱した能力を有する者が、血族から出ることがあるらしい。今世ではハーフの者が多いらしい。ギャスパーもその一人と言うわけだ。ただ、カーミラ側には手がかりは何もないらしい。ツェペシュ側には何かあるかもしれないらしい。

 

 問題の聖杯の所有者は、ギャスパーと同じハーフらしい。名はヴァレリー・ツェペシュ。どうやらヴァレリーはギャスパーの知り合いらしい。

 

 エルメは散々ギャスパーを罵倒した後、ギャスパーに同じ境遇だったヴァレリーを止めたくないかと言った。

 

 さすがにグリゼルダさんは静かに怒っていた。あぁ………すごく怖いぜ。結衣さんには負けるがな。瞳にハイライトが入ってるからな。

 

 

「あなた方はハーフの子たちを忌み嫌いますけれども、もともと人間を連れ去り、慰み者として扱い、結果的に子を宿させたのは、吸血鬼の勝手な振る舞いでしょう? あなた方に民を食い散らかされ、悔しい思いをしながら憂いに対処してきたのは、我々教会のものです。できれば、趣味で人間と交わらないでもらいたいものです」

 

 

 ど、毒々しいな………女の戦いって奴か?

 

 エルメは口元に手をやり、小さく笑った。

 

 

「それは申し訳ございませんでしたわ。けれども、人間を狩るのが我々吸血鬼の本質。悪魔や天使も同じたと思っておりますが? 人間の欲を叶え対価を得る、または人間の信仰を必要とする。我々異形の者は、人間を糧にせねば生きてられぬ『弱者』ではありませんか。ねぇ? 人間の探索者(エクスプローラー)さん」

 

 

 最後に何言ってくれてるんだこの子は。全員の視線が俺に集まったじゃないか。どうしてくれるんだ。

 

 皆は皆でなんで期待した目で見てる。これはあれか? 俺が何か言うまで進まないやつか?

 

 

「いいんじゃないかなぁ………どうでも」

 

 

 俺の一言に皆が凍った。いや、エルメは違う。クスクスと綺麗に笑っている。

 

 いや、本当にどうでもいい。人間以外は俺の知り合いで味方か、知り合いか、それ以外ぐらいしか分けないからな。かといって全人類の味方ってわけでもない。守るのは大切な者だけだ。俺はそんなに強くないからな。

 

 エルメは、背後で待機していたボディーガードを呼び、鞄から書類を取り出し、アザゼルに渡した。

 

 それはカーミラ側の和平協議についてのことらしい。このタイミングで出すとは実にいやらしいな。これだと、力を貸さなければ和平には応じないと言っているようなものだ。

 

 そしてなぜ全員俺を見る。俺は関係ないぞ。別に三大陣営とは関係ないし、人間代表ってわけでもないからな。

 

 

「ご安心ください。吸血鬼同志の争いは吸血鬼同志でのみ、決着をつけます。ギャスパー・ヴラディをお貸しいただければ、あとは何もいりませんわ。和平のテーブルにつくお約束と共にヴラディ家への橋渡しも私どもがおこないましょう」

 

 

 エルメが口の両端を吊り上げながら言った。それに対してイッセーが口をはさんだ。

 

 

「待てよ。仮にギャスパーをそっちに送ったとして、無事にこちらに返すつもりはあるのか? いや、まだカスとは言ってないけど!! 一応、その辺を訊きたい」

 

 

 それに対して、エルメは蔑んだ目でイッセーを見て言った。

 

 

「あなたは上級悪魔リアス・グレモリー様の下僕―――――赤龍帝ですねわね? あなたが特使である私に話かける権利があるのですか? いくら赤龍帝でも権利を持っていないただの従僕であるなら、私に意見する資格はないでしょう?」

 

 

 エルメは赤龍帝の力を知らないのだろうか? 

 

 覇龍(ジャガーノート・ドライブ)―――――これをされたら、吸血鬼は壊滅するぞ。確かに命を削るが、イッセーは悪魔だ。ある程度は保つ。

 

 神を凌ぐ力で、暴れ回られる………想像しただけでも恐ろしい。まぁ俺なら念じるだけで一発だ。全く脅威にならない。なにより理性を失っているからな。

 

 

「今夜はお目通りできて幸いでした。ないよりも、自分の根城に吸血鬼を招き入れるという寛大なお心遣いに感謝いたしますわ、リアス・グレモリーさま」

 

 

 エルメのわざとらしい微笑に、リアス・グレモリーは、憤怒の形相になっており、瞳は怒りにたぎっていた。

 

 

「………えぇ、今日は貴重な階段ができてよかったわ。あなたたちのことがよくわかったものね」

「それでは、ごきげんよう。この地に従者を置いていきます。何かありましたら、その者に取り次いでください。では、よいご報告をお待ちしております」

 

 

 リアス・グレモリーが吐き出した嫌味をものともしないとは………大人だな。

 

 エルメとそのボディーガードは、旧校舎から出て行った。

 

 

†††

 

 

 

 会談が終わり、一〇分ぐらい経った。

 

 ゼノヴィアさんが机をぶん殴ったことによって会話が始まった。これからについてだ。

 

 どうやら、ギャスパーはヴァレリーを助けに逝くようだ。それについて行くのはリアス・グレモリーに木場、アザゼルだ。『(キング)』を守るのは『騎士(ナイト)』か………テンプレだな。アザゼルが行く理由は聖杯の情報だ。神器(セイクリッド・ギア)好きがここで役に立つとはな。

 

 それと、このことは天界に伝えるらしい。どうもきな臭いと。グリゼルダさんが言うには、ジョーカーを切るかもしれないらしい。

 

 話がひと段落ついたので、俺と結衣さんはここで帰らせてもらった。

 

 結衣さんを家まで送ったら、すぐに家に帰った。それで黒歌と風呂に入って、ソファで一息ついた。そして吸血鬼との会談の内容を話した。

 

 

「とんでもないことになってるにゃん………」

「そうだねぇ………でも俺、知っちゃったからなぁ………」

 

 

 知ったことで巻きこまれなければいいけど。依頼なら………報酬次第か? いや、でも吸血鬼のいざこざに巻きこまれるのはなぁ………

 

 しかし聖杯の情報は欲しいな。俺の絶対領域内に侵入させて、解析できれば創造できるかもしれない。

 

 

「まぁバグの塊の一なら余裕にゃん」

「それ、言う………?」

「事実にゃん」

 

 

 否定できないのが悲しい………




一くん、人外にはちょっと厳しいです。

黒歌、バグネタで一くんをちょっといじります。
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