三つの選択肢   作:新人作家

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アンケートの結果、ベルのヒロインとなりました。リリルカはこれよりベルルートに移行します。
時系列はリリルカが裏切るところです。


大切なもの

 

 「おい」

 

 「「?」」

  

 俺とベルは後ろから声を掛けられる。声の主はヒューマンの男。何の用・・・ああ。

 

 「お前らあのチビと連んでいるだろ?」

 

 「だからどうした?あんたに関係ないだろ」

 

 「バァカ、分かってねぇな。あのガキを嵌めるんだよ。協力してくれたら金をやるからよ」

 

 「なっ・・・」

 

 俺が少し強めに言い放つが、この男はそれを流し誘い、ベルは信じられないという顔をする。

 

 「な、何でそんなこと言うんですか?」

 

 「あ?てめえはただ頷いてればいいんだよ。それによぉ」

 

 「?」

 

 ベルを見ていた男は俺を見る。下卑た笑みを浮かべて、

 

 「あのガキと仲が良いキャルロを説得してくれよ。その方が幾分か楽になる」

 

 「──」

 

 こいつ何て言った?キャルロ・・・エリスを利用するだと?それはつまり、【ソーマ・ファミリア】と同じことをしろと俺の口からエリスに言うのか?

 

 「()()()

 

 「あ?」

 

 「失せろって言ったんだクソ野郎。エリスはもう、てめえらみたいなクズ共と縁を切ったんだ。それと、エリスに手を出してみろ。その時は──

 

 ──使える手を何でも使っててめえらを潰す

 

 「ひぃっ!?」

 

 底冷えするドスの効いた声に、男は間抜けな声を出して後退った。そして正気にかえった俺は、こんな声を出せたことに自分に驚いた。

 

 「で、でもよ!アーデは役立たずの能無しだぜ!?搾れるだけ搾って捨てちまえばいいじゃねぇか!」

 

 こいつはまだ言うかと思い、今度は殴ってやろうかと手が出そうになるが、

 

 「絶対に嫌だ・・・!リリは、僕達の仲間だ!」

 

 「そういうことだ。ほれ、さっさと失せろクソ野郎」

 

 「・・・ちっ!」

 

 男は俺達の言葉に去っていった。あいつの目を見れば分かる。絶対に何かしらの形で干渉してくるだろう。

 

 「・・・ベル様?」

  

 「リリっ、ああいや、ちょっとイチャモン付けられただけというか、僕達は大丈夫だよ」

 

 リリルカに誤魔化すが、彼女の顔色は優れない。そう言えばエリスはどこだ?

 

 「ア~ラ~ン♪」

 

 「そこか・・・て、どうしたやけにテンション高いなおい」

 

 顔がニヨニヨしている。正直不気味だ。

 

 「獣人の私にははっきりくっきり聞こえたよ~?」

 

 なんだろ、嫌な予感がする。

 

 「俺のエリスに手を出して見ろ。その時は──潰すぞ(キリッ)。いや~、か・な・り・愛されてますなぁ私!」

 

 「待て待て待て!いつ“俺の”何て付けた!?意味が変わってくるだろぉぉぉぉ!!」

 

 キャイキャイはしゃぐエリスに反論する。仲間だから手を出すなって意味で言ったのに、これじゃあまるで、どどど、独占欲が強いみたいじゃねぇか!?

 

 「え~、じゃあさっきのセリフは嘘なの?私って、いらない子なの・・・?」

 

 「っ!?いやそんなことないぞ・・・」

 

 「ん~?聞こえないなぁ?」

 

 こいつうっぜぇ・・・!

 

 「じゃあ行こうかベルとリリ。エリスは使い物にならなくなっちまった」

 

 「ハハハ。そうみたいですね」

 

 「フフ。ええ、三人で頑張りましょうか」

 

 「ちょっ、置いてかないで!ごめん、本当にごめんなさーい!」

 

 俺達はダンジョンへ向かった。原作通りだとこれから奴らが待ち構えている。それと同じならば、()()()()()()()()

 もう原作崩壊は恐いけど、仲間のためならとことんぶっ壊すと今決心を固めた。

 

 「リリ」

 

 「? はい?」

 

 「派閥を脱退させる策があるって言ったら、お前はどうする?」

 

 「「!?」」

 

 ベルとエリスが驚く。エリスはまさかあの手をと思っているようだがそれは違う。

 

 「文句なら後で聞く。お前には辛い思いをさせるぞ」

 

 リリルカと向き合い言い放つ。

 

 「──()()()()()()

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 ハッ、ハッ、ハッ。

 

 息を切らしながら迷宮を駆け抜ける。モンスターが比較的少ない場所を狙ったので、戦闘の手間は省かれる。これなら、安全に帰還できる。

 必要もない変身魔法を解除する。あの人の作戦通りならばこの辺りで───。

 

 「あ」

 

 何かに躓き転んでしまう。録に受け身を取れず激痛が走った。

 

 「嬉しいねぇ。狙い通りだ」

 

 足を掛けられたのだ。ベルとアランを誘った男。その男は詫び入れるぜと言いながら胸倉を持ち上げ、リリルカを思いっきり地面に叩き付けた。そして二回、三回と蹴りを入れる。

 

 「ハハハ!言い様じゃねぇか!そろそろ裏切る頃だと思ったぜぇ?」

 

 目論見通りだと言わんばかりに笑い、ペラペラ喋り出す。白髪と茶髪のガキがどうとか、偉そうに断りやがってとか。

 

 「まあいい。それよりも」

 

 男はリリルカのローブを剥ぐ。腕を踏み付けボウガンを回収し、魔石と金時計、高額の魔剣を強奪した。

 

 「また派手にやってんなぁ、ゲドの旦那ぁ」

 

 「おおー、早かったなカヌゥ」

 

 「・・・っ!?(【ソーマ・ファミリア】!?)」

 

 カヌゥと呼ばれた獣人と更に複数人がゾロゾロとやって来る。男・・・ゲドの協力者のようだ。

 

 「それよりもゲドの旦那。魔剣を譲ってくれないかい?」

 

 「ああ?これくらいの得があってもいいじゃねぇか」

 

 ゲドは断った。魔剣は残り数回で壊れるとしても、高額で取引される代物で、当然金が欲しいゲドは受け入れられなかった。

 それを見越してカヌゥは何かを投げる。

 

 「キ、キラーアント・・・!?」

 

 「て、てめぇ!嵌めやがったのか!?」

 

 「助けて欲しければ、魔剣だけでなく全部落としてくれませんかねぇ?」

 

 「~~~っ!!クソがぁ!!」

 

 ゲドは強奪した装備を投げ捨てた。それをカヌゥは確認して、リリルカに近付く。

 

 「助かりたいのなら、することは分かるよな?」

 

 「な、何を・・・!」

 

 「貸金庫に金を置いてあることぐらい知ってんだ!それを寄越しやがれ!」

 

 「うあ・・・!?」

 

 強引に鍵を奪ったカヌゥは、

 

 「じゃあなアーデ。最後くらい役に立てよ?」

 

 「な、何を」

 

 「俺達の囮になれ、サポーター?」

 

 キラーアントの群れにリリルカを投げ捨てた。

 リリルカは思う。冒険者は大嫌いだと。そんな冒険者から金品を奪って、脱退という自身の救済に使用する。モンスターに食べられるのが因果応報なら、別にこれでいいのかもしれない。優しく気遣ってくれたベル。いつも明るく引っ張ってくれたエリス。そして───

 仲間に優しいが、私でも引いてしまう作戦を提案する()()()()。いや、感謝しますよ?でも本当に脱退できるの?これ死んじゃわない?

 

 「作戦はもういいでしょう!?早く助けてください鬼畜のアラン様ぁーー!!」

 

 「了解って、酷い言い草だなおい」

 

 「これはアランさんが悪いですよ」

 

 「全部終わったら説教だからね」

 

 「・・・はい、すみませんでした」

 

 キラーアントの群れからリリルカを助け出し、俺達はダンジョンから脱出した。作戦はまだ継続中。だから終わりまで気は抜けられない。

 はりきっていこうか。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 「アーデよ、ダンジョンでは散々な目にあったらしいな。して、何か用か?」 

  

 目の前に居るのは【ソーマ・ファミリア】団長ザニス。生で見るのは初めてだが、雰囲気から悪人だと分かる。そして、

 

 「・・・」

 

 隣に居るのが酒神のソーマだろう。何やらぶつぶつと聞こえる。独り言が激しいな、おい。

 

 「ソーマ様!脱退を許可してください!()()()()()()()()()()()()ですから!」

 

 「ソーマ様に代わり答えよう。本当に用意したのか?」

 

 「はい!私の言葉に嘘はありません!貸金庫の鍵です!」

 

 ソーマに確認を取り、嘘を付いてないとザニスに伝えた。脱退に必要な金は一千万。嘘ではないならそれが手に入るということだ。

 

 「しかしだなぁアーデ?最近一人失って人手が足りないのだよ。だから、な?」

 

 「そんな・・・!?」

 

 つまり脱退は認められないという。一人失って、というのはエリスのことだろうな。

 

 「どうしてもと言うのなら・・・その倍を用意すれば考えてやろうじゃないか。ハッハッハ!!」

 

 どうしようもないクソ野郎だな本当に。反吐が出る。

 

 「行きましょうソーマ様。アーデ、分かったのならさっさと「待てよ」あ?」

 

 俺はソーマを連れて出ていこうとするザニスを引き留める。ザニスの許可をえられないのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だからソーマに、

 

 「いいのか?そのまま退出して。酒が作れなくなるぞ?」

 

 「・・・なんだと?」

 

 俺の言葉に足を止める。ボサボサの長い髪から覗いている目は鋭い。腐っても神。思わず怯みそうだ。

 

 「あんたのファミリアは悪評だらけでな。そのせいでギルドからも目を付けられているんだ」

 

 「っ!耳を貸す必要はありま「うるさい」ソ、ソーマ様!?」

 

 ザニスの言葉を遮るのは意外にもソーマだった。いや、酒が関わってるのだ。意外でもなんでもなく、ザニスを煩わしいと感じたからだろう。

 

 「それがどうした?酒造りに関係ない」

 

 「分からないか?ならば言おう。

 ───()()()()()()()

 

 「「・・・は?」」

 

 二人の声が重なる。見に覚えのないことを言われたのだ。当然そうなる。

 

 「リリルカの持ち物全て貰ったんだ。でも多すぎてな。一人で持ちきれなかったんだ」

 

 「何が言いたい」

 

 「さっきお前の眷属から盗まれた。だから返せって言ってるんだ」

 

 ほら早くと急かす。ソーマはザニスに返してやれと言うが当たり前だが返せない。だって持ってないし。

 

 「あれれ~持ってないのぉ~?ならこれは窃盗に当たるよなぁ。それならよぉ、ギルドに報告するしかないよなぁ~!」

 

 「・・・それが酒造りになにか「分からないか?」」

 

 「お前らはギルドから目を付けられているんだ。元凶が神酒にあると知れば、真っ先にそれを差し押さえる。お前らは俺の物を奪った」

 

 だからギルドに報告したらどうなる?と、俺は不敬にも神を脅す。こんな神、最初から敬ってないけどな。

 ソーマは考える素振りを見せず、

 

 「お前の要望を聞こう」

 

 「んじゃ、リリルカの退団な」

 

 「分かった」

 

 即決した。ふぅ、酒を優先する神でよかった。ザニスは顔を赤くしてプルプルしている。まだいたの?

 

 「ザニス、退室しろ」

 

 「!? し、しかし「ザニス」わ、分かりました・・・」

 

 ザニスは命令通り部屋から退室した。ここに居るのは俺とリリルカ、そしてソーマだ。

 リリルカは服を脱ぎ、俺は後ろを向く。ソーマは改宗の手続きをしながら口を開いた。

 

 「・・・私は、どうすればいいのだ?」

 

 「あ?」

 

 「お前の言葉に嘘はなかった。ならば、遅かれ早かれ酒造りは禁止されるのだろう。簡単に酔ってしまう眷属に対して、どうすればよかったんだ?」

 

 「ソーマ様・・・」

 

 懺悔とも言える独白に俺は──。

 

 「知るかそんなもん」

 

 「「!?」」

 

 ぶっきらぼうに答えた。いや眷属野放しにしたのはソーマの自業自得だし、ぶっちゃけどうでもいいし。酒が造れない?訴えられる?ザマーみろ。

 

 「俺から言えることは、完成品という危険物を二度と造るな。そして───もう一度やり直せ、大馬鹿野郎が」

 

 「・・・」

 

 「もう終わったか?なら帰るぞ」

 

 「は、はい!」

 

 こんな所に長居したくないし。

 

 「アーデ。こんなこと言う資格はないが、体に気を付けなさい」

 

 「っ!!ありがとう、ございました・・・!」

 

 主神と眷属最後の言葉を交わした。リリルカは込み上げてくるものを必死に押さえていた。

 扉を開けてすぐ近くにザニスが居た。え?そこで待機してたのお前?

   

 「貴様ぁ、私を愚弄したこと覚えておけよ・・・!」

 

 今にも武器を抜くんじゃないかってぐらい殺気立っているが、

 

 「俺達が時間までに戻らなかった場合、仲間がギルドに駆け込むぜ?さっさとそこを退けろよクズ野郎」

 

 「~~~っ!!」

 

 晴れて【ソーマ・ファミリア】を退団したリリルカの顔は、とても明るかった。以前のような暗さはどこにもない。前へと向いたのだ。

 気になる改宗先はというと・・・

 

 「よろしくお願いします、ベル様!」

 

 「うん!よろしくね、リリ!」

 

 【ヘスティア・ファミリア】に入団した。ベルは危なっかしいから一人にしておけないという理由と、

 

 「アラン様には感謝してるんですけど、その・・・」

 

 「? その、なんだ?」

 

 「貴方と居たら鬼畜が移ります!それと、ベル様の教育に悪いです!」

 

 「ハハハ、はっ倒すぞクソガキ」

 

 うーむ、あの作戦で思ったよりもリリルカの株を落としたみたいだ。

 

 「ですが・・・」

 

 「?」

 

 「脱退させてくれたことには心から感謝してます。ありがとうございました」

 

 「ふっ、そうかい」

  

 ま、いいか。

 




リリルカ
 すんなり改宗できた。アランを心の底から感謝しており必ず恩返ししようと思っている。恋愛感情?ないよそんなもん。だって死にかけるぐらいヤバい作戦立てやがったし。それよりもベルという、冒険者らしくない冒険者が気になるようだ。

ソーマ 
 原作より早い段階で変わりつつある。まずは眷属をどうにかしよう。
ザニス
 あの男は絶対殺す。しかし、恩恵を剥奪される日は近い。
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