三つの選択肢   作:新人作家

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前回の戦闘シーンは修正入るかもしれません。その場合は報告いたします。


バーニング・ファイティング・ファイター

 

 「ただいまなのじゃー」

 

 「お帰りラクシュミー」

 

 「お帰りなさいラクシュミー様・・・どうでした?」

 

 ぐったりと元気を失くしたラクシュミーが、我らがホームに戻ってきた。理由は明白、今日開催された【神会(デナトゥス)】での二つ名命名式である。

 本来ならば、上級冒険者を眷属に持つ神にしか参加権は与えられないのだが、先の戦いでエリスがランクアップを果たしたことで認められたのだ。

 

 「うむ、今から追って話すのじゃ」

 

 

 

 回想

 

 堂々と優雅に道を歩く女神がいた。その振る舞いは神々さえ目を奪われるほどに。瑞々しい褐色肌。衣装越しでも分かる柔らかな肢体。顔からにじみ出る余裕の表情。

 そう、眷属二名の新興にして零細派閥の主神、女神ラクシュミーである!

 

 「(・・・ヤバい、吐き気がする。ストレスで胃が痛い。待って私死ぬの?天界逝き?原因は二つ名命名式のストレスで?そんな理由で死にたくないよぉぉぉ!助けてマイ・アラン!!)」

 

 内心エグいことになってるラクシュミーだが、下界の子達よりも策略に長けている神だけあって、見事な鉄仮面(ポーカーフェイス)を決める。事実ここまで誰にも感づかれていない。

 ラクシュミーは適当な席に座り、神々に社交辞令の微笑みを送る。それだけでアホ共(男神達)は歓喜した。

 それから次々と神が席に座り、

 

 「第ン千回【神会】を開かせて頂きます。今回の司会進行役はうちことロキや!よろしくなー!」

 

 「「「「イェーイ!!」」」」

 

 ロキと言えば、フレイヤと双璧を成す最大派閥の一角。隣の神に聞けば、遠征で眷属がいなくて暇だから請け負ったとか。

 そのロキの進行により、まずは情報交換が始まり、意外な神物が挙手をした。

 

 「いいだろうか?」

 

 「んー?・・・て、()()()かいな!?」

 

 「「「「なぁぁぁぁにぃぃぃぃ!?!?」」」」

 

 誰だあの神?と疑問を抱いていた多くの神々が思う中、ロキはソーマだと特定した。無類の酒好きのロキは完成品が飲みたいがために、無用心にも一度ソーマのホームに侵入している。その時顔を知ったのだ。

 ソーマは立ち上がり、

 

 「ロキの言う通り俺がソーマだ。俺は己の趣味のために交流を断ち、派閥経営を全て眷属に任せていた。しかし、()()()と出会ったことで自分を見つめ直しこれまでの考えを改めた。今は生産系から探索系へとシフトして頑張っている。主神としても探索系としても初心者だが、ご指導ご鞭撻のほどよろしく頼む」

 

 「お、お~。そうかそうか。それで?()()()とやらは誰なん?」

 

 「内緒だ」

 

 ソーマは言いたいことだけ言って席に座った。神々は当然置いてけぼりになった。

 

 「(アラン、じゃよなぁ・・・)」

 

 ラクシュミーはソーマが変わったことに検討が付いていた。だってソーマと接近した男って、最近だとアランぐらいだし。

 

 「私もいいだろうか」

 

 「んぉ?なんや、これまた珍しい神やないか」

 

 ソーマに続いて挙手をしたのは、薬を販売する生産派閥のミアハ。経営で忙しいのと、眷属が一人だけしかいないので長らく参加してなかったのだ。

  

 「私からはちょっとした宣伝だ。()()()からの贈り物である調合書にあった薬の量産及び販売の目処が付いた。明日から店頭に並ぶのでぜひ訪ねて欲しい」

 

 「ある男?調合書?それになんや、薬って?」

 

 「なに、()()()()()()()()だ。従来の回復薬の三倍を引き上げる効力がある。値段はなんと・・・」

 

 「「「「なんと・・・?」」」」

 

 神々はごくりと喉を鳴らす。いやミアハよ。ノリがいいなあんた。

 

 「上級回復薬と同じだ!」

 

 「「「「安っしぃーーーー!!」」」」

 

 「まとめ買いでさらに300ヴァリス値引きだ!」

 

 「「「「お買い得ぅーーーー!!」」」」

 

 盛り上がりを見せた。

 

 「結局、ある男って誰なん?」

  

 「内緒だ」

 

 「お前もかいぃぃぃぃ!!」

 

 ミアハもミアハで、言いたいことだけ言って席に座った。

 

 「(これもアランじゃなぁ・・・)」

 

 スキル【三択からどうぞ(サード・ワン)】によって、確か何でもいいと自分が言って、アランは調合書を召喚させていた。とんでもないなあいつ。

 

 「いいだろうか」

 

 「な、なんや?」

 

 眼鏡を掛けた無駄にダンディな男神が立ち上がる。ロキと、ついでにラクシュミーは警戒する。

 

 「ラキアがまた攻めてくるらしい。オラリオに攻め込む準備が完了したと眷属が言っていた」

 

 以上だという言葉で占めた。

 

 「・・・へ?終わり?」

 

 「終わりだ」

 

 「そ、そか。それは・・・   

 

 

 例の男は絡んでないんかぁぁぁぁぁぁぁい!!

 

 ロキはあらんかぎりの声量でツッコミを入れ、ラクシュミーはゴツンと机に頭をぶつけていた。

 

 

 

 色々あった情報交換は筒がなく終わり、【神会】の醍醐味である命名式が開催された。

 【美尾爛手(ビオランテ)】【絶†影(ぜつえい)】【神々の嫁(俺達の嫁)】など。最後は普通に却下された。

 

 「んじゃ、次は・・・ラクシュミーのところか」

 

 「(き、来た・・・!)」

 

 エリス・キャルロ。元【ソーマ・ファミリア】団員で改宗。ランクアップにおける所要期間は六年。

 

 「か、可愛い顔だな・・・」「犬耳がよく似合ってる」「この表情、とてもいじらしい」「彼女を躾たい」「むしろ躾られたい!」「ならばこの娘の二つ名は・・・」

 

 「「「「【神々の犬(俺達のいぬ)】」」」」

 

 「駄目に決まっとるじゃろがぁぁぁぁ!!」

 

 鉄仮面(ポーカーフェイス)、ここに崩れる。

 急に声を荒げたことで、某幼神のツインテールが激しく揺れた。

 

 「そうだぞ。流石におふざけが過ぎる」

 

 「同じく」

 

 ミアハとソーマが反対し、

 

 「せやなぁ、こんな可愛い娘をお前らにやりとうないわ」

 

 ロキも反対することで、ようやく神々は渋々引き下がった。ロキの場合は下心で助けたのだが、ラクシュミーは変えられたことに安堵した。

 それでも大喜利大会が続けられる気配を感じたラクシュミーは、

 

 「こ、この通りなのじゃ・・・」

 

 自慢の胸を強調させながら頭を下げた。実をいうと、こういう仕草に慣れてない。自身の褐色肌をトマトのように真っ赤に染め上げた。

 神々の反応はというと・・・

 

 「「「「ま、まぁ?そこまで言うなら?」」」」

 

 彼女に影響されて、思春期ならではのピュアな反応を見せた。そんなアホ共に永久凍土もかくやの視線を送る女神達であった。

 

 

 

 「んじゃ、この娘の二つ名は【豊犬(ほうけん)】で決まりや!」

 

 「「「「異議なし!!」」」」

 

 その後はヘスティアがロキに弄られ、フレイヤが助けるという珍事が起きた。ヘスティアより勘のいいラクシュミーは、ベル・クラネルがフレイヤに狙われていることを察した。

 フレイヤは一瞬だけラクシュミーの方を向き、僅かに微笑んだ気がした。 

 

 

 

 回想終了

  

 「これが【神会】の出来事じゃ」

  

 「お、【神々の犬】・・・?」

 

 「か、神々やべぇ・・・」

 

 俺とエリスは戦慄した。

 

 ソーマを改心させ、ミアハに知恵を授けた「あの男」はオラリオ七不思議となった。

 

 

 




ステータスは次回書きます。

ソーマ
 生産系から探索系となった理由は、ギルドの指示によるもの。酒を当分造らない?ならば働け。

ミアハ
 回復薬の上位互換を作成。販売に時間が掛かったのは、品質及び安全かどうかを確かめる治験などをしていたから。

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