右手に収まっている深緑色の宝玉。この宝玉からは、かなり荒々しい龍の覇気を感じる。
宝玉に封印した理由は、
おっと、そうだった。あそこで固まっている青年も気絶させなければ。さっきからずっと
《
「そこの青年―――――っていない………行動が早いな………」
銀のローブを羽織っている青年はすでに逃げてしまったようだ。無駄に行動力はあるようだ。
それにしても疲れた。メタルイーターM5の反動は凄まじい物があったからね。気で身体強化しててもジワジワ来た。伸びをするとバキバキって音が鳴り響いた。
いまだに固まっているみんな。でもいい加減にしないとヤバイ。ここはもう少しで崩壊するようだし。
「ソーナさん、いい加減にしないとみんな次元の狭間で迷子になっちゃうよ?」
「そ、そうですね………もう崩壊が始まっているのですか。この領域は崩壊するようです!! 速く、転移魔法陣で脱出しましょう!!」
ソーナさんの指示のもと、朱乃さんが例の地下空間に帰還するための魔法陣をすぐに展開した。みんなはイソイソと魔法陣の中央に集まる。もちろん俺もだ。
その際、レイヴェルがフェニックスのクローン培養器に次々と魔法陣を当てて行った。何をしているのかさっぱりわからないが、まぁいいか。
†††
朝日が昇りかけている。どうやら一夜明けてしまったようだ。
戦い―――――というよりも一方的な虐殺をした俺たちは、フィールドから帰還。上に戻り、駅内でまどろんでいた。
ソーナさん達三年生は事後報告をするために駅を出て、スタッフの人達と話し合っている。
銀のローブを纏っていた青年………どこかで感じたことのある気だと思ったら、グレイフィアさんのものだ。とても質が似ている。あれは………肉親、か? 弟あたりか?
偽フェニックスの涙を製造する機械の中身も回収することができなかったのはちょっと失敗した。いくら偽物とはいえ、ある程度の治癒力はある。黒歌や結衣さんに持たせて、俺がいないときの回復用に持っておいてもらいたかった。
俺が封印した龍は、『
そんな龍を封印してしまった、しかも魂をそのまま。これは後々面倒なことが起きそうだ。
ちなみに結衣さんはもう家に帰った。残るって言ってたけど、さすがにこれ以上ここにいたら俺が結衣さんのおじいちゃんに殺される。その代わりに―――――
「心配したにゃん………」
黒歌が来た。俺の気を辿って転移してきたらしい。今まではフィールドにいたから俺の気を探ることができなかったんだね、きっと。
さっきから黒歌はゴロゴロとのどを鳴らしながら俺の顔に頬ずりしてくる。それをうらやましそうに見ているイッセーと、イッセーの太ももをつねっているレイヴェル。そのレイヴェルの隣りでジト目で俺と黒歌を見てくる白音。なんだこれ。
今はこのウマウマな状況をしばらく味わ―――――
「―――――一くん」
―――――うことは出来なさそうだ。隣りの黒歌も少し不機嫌になったぞ。
「なんですか? ソーナさん」
「あなたは先ほど邪龍―――――グレンデルを封印しましたよね?」
「まぁね。それがどうかしたの? まさか渡せとか言わないよね?」
「………できれば渡してもらいたいのですが」
それは出来ないだろ。俺が封印したんだぞ? もし俺が封印しなかったらどうなってる? 戦闘になってるだろ? 俺が封印したおおかげで戦闘にならなかったんだ、グレンデルを封印した宝玉をどうしようが俺の勝手だろうに。
「さすがにそれは横暴にゃん」
ここで黒歌の参戦だ。そうだそうだ、もっと言ってやれ。
「ですがソレがあるだけでかなり研究が進むのです」
「何の研究?」
「邪龍についてです。実は―――――」
ソーナさん曰く、各地で邪龍の目撃情報があるらしい。邪龍はほとんど滅ぼされたはず、それなのになぜ目撃情報が? まぁその邪龍の研究のために邪龍の一匹であるグレンデルを封印した宝玉を渡してほしいらしい。
「でも無理だって。これはどんな対価を提示されても無理」
「わかりました………もともと私達と一緒について来てくれる予定もなかったのですからね。少々わがままが過ぎました」
「わかればいいにゃん」
なぜ俺の代わりに黒歌が返事をするんだ? まぁいいんだけどさ。いいんだけど………ねぇ? 何だろう、この言い表せない気持ち悪さ。
†††
休日になった。目が覚めるといつも通り黒歌に抱き着かれているのが分かった。最近は当たり前のように一緒に寝るようになったからね。寝るときは抱き着かれてないのに、朝目が覚めるといつも抱き着かれてる。その、ね………素晴らしい胸が俺の腕をサンドイッチしてるわけで………まぁありがたいというわけだよ。
やっと休日になった。夜遅くまで行動してからの学校は辛かった………授業は全部睡眠学習になったからな。体育とか実習科目以外。
「にゃぁぁ………起きたにゃん?」
「起きてるよ―――――って起きてたの?」
「にゃん」
起きてからわざわざ抱き着いたと………まぁいいんだけど。黒歌だからバッチコイなんだけど。
のそのそと起き上がった黒歌は、何も身に纏ってなかった。………まて、なぜ何着ていないんだ。一緒にベットに入ったときは確かに服を着ていたのに………
「なんで服着てないのさ………」
「邪魔だったから脱いだにゃん」
「邪魔………」
一体ナニをするのに邪魔だったんだろうか………
黒歌はそのままクローゼットを開けて、ベビードールを取り出した。そしてそれをゆっくりとした動作で着た。そして―――――ニーソを、履いた。
ベビードールの紫に合わせた、黒と紫のストライプニーソ。ニーソが演出するのは魅惑的な太もも。その太ももはニーソに締め上げられ、見事に「ぷにっ」っと感を出してくれている。
「おっと………」
急いでティッシュを鼻に詰める。どうやら絶対領域への愛が鼻からあふれ出してきてしまったようだ。
黒歌は俺が鼻にティッシュを詰めているのをみてクスクスと妖艶に笑った。くそぅ、これは完全に手玉に取られたな。黒歌………恐ろしい子!!
俺は鼻にティッシュを詰めたまま部屋を出る。その後を黒歌はとてとてと付いてくる。目的地はリビングだ。
俺がソファでテレビを見ている間に、黒歌は朝食をつくる。匂いからするに、和食だね。
「できたにゃん」
「りょーかい」
ソファから立ち上がり、黒歌の待つテーブルに向かう。椅子に座り、手を合わせる。
「「いただきます」」
メニューはご飯、味噌汁、ほうれん草のお浸し、冷奴、焼き鮭だ。
朝食を食べ終えたら、寝巻から着換える。
ベージュのチノパンにワインレッドのVネックシャツ。その上に黒のジャケットを羽織る。これでも結構服装には気を使っている。黒歌の私服が可愛すぎるからさ、見劣りしないようにね。
黒歌は、白のニットの上にベージュのコート、黒のミニスカートに黒ニーソ!! さすが桜ちゃんだ。俺のツボを押さえている。展開されている絶対領域も素晴らしいクオリティだ。
「それじゃあ行くにゃん」
「りょーかい」
†††
来たのはデパートだ。ここには黒歌の服を見に来たのだ。黒歌は基本的に着物を着ている。そろそろ新しい着物が欲しいとのことなので、買いに来たのだ。
「どうにゃん?」
「周りの目があるからもう少ししっかりと着てもらいたい」
「………似合ってるの?」
「もちろん」
着物の試着をして見せてくれるのはいいんだけど、着崩した状態で出てくるのはやめてもらいたい。その姿は俺だけに見せてほしい。俺以外の奴にはたとえ女の子だろうと見せたくない。まぁ白音ならいいかな………
結局、黒歌は着物を五着買うことにした。もちろん支払いは俺ですよ。
「五着で一二六五万円になります」
「えっ………?」
バッっと黒歌の方を向くと、頬をぽりぽり人差し指でかいていた。どうやら誤魔化しているようだ。
いや、驚くでしょ。着物五着で一〇〇〇万オーバーって………どんだけ高いの買ったんだよ。それによくそんなに高いのがこのデパートの店の一つにあったな。しかも五着も。まぁ買うんだけどね。
「カードで」
「お支払いは?」
「一括で」
「かしこまりました」
いやいや、カード以外でどう払えと? 現金一括? そんなに持ってきてない。アタッシュケースを持ってきてないからね。精々財布には諭吉が二〇人程度だ。
着物は家に宅配してもらうことにした。さすがに着物五着持って歩き回るのはつらいものがある。
「次は一の服を見るにゃん」
「別に俺のはいいよ」
「よくないにゃん!!」
「そ、そうですか………」
そうだよね、黒歌が俺の服を選んでくれるのにわざわざ断る理由なんてないよね。
黒歌に手を引かれてやってきたのはいかにもメンズな服屋さん。名前は知らない。なんのためらいもなく入っていく黒歌に少し尊敬しながら、俺も続く。
黒歌が忙しなく店内を歩き回っては服を持ってきて俺にあてて、またどっかへ歩き出す。ただ、お目に適ったものはカゴに吸い込まれていった。
一着、二着、三着………と続いて行き、最終的には六着が残った。パンツが二着、アウターが二着、インナーが二着。
値段は諭吉が六人程度だった。着物に比べると安いが、やはり高いと思った俺は普通なはずだ。
さすがにここで買ったものは手持ちする。着物と違って重くないし、そこまでかさばらなかったからな。
「なんかお腹減ったね………」
「もうお昼にゃん」
もうお昼か………早いね。黒歌と過ごす時間はいつも早く感じるよ。楽しいからかな? うん、そうだろうね。そうとしか言いようがない。
†††
夜になり、俺は部屋でグレンデルを封印した宝玉―――――《
グレンデルはいかにも戦闘狂と言った感じだった。ということは、だ。うまく誘導すれば俺の代わりに戦闘をさせることもできるんじゃないか? いや、無理か。グレンデルには何よりも理性が足りないからな。
この《
《
宝玉がそれぞれ一つずつはめられるということだ。
今まではやったとしても《
別に同じ宝玉じゃなくてもいいのだ。片方は《
なんだかどんどん戦闘に特化した
あ、でも《
なんだかんだ言っていい
結論、一くんの神器はやはりバグ。