最初はどうしてマリウスが叫び声を上げたのかが分からなかった。でもすぐに分かった。
すりおろしニンニクを馴染ませた銀製の茨が身体に巻き付いているからだ。しかも棘が身体に食い込んでるし。
普通の吸血鬼に戻ったマリウスからしてみればたまったもんじゃない。茨の棘もちゃっかり十字架になっているし、その上匂いが出やすいようにすりおろした状態のニンニクが馴染んでるんだよ?
吸血鬼じゃなくてもこれは死ねるだろう。
でもここで終わらせる俺じゃない。早速創造した銀製の十字釘をマリウスのつま先に刺す。
「う―――――ぐああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「「「「「―――――ッ!?」」」」」
マリウスが叫び声を上げた。それを見たみんなは目を見開いて驚いている。
ちょっとヴァレリーがいると動きにくいな。でも俺から話してマリウスが何かしたら面倒だし………まぁこのままでいいか。ヴァレリーは気絶しているみたいだし大丈夫だよね。
銀製の十字釘をひざに撃ち込む。まずは手で浅く。それから気で強化した拳で打ち込んでいく。
「う、があぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! き、貴様………何をしたあぁぁぁぁぁ!!」
「えっと………まず聖杯の効果を無効化して普通の吸血鬼に戻した。あとは銀製の十字架に磔にして、銀製の茨で縛り上げて、その茨にはすりおろしニンニクを馴染ませた。それからつま先と両膝を銀製の十字釘で打ち込んだだけだよ」
みんなが唖然としているのが分かる。でもまだまだこれからだ。まだ拷問は始まったばかりなんだから。
それから両太ももに一本ずつ銀製の十字釘を打ち込む。
「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ………なぜだ………なぜ聖杯の力を無効化できた!!」
「俺の想いの強さかな?」
「想いの………強さだと?」
「そうだよ」
絶対領域への想いとか絶対領域への想いとか絶対領域への想いとか。
それにしてもまだ気絶しないか。驚いたよ。てっきり二刺し目辺りで気絶すると思ったのに。
「それじゃあ一気にいってみようか」
「な、なにを―――――」
「えいえいえいえいえいえいぃぃぃ!!」
両手、両肘、両肩、両乳首、両脇腹に一本ずつ銀製の十字釘を打ち込む。そしてすぐに気で強化した拳でさらに深く打ち込んでいく。
すると今度は叫び声をあげなかった。マリウスを見て見ると理由が分かった。気絶してしまったようだ。
死んではいないよ。心臓は動いているし。
「アザゼル………」
「どうした?」
「これ、どうしたらいい?」
「どうしたらって………」
アザゼルも処理に困るのか………本当にどうしようこれ。
そんなことを考えていたんだけど、心配は杞憂に終わった。ギャスパーが全部喰らってくれた。
闇の化身になったギャスパーが、すごくかっこいい台詞をいいながらマリウスを喰らっていった。正確には闇で浸食していってっていうのがただしいだろう。
まぁなにはともあれ、そのおかげで処理に困らなくなったのはよかった。でも闇をこの空間全体に蔓延させていったときは驚いたけどね。
闇が霧散した後、ギャスパーらしきナニカは自分のことを話し始めた。
このギャスパーらしいナニカは、ギャスパーでありギャスパーではない存在らしい。ギャスパーが母体にいたときに宿ったのはバロールの断片化された意識の一部らしい。
ギャスパーに宿った時にはおう神性はもう失われていて、魔の力だけが残ったらしい。これは本来のバロールがルー神によって滅ばされたからだそうだ。
だからギャスパーらしきナニカはバロールではなく、『ギャスパー・ブラディ』らいい。
どうにもこのギャスパーらしきナニカは、ギャスパーの持つ
意識の断片が融合して、こんな規格外なハーフヴァンパイアが生まれたと。何がなんだか全く分からないのは俺だけじゃないと思う。
ここまで来ると聖書の神がどんな奴だったからが気になる。世の中にこんな規格外なものをたくさん産出するなんて………魔王よりも魔王らしいね。
それで、現在のスーパーギャスパーは
アザゼルが言うには、もう《
でも待ってほしい。そうしたら俺の《
数分後、スーパーギャスパーの状態は終了してしまった。まだまだ負担が多いのか知らないが、そこまで継続時間は長くないみたいだ。
それにしてもおかしい。いつまでたってもヴァレリーが目を覚まさない。アザゼルもそれには疑問を持っているらしく、首を捻っていた。
マリウスには聖杯を抜き出されていない。それなのにいつまでたっても目を覚まさない。
「あー、もしかしたら、これをもどさないと一度失われた意識は戻らないかもねぇ」
………あれれれれぇ? このイヤな程耳に残る声は―――――
「―――――会いたかったぞ、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーッ!!」
―――――リリンじゃないか!!
ヴァーリが叫んだ通り、そこにいたのはリリンだった。しかもそのリリンのそばには、聖杯らしき杯が一つ中二浮かんでいた。
「そう、ヴァレリーちゃんが持つ亜種の聖杯は―――――全部で三個だ。三個でワンセットっつー規格外の亜種
これは困ったぜ!! 本当に困った。いや、本当にどうしよう。だってリリンって超越者なんでしょ? 俺の《
俺の目の前でどんどん話が進んでいってるけどそれどころじゃない。どうやってここから逃げるか。これに限る。
いや、待て。逆に考えてみよう。あえて逃げなくていいと。………ごめん、自分でも何を言っているか分からなくなった。
アザゼルの表情も険しくなってるけど、それ以上に俺がヤバイ。
いいか? 考えてみるんだ。結衣さんが橘家の者だってリリンにバレるだろ? リリンが結衣さんと戦闘始めるだろ? 結衣さんが大怪我するだろ? 俺、結衣さんのおじいちゃんに殺される。
クソッ!! 一体俺にどうしろっていうんだ………
「は、一くん………どうしよう………」
結衣さん、それを今本気で考えているんだ。だから後ろから抱き着いて来てその素敵な胸を俺の背中に押し付けないでくれ。集中できない。
そんなことを考えていたら、いつの間にか戦闘が始まっていた。イッセーがドラゴンショットをリリンに向かって放ったのだ。
でもそれはリリンに
「………いいか、イッセー。そいつの能力は悪魔の中で唯一の異能―――――『
な、ナンダッテー!! そんなの無理ゲーもいいところじゃないか!!
その後もみんなが攻撃をするけど全て無効化される。ゼノヴィアさんのデュランダルに関してはリリスに受け止められていた。
待て………リリス? そうだ………そうだよ!! 俺にはまだ切り札がいるじゃないか!! この切り札を知っているのは俺と黒歌だけ。そりゃそうだ。俺の家に住んでいるんだから。
さっそく切り札を呼び出そうとした時だった。リリンがフィンガースナップをした。その瞬間、宙に立体映像が出現した。
映っているのはカーミラ側の城下町だ。さらリリンがフィンガースナップをすると………おぉ………ドラゴンが現れた。
現れたドラゴンは炎を吹いてカーミラの城下町を襲い始めた。
リリンが言うには、あのドラゴンは元吸血鬼らしい。聖杯の力で改造したときに仕掛けを施したんだって。リリンの意思で量産型邪龍になるというなんとも悪趣味な仕掛けを。
そんなことを考えていたら今度は大きな揺れが来た。どうやらこの揺れもリリンの仕業らしい。
まぁあれだよ………ツェペシュ側の吸血鬼も量産型邪龍になったってことだよ。
「じゃあ、気になるようだし、見にいこっか」
足下に展開された巨大魔法陣を起動させたのは貴様かリリンっ!!
†††
目の前に広がるのは夜の風景。外だね。周囲には空中を飛び回るもの凄い量の邪龍の姿。そいつらは町に向けて盛大に炎を吐いていた。
幸いなことに、リリンはヴァーリと戦っていてくれるようだ。
「結衣さん、とりあえずリリンはヴァーリの相手をしてる。だから今のうちにウッォーミングアップとして量産型邪龍を殺すよ」
「うん!! わかった!!」
結衣さんは返事をしながらブリューナクを二本創造し―――――って二本!? いつ間に二本同時に槍を創造できるようになったんだよ………
結衣さんはブリューナクを二本右手と左手にそれぞれ持って駆け出して行った。
俺は俺で、『消えろ』って念じて俺の絶対領域内の量産型邪龍を消滅させていく。それと同時に、
まず周囲に満ちている陽気と陰気をかき集める。そしてそれを1:1の割合で融合させていく。徐々に陽気と陰気の量を増やしていく。
この時点で既につくられた気弾は紅に染まり、バチバチと危なげな音を放っている。
さらにそこへ俺自身の気を混ぜていく。比率は1:1:1。紅の気弾が赤黒くなり、最終的には漆黒に染まった。
―――――ヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂヂ!!
効果音もこの通り危険極まりないものである。これを量産型邪龍が生まれたところに放つ。
―――――ビリビリビリビリビリビリビリビリ!!
放たれた気弾は凄まじい音を放ちながら真っ直ぐ量産型邪龍に向かって飛んで行った。もちろん量産型邪龍は木端微塵だ。そこで霧散するのかと思ったら、霧散せずにそのまま真っ直ぐ進んでいってしまった。
少しやりすぎた感が否めないけど、まぁいいでしょ。いやぁ………それにしても疲れた。
さーて、もうひと踏ん張りしますか。
†††
最初に一ついいですか? 助かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!! マジ助かった!! リリンが自分から帰ってくれたよ!! やったよ!! 切り札切らずにすんだよ!! 結衣さん無事だよ!! 結衣さんのおじいちゃんに殺されないよ俺!!
リリンがいなくなったけど、城下町はひどい状態だった。道も建物も何もかもが破壊しつくされていて、見る影もない。
ツェペシュとカーミラ、生き残ったエージェント達は住民の避難、誘導に尽力している。東門の先にある地下シェルターでは、アーシアさんを中心とした救護班が怪我をした住民の治療に専念していた。
ヴァレリーなんだけど、やっぱりリリンに奪われた聖杯もないと意識が戻らないらしい。だから《
ヴァレリーは俺に素晴らしいものを見せてくれたんだ。これぐらいはどうってことない。でも一生懸命お礼を言ってくれる姿はすごく可愛かった。
ただ、あくまでもレプリカで代用しているだけなのでいつまた気絶してしまうか分からない。それを聞いたギャスパーは、聖杯を取り戻すって意気込んでいた。
「一くん………リリンのことなんだけど………」
「うん。
「そうだよね………また次にあったらどうなるか分からないよね」
本当に今回は助かった。リリンが自分から帰ってくれなかったらどうなってたか分からない。
切り札を出せば確実に勝てる。でも吸血鬼の都市は更地に変わっただろうけど。でもしょうがないよね。自分の命の方が大切だから。
「リリンは
「うん―――――って、待って。
「それは秘密。切り札だからまだ結衣さんにも言えない」
「そっか………わかった」
結衣さんに知られたら病んじゃうでしょ? ルナティックでしょ? そうなったらリリンじゃなくて結衣さんに殺されちゃうもん。
結論。修行が必要なようです。
†††
吸血鬼の騒動から五日が経った。
日本に戻ってきて、黒歌とのほほーんと過ごしていた俺に悪魔から通信が来た。いや、本当に悪魔だよ。サーゼクスっていう悪魔。
サーゼクスから現在の状況を聞いた。
リリンはどうやら邪龍を使って、世界に混乱をもたらせようとしているらしい。その上、伝説の魔獣
各神話体系の主神は、この事態を過去最高の危機レベルと断定した。
和平を結んだ勢力同士でリリン―――――というよりも『クリフォト』に対しての対抗策を協議することが決まったそうだ。
結論。今回の件は各神話体系において、史上初となる宗教、思想を超えた国際問題に発展しようとしてる。
現在は深夜だ。太陽が沈んで、『魔』の活動が活発になる時間だ。
オカルト研究部のメンバー、生徒会のメンバー、アザゼル、グリゼルダさん、デュリオ、鳶雄の他に、サイラオーグ、シグヴァイラ、初代孫悟空、ヴァーリチームまでが一同に会している。俺も結衣さんも一応オカルト研究部に所属しているから来てるんだよ。
「………上の反応はどうなっているの?」
リアス・グレモリーが言った。
「さすがに今回の件は軽視、無視できないとして今まで協力的だったところも話し合いに応じると言ってきている」
アザゼルが言った。
リリンってそんなに大物だったんだ。ということは因縁がある橘家ってどれだけなんだ? 少し怖くなってきたよ。
それからアザゼルから今の世界の状況を教えられたんだけど………簡単に言おう。ヤバイ。この一言に限る。
あちらこちらで襲撃やら何やらがあって大変なことになっているらしい。いや、それを指揮している者が問題なのか。
指揮している者はリリンだ。それが問題らしい。今まで対岸の火事だと思っていた奴らがヤバイって感じ始めたらしい。
困った。本当に困った。そうなったらウチの切り札に頑張ってもらうしかない。もちろん俺も全力で援護だ。黒歌と一緒に。
以上のことから、すぐさま現地に赴ける突出した実力を有した対テロ組織のチームが必要になったんだって。
あぁ………このことを聞いた瞬間、ここにいるメンツがこんなに濃い理由が分かったよ。
「そのチームは各勢力の自由が利いて強い者程都合がいい。そう、ここにいるお前達が対テロリストの混成チームとして挙がっている。悪魔、堕天使、天使、吸血鬼、妖怪、ヴァルキリー、
………給料出るよな? 俺はどこの勢力にも所属していない。だから給料は出ないよって言われたら―――――俺、黒歌と逃避行する。
みんなこの組織の設立には同意した。それで名前が必要じゃないかって事になった。
―――――『
それがこのテロ対策チームの名前になった。ちなみに案を出したのは白音ね。
意味は、
それに
リーダーはデュリオになった。外からのイメージがいいかららしい。
「アザゼル、給料って出るの?」
「………出ると思うか?」
「ただ働きはイヤだよ」
「何が欲しいんだ?」
アザゼルは呆れながら訊き返してきた。くっくっく、この瞬間を待っていた。
「こういう店をつくってほしいんだ」
「は? ―――――お、お前………こりゃあ………」
「すごいだろ?」
「あぁ………これは分かる奴にしか分からない素晴らしさがある」
「やってくれる?」
「任せろ」
「よろしい、ならば参戦だ」
アザゼルが物わかりのいい
ソファに戻ると、ちょうど初代孫悟空が一歩前に出てきた。
「さての。若いもんで強くなりたい奴はおるかねぇ」
初代孫悟空が言った。
初代孫悟空が言うには、一から鍛えてくれるらしい。全員最低でも上級悪魔、上級天使クラスにまで成長させるようだ。ゆくゆくは最上級クラスになってもらうんだって。
この『
初代孫悟空から言わせてみれば、俺たちはまだまだひよっこで、外見ばかり派手に育ったとても歪なものらしい。
イッセーもヴァーリもパワーを放出過ぎると初代孫悟空から注意されていた。だから二天龍は初代孫悟空が直々に鍛えるそうだ。邪龍の戦いかたを一から教え、神とも戦えるようにすると。
ここで初代孫悟空は言った。
神をも滅ぼす具現。
待ってれ。そう考えると俺の《
今回の件で、世界への直接的干渉が出来ることが分かったんだよ? おいおい勘弁してくれよ………
あぁ、でもそうか。絶対領域が無くなった世界なんて、黒歌がいなくなった世界なんてあっても仕方―――――なくねぇよ!! やっぱりおかしいだろ!!
†††
テロ対策特殊チーム『
リーダー
デュリオ・ジェズアルド 天界(
サブリーダー
孫悟空(初代・現役復帰の為名前を戻す) 須弥山
技術顧問兼総監督
アザゼル 冥界(
所属メンバー
・サイラオーグ・バアル眷属 冥界(
・シーグヴァイラ・アガレス眷属 冥界
・リアス・グレモリー眷属 冥界(
・ソーナ・シトリー眷属 冥界
・
・
・佐藤一 人間(無所属・
・橘結衣 人間(無所属(?)・
・赤龍帝ドライグ 二天龍
・
・
・
・
暫定メンバー
・ヴァーリ・ルシファーチーム 悪魔、妖怪、人間、魔法使い、魔物の混成チーム(
・白龍皇アルビオン 二天龍
《
さて、原作での三章が終わりましたね。
ここから一くんの
なんて伏線(笑)をバラまいてみたり。