時系列はリリルカが裏切るところです。
「おい」
「「?」」
俺とベルは後ろから声を掛けられる。声の主はヒューマンの男。何の用・・・ああ。
「お前らあのチビと連んでいるだろ?」
「だからどうした?あんたに関係ないだろ」
「バァカ、分かってねぇな。あのガキを嵌めるんだよ。協力してくれたら金をやるからよ」
「なっ・・・」
俺が少し強めに言い放つが、この男はそれを流し誘い、ベルは信じられないという顔をする。
「な、何でそんなこと言うんですか?」
「あ?てめえはただ頷いてればいいんだよ。それによぉ」
「?」
ベルを見ていた男は俺を見る。下卑た笑みを浮かべて、
「あのガキと仲が良いキャルロを説得してくれよ。その方が幾分か楽になる」
「──」
こいつ何て言った?キャルロ・・・エリスを利用するだと?それはつまり、【ソーマ・ファミリア】と同じことをしろと俺の口からエリスに言うのか?
「
「あ?」
「失せろって言ったんだクソ野郎。エリスはもう、てめえらみたいなクズ共と縁を切ったんだ。それと、エリスに手を出してみろ。その時は──
──使える手を何でも使っててめえらを潰す」
「ひぃっ!?」
底冷えするドスの効いた声に、男は間抜けな声を出して後退った。そして正気にかえった俺は、こんな声を出せたことに自分に驚いた。
「で、でもよ!アーデは役立たずの能無しだぜ!?搾れるだけ搾って捨てちまえばいいじゃねぇか!」
こいつはまだ言うかと思い、今度は殴ってやろうかと手が出そうになるが、
「絶対に嫌だ・・・!リリは、僕達の仲間だ!」
「そういうことだ。ほれ、さっさと失せろクソ野郎」
「・・・ちっ!」
男は俺達の言葉に去っていった。あいつの目を見れば分かる。絶対に何かしらの形で干渉してくるだろう。
「・・・ベル様?」
「リリっ、ああいや、ちょっとイチャモン付けられただけというか、僕達は大丈夫だよ」
リリルカに誤魔化すが、彼女の顔色は優れない。そう言えばエリスはどこだ?
「ア~ラ~ン♪」
「そこか・・・て、どうしたやけにテンション高いなおい」
顔がニヨニヨしている。正直不気味だ。
「獣人の私にははっきりくっきり聞こえたよ~?」
なんだろ、嫌な予感がする。
「俺のエリスに手を出して見ろ。その時は──潰すぞ(キリッ)。いや~、か・な・り・愛されてますなぁ私!」
「待て待て待て!いつ“俺の”何て付けた!?意味が変わってくるだろぉぉぉぉ!!」
キャイキャイはしゃぐエリスに反論する。仲間だから手を出すなって意味で言ったのに、これじゃあまるで、どどど、独占欲が強いみたいじゃねぇか!?
「え~、じゃあさっきのセリフは嘘なの?私って、いらない子なの・・・?」
「っ!?いやそんなことないぞ・・・」
「ん~?聞こえないなぁ?」
こいつうっぜぇ・・・!
「じゃあ行こうかベルとリリ。エリスは使い物にならなくなっちまった」
「ハハハ。そうみたいですね」
「フフ。ええ、三人で頑張りましょうか」
「ちょっ、置いてかないで!ごめん、本当にごめんなさーい!」
俺達はダンジョンへ向かった。原作通りだとこれから奴らが待ち構えている。それと同じならば、
もう原作崩壊は恐いけど、仲間のためならとことんぶっ壊すと今決心を固めた。
「リリ」
「? はい?」
「派閥を脱退させる策があるって言ったら、お前はどうする?」
「「!?」」
ベルとエリスが驚く。エリスはまさかあの手をと思っているようだがそれは違う。
「文句なら後で聞く。お前には辛い思いをさせるぞ」
リリルカと向き合い言い放つ。
「──
ーーーーーーーーーーーーーー
ハッ、ハッ、ハッ。
息を切らしながら迷宮を駆け抜ける。モンスターが比較的少ない場所を狙ったので、戦闘の手間は省かれる。これなら、安全に帰還できる。
必要もない変身魔法を解除する。あの人の作戦通りならばこの辺りで───。
「あ」
何かに躓き転んでしまう。録に受け身を取れず激痛が走った。
「嬉しいねぇ。狙い通りだ」
足を掛けられたのだ。ベルとアランを誘った男。その男は詫び入れるぜと言いながら胸倉を持ち上げ、リリルカを思いっきり地面に叩き付けた。そして二回、三回と蹴りを入れる。
「ハハハ!言い様じゃねぇか!そろそろ裏切る頃だと思ったぜぇ?」
目論見通りだと言わんばかりに笑い、ペラペラ喋り出す。白髪と茶髪のガキがどうとか、偉そうに断りやがってとか。
「まあいい。それよりも」
男はリリルカのローブを剥ぐ。腕を踏み付けボウガンを回収し、魔石と金時計、高額の魔剣を強奪した。
「また派手にやってんなぁ、ゲドの旦那ぁ」
「おおー、早かったなカヌゥ」
「・・・っ!?(【ソーマ・ファミリア】!?)」
カヌゥと呼ばれた獣人と更に複数人がゾロゾロとやって来る。男・・・ゲドの協力者のようだ。
「それよりもゲドの旦那。魔剣を譲ってくれないかい?」
「ああ?これくらいの得があってもいいじゃねぇか」
ゲドは断った。魔剣は残り数回で壊れるとしても、高額で取引される代物で、当然金が欲しいゲドは受け入れられなかった。
それを見越してカヌゥは何かを投げる。
「キ、キラーアント・・・!?」
「て、てめぇ!嵌めやがったのか!?」
「助けて欲しければ、魔剣だけでなく全部落としてくれませんかねぇ?」
「~~~っ!!クソがぁ!!」
ゲドは強奪した装備を投げ捨てた。それをカヌゥは確認して、リリルカに近付く。
「助かりたいのなら、することは分かるよな?」
「な、何を・・・!」
「貸金庫に金を置いてあることぐらい知ってんだ!それを寄越しやがれ!」
「うあ・・・!?」
強引に鍵を奪ったカヌゥは、
「じゃあなアーデ。最後くらい役に立てよ?」
「な、何を」
「俺達の囮になれ、サポーター?」
キラーアントの群れにリリルカを投げ捨てた。
リリルカは思う。冒険者は大嫌いだと。そんな冒険者から金品を奪って、脱退という自身の救済に使用する。モンスターに食べられるのが因果応報なら、別にこれでいいのかもしれない。優しく気遣ってくれたベル。いつも明るく引っ張ってくれたエリス。そして───
仲間に優しいが、私でも引いてしまう作戦を提案する
「作戦はもういいでしょう!?早く助けてください鬼畜のアラン様ぁーー!!」
「了解って、酷い言い草だなおい」
「これはアランさんが悪いですよ」
「全部終わったら説教だからね」
「・・・はい、すみませんでした」
キラーアントの群れからリリルカを助け出し、俺達はダンジョンから脱出した。作戦はまだ継続中。だから終わりまで気は抜けられない。
はりきっていこうか。
ーーーーーーーーーーーーーー
「アーデよ、ダンジョンでは散々な目にあったらしいな。して、何か用か?」
目の前に居るのは【ソーマ・ファミリア】団長ザニス。生で見るのは初めてだが、雰囲気から悪人だと分かる。そして、
「・・・」
隣に居るのが酒神のソーマだろう。何やらぶつぶつと聞こえる。独り言が激しいな、おい。
「ソーマ様!脱退を許可してください!
「ソーマ様に代わり答えよう。本当に用意したのか?」
「はい!私の言葉に嘘はありません!貸金庫の鍵です!」
ソーマに確認を取り、嘘を付いてないとザニスに伝えた。脱退に必要な金は一千万。嘘ではないならそれが手に入るということだ。
「しかしだなぁアーデ?最近一人失って人手が足りないのだよ。だから、な?」
「そんな・・・!?」
つまり脱退は認められないという。一人失って、というのはエリスのことだろうな。
「どうしてもと言うのなら・・・その倍を用意すれば考えてやろうじゃないか。ハッハッハ!!」
どうしようもないクソ野郎だな本当に。反吐が出る。
「行きましょうソーマ様。アーデ、分かったのならさっさと「待てよ」あ?」
俺はソーマを連れて出ていこうとするザニスを引き留める。ザニスの許可をえられないのなら、
「いいのか?そのまま退出して。酒が作れなくなるぞ?」
「・・・なんだと?」
俺の言葉に足を止める。ボサボサの長い髪から覗いている目は鋭い。腐っても神。思わず怯みそうだ。
「あんたのファミリアは悪評だらけでな。そのせいでギルドからも目を付けられているんだ」
「っ!耳を貸す必要はありま「うるさい」ソ、ソーマ様!?」
ザニスの言葉を遮るのは意外にもソーマだった。いや、酒が関わってるのだ。意外でもなんでもなく、ザニスを煩わしいと感じたからだろう。
「それがどうした?酒造りに関係ない」
「分からないか?ならば言おう。
───
「「・・・は?」」
二人の声が重なる。見に覚えのないことを言われたのだ。当然そうなる。
「リリルカの持ち物全て貰ったんだ。でも多すぎてな。一人で持ちきれなかったんだ」
「何が言いたい」
「さっきお前の眷属から盗まれた。だから返せって言ってるんだ」
ほら早くと急かす。ソーマはザニスに返してやれと言うが当たり前だが返せない。だって持ってないし。
「あれれ~持ってないのぉ~?ならこれは窃盗に当たるよなぁ。それならよぉ、ギルドに報告するしかないよなぁ~!」
「・・・それが酒造りになにか「分からないか?」」
「お前らはギルドから目を付けられているんだ。元凶が神酒にあると知れば、真っ先にそれを差し押さえる。お前らは俺の物を奪った」
だからギルドに報告したらどうなる?と、俺は不敬にも神を脅す。こんな神、最初から敬ってないけどな。
ソーマは考える素振りを見せず、
「お前の要望を聞こう」
「んじゃ、リリルカの退団な」
「分かった」
即決した。ふぅ、酒を優先する神でよかった。ザニスは顔を赤くしてプルプルしている。まだいたの?
「ザニス、退室しろ」
「!? し、しかし「ザニス」わ、分かりました・・・」
ザニスは命令通り部屋から退室した。ここに居るのは俺とリリルカ、そしてソーマだ。
リリルカは服を脱ぎ、俺は後ろを向く。ソーマは改宗の手続きをしながら口を開いた。
「・・・私は、どうすればいいのだ?」
「あ?」
「お前の言葉に嘘はなかった。ならば、遅かれ早かれ酒造りは禁止されるのだろう。簡単に酔ってしまう眷属に対して、どうすればよかったんだ?」
「ソーマ様・・・」
懺悔とも言える独白に俺は──。
「知るかそんなもん」
「「!?」」
ぶっきらぼうに答えた。いや眷属野放しにしたのはソーマの自業自得だし、ぶっちゃけどうでもいいし。酒が造れない?訴えられる?ザマーみろ。
「俺から言えることは、完成品という危険物を二度と造るな。そして───もう一度やり直せ、大馬鹿野郎が」
「・・・」
「もう終わったか?なら帰るぞ」
「は、はい!」
こんな所に長居したくないし。
「アーデ。こんなこと言う資格はないが、体に気を付けなさい」
「っ!!ありがとう、ございました・・・!」
主神と眷属最後の言葉を交わした。リリルカは込み上げてくるものを必死に押さえていた。
扉を開けてすぐ近くにザニスが居た。え?そこで待機してたのお前?
「貴様ぁ、私を愚弄したこと覚えておけよ・・・!」
今にも武器を抜くんじゃないかってぐらい殺気立っているが、
「俺達が時間までに戻らなかった場合、仲間がギルドに駆け込むぜ?さっさとそこを退けろよクズ野郎」
「~~~っ!!」
晴れて【ソーマ・ファミリア】を退団したリリルカの顔は、とても明るかった。以前のような暗さはどこにもない。前へと向いたのだ。
気になる改宗先はというと・・・
「よろしくお願いします、ベル様!」
「うん!よろしくね、リリ!」
【ヘスティア・ファミリア】に入団した。ベルは危なっかしいから一人にしておけないという理由と、
「アラン様には感謝してるんですけど、その・・・」
「? その、なんだ?」
「貴方と居たら鬼畜が移ります!それと、ベル様の教育に悪いです!」
「ハハハ、はっ倒すぞクソガキ」
うーむ、あの作戦で思ったよりもリリルカの株を落としたみたいだ。
「ですが・・・」
「?」
「脱退させてくれたことには心から感謝してます。ありがとうございました」
「ふっ、そうかい」
ま、いいか。
リリルカ
すんなり改宗できた。アランを心の底から感謝しており必ず恩返ししようと思っている。恋愛感情?ないよそんなもん。だって死にかけるぐらいヤバい作戦立てやがったし。それよりもベルという、冒険者らしくない冒険者が気になるようだ。
ソーマ
原作より早い段階で変わりつつある。まずは眷属をどうにかしよう。
ザニス
あの男は絶対殺す。しかし、恩恵を剥奪される日は近い。