編集しました。誤字訂正です。
始まり 前編
えっと、ここどこ···?
キョロキョロと辺りを見渡せば、自然豊かな原っぱに立っていた。暖かく心地のいい風が肌を撫でる。それが困惑を助長させる。
さっきまで俺は野原にいなかった。こんな環境のいい場所にもいなかった。なんなら外出もしていない。もっと空気が濁っている都会の、それも安さが取り柄の狭いアパートの一室にいたはずだ。
「・・・なんで?」
こういう時は、自室にいた数秒前を思い出そう。見えてくるはずだ。
『・・・もう朝か。寝よ』
うん、寝たね。
レポートやらゲームやらお勉強やらで夜更かしして、気付けば眩い太陽が差し込む朝方で。
俺は寝たのだ。んで、
「目が覚めれば知らない土地にいた───・・・などと言ってる場合かぁ!?誘拐されたんか俺は!!」
あの時笑ってごめん。気持ちが分かった気がする。某賢王様に謝罪した。
俺は死んだのかな?死んで転生して(もしくは転移)、ここに迷い込んだ。あの世、冥府、地獄に煉獄。はたまた天国か。何に当て嵌めるのだろうか。
「これからどないしよ・・・」
えーと、まずは情報収集が先だね。半分思考放棄して軽い足取りで前に進んだ。
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「ここに来た目的は?」
「えと、なんとなく・・・?」
「なんとなく?もしかして旅人か?それにしては軽装だし・・・」
門番に怪しまれてら。
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歩き進めること二時間半(体感で)。でっかい門が見えたので、そこまでダッシュで向かった。距離が離れているのにも関わらず、息切れが起きるどころかあっという間に辿り着いてしまった。
俺はいつから運動出来るようになったんだ?
向上した自身の運動神経に驚きつつ、ふと下を見ると。
「・・・は?」
服装が違う。ダボダボで清潔さがない寝間着じゃない。異世界でよく見るあの服装だ。顔をペタペタ触る。骨格からして違う。体をまさぐる。見慣れた不健康な体じゃなくて筋肉のある細マッチョに。俺の手はズボンのポケットの中に侵入し、愚息に触れると。
───衝撃が走った。
日本人男性の平均よりやや小さい旧愚息は、新たに生え変わり大物へとなっていた。
なんか感動。
・・・てか、はよ気付けよ俺。
「次の者!」
「あ、俺か」
そして上部に移行する。
この世界は恐らくあの世とかそういう類いのものじゃない。神話とか宗教の世界とか知らんけど、獣耳とかエルフ耳とかいないでしょ?そんな世界に。
だからここは異世界と見て間違いない。この世界が物語の世界かオリジナルかは分からんが。
「えーと、この国でしばらく働いてみようと思います・・・」
なんとなく。理由も宛もなくこの国に来た俺は、少々テンパっていたのか、気付けばそう言っていた。門番は犯罪者かどうかを探るように俺を見てるし、このままだんまりを決め込むのも違う。
だからまず働こう。無一文だから金銭も必要だし、なんか情報も手に入るだろうし。
コンビニから配達まで。バイト戦士の俺なら大丈夫だ!HAHAHAHA !!
「大方畑仕事で生涯を終えるのが嫌で飛び出した。なるほど、若気の至りか。よし、通っていいぞ!」
「あざます!」
なんか盛大に勘違いしてらっしゃるけど、通れたんならいいや。俺は新しい人生の第一歩を踏み込んだ───
「あ、その前に背中見せて。決まりだから」
「あ、はい」
出鼻を挫かれた。
・・・背中?
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門をくぐり抜け、中世風の大きな建物が並ぶ街に入ると、数多の人でごった返していた。ごっつい鎧を身に付けた男に、ワンピース姿の少女。そして多種族。それだけではなく、上を見上げると長細い塔。倒れてきたら国も人も潰れるね。
ここで情報を纏めよう。
・中世風
・異種族
・塔
「
時折聞こえてくる声。
はい、それだけで特定可能ですわ。
「ダンまちですね、分かります」
だとすれば俺のすることは一つ。
主神となる神を探して冒険者になることだ。
「本日はどのようなご用件でしょうか?」
「冒険者になりたくて。現在募集しているファミリアはありますか?」
「分かりました。では候補を絞らせていただきますね。何か希望とかありますか?」
「じゃあ零細でお願いします。我が儘を言えば、出来れば眷属は誰一人としていない所で」
「かしこまりました。しばらくお待ちください」
エルフ耳の綺麗な受付嬢は、そう言って下がった。何やら書類を持ってくるのだとか。
待っている間、この世界の情報を思い出そう。
この国の名は迷宮都市オラリオ。世界に一つだけしかないダンジョンで数多の英雄が生まれる土地である。そこで出会いと英雄に憧れた主人公ベル・クラネルは、メインヒロインのアイズ・ヴァレンシュタインに窮地を助けられ一目惚れ。発現したチートスキルで成長し立ち塞がる困難を乗り越える話だ。
時系列は恐らく原作開始前。道行く人が何やら、【ロキ・ファミリア】の遠征がどうのこうのとか言ってたし。だからヘスティアはいるとしても、ベルはまだ来てないのかな?と予想している。
チラッと横を見れば、ピンク髪の女性が受付している。この人はミイシャさん・・・だっけ?彼女がここで働いているということはそういうことだ(?)
原作で有名なキャラがいる所より、名前が載ってない所がいいので(原作に下手に関わらないようにするため)零細を希望した。
「お待たせしました。リストになります。それと住所も書いておきましたよ」
「ありがとうございます。助かりました」
「いえいえ。ファミリアに入団した際は是非いらしてくださいね」
「はい、失礼しました」
俺はお辞儀をしてこの場を後にした。どうせなら女神様がいいなと邪な願望を抱きながら。
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「ごめんくださーい!誰かいませんかー?」
日本でいう、なんか昭和溢れる感じの空き家っぽい建物あるじゃん?こう屋根に瓦積んでるあれ。
俺はリストに記されていた住所を辿ってここに来た。
所有者の名はラクシュミー。確か豊穣と運を司る神様だっけか?を選んだ。リストに書いてある神々はどれも聞き覚えがなく、唯一分かったのはこの神様だからというのが理由の一つ。
扉の前で呼ぶこと数分。
「はいはい、元気があってよろしいが新聞ならいらぬよ」
「違います。新聞の勧誘じゃないです」
「新聞の勧誘じゃない?ならそなたは何しに来たのだ?」
目の前の女神様は可愛らしく首を傾げる。
・・・改めて見ると綺麗だな。背は低めで顔は幼さがやや残る大人な感じ。古風な喋り方。何より褐色肌に豊かな胸。豊穣を司るだけある。土いじりをしてたのか、土の匂いがかすかに漂い、手を見れば少し汚れていた。
「眷属になりたくて来ました」
まあ、俺の感想はどうでもよくてね。
「・・・私の?」
「貴女の」
「・・・嫌がらせ?」
「ちゃう」
「・・・マジ?」
「マジ」
目の前の女神様は目を見開く。信じられないと思ってるのだろうか?
「えと、俺は眷属になれるんでしょうか?」
沈黙を破る。心臓に悪いからね。
「! あ、あぁそうだな。そうだのぉ!そなたを私の眷属として歓迎しようぞ!」
「本当っすか?ありがとうございます!」
晴れて冒険者になった。
後編に続く。